第63話 フォレストウルフクイーンの怒り
2足型の魔物はようやく巨木の1本の所で止まった。
それはいい。問題は、2足型の足下にアノ植物が生えていた事だ。
……何をするつもりなの?
何かを探すかのように、森を下がり続けたのだ。 狙いがあるのは確実だろう。
……まさか! あの植物を抜いてこの場の全員を殺すつもりなの!? そんな事をすれば、抜いた2足型も死ぬじゃないの!!
知能が高そうな2足型がそんな愚かな事をするだろうか……ん?
ポタッ……ポタポタ……
2足型の魔物に赤い液体が滴り落ちる。
私は恐る恐る上を見て、歯を食いしばった。
嘘でしょ……気配なんて無かったじゃない!
「「クゥン……」」
私に付いて来ていた群れの2匹も気付き、怯え始める。
その直後、2足型が立つ巨木の上から巨大な飛竜の頭が大口を開けて落ちてきた。
「クルルルルル……ガアアァァァァァッ!!」
狙いは2足型なのだろう、真っ直ぐ2足型に向かって落ちてくる。
気付いた2足型は何も出来ずに、悲鳴を上げたまま飛竜に喰われてしまった。
2足型の魔物は最後の最後に逃がそうとしてくれたのか、捕らえていた森狼を解放してくれたが運悪く飛竜の牙に巻き込まれそのまま喰われてしまう。
千切れた首が私の足下に転がって来るのを見て、沸々と怒りが沸き上がるのが分かった。
……けないで! ふざけないでよ!!
私の判断が間違っていたの? 群れを守る為に、夫の知り合いかもしれない2足型を狩ろうとしたのがいけなかったの?
2足型を喰らった飛竜は満足そうな顔しながら、その巨体を無理矢理巨木の森へと捩じ込む。 そして、目の前に降り立った山の様に大きな飛竜が私達を睨んでいた。
絶望的な状況でも、私の中には恐怖は無く。
有るのは、理性を焼き切りそうな程の怒りだ。
私が判断を誤ったから、数少ない成狼を2匹も失ってしまったの? いや、違う! 全部はこの飛竜のせい! 夫を奪ったのも、群れを奪ったのも、獲物を奪ったのも全部コイツのせいだ!
満足そうな顔をしながらも、飛竜は此方を見据えている。 見逃すつもりはないのだろう、薄く開いた瞳が森狼達を貫く。
許さない! 絶対に許さない! 夫達で勝てなかったんだ、私ごときに勝てる筈が無い。
でも、だからどうした! 私は誇り高き森狼女王!
勝てなくても、一矢報いてやる! 時間を稼いでやる!
「ガウッ! ガウッガウッ!」
此処から逃げなさい! お前達2匹で、新たな王と女王となり群れを守りなさい!
「「クゥン!? ガウッ!」」
しかし、女王を置いて逃げれないと2匹は反対する。
その間にも、飛竜がゆっくりと身体を持ち上げ始めた。
襲いかかって来るまでの時間の猶予は僅かしか残っていない。
「グルルルル! ガウッ! ガァッ!」
ダメよ! 貴方達も此処で死ねば、隠れ家にいる子供達はどうするの! 3匹で逃げても、追い付かれて喰われるだけよ。 2匹で逃げなさい!
「「グル……ガウッ!」」
2匹は群れの為に渋々だが、了承の返事をくれた。
「ガウッ! ……クフクフッ! アオーーーンッ!」
そう、それでいい。生き残ったのが、雄と雌の貴方達で良かった。 隠れ家に戻ったら、子供達を連れて2足型の国へ逃げなさい! 夫の友が何とかしてくれます。
「「グルル……アオーンッ!」」
納得した2匹は隠れ家に向かって逃げ出す。
飛竜は油断しきっているのか、2匹の森狼が逃げ出したのにも関わらずゆっくりとした足取りで向かって来る。 直ぐに私を食い殺し、追い付けると思っているのでしょう。
走る2匹の気配を感じながら、後悔が波のように押し寄せる。
ありがとう。 ……ごめんなさい、ダメな女王で。
始めから、夫の友を頼れば良かった。 でも、プライドがそれを許さなかった。
私は愚かな女王。
でも、最後に群れを守ってみせる!
来なさい、馬鹿でかいトカゲめ!
この森の偉大な王である夫の妻、森狼女王の最後の維持を見せて上げます!!




