第51話 新たな食材実食
クウネルは薄暗くなった森を彷徨っていた。 寝床を探しているのだが、未だに良さげな場所を見つける事は出来ていない。
祖父トールの自宅のような大きな岩山が有れば、掘るなり洞窟を期待するなり出来るが……生憎周りは木々と草むらばかりだ。
「気配察知に反応が無い方角に向かって歩いてるのが正解なのか、怪しくなってきたな~。 魔物が生息してる付近なら、水や食料は期待出来そうだし……どうしよっかなー」
周りの木々の高さはクウネルより少し高いぐらいなので、木の上に寝床を作るのも断念した。 巨人のクウネルが上にでも乗れば、木々は直ぐに折れてしまうだろう。
「そもそも、何でこの辺の木ってこんなに低いの?」
村の近くに有る魔の森の木々でさえ、両親を越える高さだった筈である。 木の上を見ても、クウネルの好物である巨大な果物も無く、ここが本当に魔の森なのか疑問にすら思う。
森を掻き分け更に進んでいくと、突如として視界が開けた。
「わーお、何これ」
開けた視界に映ったのは、祖父よりも巨大な木だ。
それが、間隔を空けて無数に生えている。
「私巨人なのに、小人になった気分……解せぬ」
巨大な木々の上からは太陽の光が漏れているのが見える、まだ夕方では無いようだ。
「え? ……じゃあ、空が薄暗く感じるのは何で?」
突如として森が更に薄暗くなり、クウネルは巨大な木々を見上げた。
「急に何で……って、うわぁっ!?」
先程まで居た森を覆っていた影が突如として動き出した。 それと同時にあり得ない程に大きな気配も追従して動き出す。 それまでは大き過ぎて反応していなかったのだろうか。
「クルルルルル、ガァァアアッ!!」
影と鳴き声が過ぎ去り、また空は明るくなった。 はっきりとした姿は木々の葉で確認出来なかったが、凄まじい大きさの何かが上空に居た様だ。
それも、クウネルはあの鳴き声には聞き覚えが有る。
「さっきの……前に私を連れ去った飛竜と同じ鳴き声だよね? あんなにデカイ飛竜が居るの?! いやいや、無い無い。 そんな事がある訳が無い。 森を隠す程に巨大とか、映画の世界ですやん」
クウネルは誰も居ない空間で1人独り言を呟き、精神を落ち着かせる。
「そもそも母が、いくら全力で私を飛ばしたとして……こんな生態系が違う距離まで飛ばせれると思う? 住んでた所と世界が違い過ぎでしょ。 流石に地面に激突した時に、死んでるって。 ははは……やだなーもう」
祖父よりも大きな木々を見上げて、コレが夢では無い事を実感する。
「あー、やだやだ。 何か記憶に穴が有って気持ち悪いし、頭痛いし、ステータスはバグってるし、スライムは美味しいし、馬鹿デッカイ飛竜は飛んでるし。 おっと、スライムは別に嫌じゃないね。 超美味しかったもん。 思い出したらお腹空いてきたな、スライム君は居ないかな? ……あれ? この方角には気配無かった筈なのに、今はうっすら気配を感じるぞ?」
恐る恐る、クウネルは巨木の生えた森へと足を踏み入れた。
雰囲気が全然違う事にクウネルは身震いする。 祖父から聞かされた、亜人最強の巨人ですら住めないという魔の森の話を思い出し音を立てないように進む。
薄い気配の元にゆっくりと近付くと、其処には大きな大根の葉っぱのような物が生えている。 巨人クウネルの目線では、普通の大根の様なサイズ感だが人間の子供程の大きな葉っぱだ。
「薄い気配はこれ? 植物っぽいのに、気配がするって事はこれも生き物か魔物判定なんだよね?
気配も薄いからと、クウネルはおもむろに葉っぱを掴み引き抜こうと力を加える。
「この際、食べれるなら野菜でも何でもいいや……よっこらしょっ! ……おわっ!? 」
しかし、引き抜こうとしたら気配が一気に強くなった。 危険を察知したクウネルは、直ぐ様手を離してその場を飛び退く。
暫く離れて観察したが、特に動きも無く気配もまた薄くなった。
「何だアレ……気配が強くなった時に凄く嫌な感じがした。 抜かれそうになったから、攻撃しようとしたのか? あー……私馬鹿だ、弱いスライムを食べて油断してた。 此処は、祖父でも暮らせない魔の森。 何が居るか分からないんだ、慎重に行こう」
クウネルはもう一度、大根の様な魔物に近付いた。
「そういえば……物語やゲームでも、あんな見た目のモンスターや植物出てくるよね。 名前何だっけ………ドラコラ? マンドラ? あ! そう、マンドラゴラだよ! 直ぐに思い出せるとか、私かしこーい! さすが私! 久しぶりの、さすわた!」
ゲームやラノベに出るマンドラゴラは抜いた時に発せられる悲鳴を聞くと即死するという設定だが、この世界では分からない。 違う可能性も有るが、無策で手を出すのは危険だろう。
しかし、時間による空腹は待ってはくれなかった。
また、クウネルの腹からゴギュルルルと鳴ってはいけない音が鳴り始める。
「え!? もう?! 痛い痛い痛い! 待って待って! 何で!? いや、考えても仕方ない! 直ぐに何か食べなきゃ!」
クウネルは慌てて食べれそうな物を探すが、果物等は見当たらない。
「えっと、えっとー! くそっ! 魔物の気配が無い方角を進んだのは間違いだったね、ちくせう!! 待てよ……このマンドラゴラ食べれないかな。 鑑定!」
『マンドラゴラ 魔力が濃い森の地中で 成長する植物 抜かれると自衛の為 即死の効果を持つ奇声を上げる 食べると美味』
「うん、オッケー! 食べよう! どうせ、このまま空腹を放置したらまた死にかけるんでしょ?! いけるいける! 抜いた瞬間に齧り付くんだ! いったれ私! 乙女の力を唸らせろー!」
クウネルはマンドラゴラの直ぐ横に這いつくばり、葉っぱを一気に掴んで引き抜いた。
引き抜かれたマンドラゴラの見た目は大根に根が沢山生えており、人の様な目と口の窪みがあるとても不気味な見た目だった。
その口の様な窪みから、即死の奇声が上がる。
「キ……キェ「ガブゥッッ! ボリボリボリボリ! よっしゃ、いけたぁぁっ! マンドラゴラ美味しい!! 辛めの大根だねこれ」
食べ掛けのマンドラゴラの見た目は、想像以上にグロテスクだが。 まぁそう見えるだけと言い聞かせれば問題無いだろうとクウネルは自身に言い聞かせた。
「よし、まだ薄い気配が近くに有るな。 マンドラゴラ狩りといきますか!」
立ち上がると、まだ腹の虫が足りないと鳴り始める。
「はいはい、直ぐに食べるから待ってよ。 おっとと、やっぱり少しは即死の奇声聞いちゃってたか。 でも、瞬時に食べたお陰か死んでないし……結果オーライ結果オーライ!」
クウネルはふらつきながらも、次のマンドラゴラを食べに向かった。
「へっへっへ、美味しい食べ物の為なら多少のリスクは飲み込むさね! 待ってろよマンドラゴラー! 次はもう少し味わうからなー!」




