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第45話 勇者カズキの憂鬱

 カズキはこめかみに青筋を立てるも、深呼吸し何とか感情を押し殺した。


 「分かりました。ですが、折角駆け付けたのですから私の仲間にも追わせましょう。 マヒル、コジロウとリュウトにルウを連れて追ってくれ。 このメンバーなら直ぐに追い付けるだろ」


 「うん、いいよー。 でもカズキ君、あのデッカイ巨人は大丈夫なの? 倒せる?」


 マヒルの心配にカズキは笑って応える。


 「楽勝だ。 そっちも油断せずに、確実に首を持ち帰ってくれ。 聖王が首を長くして待ってからな」


 「はーい、じゃあ行ってくるね。 イクよー、コジロウ、リュウト、ルウ~」


 「アレを斬れ無いのは残念だが、仕方ないか」


 「ほな行こか~、ってかマヒルちゃん一々言い方がエロイねん!」


 「はぁ~、面倒だなぁ」


 四人が素早く森へと消えて行くのをカズキは見送る。 その素早さは亜人連合軍が驚く程だ。


 (ふふん! 俺のマヒルは凄いだろ。 おいっ! 其処のお前、今マヒルをエロイ目で見てただろ! 殺すぞ、てめこの野郎!)


 カズキに殺気を込めて睨まれた獣人が怯えて逃げ出し、カズキは舌打ちをしてから仲間に指示を出した。


 「ちっ……雑魚が。 よし、オタフクは地竜と待機。 ユズキは亜人連合の兵士達にヒールを、ミカはメンバーに結界を張ってくれ。 ヒカリは、精霊王を出す準備だけしといてくれ。 もし、俺が苦戦するようなら精霊王に元素魔法を使わせて援護を頼む」


 「えー、この数にヒールするのー? もう殺せばいいじゃん」

 

 側に居た獣人の兵士達がユズキの言葉に悲鳴を上げる。


 (ダメに決まってんだろ、このドS聖女が!)


 「頼む、ユズキ。 まだ敵対する時じゃないんだ」


 「はいはい、仕方ないなー」


 ユズキは手を振りながら亜人達の下へと向かい、杖を持ったミカが心配そうにカズキへと近寄って来た。


 「カ、カズキ君、無理しないでね」

 

 気遣うミカにカズキは優しく微笑む。


 (ミカは最初の印象と全然違う、気を使える良い眼鏡っ子だったんだよな。 ミカになら後ろを任せれる)


 「おう、皆を頼む」


 ミカは笑顔で頷いた後に、結界を張る準備へと入った。


 「よーし! 精霊王出てき――スパァッン! いったーーい! 何するのカズキ君!」


 速攻で精霊王を呼び出し始めているヒカルの頭を叩く。


 (ミカに比べて、コイツは本当にダメだ、ポンコツだ。 精霊王が使える奴じゃ無かったら、パーティーから追放するぐらいのポンコツだ)


 「いったーーい! じゃ、無いんだよ! 準備しろって言っただろ! 出すな! 召喚可能時間の事を考えろ!」


「ぶー、はーい。 ったく、アイドルの頭を叩くなんてっ! 信じられない! キラッ★」


 (キラッにも色々種類があんだな~、ってどうでもいいわ!)


 「カズキ氏、拙者は何も出来ませんが。 どうかお気をつけて」


 (このオタフクは、職業と見た目と趣味を除けば本当に良い奴何だよな)


 「しかし! ヒカリたんの頭を叩くのは止めて欲しいですぞ! 可哀相に、ヒカリたん痛がってますゆえ!」


 (除けばな!)


 「はいはい、わかったわかった。 善処するよ。 じゃあ、もういいな? 俺は行ってくるからな?」


 (まだ何もして無いのにどっと疲れが……。 憂鬱だ……早く終わらして帰りたい)


 「ゆ、勇者様、お気を付けて! トールめは、私の! 私の指揮のお陰で、既に虫の息ですが。 奴は亜人最強と呼ばれております。 御油断なさいませんよう……」


 (はぁ? あー、殺してぇこいつ。 いや、ダメだ。 まだ利用出来る筈だ)


 カズキはウンポに苛立ち、憂鬱を晴らそうと拳に力を込めたが理性を働かせて堪える。


 「お気遣い感謝する、では他の皆さんも手出しなされぬようお願いしますね。 巻き込まれては大変ですから……ね」


 カズキの殺気立った目を見たウンポは、身体を震わせながら下がった。


 「ひぃっ! は、はいっ! おい全軍下がれ! 勇者様の邪魔になるぞ!」


 亜人連合軍は不満げにしながらも、渋々下がる。 獣人以外の亜人は、どうやらカズキの存在を聞いていなかった様だ。


 特に、エルフと妖精は動揺が酷い。


 (ふんっ、まぁ下がらなければ巻き込まれて死ぬだけだからな。 死にたいなら、其処に居ろ)


 カズキは1人で、逃げる事もせずに待っていた巨人の下へと向かった。


 「待たせたな、巨人トール殿」


 「ぐぁっはぁっはぁっ! 今回の勇者は中々礼儀正しいのぅ。 お主、名前は?」


 「ふっ、カズキだ。 勇者カズキ」


 「その名、魂に刻もう。 ふむ、お主は儂より遥かに強いのぅ……どうじゃ、弱者の頼みを一つだけ聞いてもらえんかの?」


 「何だ? すまないが、孫の事は助けられんぞ。 魔王となる前に殺さねば、脅威となり得るからな」


 「ぐぁっはぁっはぁっ! 孫の事は心配しとらんわい。 そうでは無い、儂の足下に居る魔族が転移するのを許して欲しいんじゃ」


 トールに言われ、カズキは足下で倒れる魔族を見つけた。


 (足下? あぁ、空中で雷放ってた奴か。 矢が刺さりまくってるし、虫の息だ。 どうせ死ぬだろ)


 「別に構わない。 目的は魔王の討伐と、前の大戦を生き残ってるトール殿の殺害だからな」


 「なっ!? トール殿! 私もお供させて下さい! 私だけおめおめ領地に転移する訳には……がはっ!」


 ベータは血を吐きながら身体を無理矢理起こす。


 「ならん、ベータよ。 このままお主が死んだら、誰が魔族達に危機を知らせる。 どうせ、人間達の国を支配したら亜人側に攻めいるんじゃろ? 勇者カズキよ」


 トールの質問にカズキは笑う。


 「ふんっ、答える義理は無いな。 どうする? 残るなら殺すが」


 (早くしてくれ。 こっちは早く帰りたいんだよ!!)


 「くっ……愚かな亜人達と新たな勇者よ、この恨み必ず晴らすからな! トール殿、他の長に伝える事が有りますか?」


 (はいはい、無理無理)


 「ふむ、そうじゃな。 全部捨てて逃げろ。 と伝えよ、儂の仇を討つ必要など無いからの」


 「わ、わかりました。 必ず伝えます……ぐふっ」


 (死にかけだな。 もう死なせた方が良くね?)


 「ほれ、これを持って行けい。 ベータ、達者でな」


 トールは腰に下げた袋から小さな小袋を取り出し、ベータの上へと落とした。


 (お? 何を渡した?)


 「はい。トール殿も、御武運を。 ―――転移」


 巨人トールの足下に居た魔族が消え、周囲を囲んでいた亜人の兵士達がざわついた。


 (やれやれ、やっと行ったか)


 「勇者様! まさか、魔族をわざと逃がしたので?!」


 下がっていたウンポがわざわざ前に出て来てから文句を言い始めたので、カズキは殺気を込めた視線だけで黙らせる。


 「ひっ、ひいっ! 何でも有りません!!」


 (ちっ、ゴミが。 殺すぞこのウンポ野郎が!)


 「そういえば、さっき魔族の男に渡した袋は何が入ってたんだ?」


 「む? あぁ、薬草じゃよ。 ただの薬草じゃ」


 (なら良いか。 気休めの薬草等、死期を少し伸ばすだけだろうに)


 「さて、殺るか」


 「そうじゃな、殺るかいのう」


 トールは巨大な両手斧を構え、カズキも両手剣を構える。


 「ぬぅおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 トールが振り下ろした両手斧をカズキは弾く。


 亜人最強の巨人と、勇者の戦闘が始まった。

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