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第43話 勇者カズキとその一行

 時は遡り――――クウネルが自室で初めての鎧を興奮しながら装着してる頃、亜人側の領域近くには勇者カズキ一行が迫っていた。



 カズキ達は計画を遂行する為に聖王国から西に有るジンネル王国を抜け、亜人側の領域へと向かっていた。


 移動手段は勇者パーティーの一員であるオタフクが奴隷にした地竜に乗って移動しており、移動速度はかなり早かった。


 地竜とは、四本足のティラノサウルスに似た竜でありクウネルが見たら走るドラゴンステーキだと喜ぶだろう。


 戦闘力はカズキ達と比べると雑魚同然だが如何せん背中が広く、足もそれなりに早い為に重宝しているのだ。


 そして、目的地に向かう途中で1人の人間を捕えた所から話が始まる。


 ◆◇◆


 「はぁ……面倒臭い事になったな」


 最悪な事に道中で見つけ捕えた男は、さっき密かに通過したジンネル王国の将軍だった。


 「おう、カズキ。 このおっちゃんどないする?」


 エセ関西弁の格闘王リュウトが、捕えた将軍を踏みつけながらカズキに聞いてきた。


 「ぬぐっ、一体お前達は何が目的なのだ! 私をジンネル王国将軍と知っての狼藉か!?」


 (いや、知らんし。 どうでもいいんだよな~……でも一応確認は必要か)


 「やめろ、まだ敵とは限らないんだ。 マヒル、頼めるか?」


 いつもカズキの側に居る、性王マヒルに尋問を頼む。


 (本当に性王っていう職業は何でもこなせる、あとマヒルが可愛い)


 「もー何よ! カズキったら、マヒルマヒルって! こういう時は普通は聖女の出番でしょ?」


 「うるさい、エセ聖女。 そもそも、尋問に聖女の出番って何だよ。 ユズキがしたら、それはもう尋問じゃなくて拷問と死刑のワンセットなんだよ!」


 カズキは頭を抱える。


 (全く、このドSエセ聖女め。 あと、俺のマヒルに文句を言うんじゃありませんっ!)


 「ふふっ、ごめんねユズキ。 次に機会が有れば譲るね」


 「ほらーっ! マヒルは話がわかるー! どっかの誰かさんとは大違いね!」


 (はいはい、そうですね)


 カズキが無言で頷いていると、不意に精霊王使いのヒカリが将軍を棒でつつき始めた。


 「……何をしてんだ?」


 「ねーねー、おじさん。 アイドルって知ってる? もし知らなかったら覚えてね? 私がこの世界初のアイドル! ヒカリだよっ! キラッ☆」


 「ちょっ、ちょっとヒカリちゃん。 ダメだよ、危ないよ」


 咄嗟に賢者のミカが止めに入る。


 「むー! 何で止めるの? ヒカリの事を知ってもらう良い機会なのにー!」


 「はいはい、わかったから。 あんたは此方に来なさい」


 ユズキに引き摺られていくヒカリをカズキは見送る。


 (本当に……癖が強いメンバーだ。 2年経っても、まだ何をするか分かったもんじゃない)


 「ふぁ~っ、ミカ~。 透明化掛けるの交替だよ。 僕は少し寝る」


 大人しくしている地竜の頭の上から杖に乗った魔導王ルウが降りてきた。 此処まで見つからないように透明化魔法をルウが絶えず掛けていたが、そろそろFPが切れてきたのだろう。


 透明化とは、術者を中心とする円の中にいる者を円の外からは見えなくする魔法だ。


 ルウとミカは魔法特化の職業の為、かなり大きな範囲の円を長時間維持出来るのだ。


 「あっ! は、はい。 お疲れ様、ルウ君。 じゃあカズキ君、私は透明化の維持に入るね」


 「ああ、悪いが頼む」


 (さて、将軍の方はどうかな? お、ちょうどマヒルが魅了の魔法を掛けてる所だな)


 「さぁ、おじさん。 僕の目を見て、観て、視て、魅て」


 マヒルの目が妖しく光る。


 「ぐぅっ! 一体何を……何を……あ、あぁ……」


 将軍の目からは徐々に正気が失われていく。


 「僕は誰?」


 「おぉ、貴女は……私の愛しい人でございます……」


 「うん、そうだよ。 おじさんの大好きなマヒルだよ。 じゃあ、何をしに亜人側の領域に向かってたか教えてくれる?」


 「はい……もちろんでございます。 私は……」


 (まぁ、ここからはマヒルに任せておいて大丈夫だろ。 将軍の荷物を確認してるオタフクとコジロウの所に行くか)


 カズキは将軍が運んでいた荷物を確認している仲間の下へと向かった。


 「お、どうだ何か見つかったか?」


 将軍の見えない所では、奴隷使い王のオタフクと剣聖のコジロウが何やら大きな鏡を出している所だった。


 「むむ、これはこれはカズキ氏。 ちょうど呼びに行こうと思っていた所ですぞ」


 「はぁ……カズキ。 俺をコイツと一緒にしないでくれ。 斬り殺したくなる」


 「ははっ、すまんコジロウ。 次から気を付けるよ。 オタフクもありがとう、見てみようか。 これは……魔道具の鏡か?」


 「詳しくはわからん。 しかし、あのおっさんの荷物は食料と武器以外はこの大層に包んであった鏡だけだ」


 「ぐふふふっ、これはヒカリたんに差し上げるべきですぞ」


 余程、生理的に受け付けないのか武者姿のコジロウが瞬時に刀を抜きオタフクを切ろうと構える。 オタフクも、戦闘職でも無いのに腰に下げた鞭を構えた。 直ぐに空気がピリ付き、一触即発の状況になる。


 「待て待てコジロウ、斬るな。 オタフクも取り敢えず待て、この鏡はルウに調べてもらおう。 ちょっと呼んで来るから」


 (ったく、仲間内で殺し合いとか勘弁してくれ。 お前等はまだ利用価値があるんだよ)


 「その必要は無いわよ、カズキ!」


 エセ聖女のユズキがヒカリとリュウトを連れてやって来た。


 「ん? どういう意味だユズキ」


 「マヒルの尋問が終わったのよ。 その鏡は魔道具で、鏡に写りながら念じると装備が変えられるんだってさー!  変えの服や装備を鏡の中に入れて、瞬時に着替えれるの! マジやばくない? やってみようよー!」


 「何だ……ゴミか」


 (魔道具なのは嬉しいが、効果が微妙過ぎるだろ。 そもそもこんなでかい鏡、普段持ち歩かないし。 それなら、普通に代えの服や装備ぐらい持ち歩け)


 カズキはお宝かと期待したが、どうやら期待外れの魔道具だった様だ。


 「カズキ君! ゴミじゃないよっ! アイドルに鏡は無くてはならない物なの。 これが有れば、早着替えだってコンサート中に可能でしょ? キラッ☆」


 (キラッ☆じゃ無いんだよ、まずヒカリはアイドルじゃないしコンサートもこの世界には無いだろ。 文化レベル、中世の時代だぞ?)


 ヒカリと会話すると、カズキは直ぐに頭痛に襲われる。


 「ぶぶふすっ! さすがヒカリたん、アイドルの鏡ですぞ!」


 (はい其処うるさい、黙れ。 あー、これから大事な計画だってのに……更に頭痛がしてきた)


 「見て見てカズキー! これ凄いよー! 」


 声の方に視線を上げると、ユズキが鏡の前でローブや着替えの私服等に早着替えをして遊んでいた。


 (ユズキはちゃっかり試してるし、もう嫌だ。 創造神様……何故俺のパーティーにこんな奴等を選んだのですか。 ……ん? そういえばマヒルは?)


 「おいリュウト、マヒルはまだ向こうか?」


 「ん? マヒルちゃんか? マヒルちゃんなら、おっちゃん連れて森に入ってったで~。 何や、何か知らんけど。 ナニの用事があるとか何とか言うてたで」


 「ヘーソウナンダ、ソレハタイヘンダー。 マヒルゥゥゥゥゥゥーーーーーー!!!??」


 カズキは全力ダッシュで森へと走って行った。

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