第42話 終わりと始まり
目の前に出現したエラーの文字を見て、クウネルは舌打ちする。
(ちっ、やっぱりね。 くそっ! この俺様つえぇぇぇぇ! なチート集団め! お祖父ちゃんでも鑑定出来たのに、エラーが出るってどんだけレベル上げてんだよ!!)
「クウネル、お父さんの後ろに下がってなさい」
ロスが、クウネルを下ろし自身の影にクウネルを隠す。 クウネルはロスが手に持つ両手斧に力を込め始めたのを感じ、戦おうとしている事に気付いた。
(お父さんやる気だ……でも、お祖父ちゃんより強い転移者が4人も居るんだ。 絶対に勝てないよ!)
「お父さん、あの人間達、お祖父ちゃんより強いよ」
警告するクウネルに、両親は優しく微笑む。
「大丈夫、クウネルの事はお父さんが守るよ」
この時、ロスはエルザに無言で頷いて何かを伝えていた。
元クラスメイトのリュウトとコジロウがゆっくりとクウネル達に近づく。 その顔は油断仕切っており、相手が巨人でも楽勝に勝てると高を括っているのが見てとれる。
その後ろでは、杖に乗ったままのルウが何かの魔法の詠唱を始めていた。 そして、男の娘な踊り子マヒルは……じっとクウネルを見つめる。
「ちょっと、マヒル?! 何ボサッとしてるのさ」
「んー、あの黒髪の子。 どっかで見たこと有るんだよねー」
「はぁ? 何言うてるんや、わて等の知り合いに巨人何か居てへんで」
ヘルムとチェーンメールのお陰か、まだクウネルが元クラスメイトだとはバレていないようだ。
(まぁ、バレてもバレ無くても絶体絶命なんですけどね!)
リュウトがマヒルの方へ気が向いた瞬間、その隙をついてロスが素早く動いた。
「おりゃぁっ! 戦斧三連激!!」
振るわれた戦斧の先から、真空の刃がリュウト達を襲う。
「油断するなリュウト!」
あと少しで到達する所で、コジロウの剣で全て弾かれてしまう。
しかし、ロスの狙いは隙を作る事であり、それは達成出来たのだ。
「エルザ! 今だ、クウネルを飛ばせ!!」
「え? え?! お父さん? お母さん?! 何するつもり!?」
ロスの合図と同時に、エルザがクウネルの元に駆けクウネルを抱き上げる。
「コジロウ! 逃がしちゃダメだよ! サンダーレイン!!」
エルザとクウネルに向けて、ルウから凄まじい量の雷が放たれたが間にロスが割り込みその雷を全身で受け止めた。
「ぐっ! ぐあぁぁぁぁっ! クウネルっ……逃げろ!」
「お父さん! おとうさぁーんっ!」
ロスの身体から煙が吹き上がり、そのまま地面へと倒れてしまった。
「クウネル、しっかりハルバートを掴んでなさいっ!! おぉりゃあぁぁぁぁぁっ!! 投槍ぉぉぉっ!!!」
エルザがクウネルの持っていたハルバートを掴み、クウネルごと空に向かって全力で飛ばした。
「がはっ!? クウネル……生きて」
「紫電一閃―――ちっ、逃がしたか」
その直後、エルザの胴体をコジロウが刀で切り捨て……エルザの身体は上半身と下半身に別れて地に落ちた。
「うああああああああああああぁぁぁっ!! よくも、よくもお母さんとお父さんをっ! 絶対に許さない、絶対に殺してやる!!! 絶対に絶対に絶対に殺してやるっ!!」
猛烈なスピードで空中に飛ばされ、魔の森の空に飛び上がった時に絶叫するクウネルは見えてしまった。
遠くの景色に、巨大なトールの身体が地面に横たわっているのが。
「そんなぁぁぁぁぁっ! お祖父ちゃぁぁぁぁんっ!!」
ベータや、村の巨人達がどうなったのか考えるまでも無いだろう。
それに、考える暇も無い。 クウネルの視界が更に加速し、魔の森の奥地へと高速で飛び続ける。
山を幾つか過ぎた頃、景色が変わり巨大な木の森へと突っ込んだ。
手に持つハルバートで木々を防ぎながら、地面へと落ちる。
「うわぁっ! うわぁぁぁぁぁっ!」
クウネルはハルバートを地面に叩きつけるように着地し、逃せなかった衝撃で地面を激しく転がった。
「ぐふっ?!!」
着地した衝撃で出来上がった巨大なクレーターから離れた所の大木に身体を強打する。
もし、トールから贈られたヘルムやチェーンメールが無ければこの時の衝撃でクウネルは即死だっただろう。
身代わりになったかの様に、ヘルムや鎧はボロボロになり壊れてしまった。
掴んでいたハルバートが地面に激突した衝撃的で粉々になっているのを倒れ込むクウネルは口から血を流しながら見つめていた。
「ゲホッゲホッゲホッゲホッ!!………ぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」
頭の中がグチャグチャになり、身体がバラバラになる様な痛みが走る。
家族も、村の巨人達も、全て、クウネルの2年間で得た物全てを、失った。
瞳から涙を溢すクウネルの頭の中で声が聞こえ始めた。
(奪われた、殺された、誰に? アイツラに、それは誰? 亜人達、平和ボケした亜人達、恩人のお祖父ちゃんを裏切った亜人達! 他には? 転移者、誰? 前世のクラスメイト、何をされたの? お父さんお母さんを殺された、どうして? わからない、分からない、どうしたい? 殺す、殺してやる、誰を?)
「私から全てを奪った全員を!」
『ふふ、それは楽しそう』
「殺してやる、殺して殺して殺してやる!」
倒れるクウネルは、土を握り締め口から血を吐きながら叫ぶ。
『そうね、そうしましょう。 でも、それにはたくさん食べて強くならなきゃね』
「食べる? 殺して、たくさん、食べる?」
『そうよ、全てを食べるのよ』
「貴方は誰?」
『私?』
「そう、貴方は誰なの?」
『私は―――――よ』
「何? よく聞こえない」
『いいのよ、貴女はもう眠りなさい。 眠ってる間は私が守ってあげるから』
其処でクウネルの意識は完全に途切れ、クウネルは寝息を立て始めた。
◆◇◆
『ふふっ、誕生日おめでとう 私の可愛い喰ちゃん』




