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第39話 襲撃

 ベータは暫くトールと雑談した後に、周囲を見渡すが村の外の草原には誰の姿も無かった。


 「して、トール殿。 他の国の使者はまだ……?」


 ベータとトールが話している間にも誕生日会の準備は進み、エルザ達がクウネルが座る目の前のテーブルに料理を並べる。


 (あ、お母さんが料理をおばちゃん達と運んできてくれた。 今年の料理はご馳走だよー! 焼いた肉だー! マンガ肉みたいなお肉だー! ひゃっはー!)


 「ううむ、遅刻癖の有るお主が一番乗りじゃ。 何事も無ければ良いが」


 クウネルはエルザの目を盗み、並んだマンガ肉に齧り付いた。


 (まいうー!  後ジョッキで飲む果実のジュースも、まいうーーっ!)


 「私の勘違いなら良いのですが……嫌な予感が致します」


 真剣な顔で会話する2人を他所に、クウネルの盗み食いは止まらない。

 

 「む? 何か思い当たる事が有るのか?」


 (ゴクゴクゴクゴクッ! あ! 待ってお母さん! わかった、わかったから! 全部食べたりしないから! 待ってー! お肉持って行かないでー!)


 盗み食いしているクウネルに気付いたエルザは、クウネルから離れたテーブルに料理を移してしまいクウネルは絶望した顔で落ち込んだ。


 「あ、いえ。 トール殿の手紙に書いて有った、人間の勇者達の事です。 もしや、また人間達を率いてこちら側に攻め入って来たのでは、と不安に思っただけです」


 (あー……私のお肉が……ぐすんっ!)


 「ふぅむ……儂の知っておる人間の国からは何も連絡は無いからの、それは無かろう。 勇者達が動き出すまでまだ時間は有る筈じゃ。 今日の誕生日会の席でも皆に注意しようと思っておる」


 (なーんてね、一個お肉を確保してたのだよ! さすが私! さすわた!)


 クウネルはテーブルの下に隠していた小さめのマンガ肉を取り出し、美味しそうに齧り付く。


 「それは一安心しました。 では、たまたま私が一番乗りだっただけでしょう。 待っていれば直ぐに来ますよ」


 (モグモグモグモグおいしぃぃー!あれ? 何か気配を感じる。 薄くて気持ち悪い気配が村の周りに、どんどん近付いて来てる……? 使者さん達にしては……姿も見えないし。 ん!? 数多すぎじゃない!?)


 クウネルはマンガ肉を置き、立ち上がった。


 「まぁそうじゃな。 どれ、飯でも食べながら待つとしよう……ぬ?  此処に有った料理は何処に行ったんじゃ?」


 「お祖父ちゃん! 何か来てる、沢山!」


 クウネルの言葉を聞いたトールは直ぐ様立ち上がり村の外を確認する。


 「……なにっ?! これはどういう事じゃっ! 村の周囲の空間が歪んどる!」


 そして、トールの顔は驚愕に変わった。


 「トール殿!? どうされた!」


 ベータも、どうやってか空を飛びトールの横に浮き上がった。


 (いいなー、アレどうやってるんだろ。 魔法かな? ちょっと鑑定してみよっかな……「全員戦闘準備をせいっ! ロスっ! 儂の武器を持って来いっ!」


 トールが村全体に響く程に大声を出し、クウネルはその衝撃で飛び上がった。


 「うわっ!? びっくりしたー」


 「よくわからんが、直ぐに持って来る! エルザ、俺の武器と鎧を頼む」


 ロスが、直ぐ様トールの武器を取りに走り出した。 他の巨人達も各々の家へと走る。


 (何々、魔物の大軍でも来てるの?)


 クウネルは何が起きているか分からずに動揺し、オロオロするばかりだ。


 「ええ、わかったわ! クウネルはお祖父ちゃんの側に居なさい!」


 エルザも凄い剣幕で家に向かって走り、クウネルはトールの足にしがみつく。


 (えー? そりゃお祖父ちゃんの側に居ますよ。 でも、何が起きてるの? 私の視界には草原や森しか見えない。 気配はするけど、何かが居るようには見えないんだけど?)


 「トール殿、恐らくこれは上位の元素魔法による透明化です。 私が暴きます!」


 「うむ、頼む!」


 魔族のベータが、空中で光り始めた。


 (眩しー!! 何が起きてるのー?!)


 「ふんっ! ライトニングアローッ!」


 ベータ手から大量の稲妻が走り、村の周りに落ちて行く。 しかし、地面には落ちずに空中の何かに当たり火花を散らす。


 その瞬間、空間が揺らぎ村の周りに突如として亜人達が現れた。 それも、もの凄い数の兵士達だ。 村をコの形に取り込み、数万程の武装した亜人の兵士達に包囲されていた。


 (え? 数万は居ません? 私の誕生日をお祝いに来てくれたにしては、殺気立ってる。 どうやら、お祝いのパレードの仮装ではなさそうだね)


 「ぬぅっ! いったい何のつもりじゃ! 姿を隠しながら儂の村に近づくとは!」


 トールの怒声が大軍を包み、空気がビリビリと揺れる。


 (お祖父ちゃん、完全にぶちギレてるね。 こわーーーー!)


 ちなみに大軍の内訳は、北西にドワーフ達が。 鉄のフルプレートを着てる重装歩兵。武器は斧やら金槌だ。


 西にはエルフと妖精達、綺麗な金髪美人達が整列しているが全員が弓や短剣で武装しており見とれている場合では無い。 妖精達は何も装備はしていないが、妖精は元素魔法の使い手だ。 即ち、さっきまで姿を隠せてたのは妖精達の魔法だろう。


 南西に鬼人達が、毛皮以外何も装備は無が素手の戦闘に優れており油断は命取りだ。


 南には竜人達、翡翠のような石を加工した鎧を装備している。 武器は槍がメイン装備なのだろうか多くの長槍が空に向かって伸びている。


 南東に巨人達、トールよりは小柄だがクウネルの両親より大きい巨人がちらほら見える。 装備はヴァイキングが着るチェーンメールの鎧に無骨なヘルム、武器は大槌に両手斧や槍だ。 きっとあの巨人達が、現在の巨人戦士団なのだろう。


 東には獣人達が。 獣人は皆、軽装備をしてるからスピードに自信が有る者達が多いのだろう。 武器は見た限り、短剣や普通の剣と盾を持つ者ばかりの様だ。


 残された北は、人の住めぬ魔の森しか無い。


 (これ逃げ場を失ってるじゃーん! 魔族以外の全ての種族が私達を囲んでるし! しかも、お祖父ちゃんの足下に隠れてる私を殺気立った瞳で見てくるんですけど?! え? 私何かしました? しかも、各種族の先頭に居るのは去年来てくれてた使者さん達じゃんっ!)


 トールが怒声を上げた後、1人の偉そうな獣人が兵士達の奥から出て来て言った。


 「くっくっくっ、よく気付きましたね。 褒美に私がお答えしましょう。 各亜人国は遂に決断したのですよ! 再びこの世界を戦争に陥れようとしている大罪人トールの討伐と、今から1年後に災厄の魔王となる其処の娘の殺害をねっ!!」


 偉そうな獣人の発言にクウネルは目が点になる。


 「え?……………何て?」

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