第37話 遂に迎えた誕生日
クウネルが目覚めてから数日が経過した。
勝手にトールと出掛けた事に両親が激怒し、クウネルは自宅謹慎中である。 両親から見るとまだ幼児のクウネルに、瀕死にしてからとはいえ狩りをさせた事にも火に油を注ぐ結果となり祖父が毎日両親に説教されるのをクウネルは震えて見ていた。
(そうだよね、火に油を注いだのが、飛竜に拐われてた愛娘がようやく目覚めた日だったのもいけなかったよねー。反省だ)
謹慎中のクウネルは仕方無く自宅で新しく増えたスキル«気配察知»の経験値稼ぎをしていた。 これは恐らくだが生き物の気配を察知すれば経験値が入り、Lvが上昇すると予想しての行動だ。
(違ったら、まぁ……ドンマイ!)
数日使い続けてるお陰か、察知した気配が誰か家族限定なら分かるようになってきたクウネルは目を閉じて気配に集中する。
(居間にはお母さん、ふんわりした優しい気配。 庭にはお父さん、厳つい気配。 村の外の大きな気配、これはお祖父ちゃんだね。 村の皆の気配は、何かが居るってぐらいにし分からない)
しかし、これは実戦でかなり使えるスキルだ。 隠密行動にも、索敵にも、複数に囲まれた時にも使える。 このスキルを持っていたフォレストウルフは天性の狩人だったのだろう。
気配察知と同じタイミングで得た、もう1つのスキル«連携»の鑑定結果はクウネルが顔を顰める内容であった。
《仲間と連携しやすくなる》
(うーん、今の私には微妙かなー。 これも戦闘で仲間と連携プレーしてたらLv上がりそうだね。 私には仲間は居ないけど、家族も仲間判定になるのかな?)
クウネルは自室で大の字になって寝転ぶ。
(しかし、暇だー! 多分、もうすぐ謹慎も解けるだろうし。 そしたら、訓練や勉強を頑張るのです! ふぁ~、気配察知の訓練もしたし。 少し昼寝でもしますか。 お休みなさーい)
クウネルはそのまま目を閉じ、眠りについた。
◆◇◆
――――――そして早々と数ヶ月が経ち、クウネルの2歳の誕生日会の日を迎える。
一生忘れられない、悪夢の様な誕生日会が。
「クウネルー? そろそろ着替えておきなさーい? お祖父ちゃんからプレゼント貰ったんでしょー?」
居間から母エルザの声が聞こえ、クウネルはベットから身体を起こした。
(ふぁ~、眠い。 起きないとね、だって今日は待ちに待った私の誕生日会!)
クウネルは昨年と同じ様に、他種族の亜人達が自身の誕生日を祝に来ると胸を高鳴らせる。
(でも、魔族の使者は来なくても良いかな~。 偉そうだし、あまり私は好きくないんだよね)
クウネルは寝間着を脱ぎ、何時もの私服をとりあえず着始めた。
因みに、巨人達が着ている普段着は前世の北欧で着られていた民族衣装に酷似している。
男性の巨人は、緑や茶の布のシャツに紺色のズボンに何かの皮で出来たブーツが一般的の格好だ。 女性の巨人は白や赤の布のシャツ、青や黒のズボン。 靴も何かの皮製のブーツを履くようだ。
そして、クウネルはお気入りの赤のシャツと黒のズボンに着替えてから祖父トールからの贈り物である鎧を見様見真似で装着し始めた。
(うんうん、お気に入りの茶色のブーツと組み合わせると格好いいね~)
クウネルが今装着している鎧は、前世の北欧に居たヴァイキングの戦士が着ている鎧に似ており凄まじく厳つい。
無骨なヘルムに、チェーンメールという女の子に贈るプレゼントには相応しく無さそうだがクウネルは嬉しそうに鎧を撫でた。
ヘルムに飛竜の爪や牙等の装飾がされており、クウネルの中二心をくすぐる。 更に、鎧の大部分には飛竜の鱗が使われている為。 見た目は完全にスケイルアーマーだ。 某ハンターがモンスターを狩りに行くゲームに出て来そうな見た目で、クウネルはテンションが上がる。
「服の上から鎧着ると、何かゴワゴワする。 まぁ、いいや。 お? おぉ? 鏡が無いけど、私かっこよくない?」
クウネルは装着した手甲や鎧を見回し、満足気に頷いた。
頭はヘルム、上半身はチェーンメール。 腕は丈夫そうな分厚い皮の手甲に、足は鉄の脛当と皮のブーツ。
「全身装着すると……The女ヴァイキング! 格好いいじゃーん! お祖父ちゃんありがとー!」
ガチャガチャと音を立てながらクウネルは部屋を歩き回る。
(ちょっと、乙女としてどうかとは思うけど。 ゲーム好きとしては、ちょっとこんな装備に憧れがあるよね~)
激しめに動くと鎧が更にガチャガチャ鳴って少しうるさく、クウネルは顔を顰めた。
(うっるさ! でもいいのだ! 今日は誕生日会のお披露目に着るだけなのだから!)
祖父トール曰く、巨人族には初めて狩った獲物を素材として装備品を作る伝統が有るそうだ。
「おーいクウネル? ちゃんと着れたかー?」
(あ、お父さんが来ちゃった!)
「大丈夫ー、今行くー!」
父ロスに呼ばれ、クウネルは部屋を出るのであった。




