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第31話 何処ぞの馬の骨に愛娘はやらん!

 両親に頭を撫でられたクウネルは嬉しそうに笑った。


 「んふふ、わかった。お父さん、お母さん。 この間は助けに来てくれてありがとう」


 「「くふぅー!」」


 何故か悶える両親にクウネルは苦笑いだ。


 (私が飛竜に連れ去られたショックが大きかったのか、ちょっとキャラ変わってません?)


 「ぐぁっはぁっは! クウネルも無事じゃったし、バザムの話しも聞けた。 更にじーじから、お祖父ちゃん呼びに昇進じゃ! 今日は良い日じゃ!」


 (モグモグモグモグ、うまうま。 お祖父ちゃんが、嬉しそうに高笑いしてる。 本当にお祖母ちゃんと似た者夫婦なんだね~。 あ! 忘れてた)


 「お祖父ちゃんも、直ぐに助けに来てくれてありがとう。 後、お祖母ちゃんから伝言があるよ」 


 「む? バザムからか、何と言っておった?」


 嬉しそうに巨大なジョッキでトールは水を豪快に飲み始める。


 (今言っても大丈夫そ? むせない?)


 「こっちに来る時は孫を守って死ぬような死を遂げろ。 無様な死に様なら離縁する。って」


 「ぶぼぉっ!? ゲホッゲホッゲホッ!」


 (ほらー! むせたじゃん! もう、きたなーい! えーんがちょ!)


 「お祖父ちゃん、ちょっと外向けてむせて下さいな」


 (ほーら、お母さんに怒られた。やーいやーい)


 天井から顔を出していたトールが外に向かって咳き込むと、村の住人が心配している声をクウネルは聞いて嬉しくなる。


 (族長だからか、皆お祖父ちゃんの事をいつも気にかけてくれてる。 孫としても嬉しいものですなぁ)


 「ははははっ!! 会ったこと無いけど、親父がおふくろの尻に敷かれてた事は良く分かったよ」


 父ロスが笑いのツボにはまったのか、テーブルを叩いて大笑いするのをエルザとクウネルは目を細めて見る。


 (お父さん!? せっかくの料理が床に落ちたらどうするの! ドラゴンステーキ床に落としたら私、キレるよ? キレちゃうよ?)


 「こらっ! テーブルの料理が落ちたらどうするの! 後、お祖父ちゃんに失礼よ!」


 (あ、お母さんが先にキレた。 お父さんがしょんぼりしてる、反省したまえよ。 っていうか、お父さんも充分お母さんの尻に敷かれてるからね?)


 エルザに叱られロスは椅子に座ったまま項垂れてしまったが、良くある光景なので誰も気にしない。 どうやら、妻の尻に敷かれるのには血の繋がりは余り関係無いようだ。


 「ぐあっはぁっは! かまわんかまわん、そうか。 こりゃ、孫を守る理由が増えたの。 離縁されんように、しっかりクウネルを守らんとのぅ」


 トールが指先でクウネルの頭を優しく撫でる。 その力はとても優しく、クウネルに対する愛で満ちていた。


思わずクウネルは照れながら頬を緩める。


 「でも、お祖父ちゃんがお祖母ちゃんの所に行くってどうやって? 巨神様の所に居るんでしょ?」


 クウネルはドラゴンステーキを咀嚼しながらエルザの質問に答える。


 「んー、巨神様の祝福を受けた巨人は死後アスカガルドに招待されるんだってさ」


 「へぇ、しかし話のスケールが大きすぎてお父さんまだ頭が追い付かないぞ。 やっと、クウネルが目覚めてホッとした所だ」


 「そうね、クウネルが無事目覚めて本当に良かった。 ほら、朝御飯を食べてしまいましょ。 巨神様やアスカガルドの事はまたゆっくり考えましょうよ」


 「うむ、ロスとエルザの言う通りじゃな。 今日は訓練も勉強も無しじゃ、沢山食べてゆっくり休むんじゃよ?  クウネルや」


 (モグモグモグモグ。 あ、私はずっと食べてるのでお構い無く)


 「んぐ、はーい。 あ、お祖父ちゃんそう言えば聞きたい事あった」


 「む? 何じゃ?」


 「ルート君っていう巨人知ってる? 料理が上手なイケメン君」


 (もしかしたらお祖父ちゃんも知ってるかもだからね。 将来の婿候補だから、情報収集はしとかなきゃ。 あれ? 私がルート君の名前を出した辺りから、お父さんとお母さんから殺気が漏れてるんですけど?)


 「はて? ルート……ルート、あぁ! 思い出したわい。 宮廷料理人ドガルの小倅じゃな。 そうか、あの坊主もそっちに居ったかぁ。 宮廷料理人のドガルとは、子供の頃からの付き合いでな。 一番の親友じゃった……。 子供が出来た時に、儂の名前をそのまま付けたいと阿呆な事を言い始めてな。 儂が嫌じゃと言っておったら、トールを逆にしてルートと名付けたんじゃ。 本当に愉快な大馬鹿者よ、大戦の時も早く避難すれば良かったものを……料理人が逃げて誰が飯を作ると抜かしおってな。 最後まで厨房に残り、城が落とされた時に見習いの息子と共に死んだんじゃ」


 トールは話しながら、遠い景色の先を見ている。 恐らく、当時の事を思い出しているのだろう。


 「そのルート君を、婿にどうだってルート君のお義父さんに言われたの」


 クウネルがアスカガルドでドガルに言われた事を話すと同時に、テーブルの上で何かが軋む音が部屋に響いた。


 (え?! 何事?!)


 クウネルが両親を見ると、鬼の形相で手に持っていたフォークやジョッキを握力に任せて粉々にしていた。


 (こわいこわい! え? どしたの?)


 クウネルは狼狽えてオロオロしたが、トールは気付かない。


 「ぐあっはぁっは! そうか、まぁアヤツの小倅は巨人一の美男子として有名じゃったな。 今の巨人には、良い男が居らんし。 向こうに行った時に、ルートと結婚するのも手かもしれん。 まぁ、まだまだ先の「お義父さん」え?  あ、はぃ」


 エルザの殺気で、トールが萎縮する。


 (うん、私も怖い。 え?  何で?)


 「ねぇ、お義父さん。 巨神様の祝福ってどうやったら頂けるのかしら?」


 今度は手を置いていたテーブルがミシミシと軋み始める。


 (テーブルがぁ! 我が家のテーブルがー! お母さんの手の力で壊れ始めてる!  やめてー! ご飯食べるのが床になっちゃう! お父さん! お母さんを止め……お父さんも?!)


 ロス側のテーブルも軋み、音を立てて割れ始めていた。


 「お母さん、お父さん、どうしたの? 顔怖いよ? 後テーブル壊れる」


 ロスがクウネルを笑顔で見る。


 (うん、殺気が溢れてる笑顔って真顔より怖いよ?)


 「クウネル、お父さんは思うんだ。 クウネルに婿とか、結婚とかの話しは早いんじゃないかって」


 「あら、奇遇ねお父さん。 お母さんも同じ事を考えてたの、家の娘はまだ2歳にもなってないんですもの。 早いわよね?  お祖父ちゃん?」


 「ひっ!? うむ、うむそうじゃな。 クウネルにはまだ早いかもしれん。それに 「で? 祝福はどうやったら頂けるのかしら?」 ひっ! 巨神様の祭壇に食物を捧げて感謝の祈りを伝えれば、多分、大丈夫です。 はい」


 (あのラスボスなお祖父ちゃんが怯えてる! やばいよ! 巨神様ー! 見てるなら、一回の祈りで私の時みたいに祝福をあげてくださーい! お願いしまーす! 届け、私の願い!)


 クウネルは祈りながらも、終始口にドラゴンステーキを運ぶのであった。

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