第26話 アスカガルドの宴
バザム達がジョッキに並々注がれた酒を飲み干す中、巨神が摘んだ小さなジョッキをクウネルに渡す。 とは云っても、元が大き過ぎるので少し上から落とす形ではあるが。
「わわっ!? でっか!」
巨神に渡された巨大なジョッキの中身はジュースの様で、クウネルは大喜びで口をつける。
「いや、巨神様……流石にお酒は……あれ? この香り、あっ! リンゴジュースだ! ごくごくごく、ぷはぁー! おいしぃぃぃ!」
(あの遠くの椅子に座ったままで、神殿の吹き抜けまで手が届くんですね。 しかしまぁ、豪快だ。 皆の声も、お祝いの仕方も何もかもが豪快だ。 お祖母ちゃんが言ってた巨神王国流ってのは、昔の大戦で滅びた王国の事なのかな? 気になる事が沢山有るけど、今は目の前のご馳走を頂こう!)
クウネルはリンゴジュースを飲みつつも、目の前のテーブルに所狭しと並べられた料理を貪り始める。
「この肉と野菜の煮込み美味しい! あ! ハンバーグだ! え! これ、オムライスじゃんかー! 凄い凄い! ご馳走だぁー!」
クウネルの前に置かれた料理は瞬く間に消えて行く。 その光景を巨人達は面白そうに笑って見ていた。
「ちょいとクウネル、そんなに食べて大丈夫なのかい?」
手にしたジョッキを飲み干したバザムが、クウネルの所まで来て心配し始める。
『ふふ、クウネルはいつも沢山食べてるもんね』
巨神が優しい声でクウネルをフォローした事で、巨人達はクウネルが普段食べている食事の量を想像し大笑いする。
(なるへそ、このでっかい建物の天井が空いてるのは巨神様が覗ける様になのね。 そんなに見つめたら、照れるやん)
クウネルが声のした方を見ると立ち上がった巨神が神殿の吹き抜けから覗き込んでいた。
「んぐ、ゴクッ、ぷはー。 うん、お祖母ちゃん大丈夫だよ。 私、沢山食べないと直ぐにお腹空いてダメなの」
「へぇー、そりゃ凄いね。さすが私の孫だよ、はっはっはっは!」
「あははっ、お祖母ちゃん。 じーじにそっくり、だよ」
クウネルが似た者夫婦だと伝えると、バザムは顔を真っ赤に染めて照れる。
「えぇ?! じーじって、トールにかい? 旦那に最後に会ったのは大昔の大戦の時だったから今を知らないんだけど……そうかぃ、似てるかい。 そりゃ嬉しいね」
「じーじ、お祖母ちゃんの事、話してくれたよ。 凄く強くて格好良い奥さんだったって」
「もう、クウネル! やめとくれよ、もっと照れちまうじゃないか」
バザムは顔を手で覆い、少女の様に照れた。 それを見て笑った巨人がバザムにぶん殴られて吹き飛んでいく。
(あはは、お祖母ちゃんは格好いいけど照れ屋さん何だね。 顔を直ぐに真っ赤にする所も、ママに少し似てるかも)
それから暫く宴は続き、数時間程が経過した。
その間に、クウネルは両親や祖父の話を楽しそうにバザムに話した。
バザムは、クウネルの話しを聞く度に嬉しそうに頷き、ロスがトールの義理の息子だと云う事を聞いた時は泣いて喜んだ。
(そっかぁ、じーじが再婚したと思ってたんだろうね。 後、アスカガルドの事も色々聞いたよ。 この世界は、巨神様が作った異次元の世界らしく広さはそんなに広くは無いけど、森には野菜や果物が沢山自生してるらしい。 他にも肉になる魔物も沢山生息してるんだってさ。 何でも、巨神様が魔物を発生させる神器を管理してるらしい。 現世の世界の魔物も、誰かが管理してるのかな?)
クウネルはバザムや他の巨人からの話しを聞きながら料理を口に運んでいく。
(この巨大な神殿以外にも建物は沢山有って、街には戦士じゃない巨人も多く住んでるらしい。 大戦の時に巨神様を信仰して祝福を受けていた女、子供も沢山このアスカガルドに招待されたそうだ。 本当に多くの巨人が亡くなったんだね。 巨神様に、大戦の後もアスカガルドに来た巨人が居るのかと聞いてみたら答えはNOだった)
その時の巨神や祖母達が寂しそうにしているのをクウネルは忘れれそうも無かった。
(じーじの言う通り、信仰は本当に廃れたんだね……。 それで、久しぶりの新しい信仰者に巨神様は跳び跳ねて喜んだんだってさ。 私の事だね。 いきなり喚ばれてびっくりしたけど、お祖母ちゃんに会わせてくれたし。 私が祈った事で巨神様が嬉しいならいいんだけど……)
料理を食べながらも、クウネルは色々と考えさせられる。 もし、元の世界に戻って巨神の王国に行った時には巨神の事を話して広めようと決意した。
きっと、今の巨人達が信仰を取り戻しこのアスカガルドが賑やかになれば巨神や祖母バザムが喜んでくれると思って。
そんな事を考えているクウネルを、巨神は黙って優しい瞳で見つめていた。




