第24話 アスカガルドと祖母
(おろ? 此処は何処だ?? 私は、確か……子飛竜と戦って勝った筈だ。 で、パパに涙と鼻水垂らされて、ママには力強く薬草を捩じ込まれたんだよね。 その後は、どうしたんだっけ? 寝たんだっけ?)
目を覚ますと知らない草原でクウネルは寝そべっていた。 周囲には両親も祖父の姿も見えない。 そして、夢かと思い頬をつねるが全く痛くない事に驚く。
(あれ、痛くない。 なら、起きてないって事だよね? 夢にしては……此処は知らない場所だしな~)
見上げると、雲一つ無い青空に見渡す限りの穏やかな平原。 そして、クウネルの頬を撫でる優しい風。
もし、此処があの世だと言われても信じてしまいそうになる。
(え? 私、死んだ? ママに薬草捩じ込まれたのが止めになった? えぇー……まだドラゴンステーキ食べてないのに~……)
がっかりしながら暫く歩くと、何処か遠くとも近くとも聞こえる不思議な声が聞こえた。
『ようこそ、我が愛し子クウネルよ。 此処はアスカガルドだ』
声の主が云う事が真実なら、此処は祝福された巨人が死後に招かれる世界アスカガルドという事になる。 その事にクウネルは衝撃を受けた。
(え、やっぱり私死んだの? っていうか誰!? どうしよう、あれだけ大丈夫ってパパとママに言ったのに死んじゃった……かも)
クウネルが呆然としていると、声の主は慌て始める。
『あれ? ちょっ、大丈夫かい? 急にどうしたの? おーい? ほら、やっぱりいきなり喚んだから混乱してるじゃんかー』
「はっはっはっは! そりゃすまなかったね。それより、巨神様も素がでてるよ。 クウネル、クウネルや。 ほら! しっかりしなさいな!」
強い力で突如背中を小突かれたクウネルは衝撃で呆然自失していた意識が戻る。
「ほえ? ……って、いっった!」
(誰じゃーい、乙女の背中を叩いたのは! 許せん! 許してなるものかー!)
叩かれた方を振り返ると其処には、祖父トールよりも大きな青白い巨人がいつの間にか出現し山のように大きな椅子に座って笑顔で此方を見ていた。
そして、直ぐ目の前には母エルザに少し似ているトールと同じぐらいの大きさの女性の巨人が立っており、クウネルの背中を小突いたのはこの巨人の指先だった様だ。
『おいおい……もう少し優しく小突きなよ。 クウネルが痛がってるじゃないか』
クウネルを心配する、山のように大きな椅子に座っている凄まじく巨大な青白い巨人は、腕が元は6本有ったのだろうと思われる異常な姿をしている。
しかし、無事な腕は一本しか無く。 他の腕は肘から先が無かったり、手首から先が無かったりと凄惨な有り様だ。
そして、そんな凄惨な有り様を台無しにしてるのが無事な1本の腕で小さなバナナを美味しそうに頬張っている事だった。
(いいなぁ、美味しそう。 あれ? でも、あのバナナ……私が巨神様にあげたやつじゃね? いやいや、まさかね。 此処からだと、豆粒みたいなバナナだし私の勘違いだ。 そうじゃないと……私死んだ事になっちゃうもんね)
クウネルは考えながら、青白い巨人を見つめていた。 すると、青白い巨人が笑い出す。
『ふふふ、いやクウネルは死んでないよ。 バザムが会いたいっていうから、無理に招待した感じかな。 あ、このバナナありがとう。 小さいけど美味しかったよ~』
クウネルが隣のバザムと呼ばれた巨人を見ると、バザムは膝をつきクウネルの頭を指先で優しく撫でながら微笑む。
「はっはっはっは! クウネルの祖父トールの元妻さ。 旦那と結婚したのは、大昔だけどね。つまりあたしが、クウネルのお祖母ちゃんだよ」
クウネルは目を見開き口を大きく開けて驚いた。
「えぇー!? ばーば?!」
「いやぁ、ばーば呼びは照れるから呼んでくれるならお祖母ちゃんで頼むよ。 はっはっはっは!」
豪快に笑いながら照れる祖母バザムの容姿は誰が見ても格好いい戦士だった。 短髪の茶髪で、額から口元にかけて斜めに古傷が刻まれており歴戦の戦士である風貌をしている。
着用している衣服も、村の女巨人や母エルザが普段着ているのに似ていた。 少しデザインが古く思えるのは、きっとバザムが死んでアスカガルドに招かれたのが大昔だからだろう。
盛り上がる筋肉も凄まじく、露出している腕や足にも沢山の古傷が見えた。
(歴戦の女戦士って感じで、超格好いいじゃん!)
そんな祖母を見て、クウネルは大興奮で喜ぶ。
「おや? どうしたんだい、そんなに見つめて」
「お祖母ちゃん、格好いい!」
「えぇ?! そうかい? そりゃ、嬉しいねぇ。 生きてる頃は子供が居なかったけど、孫ってこんなに可愛いんだねぇ」
孫に褒められ照れたバザムは、大きな指先でクウネルの頭をわしゃわしゃと撫で回す。
(えへへ、痛いけど嬉しいな。 前世でも、お祖母ちゃんは居なかったからね。 巨人に転生してから、家族が沢山だ)
クウネルは痛くても嬉しそうに、されるがままだった。




