第15話 凄惨たる歴史
―――儂が若い頃じゃから、大昔の話しじゃ。
巨大な丸に近いこの大陸では、ちょうど縦に半分に種族が別れて暮らしておった。
左半分が、儂ら亜人と魔族が。
右半分に、人間達が暮らしておった。
当時から種族の違いで人間達とは友好的では無かったが、戦争等は起きず長く平和であった。
魔の森も、今よりうんと小さくての。
大陸の一番北に少し有るぐらいで、魔物も其処まで脅威では無かった。
この頃に、魔の森に接しておったのは儂ら巨人の国だけでの。
今とは違う名前の王国が有ったんじゃ。
左半分の北を殆ど支配する、亜人最大の王国じゃった。
他の亜人の国も、今とは場所が違う国も有るでな。
南には、巨人の王国の次に大きな魔族の国が。
南西に獣人の国が。
更に南西に竜人の国が。
西にエルフと妖精の国が。
更に西に鬼人の国が。
北西の山の中にドワーフの国が有ったんじゃ。
魔の森と接する唯一の国じゃから、魔物と戦い狩るのは巨人の生業じゃった。真の戦士の種族として亜人の中では最強の種族と呼ばれたものじゃ。
本当に強かったんじゃぞ?
そして、儂が30になる頃かの。
ある戦争が、人間側の領土で起きた。
名前は忘れたが、なんたら王国とやらがこの世界は全て創造神オリジンの物で有る。 だから、信仰する我等に全てを支配する権利が有ると抜かしおった。
そして、宣言通り近隣の人間の国に攻めいったのじゃ。
これは巨人の王国に出入りしとった、数少ない人間の商人から聞いた情報でな。
まぁ、人間達はよく小競り合いをするからの。
今回も、直ぐに収まるじゃろと皆が思っておった。
……しかし、今回は違った。
創造神オリジンに召喚された異世界人達によって、近隣の国は瞬く間に攻め落とされた。
数年もする頃には、大勢の人間達を率いて亜人側の領土に攻めて来ての。 そりゃ、大事じゃった。
最初に攻められたのは、魔族達の国じゃ。
魔族達は、魔法に長けた種族での。 儂らが使えん威力の凄まじい魔法の使い手が多くおった。 だから、実践経験が無くとも強い種族なんじゃ。
最初の戦いでは、魔族側が砦や城壁を利用し有利じゃったが。 召喚された勇者達とやらが参戦すると、連戦連敗となった。 魔法の達人達も次から次へと勇者達に討ち取られ、戦力が著しく低下した。
その状態で攻められ次々に砦や城壁、街を落とされての。男は殺されるか奴隷にされ。 女は乱暴され、全て奴隷にされた。
瞬く間に滅びの一途を辿る魔族の国を助けたのが、1人の黒髪の魔族じゃった。
その者は黒髪という理由で魔族達に迫害され、国から追放されておった。 しかし、故郷の危機を知り急ぎ国に戻ったそうな。 その者は、魔法の達人でも使えなかった最高位の魔法を操り勇者達を見事撃退した。
滅びる寸前の魔族達を救い、英雄となったその黒髪の青年は魔族の国初めての王となった。
それまで魔族の国には王では無く、各街の長が領土を治めておったでな。 こうして、魔王様の名前はこの世界に名を轟かせたんじゃ。
魔王様は、魔族の国から人間を追い出し国力回復に努めた。
単身、人間の国に乗り込んで奴隷となった同胞を救ったりしての。
そして、状況が拮抗してきた頃。
魔王様が、各亜人国に同盟を結びたいと申し出をしたのじゃ。
もし次に勇者達が更に強くなってから攻めて来ては、自分だけでは国を守り切れないと。 魔族の国が滅びれば全ての亜人の国も滅びると訴えた。
……しかし、結果は散々じゃった。
エルフや妖精は沈黙を貫き。
鬼人は、自分達には関係が無いと決めつけて断りおった。
獣人は、力無き者は滅びれば良いと頭の悪い事を言い。
竜人は、信じる神の違いが云々かんぬんで断り。
ドワーフは、穴蔵から出てこんかった。
最後に巨人は……本当に、本当に愚かな事にの。
最強の我等が負ける筈が無いと、魔王様に罵詈雑言を言い放ち無情に提案を突き放しおったのじゃ。
同盟が成らないまま、数年が過ぎた頃。
世界が変わってしまった、歴史上最大の戦争が起きたのじゃ。




