第109話 友との共闘
地竜との戦闘が始まってから数十分。
クウネルの周りには地竜の骸がゴロゴロと転がっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……いい加減、食い殺さんとマジで死ぬ」
クウネルは地竜を既に数十体は倒したが、未だに1体も食い殺せずにいた。 食い殺そうとしたらその隙に他の地竜が飛びかかってくるのだ。
結局、焼き殺すか殴り殺すか蹴り殺すしか出来ていない。
「ちっ、頭の働くトカゲだね。 隙を見せたら直ぐに襲ってくる……」
地竜王神の攻撃で空いた穴からは夥しい出血が止まっておらず、更に地竜に噛み付かれた右肩も痛む。
「無理してでも……食い殺す? このままじゃ、ジリ貧だよね」
«――警告。 クウネル、地竜の数体が街に向かっています»
「はぁ!? このタイミングで? 嘘でしょー!!」
後ろを振り返ると、3体の地竜が真っ直ぐ街に向かっているのが見えた。
「ぎゃあぁぁぁぁ! ヤバすぎ! 鑑定さん、モロ達はもう逃げてる!?」
«――否定。 未だ避難していないようです»
「ちょ!? モロ達は何をやってんの! さっさと逃げなよー!」
意識を街の方へと向けた瞬間、鋭い痛みが両足を襲った。
「いっっったぁぁぁっ!?」
両足を見ると、土や石を固めたような棘が地面から飛び出しクウネルの両足に大量に刺さっていた。
数百の地竜達が土魔法を練り上げ、クウネルの防御力を上回ったのだろう。
「痛い痛い痛い痛い痛いんだよぉぉぉっ!」
クウネルは凄まじい激痛に悶えるが、直ぐに追い掛けないと街に向かっている地竜に追い付けないのは明白である。
クウネルは覚悟を決めて、足に刺さる棘を掴んだ。
「うぎ! うぎぎぎぎぎ!! あぁぁぁぁあっ!」
「ゴガァァァァッ!」
激痛に耐えながら棘を全て引き抜き、その間にも襲ってくる地竜を片手でぶん殴る。
「邪魔! おぉぉぉ?! いたぁぁぁぁいっ!」
そして、痛む足を踏ん張り全速力で街に向かう地竜を追いかける。
「痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃっ!」
両足から夥しい血が傷口から流れ出る。 だが、そのおかげで街に向かう地竜に追い付けた。
「ふぅぅぅっ! 間に合ったぁぁぁ! しねぇっ!」
後ろから2体の間に割り込み、地竜の頭を掴んで思いっきり地面に叩き付ける。
「「ゴガガガ!? ゴキイッ!!」」
「よし、あともう1体!」
遠くには城壁が見える。 かなり近くまで戻って来てしまった。
城壁に向かう1体を仕留めても、後ろからはまだ大量の地竜が追い掛けてきている事実がクウネルを追い詰める。
「どうする!? どうする!! もう暴食の大口使うか? いや、もし討ち洩らしたらモロやゴブリン達が殺されるかもしれない。 ダメだ! 考え事してる場合じゃない!」
街に向かう地竜は走り続けている。 後少しで、地竜は城壁に辿り着くだろう。
「あかんあかんっ! 間に合えぇぇぇ! よっしゃぁぁぁ!」
地竜の手が城壁を掴む寸前で追い付き、尻尾を掴んで振り回す。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ!! くたばれー!」
クウネルは後ろから迫って来ている地竜達に向かって放り投げる。
「ゴァァァアアアッ!?」 「「「ゴァァァアアアッ!」」」
「ごあごあ鳴きやがって、うるせぇぇぇぇっ!!」
城壁の前で地竜達へと立ち向かう。
しかし、左肩と両足からは大量の血が流れ状況はかなり厳しい。
「はー、はー、はー、あ~しんど。 さてと、どうすっかな」
目前には街の城壁より大きな地竜がズラリと並ぶ。
ゴブリン王国を襲っていた魔物達より数は少ないが、こんな小さなゴブリン達の王国等一瞬で滅びるだろう。
地竜達は威嚇しながら、ジリジリと間合いを詰めてくる。
「モロ達は……まだ街の中か。 ん? 何で此方に向かって来るの?」
モロの気配がクウネルに向かって近付いて来ているのを気配察知で感じ取る。
「えぇ?? 何やってんの? モロ達が逃げる時間稼いでる間に逃げてよー!」
すると、モロが城壁からクウネルの左肩に飛んできた。
「グルルル! アオォォォォンッ!! すまない友よ、加勢が遅くなったね」
2足型に変身したモロが地竜に対して威嚇の遠吠えし、森狼王の強さを察知した地竜達は怯んだ。
「な~にやってんのモロ。 私はモロ達が避難するの待ってたのに」
言葉とは裏腹にクウネルは笑う。 友を助けたいとクウネルが思うように、モロも思ってくれたのだと知るだけで力が湧いて来るのを感じていた。
「クフクフ、悪いね。 友達を見捨てる趣味は無くてさ。 ゴブリン達も恩人の君に助太刀をすると聞かなくて困ったものでね。 説得に時間が掛かったけど直ぐに避難する筈だよ」
「あ~、直ぐに避難しなかったのはゴブリン達がごねてたのか。 なるへそね! じゃあ、折角だから助けて貰おっかな~」
「ガゥッ! ふふっ、任せてくれ。 あの山程の大きさの地竜と戦う事を思ったら、こんなトカゲの群れなんか楽勝さ」
どうやら、モロはクウネルが地竜王神と戦っている姿を遠目に見ていた様だ。
「あ! でも、奥さんや群れの皆は? 距離有るけど危なくない?」
「ガァッ! 大丈夫、妻達には避難するようとっくに遠吠えで伝えたよ」
「流石だね~。 じゃあ、やりますか……えへへ」
「クゥン? クウネル、やたら嬉しそうだね」
「へへ、誰かと共闘するの初めてだなぁ~って。 それが、友達のモロとで良かった」
嬉しそうに笑うクウネルを見て、モロも笑う。
「アォーンッ! ははははっ! そりゃ光栄さ! じゃあ、始めるかい? 友よ」
「もちろん! さぁ、行くぞトカゲ共ー!」
クウネルはボロボロの身体に鞭を打ち、モロを肩に乗せたまま地竜の群れへと突っ込んだ。




