第100話 救えゴブリン王国
――ウネル、クウネル! 1回この辺りで止まってくれ! お願い、聞いて!」
手の中で叫ぶモロに気付き、クウネルは急ブレーキで止まる。
「おぉっと! モロが何か言ってた。 よっと! ごめんごめん、どしたの? 早く食……助けに行かなきゃ!」
「ガウッ! この辺に妻や群れが隠れてる筈何だ。 少し待ってくれ、アオーーーンッ!」
モロが遠吠えをすると、草原に有る小さな森からクイーンや群れの森狼達が出てきた。
「お? クイーンさんや森狼達が私を見て尻尾振ってくれてるじゃん! へへ、急いで来たかいがあったかな?」
「クフクフ……え? 本当に? クウネル、妻が君の大好物であるスライムが城壁の周りに沢山居るから他の魔物達を倒すついでに食べてきたらって言ってるんだけど……冗談だよね?」
「え? 全然冗談じゃないよ? スライム君なら大好物だよー?」
モロは大きく目を見開いて固まる。 スライムを捕食するなど、モロの常識から大きく外れているからだ。
「おーい、モロー? 私、行ってくるよ? いいよね? 奥さんからもオススメしてもらっちゃったし」
「クゥン……いや、うん。 友の王国を頼むよ、私は王城に居る筈の友の様子を見てくるから」
「オッケー! あ、もし怪我人や重症者が居たら1ヵ所に集めておいて。 城壁を囲んでる魔物達を倒したら直ぐに治療に行くから」
「ガウッ! 了解したよ、すまないが城壁近くまで肩に乗せてもらってもいいかい? 流石にあの城壁を登るのはしんどくてね 変身!」
四足歩行のモロが身体を変形させ始め、直ぐに二足型に変身する。
「なるへそね、これが変身か。 かっこいいじゃーん! さすが私の友達! さす友ー!! じゃあ、行くよ」
「ガァァァ! あぁ、頼む!」
モロを肩に載せてクウネルは走り出す。
クイーンや、群れの森狼達は数が少ない為危険なので隠れていた森で待機だ。
「モロ! 魔物の群れ突っ切るから、しっかり掴まっててね!」
「アオーンッ! 頼むよ!」
クウネルは大蟻の大群の中を突っ切る。 大蟻達も巨大なクウネルに気付き、攻撃をしようと大きな口バサミを開けるがクウネルの方が早い。
「あーー! 気持ち悪いよーー! 足がぁぁぁ! 感触がー!」
大蟻達を容赦無く踏み潰しながら城壁へと駆け寄った。
「ギガァ! 新手の敵襲か!? くそ、こんな時に! 射てー! 近付けるな!」
城壁の上で大蟻達と戦闘していた小さな緑色のゴブリン達は、巨大なクウネルに気づくとすかさずに矢を雨のように射ってきた。
「ちょっ!? 滅茶苦茶弓矢射ってくるやん! まぁ、そりゃそうか。 自分達の城壁よりはるかに大きな生き物が走って来たら怖いよね」
何故、矢を射られているクウネルが余裕かと云うと、全く身体に刺さっていないからだ。
飛んできた矢はクウネルに刺さることなく、パラパラと落ちていく。 クウネルにとっては小さな小枝である。
「あー、全然痛くないや。 でも、ちょっとくすぐったいかも」
「ガウッ! クウネル、私は城壁に飛んで事情を話してくる。 好きなだけ暴れて、スライム達を腹いっぱい食べてくれ!」
「はーい! そっちも頼むよモロー! あ、ちょっと置かせてね」
モロはクウネルの肩から城壁へと飛び移る。 そして、クウネルは肩に担いでいた袋を城壁の端にそっと乗せた。
「ゴブリン達の事はモロに任せて、私は魔物達を何とかするか」
クウネルは足下に近付いてきた大蟻達を足で蹴散らし、守らないと不味い門へと近付く。
「……最悪」
門の前には、ゴブリンの兵士達が最後まで戦ったのか多くの大蟻達の死骸が散乱しているがそれ以上のゴブリン達の死体が転がっている。
その死体を捕食している大蟻達や、スライムの様に酸を吐けるのか門を溶かそうと消化液らしき物を吐きかける大蟻達の姿が見えた。
城壁の上から矢の雨が降り注ぎ、大蟻達に刺さるが効果は薄い様だ。
「……最悪だ。 もっと早く来ていたら、昨日1日掛けて袋何か作らずにモロ達と朝から出発していれば、このゴブリン達は死なずに間に合ったかも知れないのに!」
クウネルは怒りに任せて、門の前にいた大蟻達を足で踏み潰す。 突然の攻撃に大蟻達はクウネルに向かって酸を射出し始めるが、クウネルは気にもとめない。
「クソ、クソクソ、クソクソクソクソッ!! 私はいつもそうだ! 大事な時に何もできない! ……もう、いい。食事は後だ。 全て、全て燃やしてやるよ! 火炎!! ガァァァァァァァアアッ!」
門の周辺に居た大蟻達から燃やし尽くす。 クウネルの口から真っ赤な炎が吹き荒れ、次々に大蟻達へと燃え移った。
「燃えろ! 燃えろ燃えろ燃えろ!!」
「「「「「「「ギチチチチ?! ギギィィィィィ……!」」」」」」」
地面を焦土と化し、門周辺の大蟻達をは全て殺したクウネルは辺りを見渡す。
数百の大蟻を焼き殺したが、まだ数千の大蟻達が押し寄せる。 更に横からはシックスハンドマンティスの群れもクウネル目掛けて襲い掛かって来ていた。 スライム達も居るが、ぷるぷると震えるだけでクウネルには全く脅威にならない。
「くそ! 雑魚ばかりだけど、切りがない。 そもそも、何でこんなに大量の魔物達がゴブリンの王国を襲ってるのさ!? って、いたぁぁぁぁ?! てめぇ、カマキリこの野郎! ガァァァァァァァアアッ!」
クウネルの足に殺到したシックスハンドマンティス達の鋭利な鎌が刺さった。
すかさずにクウネルは火炎を吐き、近くにいたシックスハンドマンティス達を焼き払う。
「あがぁぁぁぁ!? 流石に口の中が熱すぎ! ダメだ、数が多すぎる! 暴食の大口使うか? いや、ダメだゴブリンの王国も飲み込んじゃう」
クウネルは素手で大蟻やシックスハンドマンティス達を殴り、潰し、蹴散らした。
かなりの数を倒したが、流れは最悪な方向へと動き始める。
「アオーーーンッ! クウネル! もう1つの門が突破された!」
モロの声が城壁の向こうから響き、その内容にクウネルは目を見開いて驚いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!? このタイミングで?! やばい! ゴブリン王国マジでピンチやん!」




