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2日目、盾と剣より先に来た猛獣 前半

登校してきたあと、“ギブル”に会う前までの話です。


本当は登校中と、この登校してきた前半で1話にする予定でしたので、今回は短いです。


この話の続きを、次にギブル視点で書きます!

 学校についてすぐ、俺はポケットのメモを見た。


 できるだけ失礼のない態度と言葉選びで、“たきひこさん”と“ギブルさん”に挑みたいと思っているけど、不安は拭いきれなかった。


「たき…たきちゃんもだけど、ギブルさんもすごく頭の切れる人なんだよな。繊細でセンスもいいし、心の強さとそれを活かせる技術力を持ってる。」


 カサカサとメモが音を鳴らし始め、自分の手が震えているのを嫌でも自覚してしまう。


 思い切り深呼吸をした。


 クラスには俺以外にも何人か居るので、なんだあいつという目はあるが、気にしてられない。


 この二人の好感度は、絶対に今後の難易度を左右するからだ。


 この二人の活動内容を把握できて動くのと、そうでないのでは難易度が絶対に違う。


 二人が一番力を入れているものが、魔王戦後まで考えられた救護施設や、救護機械、設備、緊急救護テント等だからだ。


 数と場所を、完璧に把握したい。


 できれば手伝いたいけれど、あとから魔王が手を加えていたとわかっては、せっかくの二人の努力が台無しなので、そのへんは我慢だ。


 匿名のアンケートなんかがあれば、思いつくことすべて書く気でいる。


 あと、できればこの優しい二人が、ニケと仲良くしてくれたらなとも思っていた。


 魔王討伐メンバーとは別の、守り守られるような存在。


 それこそ二人は、ニケの人生の先輩でもあるので、友達とも違った世界をくれると思う。


 きっとニケなら、全部手に入れられる。


 世界の平和を勝ち取る勇者なのだから、世界一幸せになっていい。


 魔王が死ねば、恐怖の対象はきっと変わってしまう。


 その恐怖の対象が、絶対にニケ達にならないように。


 その対象が、差別や人類同士の争いの種にならないように。


 100年は、人類が浮かれるほどの“希望と歓喜”で満ち溢れるような演出が必要だ。


 そうでないと、人類はすぐ忘れるし、弱い心の人達が集まって団結すると、自分達の“正しい”が認められるために手段を選んだりしない。


 “正しい”を貫くために争うことを苦にもしないし、“正しい”を履き違えても、自分たちはなんの責任も感じないほどだ。


 そうじゃない強さのあるニケも、母さんも、人類なのに。


「おはよ〜、ライラ君。」


 たきちゃんの声がして振り返る。


 今日は、オレンジと黄色のチェックが格好いい服だ。


 昨日はかけていなかった、茶色のフレームが太めなメガネもとても似合っている。


「おはようたきちゃん。昨日は、色々とありがとう。」


 教室がざわつくのがわかる。


 ただの新入りが、たきひこさんに何してもらいやがった!馴れ馴れしい!!と思われてしょうがない。


 俺だって、逆の立場なら1日中ガン見するレベルで気にすると思う。


 気持ちをわかってあげられるけど、気にはしてられない。


(ズルでも甘えでもいい。だって俺“魔王”がいい子なワケがない。)


「ここやと騒がしいし、後で一緒にランチせーへん?」


「マジですか!?」


 聡いたきちゃんは、俺がクラス内でいい顔をされてないことに気がついていた。


 わかっていて、話せる時間と場所の確保のために、スマートにランチへ誘ってくれる。


 本当にすごい。


 そんなすごい人を前に、魔王はというと、ブンブンとバカほど首を上下に降っていた。


「もちっ、もちろんっお願いしますっ!」


 動きながら喋ったせいで声がブレブレだ。


 逆に失礼だと思いすぐに止めた。たきちゃんは優しく笑ってくれたので、ギリ引かれては無いと思いたい。


「んっふふふ。首とれてまうから、そのへんにしとかな。」


「とれないよ!めちゃくちゃ丈夫だし自然治癒力も高いよ!!ここは母さんに似たんだ!」


 自分の声がでかすぎて、自分で引いた。


 ニケの、「オタクも引かれるから。」が頭でリフレインする。


 たきちゃんは笑顔だけど、どんな優しい人でも3度目以降はないことがあるらしいので、気をつけなければと思ったのもつかの間、


「お母さんが元気なんは、えぇことやからなぁ。」


 そう言わせてしまって、しまったと思った。


 むしろ、そう思われてしょうがないセリフだ。口から出した言葉は戻せないと知っていたのにと、自分に舌打ちしたくなる。


 そして、そんな俺にやっぱり気づかせてしまう。


 本当に、聡い人だと思った。


「ごめん。家族の話に口出さん方がよかった?」


 ニケの“勘”とは違う、この人の中で確信を持ってるソレは、優しさ“だけ”では得られない。


 確かなこの人の武器だ。


 そんなこの人にだからこそ、困らせることも、空気を重くすることも、絶対にしてはいけない。


 テンションを変え過ぎず、今度はちゃんと“話すこと”を意識するように心がけた。


「死んじゃうその時まで、ずっと元気で居てくれたよ。」


 嘘は、ついていない。


 最後の最後まで、母さんは立っていた。


 妹の盾として全ての銃弾を受け、守る剣となり勝利を掴んだ。


 死ぬその時すら、笑っていた。


「だからこそって言うか、そんな母さんが喜んでくれた体質が、少し自慢みたいなとこあるんだ。」


 軽く、気を使わせてごめんと付け加えると、ゆっくり首を横に降ってくれてホッとした。


「ライラ君がそう言ってくれて、気を使わずにすんだよ。」


 クラスの人達が、聞き耳を立てているのもわかっていた。


 俺は、嘘を一つもついていないし、これからもほとんどつかない。


 だからこそ、聞いた人達の中で、俺は魔王から遠ざかる。


 ニケですら11年欺いているから、これに関しては自信があった。


 カサリと音がなり、無意識にメモを握りしめたことに気づいて、慌てて隠す。


 やましいことは無いのに、反射的だった。


「何も隠さんでえぇやない。今日聞きたいことをまとめてくれたやつやろ?」


「う、うん。できるだけ時間を無駄にさせたくないと思って、失礼も無いようにと思ってるんだけど、俺はニケとくらいしか関わってこなくて。」


「なんでそんな固いの。“たきちゃん”言うてくれる仲やんか。」


 それだって馴れ馴れしすぎる。本来絶対に言わない。


 でも、俺は魔王なので手段を選んでられないのだ。


「作戦なんだよ。たきちゃんの親近感を得る。」


「………へぇ。」


「だからマジでランチお願いします!!やっぱなしがなしの方向で!昨日のチョコのお礼も作ってきたんで!!」


 90度の角度で頭を下げる。脳筋と言われそうだが、会えて2日の数分一緒にいただけのヤツが本気を信じてもらえる方法なんて限られていた。


「…んっふ。それは楽しみやな。」


 そう笑いながら言ってもらえ、体の力が抜けていく。


 ゆっくり頭をを上げると、声の通り優しい顔をしてくれてるたきちゃんと目が合う。


「ランチ、勇者君に言うといてね?」


「えっ、ニケも呼ぶの?来てくれるかな。」


「あれ?いつも一緒に食べるとかやない?」


「今まではなかったよ。ニケは人気者になるし、これからもないと思う。」


 小学校では班が違ったし、中学では俺が1人で弁当を食べていた。


 1人の時間も全て使って、PCの制作等に費やしたので、一人だったことになんの後悔もない。


「昨日は、俺がグラウンドでの作業に時間がかかりすぎて、たまたまお昼もあそこでだったんだよ。」


 たきちゃんは、少し考えるような仕草をした。


 顎の下に手を持っていって腕を組むなんて、絶対に俺がやったらギャグなのに様になっている。


「そぉやなぁ。アレは、午前中で捌けるかわからんくらいやからなぁ。」


「えっ、あれ?」


 アレと言われたものが、たきちゃんの目線の先にある窓の外の人だかりだとわかるのに、時間あまりかからなかった。


 グラウンドに、ニケと訓練のための一戦をしたい人達で長蛇の列ができている。


 慌てて教室の時計を見ると、思っていたより時間が過ぎていて焦った。


「マジかっ。ドローン出してねぇっ。もしかしてもう、一戦かニ戦撮り逃したか!?」


 急いで窓の外に2台のドローンを投げ飛ばし、PCを立ち上げ、ドローンとの接続状態に異常がないか確認した。


 これで、とりあえず今後は撮り逃しがない。


「今日は、外には行かんでもえぇの?」


「今日はギブルさんへの挨拶の練習をしてからと思っててっ」


 焦っていたから、そのまま口から出ていた。


 流石に、これをいう気はなかった。


 顔が赤くなっていくのがわかるほど熱いし、窓からドローンを投げた事でクラスの人たちの注目を浴びていた今は、タイミング的に最悪だったし、挨拶の練習なんて3歳児みたいだしでもうホント隠れたかった。


 今、魔王の甲冑を着たかった。


「やっぱホモか。」


「違う!羞恥心はあるだけなんだよ!!赤くなるのは父さんに似た!」


 反射で、声の聞こえた方に振り返り怒鳴ったけど、実は、誰に言われたのかはわかってなかった。




 

ギブル 18歳 性別(男性)


好きなモノ(可愛いもの 面白いこと 甘いもの 海洋生物“サメやシャチ、イルカ等メジャーなモノ” 小動物 カッコイイモノ ビジュアル系のバンド オシャレ 仲のいい人達との時間 一人の時間)

嫌いなモノ(自分を巻き込む喧嘩 理不尽な罵倒 可愛いものへの冒涜 カッコイイものへの冒涜 無理強い 友達への不当な扱い 味の薄すぎる食べ物)


技術科に在籍している秀才。

常に自作のマスクをつけている。

可愛いものとカッコイイものが好き。

人当たりもよく、穏やかで、高身長でイケメンだと話題に上がるが、マスクを外さないので、マスクの下を勝手に想像され、妬む人達から誹謗中傷されることもしばしばある。

たきひこのお気に入り認定をされてから、面と向かって嫉妬からくる不当な扱いを受けることはなくなった。

人柄的にも、技術力的にもたきひこを尊敬している。

平和主義者で、老若男女に優しいが、好き嫌いは割としっかりとわかれている。

平和主義者なので救護施設やドローンなどの製作中心だが、カッコイイものが好きなので実は武器などを多くデザイン、設計している。

でも、その武器で戦争をしたいわけでは無いので複雑な心境。

何も悪いことしてないのに魔王に殺されるのは、普通にムカつくので勝利のためには戦うことを厭わない。

天然だと思われるのを嫌がっているし、自身は全然その気はないが、天然。

動物系の映画は号泣してしまう派。

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