Ep.3身勝手なrevanche
まといは帰宅するなり、周囲に当たり散らかした。
「あの、泥棒猫!ワタクシの紅様に何してくれてるのよ!それに彼も彼よ!ワタクシという伴侶がおりながら他の女にうつつを抜かすなんて…。」
(何故、何故なの……?)
「お、お嬢様……?」
侍女からの声掛けにまといはキツく鋭い眼光を向ける。
「ヒッ……、し、失礼ながらお聞きしたいのですが紅様の居宅で一体何があったのですか?」
「……ったの。」
「……?」
「紅様と交合っている泥棒猫がおりましたの!」
「……それは…………大変でございましたね…。」
強い言い方に侍女は怯えながらも慰めの言葉をかけると上っ面だけに聞こえる言葉遣いが気に触り、更に語気が強くなる。
「貴女に何がわかるのよっ!気休めなんていらないわ!」
「っ……。」
怒鳴られるように当たられた侍女は怯えた様子を見せる。
それを見てまといはハッとなり落ち着きを取り戻した。
「し、失礼したわね。こちらを気遣ってくれたのよね。」
「い、いえ、私も無粋なことをいってしまったので…。」
「でも、ありがとう。お陰で冷静になれたわ。少し喉が渇いたからお茶を用意してくださる?」
「かしこまりました。失礼致します。」
そう言って丁寧に扉を閉め、侍女が出ていくとやっと1人になって気が落ち着いたのかまといは思惑を巡らせた。
「それにしてもワタクシを虚仮にしたお返しはしっかりしなくては…。その為には泥棒猫のことを調べないといけないわね。
確か紅様が『リオ』と仰っていたわね。」
「ワタクシの紅様を淫らな体で誘惑したんでしょうけど返して頂かなくては…。」
1人静かな部屋でまといのいつもよりトーンの低い声が響いた。
凛刳の部屋を訪れて数日後、執事に命を発していた。
「…少し頼みたいことがあるの。」
「…?どうされましたか?」
「とある女を少し痛めつけて欲しいのだけれど…。」
まといはか細く、とても小さく言葉を紡いだ。
「とある女というのは…?」
「学生時代一緒にいた紅様のことは覚えておいででしょう?最近彼に纏わり付く女性がいらっしゃって紅様も困っておいでだから助けてあげたいの。」
「…承知致しました。しかし、痛めつけるとは具体的に何をすればよろしいのでしょうか?」
「ちょっと閉じ込めて見知らぬ殿方にでも穢されれば紅様には近づけないはずだわ。
それに紅様もその女性が他の男性の子を身篭ったことを知ったら興味が湧くこともないでしょうし。」
「それでは私はその女性の拉致および監禁と男の手配をしたらよろしいのですか?」
「いえ、男性の方はワタクシが用意致しますわ。女性を閉じ込められたら知らせなさい。」
「かしこまりました。」
執事は返答をすると踵を返して静かにまといの部屋を後にした。
「ふふふ、今に見てなさい。ワタクシの紅様を誘惑したこと、後悔させてあげますわ。」
まといは1人呟くと侍女を呼んで新しい紅茶を頼みつつ、不敵な笑みを浮かべていた。