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二人ぼっちの旅日記  作者: きりん
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旅道中の一幕

むかーしむかし、あるところに二人の少女がおりました。


二人が行く先は、緑豊かな草原が広がり、生命にあふれる植物が勢いよく成長していた。太陽は輝きを増し、快晴の青空がどこまでも広がっていた。その青空は澄み渡り、まるで絵画のような美しさを持っていた。

道は二人の前方に広がり、遥か彼方まで伸び果てしなく延びているように見えた。

周囲には色とりどりの野花が咲き乱れ、微風に揺れ、鳥たちが愉快な囀りを奏でながら飛び交い、その美しい鳴き声が時折耳に心地よく響いてきた。

 二人の足元には柔らかな草が広がり、歩くたびに足元から心地よい感触が伝わってきた。草原の風は優しく吹き抜け、髪をなびかせながら少女達に心地よい涼しさを与えてた。遠くには小さな川が見え、その透明な水面には太陽の光が反射してまるでダイヤモンドのようなきらめきを生み出していた。

そんなのどかな風景の中を進む少女達だったが・・・


「・・・お腹すいた~」


「・・・」


「歩き疲れた~」


「それもう数十回は言ってるよラキ」


「だってだってぇ」


 金色の髪を揺らしながら歩みを進める少女はそれはそれは可愛らしく数多の人々が思わず振り返るほどの美貌だが、今はその面影もなくなるほどやつれてフラフラと歩いていた。

えんじ色の膝丈ほどのドレスを身にまとい藍色のローブを羽織り背中に背負ったどでかいリュックと身の丈を超える大きさの黄金の大槌がガシャガシャと音を立てながら揺れている。かなりの重量に見えるがそれを背負った少女はどこにでもいる普通の女の子に見えた。


 ラキと呼ばれたその少女は自身が引っ張る木製のキャビンに乗るもう一人の少女に不満げにごねる。


「あともう少しで街に到着するよ。そうしたらご飯たらふく食べれるから頑張って」


 車椅子に座っている少女は銀色の髪をハーフアップの三つ編みにて黒いワンピースにえんじ色のカーディガンを羽織りキャビンの椅子に腰を下ろしていた。

整った顔立ちとカチューシャを頭に着け瞳を閉じながら手にしたパイプに火を入れ煙草をふかしていた。


「そんなの知ってるよ~でもお腹すいた喉乾いた歩き疲れた~ ターちゃんなんかないの~?」


「飲み物くらいならあるよ」


 ターちゃんと呼ばれた少女、タギツは車椅子の後ろに積んである荷物から水が入った革袋を取り出して前方に投げた。


「ありがとうタギツ。ゴクゴクゴク・・・ ぷは~!染み渡るッ!」


 水を一気に飲み干したラキは空になった革袋を投げ返してまた歩みを進めた。前の街を出発してから既に数日が経過しており休憩しながら来たとはいえ疲労がたまっていた。よくあることだがここ数日の間天候があまり良くなく本来1日で着くはずが天気が回復するのを待っていたため日程が大幅に狂ってしまっていた。

 そうした理由ですぐにでも次の街につきたかったラキはフラフラになりながらもキャビンを引っ張った。

「ターちゃん引っ張ってくださいよ~」

「無理だって知ってるでしょ足動かないのだから」

「ケチ~ 魔術でちょちょいとやってくれたらいいじゃない~ブーブー」

「いやだね。疲れる」

「ひどい!」

 

 ラキがよよよと悲しむフリをしていたがタギツはスルーしてのんびりとパイプに火を入れてふかした。 それからしばらくすると前方に石造りの城壁のようなものが見えてきた。おそらくそこが次の目的地の街だろう。

「お!!見えてきた~! まっててね私のご飯とお酒とベッド今迎えに行くからね!!」


「あれが目的地のようだね」


 二人が進むにつれ城壁はどんどん大きくなり顔を見上げないといけないくらい高くそびえたち、城壁はところどころ欠けておりコケが生えており隙間から雑草が生えていた。そして進行方向には木製の大きな両開きの扉があり片方が開いていた。

扉の所には二人の兵士が立っており軽く会釈してからその城壁の中に入っていった。街の風景はよくも悪くも普通の街で、街の人々がひっきりなしに行きかっていた。街に入ってから石畳の道を進んでいき遊んでいる子どもたちや、食料を抱えている女性の方、仕入れた品物を荷馬車に詰める商人とすれ違いながら二人は街を眺めつつ進んでいった。


「ここも活気があっていいいね~ なんだかいい匂いもするし、あ~早く食べたい飲みたい騒ぎたいッ!」


 この後食するご馳走を夢想してにやけ顔でふへへと笑いながらラキは冒険者ギルドの前までやってきた。冒険者ギルドとはありとあらゆる依頼をこなして報酬を得て生活をする人々のために存在する互助組織で世界各国にこのギルドが存在している。冒険者ギルドに登録していると依頼を受けることが可能なうえに冒険者ギルドで格安で宿泊することも可能でさらには食事や酒精をとることもできる。そういったことから二人は旅をするにあたっての資金を得るために冒険者ギルドで依頼をして食い扶持をつないでいる。

 タギツにはキャビンの中で待ってもらいラキが冒険者ギルドのドアを開けると中にいる人たちから一斉に視線を浴びた。中にいたのは体に無数の傷跡を持った屈強な男たちや全身鎧を来た人たち。あとは冒険者ギルドに依頼しに来たと思わしき小太りの男や魔法使いと思しき女性などが鋭い視線でラキを値踏みするように見つめた。

「誰だ?」「見ない顔だな・・・」「よそ者か?」「あらかわいい」「確かにいい面してんな」「というか何あの大槌」「戦士か?あの体格で?」「なにしにきたんだ?」

 ひそひそと話をする声をスルーしてラキは奥にある受付カウンターへ向かった。受付カウンターにはモフモフの白と赤の毛でおおわれくりっとした瞳、とても目立つ特徴的な二つのうさ耳が生えており片方にピアスをしていた。他のギルド職員と同じく制服に身をつつみ手元の書類に目を通していた。

 ああいった獣と人を合わせたような種族を獣人族と呼びその中にも様々な種族が存在する。更に同一の種族の中にも人獣寄りの個体と亜人寄りの個体が存在していたりする。目の前の獣人はどうやら後者のようだ。

 ラキの存在に気が付いたのか書類から目を外しそれから営業スマイルをはりつけて応対した。

「いらっしゃいませ冒険者ギルドへようこそ。ご依頼ですか?」


「いえ。この街に始めてきたので宿泊先がどこなのかと何かよさそうな依頼が出てないかと思いまして」


「あ、冒険者の方でしたか、失礼しました。 えーと、宿泊先の選定と依頼がないかの確認でしたね。少々お待ちください」


 そういって受付のうさ耳の獣人は奥にひっこみ少ししたあと手にした一枚の用紙をラキに見せてきた。どうやらこの街の地図らしい。


「宿屋はこことここ。 あと・・・ここにもあります。 こっちの宿屋はとてもサービスの質が高いですがその分料金も割高になってますね。ああもちろんここのギルドの宿をご利用されても構いません。 依頼に関しましてはあそこのボードに張り出されております依頼から選んでください。 それとご存知かとは思いますが等級が釣り合わない依頼は受けられませんのでご了承ください」


「あ、はーい。わかりました」


 地図に乗ってい宿屋をメモして今日はどこの宿屋に泊まろうかウキウキ気分でいるとギルド内にいた冒険者の男が絡んできた。


「よーよそ者。おめーどっから来たんだ? ここはな魔物との戦いをやりまくってる血の気の多いゴロツキ連中ばかりのギルドでな。おめーみてーなへなへな嬢ちゃんが一人でうろうろしてたらあっという間に襲われちまうんだよ。こんなふうになッ!」


 突然男は丸太のような太い腕を振りかざし思いっきり殴り掛かった。 ゴロツキとはいえいっぱしの冒険者。殴られたらただでは済まない ・・・が


「?どうしたのですか? あ、もしかして力比べですか! 力比べですね!? い~ですね力比べこれぞ荒くれ者の冒険者ギルドって感じです!」


「あ?なんだ?」


振りぬいた拳は見事にラキのお腹にクリーンヒットした。衝撃が広がり、その一瞬、空気が震えるような感触が手に伝わった。しかし、驚くべきことに、ラキはまるで何事もなかったかのように微動だにせず、ただ立ち尽くしていた。

ラキはニコニコ笑顔とキラキラ輝く瞳で拳の一撃を受けたことを一切気にしていなかった。


「ささ! 遠慮せずにもっとぶん殴ってみてください!力の限り思いっきりおねがいします!」


「な、なに言ってやがるこのガキ!」


「え?だって今のはほんの小手調べ程度の力ですよね?まさかあの程度の貧弱な力しか出せないなんてことはないですもんね。私冒険者の方とのケンカもギルドの華と思ってるタイプですので遠慮せず来てください!」


「意味わからん言ってんじゃねえぞ。 そんなにぶん殴られてえならお望み通り殴り倒してやんよ!!」


 そういうと男は持てる限りの力を振り絞って殴りまくり蹴りまくるが目の前の少女は倒れるどころかよろけることすらなく、一歩動かすことができない。まるでとんでもなく硬い大きな岩の塊を相手にしているような・・・そんな錯覚すら覚える感覚に男は段々と体力の消耗からくる息切れと不安と恐怖からくる冷や汗をながした。


「どうしたんですか? もっともっと打ち込んできてくださいよ!ほらほら!こないならこっちから行きますよ?」


「ヒッ くっ来るな!」


 穢れなき満面の笑みを浮かべながらずかずかと歩いていき、男の前まで歩み寄ると両手を広げ、目をキラキラさせながら無言の催促を行った。男は恐怖に耐えきれず思わず腰の剣を抜くと悲鳴のような叫び声をあげながら手にした剣を構えた


「おいよせ!やめろ!」「流石にそれはシャレになんねぞ!」「誰かそいつを止めろ!」


 周りの冒険者たちもさすがに剣で斬りつけたら少女が怪我をしてしまうと思い慌てて止めようとしたが、それよりにも早く男が手にした剣を振り下ろした。 怒号と悲鳴が入り混じった声が響き渡り思わず目を逸らしたものもいた。後に残るのは先ほどまでそこにいたいたいけな少女が血まみれで倒れている姿・・・と誰もが想像した。—が


「おお!剣もなかなかいいもの使ってますね~。つまりこの冒険者ギルドは活気にあふれているタイプのギルドなのですね。ふむふむ・・これはいい仕事がありそうですね♪」


「え、あ・・・え・・・」


 誰もかれもが状況を把握できずに呆然と立ち尽くしていた。本来目の前には血だまりに倒れ伏す少女の光景があるはずなのに・・・ 目の前にいる少女は何事もなかったかのようにその場に立っていた。振り下ろされた剣は確かに少女に少女にあたっていた。しかし当たった瞬間そのまま止まった。まるで巨岩を斬ろうとして斬れずに止まったかのように全く刃が入っていなかった。 そんなあり得ない光景を目の当たりにした冒険者たちの誰もが黙り込んでいると


「あなたたち何を騒いでいるの?」


 よく響き渡る女性の声とともにギルドの奥の方から山吹色のウェーブがかった長い髪に青と赤のオッドアイ、整った顔立ちに他のギルド職員と同じ制服をきている女性が現れた。よく見ると他の職員と違い金色の小さな鎖と正八角形の図形が描かれたバッジを身に着けていた。 『ギルドマスター』 冒険者ギルドには必ずギルドマスターと呼ばれるそのギルドを束ねている人がいる。そしてその人物は目の前の女性のように金色のバッジと鎖を身に着けているのだ。

 そして往々にしてギルドマスターはあまたの冒険者たちに尊敬されている存在であり、同時に畏怖される存在でもある。特に荒くれ者が多い冒険者ギルドの場合は特にその傾向が強い。なにせ冒険者ギルドのギルドマスターは現役を退いた元冒険者がなることが多い。しかも現役時代数々の功績を残した猛者がだ。

 この冒険者ギルドのギルドマスターも例にもれず現役時代は超一流の冒険者であった。普段はギルドの奥に引っ込んでおりこうして表に出てくることはない彼女が現れたことにギルド内が騒然となった。


「お前らいつまで呆けてるんだ!!さっさと散れ!」

 

 大きな声で怒鳴られた冒険者たちはすくみ上ってそそくさと退散していき、ギルドマスターはラキを見定めるようにみた。


「お前さんここに来るのはじめてかい?一体なにがあったんだい? ってそこで呆けてるアホ見れば大体察しはつくけどね。どうせお前さんに絡んできたんだろう?」


「あ、まーそですね。私は全然一向に構わなかったのですが」


「こっちが構うんだよ。うちは血の気の多い荒くれ者ばかりだからどつきあうのは目こぼししてるけど、得物なしでやることってなってる。それをやっちまうと殺す殺さないになっちまうからね。手前勝手なのはわかっているが今回の一件、この冒険者の活動停止ってことで手打ちにしてほしいんだが了承してくれないだろうか?」


「ええ!?私は全然大丈夫ですよ?処分下さなくても不平不満なんかありません!」


「だがそうすると剣で斬りかかってなにもお咎めなしという前例が出来ちまう。そうなると見境なく剣やら斧やら持ちだしてギルド内は血まみれになる。すまないがこれは譲るわけにはいかないんだ」


「そうですか。わかりました」


「そういってもらえて助かる。 ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。私はイリス。ここのギルドマスターを務めているものだ」


「では私のことはラキと呼んでください。 ギルドマスターさん。」


「!もしやお前さん『黄金のラキ』かい?」


「およ?私のこと知ってるんですか?」


「そりゃ知ってるさ。 『黄金のラキ』。凄まじい量の飯と酒を食べ尽くし、一度依頼にでるとその黄金の大槌であらゆる魔物を狩り、全身を返り血で染め魔物を引きずりながら現れる。喧嘩を売ったものはことごとく殴り殺され血溜まりに沈め、斬っても叩いても燃やしても死なない上に笑いながら戦ってるイカれたバケモノだってね。それにしてもこんな可愛らしい女のことはね。てっきりもっと筋骨隆々の男顔負けの女傑かと思ったんだが」


「誰ですかそれ?」


「いやお前さんのことだよ」


「私そんな怪物じゃないですよ!?大体私は人を殴り殺したりしませんし魔物引きずって現れたりしませんよ!どこの狂戦士ですかそれ!」


「いや、お前さん以外誰がいるんだよ」


 ボケてんのか?と半眼で言ってくるイリスにラキは不満げに言い返そうとしたがこれ以上問答しても意味がないためためいきをついて抗議をやめた。


「そんでお前さんはこれからどうするんだ?もう時間が時間だからなどこか宿にとまるんだろうがもう決めたのかい?」


「いえ、まだですけれど」


「それならうちのギルドの宿泊施設を使うといい。今回の騒動の詫びに宿泊代をもつよ」


「ほんとですか!?やったー!じゃあ二人分でお願いします!」


「ん? もう一人いるのか。わかった。 じゃあ二人分手配しておくよ」


「ありがとうございます!」

 

 外に出たラキはキャビンでパイプをふかしているタギツを木製の車椅子に乗せるとイリスが用意してくれた部屋に入ってった。部屋の中は簡素な造りながら清潔に保たれており、そこらの宿屋よりも質がよかった。木製ながらしっかりとした作りのテーブルとイスがあり、さらにはベッドがあった。 ギルドの宿屋となると大抵貧乏冒険者のために安宿となっているためどうしても宿としての質が下がりがちだが、ここのギルドはとても質が良かった。後で聞いた話だがなんでもこのギルドは魔物を多く討伐する冒険者たちが多数所属しているギルドという特性上この街を魔物から守っているという性質がある

 さらには魔物だけでなく人間による侵略という点でも防衛のための戦力として冒険者ギルドの存在は欠かすことができないという。そのためこの冒険者ギルドには多くの依頼と多額の依頼料が集まるそうだ。結果的にいい設備が整ったギルドが出来上がったとのこと。

 その後、部屋に荷物を置いてきた二人は1階の受付嬢がいたカウンターの横にある食堂に向かった。タギツの車椅子を押すラキを冒険者たちは遠巻きに話しかけたそうにしていたが先ほどの光景とギルドマスターににらまれたことから時折こちらをちらちらと見るだけで話しかけてこない。


「・・・・・・なんだか視線を感じるのだけれどラキ。君なにしたの?」


「う~ん特になにもしてないんだけどなぁ。 ただ私と遊びたそうにしてた冒険者さんと遊ぼうとしただけなのに」


 ラキは不本意だとでも言いたげに愚痴をこぼしながら食事を注文した。


「またいつもの暴力耐久タイムアタックでもしてたんだねわかったわ」


「違うよ!そんなことしたって面白くないじゃない! 私は純粋に冒険者同士の親交を深めようと思っただけ!別に暴力なんて振るわれてないよ~」


「じゃあなんてあんなに周りの人たち怯えているのさ。完全にバケモノを見る目になってるんだけど」


「う~んなんでなのでしょうか。私意外と好かれるタイプの人間だと自負してたんですけどモグモグ」


 皿に盛られた大量の料理を凄まじい勢いで食べていくその様を見ながらタギツは手に持ったパイプをふかしつつ思った。ラキは確かに天真爛漫元気っこでとても人ありがいいし、誰かが困っていたら首突っ込んででも助ける娘なので大体は好かれるが全員ではない。それこそ嫉妬や恐怖などの視線を向けるものも少なくはなない。大方今回もラキの常識から外れた圧倒的な頑強さに周りの冒険者がビビッてトラブルになったんだろうけれど………。


「というよりもラキ。いつもながらそんなに食べて大丈夫なの? それとその隣にある樽はなに?」


「だいじょうぶれふよ。あほこれはわいんれふモグモグ…」


「また樽でワイン飲むつもりなんだね。ほんと暴飲食の権化だね」


「えへへ、それほどでも~」


「褒めてない」


「そんなことよりもターちゃんも食べましょうよ。この羊肉のワイン蒸しとか絶品ですよ!この街の冒険者ギルドはご飯が絶品と聞いてからここに来るのがとても楽しみでしたけど、噂に違わぬおいしさですよ。こちらの貝のバターソテーなんかも程よく塩味が効いててとてもいいです」


 おいしそうに食べるラキをみてさすがに少し空腹になったタギツは食堂のカウンターに向かって木札を見た。ラキが片っ端から注文していたが全ては注文しておらずまだ残ってるメニューもあった。はてさてどの料理にしようかと考えていると


「こんばんわ冒険者さん……であってるわよね? さっき物凄い量を注文していった娘のお連れさんでしょう?」


 話しかけてきたのは料理を作ってるらしい人族の女性だった。他にも厨房の奥の方でせわしなく料理を作ってる女性たちがいたがその中でも最年長らしいその女性は仕事をひと段落させたのかいい汗をかきながら快活な声で言った。


「はい。そうです」


「ほんとあの娘よく食べるわよね。この食堂には毎日たくさんの人たちが集まってる来るからそれはそれは大量に料理を作ってるのだけれど、今さっきの注文で一気に材料が無くなったわ」


「あ~すみません。ご迷惑おかけしてしまい」


「いいのよ!こんなにもたくさんの料理を食べてもらえるのは料理人冥利に尽きるってもんさ。それにここ最近は冒険者たちも少しピリついてて正直空気が重かったのよ。そこにあの娘がやってきてあんなにもおいしそうに料理食べてくれてるんだもの感謝してるんだよ」


「そうでしたか」


 向こうの方で既に8割も食べきっていたラキを見ながらタギツは呟くと女性に火酒とそれに合うツマミを注文した。料理と酒を手にして戻ったタギツはこの後の予定を話しはじめた。


向こうの方をみると既に全体の8割も食べきっていた。タギツはラキの目の前に広がる残り少ない料理を垣間見ながら、心の中でため息をつきながら女性に注文した。


「すみません、お願いですが、火酒とそれに合うツマミを注文していただけますか?」


しばらくして、女性は注文した料理と酒をタギツのもとに持ってきた。感謝の意を込めて頭を下げ、火酒とツマミをもってラキの座る席に戻り

「さて、この後の予定について話しましょうか」とタギツは言いながら、火酒をお猪口に注いだ。


「この街の周辺はどうやら魔物が多く生息しているみたいだけどどうする?討伐任務にする?それとも街の中でできる依頼にする?今のところお金には少し余裕がありますからどちらでもいいのだけれど」


「ん―特にお金に困っていないから中の依頼にしようかな~。明日にでも仕事が何かないか探してみよっか!あ、、でも魔物討伐とか魔物討伐とか魔物討伐とかも楽しそう・・・・」


「欲望が駄々洩れになってるぞ?」


 やれやれといった表情でツマミに出されたイカゲソの干物を噛みしめていると


 バン——ッ!!


 勢いよくギルドの扉が開かれて冒険者らしき一行が慌てた様子でなだれ込んできた。


「た、大変だ!魔物が現れやがった!」


 一人が大声で叫ぶと、ギルド内の冒険者たちが駆けつけるために一斉に動き始めた。ギルドホールにはさまざまな冒険者が集まりだし、緊張感が漂っていた。

冒険者たちが一行の方に近づくと、その姿に驚愕が広がった。彼らは全身傷だらけで、表面的な傷だけでなく、深刻な切り傷や打撲傷が至る所に広がっていた。彼らの装備もぼろぼろで、壊れた武器や折れた盾が見受けられた。疲労困憊の表情とともに、彼らの体からは血がにじんでいる光景が目立った。

その様子を見ると、どうみてもただ事ではない状況であることが明白だった。冒険者たちが集まる中、不安と緊張が空気を支配し、誰もが彼らに何が起きたのかを知りたがっていた。

 

「どうしたってんだい。そんな傷だらけになってあんたららしくない」


「あ、ギルマス! それがサラマンダーが出てきやがったんだ!」


「ん?サラマンダーは確かに強い魔物だがお前らなら十分討伐できるだろ。過去に何度も倒したじゃないか」


「1匹2匹じゃねえんだよ!サラマンダーの群れなんだよ!50匹は下らねえ!」


「!?」


 その言葉に今度こそギルドの中が騒然とした。 サラマンダーは体長4mのどでかい火を吹くトカゲといった魔物でその外皮は鱗に魔物られていて討伐するのも容易ではない。だが基本的に単独行動を基本としている生態なのでパーティで事に当たれば問題なく狩ることができる(それでも初心者にはとても手に負えないが)のでそこまで慌てることはない——単体なら。

 魔物はそれ単体がたとえ弱くても群れをなした途端、討伐にかかる労力と必要とされる戦力。そして危険度があり得ないくらい跳ね上がる。過去にもゴブリンの群れが現れたことなどもあったがその時でさえ約100人の冒険者が束になって隊伍を組んで連携してやっと完全討伐することができたほどだ。しかもその時ですら12名の犠牲が出た。

 今回の相手は単体でも危険なサラマンダーの群れ。しかも数が50は下らないとなるととてもこの冒険者ギルドの戦力だけでは勝ちようがない。ギルドの中に動揺が広がり始め誰もかれもがどうしようもない絶望的な状況に呆然としてると


「お前たち狼狽えてんじゃないよ!! ここでビビったって状況は変わらない。まずは今街にいる冒険者たちをできるだけ招集せよ。それと街の領主に騎士団の出動を要請、街の住民を中心街に避難。他の都市への救援要請だ。急げ!!」


「はっ はい!」


 ギルド職員がイリスの指示に弾かれるように慌てて行動し始めた。冒険者たちも先ほどまでの雰囲気とは打って変わって魔物討伐の準備を一斉に始めた。一瞬動揺が広がりはしたが日頃から魔物を討伐ている冒険者が多くいるのかすぐに冷静さを取り戻し自分が何をすべきか考え行動していた。


「なんだかとんでもないタイミングできっちゃったねターちゃん」


「ほんとそうだね。……逃げるか」


「もう!面倒だな~とか思わないの!」


「え~・・・・・だってねえ。サラマンダーの群れ『程度』だよ?」


「だとしてもだよ。みんながみんな私たちみたいに強くないんだから戦わないと!それに—— ・・・・もしここで見捨てたら冒険者さんたちも街のみんなも死んじゃう」


「・・・・・それもそうね。ま、どうするかはラキが決めていいよ。僕は戦力にはならないだろうしね」


「ターちゃん確かこの前新しい魔道具買わなかったっけ」


「何のことかよくわからない」


「たしか魔導式長距離狙撃コンパウンドボウだっけ?」


「何それそんな魔道具あるの?」


「確か超小型化が可能で収納魔法使わなくてもいいんだよね?……ラキちょっと抱きついてもいいかな?」


「・・・」


「いいかな?」


 満面の笑みを浮かべてじりじりと距離を詰めてくるラキにすんごい嫌そうな顔してハァとため息をついたタギツは「めんどい」といいながらもカーディガンの内ポケットから長方形の箱を取り出しそれに魔力を込めた。箱の模様に沿って光だし形状が弓矢の形へと変化した。


「僕はあくまでもバックアップだからね」


「わかってるって! それじゃさっそく行きましょう」


 そういうとラキは意気揚々と車椅子を押して夜の街へと繰り出した。街はまだ情報が伝達されていないのか人々の混乱はなかった。だがそれも時間の問題。何よりもすぐに城壁の外に出ないと門が締められかねないのですぐに門へと向かった。


「さ~てもうすぐ外に出られ・・・ってあれ!? 門が閉まってる!」


「そりゃそうだよ。冒険者たちだってバカじゃない。サラマンダーの群れが現れたのなら門をくぐったときに門番にそのことを伝えているはずだからね」


「それじゃあどうやって外に出よう・・・う~ん素直に門番に外に出て魔物を討伐しに行くって言うべきかな。そうだよ!きっとわかって——」


「相手はサラマンダーの群れだよ。たった二人だけで群れ倒してきますって言ったって自殺行為だとしか思われない」


「そんな~」


「それに門を開けたら魔物がこの街に入りかねないから開けたがらないでしょう。一度外に出したら門を閉めないといけない。かといって私たち二人がすぐ戻れるよう門を開けてたら魔物に入られる。なら体制が整うまで門を開けるという選択肢はない」


「それじゃあどうやって城壁の外に出ればいいんですか! これじゃあ戦えないよ~」


 車椅子を押しながらうなだれるラキにタギツはニヤリっと笑いながら顔を上に向けてラキを見た。


「そんなの簡単じゃないか。城壁の一部に穴開ければいいんだよ」


「・・・えぇ」


「なに?文句があるわけ?」


「いやいやいや城壁壊しちゃ怒られちゃうよ!壊した城壁の穴から魔物が入って来ちゃうよ!やっぱりここは穏便に門番さんに言いにいこうよ~」


「そんな暇はない。いいから人気のない所の城壁に穴をあけるの。その大槌『ミョルミーベル』なら間違いなくぶち抜ける」


「うぅ~っ・・・わかったよ!後で一緒に謝ってよ!?」


 二人は街の中を急ぎ足で移動して街の端まで来た。高くそびえたつ城壁に沿って歩いていき周りに人がいないことを確認するとラキは背負っていた黄金の大槌を手に取った。身の丈とほぼ同じ大きさの人が振るうにはあまりにも大き過ぎそしてありとあらゆる全てのものを破砕できそうなそんな重厚な威圧感と雰囲気がその武器からは出ていた。


「それじゃあ穴をあけるよ! せーの!ラキちゃんアタァアアアアアアク‼」


 どがぁあああああああああああんんんんん。 物凄い轟音とともにそこには大きな穴が開いた。ちょうど人ひとりが通れるくらいの大きさだが穴の向こう側に城壁の外側の草原が見える。


「さ、いくよラキ」


「ううう~ごめんなさい街の皆さん! 後で修繕しますから!」


 呻き声のような泣き言を言いながらラキはそそくさと進んでいくタギツの後を追って外へ出。城壁の中はまだ街の明かりがあったためそこそこ明るかったが、城壁の外はとても暗かった。空に浮かぶ星々と月明りで何とか見えるもののそれでも遠くを見渡すことができないほど夜も更けていた。本来この中から魔物を見つけるのは困難だが、今回はすぐに分かった。 


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ———。 遠くから地鳴りのような音とかすかに見えるオレンジ色の光が地平線に沿うように横一直線に伸びていた。それがサラマンダーの群れであるのは間違いなかった。


「それじゃあいつも通り探知魔術と望遠魔術で観測してそれをこの通信用魔道具で教えるから。ラキは片っ端から片付けること」


「あいあいさー!!」


 そういうとラキは手に持ったミョルミーベルをしっかりと握りしめて膝をぐっと曲げると空気が破裂したかのような音と共に物凄い速さでサラマンダーの群れに向かって走っていった。それを見送ったタギツは手に持った魔法石を握りしめてから探知魔術を起動した。



 一方その頃、冒険者ギルドの前に広がる広場には既に完全武装した冒険者達が緊張した面持ちでそれぞれが装備品や仲間との連携の確認などの話をしており、さらに街の領主の騎士団と街に住んでいる市民たちから有志で集まった人員がその場にいた。人数にして約300人この街ができて以来数えるほどしかない大規模な部隊が集まった。だがそれでもその場にいる誰もが硬い表情をしていた。

 それもそうで、サラマンダーの群れの討伐などほぼ行われた例がない。かき集められるだけの戦力をかき集めたが正直これでも確実に勝てるとは言いきれないからだ。多大な犠牲を覚悟しなければならず中には最後の別れを惜しむ声すら聞こえてくる。

 そんな中イリスも現役時代使っていた長剣を引っ張り出し戦の準備を整えていた。


「参集した冒険者たちは各々の特性を考慮してパーティを組み全員整列。ギルド職員は冒険者と騎士団との連絡調整を行え! 街の皆さんは討ち漏らしたサラマンダーの討伐をお願いします」


「ギルドマスター!参集した冒険者約100人20パーティー編成し終えました」


「了解した。準備が整い次第私が指揮をする。各自にそのように伝達」


「はい!」


 イリスは指示を出しつつどうやってこの状況を乗り切るかを考えた。冒険者たちや街の住人の手前平静を装っているがその実内心穏やかではなった。今回の大規模討伐作戦は確実に大量の犠牲が伴う上に確実に討伐しきれる保証が全くと言っていいほどないからだ。いくら魔物を相手にしている冒険者達が大勢いる冒険者ギルドといえど冒険者の大半はここまでの戦いを経験したことがない。


「せめてティア3以上がいてくれたら確実に勝てるのに・・・」


 『ティア』 冒険者が依頼をこなす際、依頼内容と依頼を受ける冒険者の実力が乖離してしまうと冒険者が無駄に多く死傷してしまったり、依頼失敗が多発して依頼主との信用問題に発展しかねない。そういったことを防ぐために設けられたのがこのティアシステムと言われる制度だ。その実力に応じてティア1~ティア6まで分けられている。トップティアも制度上は存在するがとある条件を満たさないと成れないため事実上存在していないとされている。初心者はティア6から始まり順当にいけばティア4まで行くことはできる。更にがんばればティア3になるものもちらほら出てくる。

 だがティア2から一気になれる者が少なる。理由はティア2になるための必須条件が厳しすぎるためだ。魔物を5000匹討伐するか依頼を1万回以上達成するかどちらかを達成しないとティア2になれない。そのためこのギルドにはティア2以上はいない。

 イリスはたらればを夢想したがすぐに思考を切り替えた


「とにかく今は魔物を最大効率で殲滅する作戦を考えないと。ルル。悪いんだけどあなたの召喚獣で魔物がどの辺にいるか偵察してきてもらえないかしら」


「はい。わかりました!」


 イリスに偵察を頼まれたのはギルドの受付をしてた兎人族の娘だった。彼女は召喚術士でありいくつかの召喚獣を使役している。その内の一体に鳥の召喚獣を使役して視覚共有で上空から広く索敵することができるのだ。

 ルルは目の前に召喚用の魔方陣を展開すると大きな怪鳥を召喚し、空へ飛ばした。 少しの間待機してからルルは視覚共有を使いサラマンダーの群れの様子を確認した。


「どう?サラマンダーの群れは今どのあたりまで来てる?」


「・・・・・・・」


「ルル?」


「あ、あのギルドマスター・・・ わわ私夢でも見てるのでしょうか。 ささ・・サラマンダーの群れがもうすでに半壊してます」


「え!?」


「しかも女の子がたった一人でサラマンダーの群れを倒しています・・・一方的に」


「ッ!?」


 意味が分からなかった。まずサラマンダーは普通パーティで撃退するような魔物だ。体長もそうだが何より力が強い上に鱗に覆われていて刃が通りにくい、しかも火を吐く。厄介極まりない魔物なのだ。それが群れをなしておしよせてくるのだからちょっとした人間と魔物の戦争になる。それをたった一人で撃破するなんてにわかに信じ難い。しかも女の子が倒しているとはどういうこと?

 イリスが困惑していると新たに気がついたルルがさらに追加の情報をもたらした


「あ、もう一人います! サラマンダーの群れから遠く離れた場所に・・・あれは車椅子に乗った女の子?何やら弓のようなものを持っていますが・・・ええ!? サラマンダーを弓矢で撃ち抜いた!?」


「ルル落ち落ち着きなさい。もう少し詳細に」


「は、はい。えーとサラマンダーと思わしき群れの中心で黄金の大槌を持った女の子が次々とサラマンダーを屠っています!しかもすべての個体を一撃で絶命している模様」


「サラマンダーの外皮は鱗に覆われていて打撃なんてほとんど効かないっていうのに一撃で!?」


「ほ、ほかにもサラマンダーが尻尾で叩き潰そうとしてもそれを片手で受け止めてしまってます。あ、サラマンダーが吐いた火を大槌の風圧で消し飛ばしました!」


 次々と上がってくる報告に頭が痛くなってきた。あまりにも出鱈目すぎる、あまりにも非現実的する。だが現にそれが行われていると言っているのだから信じるほかない。


「イカれてる。そんな異常な戦いをしてるのはどこの誰なの?」


「ラキさんとそのお連れの方です」


 ラキ・・って確かさきほど冒険者ギルドでトラブルに巻き込まれていた少女だったか。え、待て待てあの娘が戦ってるのか?確かに初めて会った時からなんか異様な威圧感を感じたが、あいつらがサラマンダーを一方的に倒していってるっていうのか?にわかに信じ難がった。というかそもそもなんで城壁の外にいるんだ。門番はなにをしている。


「ギルドマスター!!」


「今度は何だ!」


「大変です!街の東側の城壁に穴が開いてます!何者かが破壊した模様!」


 天を仰ぎたくなった。ほぼ間違いなくあいつらがそこからでて外で暴れてるんだ。


「わかった。大丈夫多分犯人に心当たりあるから」


 イリスは編成した冒険者たちを仰ぎ見てから一斉に号令をかけた。色々と言いたいことがあるが兎にも角にもまずはサラマンダーの群れを討伐することが先だ。



 一方その頃


「はぁああああああああああああああああああ!!」


 グシャッ ベシャッ ——。

 肉がつぶれ骨が砕け散る音とともに風を切る音が響き渡った。あたり一面が真っ赤な鮮血の血だまりとサラマンダーだったものと思わしきぐちゃぐちゃになった肉片が一面に広がり地獄絵図と化していた。その光景をつくりだしていた張本人ラキは手に持ったミョルミーベルを遠心力に任せて回しながら1匹また1匹とサラマンダーを肉塊に変えていった。振り下ろされた瞬間つぶれすぐさま次のターゲットに一気にとびかかり叩き潰し時にサラマンダーの尾を片手で掴み上空へぶん投げ、

落ちてくるタイミングに合わせてミョルミーベルを振りぬいた。目視ができないほど高く打ち上げられたサラマンダーは地面に叩きつけられた衝撃で絶命した。 その戦いぶりははたから見ると狂戦士そのものだった。


「せいや! ふんぬ! とりゃ! うりゃぁああああ! これで最後!」


 ドゴォオンンンンンッ——


 最後の一匹を首尾よく倒し、すべてのサラマンダーを討伐した。手に持ったミョルミーベルを地面に突き立てふぅーと一息ついた


『お疲れ~。とりあえず索敵範囲内のサラマンダーの群れは全部討伐完了したよ~』


「そうですか?ちょっと物足りない気もするけどまあ久しぶりに運動できたので楽しかった!」


『それはよかったね―。とりあえず討伐完了したのだからそのまま戻ってきて。さっさと帰らないと冒険者ギルドの連中に見られる』


「・・・みられると不味いの?」


『いや、不味いに決まってるでしょう。城壁ぶち抜いて勝手に討伐しちゃってるんだから。あとで根掘り葉掘り聞かれるよ間違いなくね』


「ええ!?じゃじゃあどうしたらいいんでしょう!?」


『そんなの決ってるでしょう』


「もしかして・・・」


『逃げる』


「なるほど!じゃあすぐにそっちに戻るね!荷物まとめてレッツゴー!」


 通信魔道具での会話を終えたタギツは戻ってくるまでのあいだ物思いに耽った。そもそもなんでサラマンダーの群れが突然現れたのか。サラマンダーは群れを成して行動したりはしないし、ましては集団で人の街に襲いかかってきたりはしないのだ。

 そもそもが臆病な性格なので自身に危険が訪れない限り暴れたりはしないのだ。たまにはぐれサラマンダーが街の近郊に現れるといった事例が一般的なのだ。それなのに今回は大量のサラマンダーが群れをなして一斉に襲ってきたのだ。どう考えてもおかしい。いや——


「街に襲撃をかけたという前提がそもそも違うのか?群れでこの街に来たのではない。とすると考えられるのは生息域にて何らかの問題が発生してエサが無くなったか、あるいは——」


「縄張りにもっと強力な何かが現れて生息域を追い出されたか・・・だな。」


「あ・・・」


 タギツの呟きにかぶせるように言い放ったのは他でもないイリスだった。 冒険者らしい鈍い色をした胸当てと籠手をつけて腰にはバスターソードを下げている姿は堂々たる歴戦の冒険者の姿だった。放つ威圧感はベテランの冒険者でもいきが詰まりそうなほどだったが、タギツはどこ吹く風といった表情で手にしたパイプに火を入れた。対するイリスはにこにこの笑顔で物凄いプレッシャーをタギツに掛けた


「さて、こんな場所に一人で何をしているのかな?まさかこんな時間にこんな場所に一人で散歩しに来たわけじゃないよねえ?。 もう一人のあの娘はどうした? サラマンダーの群れにでも向かって行ったのか?」


「何を言ってるのかわからないなぁ。 僕は一人夜風に当たりたくてここにいるだけだよ」


「ほー?たった一人で?サラマンダーの群れが来るかもしれない場所にかい?ずいぶんと肝っ玉がでかいんだね?」


「いやいやそれほどでも~ ではでは僕はこの辺で—」


「そのまま行かすわけないだろ逃げんな」


「チッ」


「こいつ舌打ちしやがった!?」


 がっしり車椅子の取っ手を掴まれ逃げられなくなったタギツは溜め息をつきながら仕方なく状況を説明した。話を聞いたイリスは信じられないといった表情でしかし真剣に話を聞き入った。すべての話を聞き終えたイリスはしばらく黙り込んでからため息をついて頭をガシガシかきながら魔道具を取り出し冒険者たちに指示を出した。


「とりあえずサラマンダーの群れの残骸回収は他の冒険者たちに任せたから、お前さんは連れが戻ってからとりあえず待機だ。事情があったにせよ城壁の一部ぶち抜いてんだからな。どうするか私だけで判断するわけにもいかないから一旦保留だ」


「はいはい。・・・やっぱりさっさと逃げればよかった」


「なんか言ったか?」


「いえ、別になにも」


「ふん—。ところで今回のサラマンダーの群れだがお前さんはどうしてこんなことが起こったのだと思う?」


「・・・さっき君が言った通りだと予測するよ。あの数のサラマンダーの群れがなんの理由もなく人の街まで来るわけがない。となれば生息域を追い出されたと考えるのが妥当だね。—もう少し正確に言えば生息域から逃げてきたというべきだけどね」


「追い出されたのではなく逃げてきた?」


「そう。そして逃げた理由はおそらく捕食されるからでしょうね。つまりサラマンダーを捕食するような存在が彼らの住処に現れ、命からがら逃げてきたといったところかな」


「!?仮にもしそれが本当ならその捕食している存在がここに来る可能性があるじゃない!?」


「まあ、あるだろうね。僕としてはそんなの相手にしたくないけど」


「それも含めて後で対策を立てないと。それはともかくとして、さっきから気になってたんだがお前さんの連れって何者なんだ?それにお前さんもだ。とてつもない実力を持ってるのはわかるんだが、まさかここまでとは聞いてないぞ?」


「そりゃそうだよ。ラキはティア1だからね。圧倒的な力でおよそあらゆる魔物を討伐することができるからね。今までだってたくさんの魔物を討伐してきた」


「ッ—‼ やはりティア1なのか。数十年ぶりにその領域に到達したものに会ったよ」


「珍しいからね。その領域に到達するものは」


「お前さんは?」


「ん?」


「お前さんはどの階梯にいるんだい?お前さんだってただ者じゃないんだろう?」


「私はしがない冒険者ですよ。ティア3のね」


「ティア3はしがないって言わんぞ。十分ベテランの領域だからな」


「ま、その話は今はしなくてもいいでしょ。—どうやら緊急事態みたいだし」


 何を言ってると言いかけたイリスの目の前の草原でどでかい爆発が起きた。しかも1度ではなく何度も場所を変えながら爆風と轟音を轟かせながら地面を揺らした。地鳴りのような轟音があたり一帯に響き渡るが遠すぎて何が起きているかわからない。急いで向かおうとしたイリスだったがそれを止めたのはタギツだった。


「まって。ラキの邪魔になるからここで待機していて」


「そんなわけにはいかない!私も元ととはいえ冒険者の端くれだ。魔物がいるなら向かわなきゃならない。人々を護るのが冒険者の役割であり同時にギルドマスターの役目でもある!」


「わかってるよ。でも僕としてはあの場にはいかないほうがいい。望遠魔術で視認したけど、あれは・・・ネームドだね」


 もう何度目かわからないほど今日は驚きの連続だったが本日最大級の愕然とした気持ちになった。魔物にはその危険度に応じて等級が定められている。これは冒険者にティア制度があるのと同じで魔物を等級ごとに分類しないと冒険者が無理に討伐に向かって死亡してしまうからだ。一番低い等級の5等級から4等級3等級と上がっていく。

 もちろん等級が低いからと言って安全というわけではない。今回のサラマンダーがいい例だ。サラマンダーは4等級の魔物なので通常は普通の冒険者でもパーティーを組めば討伐は可能だ。だが今回のように群れで現れた場合は一気に脅威度が上がり2等級になる。だからこそ冒険者を描きあつめて討伐に当たろうとしたのだ。 2等級までならぎりぎり討伐しきれるからである。

 だがネームドは無理だ。ネームドとはたった一体で一つの街を滅ぼすほどの驚異的な戦闘能力と圧倒的な生命力をもつ個体である。そのため2等級のさらに上の1等級に指定されその個体を指し示す名前が付けられているのだ。

 そんな怪物がすぐそこにいるというのか?そんなのどうしろっていうんだ!


「大丈夫。群集団の1等級相手に防衛戦やるならまだしもたった一匹のネームドごときにラキは負けないから」


「何言ってるの!!ネームドなんだぞ!?勝てるわけがない」


「いや、勝てる。ラキは勝つよ」


 はっきりと断言してタギツは未だ戦闘が続く戦場を見下ろした。



「久しぶりの感覚!強い!強い!強すぎる!!やっぱりこれくらい強くなきゃね!」


 振りぬいたミョルミーベルを構えなおしてラキは眼前の敵に注視した。体長20mはあろうかという巨大で硬質な体躯と背中から伸びる無数のトゲ、牛の頭に爬虫類のような尾が伸び地面を叩いていた。先ほどまで戦っていたサラマンダーの群れが小動物に思えるくらい目の前の魔物からは途方もない圧迫感を感じた。数合打ち合っただけでその途方もない強さを垣間見たラキはなおニヤリと笑った。


「確かこの個体はミノタウロスの変異体コードネーム『フランマコメディンティス』だっけ?面白くなってきたじゃない!それじゃここからは本気で行かせてもらうよ!」


 ラキは自分の身体を流れる魔力を無造作にミョルミーベルに叩き込むように流した。無機質だったミョルミーベルに血液が巡るかのように魔力が隅々までいきわたるとギギギギッと音を立てて輝きだした。今までも十分大きいミョルミーベルが身の丈の5倍ほどの大きさまで巨大化した。そして変わったのは大きさだけなくその輝きと威圧感も何倍にも増して夜でも周囲が明るくなるほど黄金の輝きを放ち、バチバチとはじける音とともに雷を帯び雷槌へと変貌した。

 一気に間合いを詰めたラキに拳を振り下ろし、続けざまに何発も拳を叩き込んできたがそれをときにかわしてときにいなしてギリギリ攻撃を喰らわないように立ち回りかわりにミョルミーベルを叩き込んだ。

 雷が落ちたかと思うほどの雷鳴がとどろき、今までとは比べ物にならないほどの威力を発揮してフランマに襲い掛かった。続けざまに何発も入れるが、その全てを硬い外皮と骨格に阻まれた。互いが物凄い速さで動き、雷槌と拳がぶつかり合い轟音とともに大地を揺らした。

 ラキは楽しんではいたが同時に焦っていてもいた。ラキは攻撃を叩き込めるが決定打に欠け、フランマの方は殴る蹴る尾で薙ぐなどの攻撃を放ったがことごとく当たらない。お互いにジリ貧となっていた。だがラキは常に魔力を消費してしまう上に自身で魔力を回復することができない体質だ。更にミョルミーベルに魔力を注ぎ込んでいるためさらに消費が激しい。

 つまりこのままいくと遅かれ早かれラキが負ける。状況は芳しくはないのだ。となれば


「一撃に全火力を集中しで瞬時に狩るしかないが、一瞬のスキすらもないや・・・」


 ラキには必殺技ともいえる攻撃手段があるがそれを使うには5秒ほど動けなくなる。だがそんなに待ってくれるほど相手も甘くはない。なんとか相手の動きを数秒止めないといけないがはてさてどうやるか


「う~ん 一か八かあれで行くか。よし!」


 ラキはフランマの攻撃をいなしつつ筒状の物体を取り出しそれを軽く放り投げるとミョルミーベルで打った。フランマに当たる寸前で筒状の物体から凄まじい閃光と爆音が響きわたり一瞬ひるんだ。時間にしてわずか数秒。だがその数秒の時間をもってラキは手に持ったミョルミーベルにありったけの魔力をぶちこみ、上半身を前傾に傾け足を大きく開きミョルミーベルを構えた。

 視界が戻ったフランマは眼前のラキの持つ大槌に凄まじい魔力がため込まれているのを本能で察知し、とっさに逃げようとしたが


「逃がすわけないでしょう!おりゃあああああああああああ!!」



 『雷槌・破却』


 ラキが今現在撃ち込める一番強い技をフランマの腹部付近に撃ち込んだ。今まで一番大きな雷鳴のような音と大地を駆け巡る強い衝撃波があたり一帯に走り、フランマの後方の地面は大地が一直線に抉れ雷で焼け焦げていた。今出せる最高火力。そして申し分ないタイミングで相手に攻撃が入った。避ける隙もガードする暇もなく確実に攻撃が入った。 全身が真っ黒になり肉が焦げたにおいと煙をあげながらフラフラとラキに歩み寄り


「GUGIIIAAAAAAAAAAAAAAAAAaaa!!」


 フランマの絶叫のような悲鳴が草原に響き渡り、そしてゆっくりとその場に倒れこんだ。




「終わったようだね」


「・・・本当にたった一人で倒してしまった。噂には聞いていたけどティア1は本当に別格の強さをもっているんだな。たいしたもんだ」


「ラキならあれくらいの状況切り抜けられて当然。むしろ出来なきゃティア1なんぞとれないでしょうし」


「それにしてもほんと何者なんだよあいつは。お前さんも大概な弓の使い手だがあいつは次元が違うだろう」


「それは教えない。それよりも草原に残ったサラマンダーとネームドの残骸の後処理を任せても?」


「ん?ああ、もちろん構わない。他の冒険者たちに任せるよ。それじゃ私は冒険者や領主の兵士たちの指揮に戻るからお前さん達は冒険者ギルドに戻ってるように。・・・逃げんなよ?」


 イリスはそういって冒険者と兵士たちが待機している所に戻っていった。それから数分後、戦いを終えたラキがミョルミーベルを引っ担いで戻ってきた。ミョルミーベルを持つ手と逆の手にはこぶし大のオレンジ色に輝く石が握られていた。


「ターちゃんみてみて! こんなにでかい魔石手に入れっちゃったよ! これは思わぬ収穫♪」


「これはなかなか見ない大きさの魔石だね。それだけのサイズがあればしばらく路銀に困ることはないだろうね。それともう一つ」


 タギツは車椅子を動かして近づきラキの顔を両手で包み込んで引き寄せる


「怪我はないみたいだね。よかった」


「もう~大丈夫だよあれくらい。確かに強かったけどこれくらいへーきへーき」


「と言いつつ少し焦ったでしょ?」


「ありゃ?バレた?」


「当然。冷静を装ってたけど額から汗が出てたし口がひくついてたよ」


「見られてた!?恥ずかしいから誰にもいわないで~!」


「わかってるよ。あと恥ずかしいのをごまかすのにいちいち抱き着いてこない」


「照れてるの?ターちゃんかわいい!」


 ラキは照れ隠しなのかはにかみながらタギツに抱き着きすりすり頬ずりをしてきた。うっとうしそうにするタギツだが誰も見てないしラキも頑張ったから今日くらいはいいかとされるがままになった。



     —それから数時間が経過した。冒険者ギルドに戻った二人はさっそくイリスと話した。と言っても特別なことはなく何故サラマンダーを討伐したのか。どうやって城壁を越えたのか、あるいはどうやってサラマンダーを討伐してったのかなどだ。話を聞くイリスはあまりの出鱈目っぷりに事情を聴いた後何とも言えない表情で「ほんとお前さんはどういう体の構造してるんだ?」と胡散臭いものを見る目で見た。失礼な話だ。こんなにも可愛い女の子をそんな目で見るもんじゃないのに。

話を聞き終えたイリスと次に分配の話をした。草原に集まった冒険者たちによってサラマンダーの残骸と第1等級のネームドフランマコメディンティスの解体処理が行われているが、冒険者は討伐した魔物を解体してその爪や毛皮 鱗 角などを売り払うことで収益を得ている面もある。

 当然討伐したのは全部ラキとタギツの二人なので取り分はほぼ全部とっても良いが、今回街の危機とはいえ討伐に参加すると言ってくれた冒険者たちに少しばかり素材を分けてほしいそうだ。これが揉めた。ラキはからから笑いながらサラマンダーの素材と魔石とフランマの素材全部持っていっていいよ~などど口走ってタギツに殴られたり、イリスとタギツによる取り分の駆け引きが行われたりと色々とあったが、最終的に話はまとまった。



・サラマンダーの鱗や肉の素材は冒険者たちによる解体作業の代金として譲渡する。


・サラマンダーの魔石はラキ達の分とする。


・フランマの魔石及び素材はラキ達の取り分とする。



 交渉はここで妥結した。タギツは「チッなんでラキが頑張って倒したのに素材持っていくんだよ」と愚痴っていたがラキがまあまあと宥め、その日は床に就いた。次の日、日の出とともに鳥の鳴き声に目が覚めたラキは窓を開いて外の空気を吸いながら眼下の街を見た。昨日まで魔物の脅威にあったように感じないほどおだやかな街並みと人々の活気がそこにはあった。街を、人々を守ることができたという実感と達成感におもわず頬を緩める。


「ターちゃん~朝だよ。お・き・て~!」


「べふっ!」


 向かいのベッドで、静かに眠っているタギツの隣に近づき、思い切りダイブしてした。その衝撃でベッドが揺れ、タギツからまるでカエルを絞めているかのようなつぶれた声が上がった。目はまだ半開きで、ラキを睨みつけ、苛立ちと眠気の入り混じった表情を向けた。


「・・・普通に起こしてよ」


「この起こし方じゃないとターちゃん起きないじゃない。ほら!朝ごはん食べに行こう!」


 朝から元気はつらつなラキはすぐに着替えて背中にミョルミーベルを装備してベッドの上で上半身を起こしたまま二度寝を決め込んでいるタギツを車椅子に乗せると冒険者ギルドの食堂に来た。すると冒険者ギルドの中が一瞬シーンと静まり返り、次の瞬間どっと歓声が上がりラキ達の周りに集まった。冒険者たちはみな思いがけない幸運に出会ったように晴れやかな笑顔だった。


「あんたがあのサラマンダーの群れを討伐したんだろ! すっげ——!」「それだけじゃねえ!ギルマスの話じゃ第1等級のネームドまで討伐しちまったって話だ!」「なあ!ティア1ってのは本当なのか!?」「あんた達のおかげでこの街も俺たちも助かったぜ!ありかどな!」「しかもサラマンダーの素材までくれるなんてよ。ありがてぇ」「今度一杯飲もうぜ!!」


 冒険者たちが皆矢継ぎ早に感謝の言葉を投げられラキは照れ隠しなのか少し恥ずかしそうにでも嬉しそうに笑った。

 その後、イリスに呼び出された二人は領主に謁見し、凄まじい額の報奨金を受けとったり、冒険者ギルドの冒険者たちとお酒の飲み比べ競争を行い20人抜きをおこなったりイリスからこの街に定住しないかと割とマジな目での勧誘を躱したりと楽しい日々をすごした。そして街をたちまた旅に出る日


「あ~あ。お前たちがいてくれたらこの街も安泰なんだけどなぁ」


「そうしたいのはやまやまなのです!でも旅に戻らないといけないので!」


 そこには街の城壁の外までお見送りに来てくれたイリスの姿があった。手には街の特産品であるチーズを包んだ紙袋を持っていてチーズの香りがほんのりと漂っていました。餞別として、イリスはラキにその紙袋を手渡した。イリスの目には名残惜しそうな光が宿り、まだ二人を引き留めたいという気持ちが伝わってきました。


「ダメだって。世界中を旅するって言ったでしょう。ラキもはっきり言ってやりなよ」


「まあ、仕方ないか。そんじゃ達者でな。またこの街に来ておくれよ。街の人たちも冒険者の連中も待ってるからさ」


「はい!もちろん」


 挨拶を終えたラキは背負ったリュックを背負いなおすとタギツの乗ったキャビンの取っ手を握り引っ張りだした。なんだかとても騒々しく充実した数日をおくった二人はまだ見ぬ新しい出会いに思いをはせ一歩踏み出した。晴れ渡る空と一面草木がお生い茂る草原に続く一本のあぜ道をラキとタギツは進み


「それでターちゃん!次はどこに行くの?」


「次はだね——」


 そんな二人の声がひっそりと草原に響く。


 


 ——おしまい。

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