楽しい楽しいボウリング(罰ゲーム付き)
舞は動揺した様子でじゃあ、とそそくさと仲間達のいる方に戻っていった。
「先に席に戻ってて。私クラブの皆に顔見せてから戻るから。」
裕子は申し訳なさそうに真琴に言ってから、舞の後を追っていった。
昼食を終え、店を出て三人はボーリング場に向かっていた。店で裕子がクラブの仲間達の所から戻ってきた後から今までずっと真琴達の間で重苦しい雰囲気が流れていた。ほとんど言葉を交わさずに昼食を終えた。
蓉介は何があったか詳しくは知らないようだが、勘がいいので裕子が仲間にこそこそと連れていかれた所と、戻ってきた裕子が少し暗く浮かない表情をしていたのを見て大体の事は察しているかもしれない。
その証拠に彼も空気を察してほとんど食事中、口を開かなかった。真琴は自分達がやはり変な噂をされているんだと愕然とした。漠然と周りからよくは言われていないとは思っていたが、改めてそれが再認識されられたようだった。
先程の裕子と舞という子の内緒話を途中から聞いていて、裕子はその口ぶりからして悪い噂を信じてはいないようだが・・。そういえば裕子はどうして真琴達に近づいてきたんだろうか。この疑問は前々から薄っすらと持っていたが特に気にすることでもないと思っていた。
先程のことで真琴は改めて裕子が近づいてきた理由が気になりだした。蓉介も真琴と付き合う前は今ほど変人扱いされてなかったが、頻繁に一緒にいるようになることで真琴と同類の目で見られるようになった。真琴は不安になって彼に聞いた事がある。
真琴といる事で蓉介は学園生活に支障をきたすのではないかと。すると彼は。
「そんなの気にしてないよ。元々僕は人付き合いはあまりしないんだ。皆でわいわい意味なく騒いでつるむくらいなら、大好きな真琴さんと一緒の時間を過ごす方が僕は幸せだな。」
と真琴が恥ずかしさで身悶えしそうにしそうになることを言った。彼は自分の意思でそうしたいから真琴の側にいるのでいいが、裕子はどうなのだろう。裕子はなぜ?悪く噂されてまでもどうして真琴達と一緒にいるのか。
裕子は同じクラスに友人が多いし部活の仲間もいる。なのにどうしてわざわざ真琴達のような変人扱いされている生徒と一緒にいようとするのだろうか。彼女にそこまでさせる程の理由が何かあるのだろうか。
もし何もないのなら果たして真琴たちと一緒にいることは裕子にとって本当に良いことになっているんだろうかと心配になる。一緒にいることで彼女の学園生活が悪くなりはしないかと。真琴は深い考えもなく、やってきた裕子をなんとなく受け入れたのだが本当に良かったんだろうか。ずっとそんなことを考えながら歩いていると真琴の頭にポンと手が置かれた。
隣を歩いていたその手の主である蓉介は真琴に何も言わず微笑みかけた。真琴は何だか彼に心を見透かされたかのような感覚を受けた。まるで、何故かはわからないけれど「裕子さんは裕子さんの意思でここにこうして僕らといるんだからいいじゃない」、と言われたような気がした。
真琴も笑みを浮かべて彼に軽く頷いた。気がつけば三人はボーリング場の前までたどり着いていた。
いざ遠くに並んだピンとレーンを前にするとさっきまでの重い雰囲気は薄れて、三人ともゲームに対してやる気や遊ぶ気持ちがみなぎってきた。ボーリングはとりあえず二ゲーム行うことになり、ただやるだけでは面白くないという事で何か罰ゲームを設けようという事になった。
「どんな罰ゲームにする?一番得点を稼いだ人が一番低い人に罰を与えるっていうのはどうかしら?」
裕子の提案に真琴も蓉介も頷いた。
「いいわね。でも無理な罰は駄目よ。出来る範囲内でっていう事でならいいんじゃない。」
真琴が念を押すように言うと蓉介が口を開いた。
「どんな罰の内容にするんだい?」
「そうねぇ・・・ゲームが終わってから決めるっていうのは?」
裕子が少し思案してから言った。
「いいけど。蓉介が勝ったら変な罰を言いそうよね。」
「何言ってるの、真琴さん失敬な。紳士な僕に対して。」
蓉介の言葉に裕子がいたずらっぽく笑いながら言った。
「例えば、柿本君が勝って真琴が負けたら、十分間真琴を強く抱きしめていいとか、公園のベンチで膝枕して耳かき、大胆に言えば真琴にキスさせるとか?」
「いいねそれ。」
蓉介が怪しい笑みを浮かべて裕子の言葉に満足そうに頷いた。
「ちょっともう、裕子ったら何言い出すのよ。私そんなこと絶対やらないからねっ。」
「何を嫌がってるんだい?僕達は付き合ってるんだから気にすることじゃないでしょうに。」
「う・・・。」
蓉介に正論を言われて真琴は赤くなりながら何も言い返せなくなった。
「そうよ、それに嫌ならゲームに負けなければいいんだから。さあ、じゃあ始めましょうか。」
裕子も真琴を庇おうとはせずに淡々と言った。
ゲームが始まると罰ゲームがあるのでやはり皆引き締まった真剣な表情になった。投球順は裕子、柿本、真琴の順で行われた。裕子は運動部なだけあって運動神経が抜群で、パワーボールを投げストライクを連発した。スペアもほとんど取りこぼしなく取っていった。
蓉介は裕子ほどではないが器用にボールにフックをかけてポケットを狙い点を稼いでいった。ほぼとりこぼしなくスペアを取り、たまにストライクを出した。
真琴はというと・・・・
球技・・というかあまりスポーツ自体得意ではなく、思うようにピンを倒すことができなかった。スペアを取り損ねたり、せっかくストライクを出したかと思えば、次の投球が重要なのにガーターになり、蓉介と裕子は腹を抱えて笑っていた。
そんなこんなで一ゲームを終えてみると裕子が女子としては高得点の百九十八点をたたき出した。いつものアベレージが百八十点らしいから絶好調のようだ。柿本はバランスよく点を取って百六十二点とこちらも高得点だった。真琴は思うように点が取れず、かろうじて二桁得点は免れたものの、百十七点と低い結果に終わった。
「これじゃあ不公平だわ。裕子は運動部だし、蓉介は男の子でしょ。私には不利過ぎるからハンデを頂戴っ。」
真琴は本当はハンデなしで勝ちたかったが、罰ゲームをどうしても回避したかったので裕子と蓉介に訴えた。二人はしばらく考え込む様子を見せて言った。
「それもそうねぇ。この点差じゃ、二ゲーム目も結果は見えてるわね。柿本君はどう思う?」
「確かにこれじゃちょっと真琴さんに気の毒だな。罰ゲームを受けなさいって言ってるのと同じだからね。ハンデあげてもいいんじゃない?」
裕子と蓉介は真琴にハンデを何点上げるべきかと話し始めた。真琴の一ゲームの得点が百点程だったので、もし真琴が次のゲームでうまくいけばどれくらい点を伸ばせるかを考えるとだいたい百五十点ラインではないかと二人は考えた。
そこで裕子の一ゲームの結果が百九十点だったので、それに届くためには後四十点である。よってハンデは四十点と決まった。真琴はそのハンデ条件を飲み込んだ。
後は真琴自身がいかに自力で百五十点以上取るかがカギになる。裕子は蓉介にもハンデをつけようかと提案した。二ゲーム目でも裕子が高得点を取れば最下位になることはなくても、蓉介の優勝の可能性が低くなるからという配慮だった。だが蓉介はハンデはいらないと言った。
男なんだからハンデなんてもらったらみっともないから、自力で高得点を挙げて勝って見せるよと自信満々に言った。かっこつけちゃって、最下位になっても知らないんだからと真琴は心の中で彼に舌を出した。
なお一ゲームの結果にも真琴の得点にハンデが加算されることになって、裕子百九十八点、蓉介百六十二点、真琴百十七点に四十点を加えて百五十七点となった。自販機でコーヒーを買って少し休憩を取った後、二ゲーム目を開始した。




