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あまりにもあっけなくて信じられない現実

蓉介の葬儀は静やかにひっそりと行われた。


晴れ渡る青空がまぶしいほどに輝きあたり一面を包み込んでいた。

人が死んだとき、初めてその人の人生がどれほどこの世界に

影響を及ぼしたのかを悲しんでくれる人がどれほどいるかで推し量ることができる。


葬儀に参列した人々の面々は学校のクラスメイトが数人、担任そして真琴と裕子だけだった。

蓉介の父がこの葬儀の喪主をしていて真琴は初めて彼と出会った。


ひどく沈痛な面持ちで厳しい表情をしていた。

実の一人息子を失ったのだ。心中は穏やかではないだろう。


蓉介は生前父親のことをあまりよく言ってなかったが、

父親の顔には深く後悔の色が強く滲み出ていた。

彼は蓉介に対して厳しい態度をとり続けていたらしい。


そんな蓉介への育て方に今になって後悔しているのだろうか。

分かりあえぬままこんな形で死別するならば、もっと息子を理解してやるべきだったと。

しかし今になってはもうそれも手遅れだ。


蓉介はもうこの世にいない。



クラスメイトで悲しい表情をしている者はいたが、泣いている者はいなかった。

その生徒達は普段蓉介と表面上、

たわいないことでお喋りして笑い合う程度の仲だったからか、

真に心から悲しんでいるようには見えなかった。


唯一裕子がどうしてこんなことに、と言葉にならない声を上げて泣いていた。

真琴は泣かなかった、否泣けなかった。


心内が呆然として空っぽの状態だった。


信じられない、蓉介が死んだことがまるで何かの間違いではないのか、

夢なのではないかと思えて仕方なかった。


日が変わり学校に登校すればいつもの彼にいつもの学校で

出会うことができるのではないかと錯覚に過ぎないとわかっていても考えてしまう。


彼が死んだという実感がわかないのにどうして、

涙を流すことなんてできるのだろうか。


だが蓉介が死んでもうこの世にいないことをこの全身で感じ取った時、

真琴は泣くだろう、枯れるまで涙を流すだろう。


この身も心も壊れてしまうまで。

この身に射してくる日差しがまるでこの世のものとは思えなかった。


現実味がまったく感じられない。


全く降り注ぐ光は真琴の感覚の奥に入ってこない。

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