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ドン引き遺産相続♪

おじたちの話が済んだらしく、皆はリビングルームに集められた。遺産相続はおばあちゃんが生前に残した遺書があったようで、それに従って特に揉める事もなく話がまとまったようだった。


おばが出前料理にお寿司を頼み、親族一同でおばあちゃんのことやいろんなことを話して食事をした。大人はビールや日本酒などのお酒を飲み交わし、子供たちは子供たちで楽しく食事をした。


加奈は楽しむ気分にはなれず、部屋の隅のほうで大人しく一人で食事をして、皆の輪から抜けるように出前の後片付けに取り掛かった。


皆の食事が終わり、夜も更けてきた頃、親族たちはそれぞれの家に帰っていった。酔っ払って家族に支えてもらいながら帰る者もいた。誰もいなくなったリビングルームには食事し終わったお皿やお寿司の桶がテーブルの上に雑然としていて、加奈は一人片づけを始めた。


部屋には加奈しかおらず、さっきまで騒々しかったのが嘘のように静かだった。愛は親族が帰るのを見送った後、さっさと二階に上がっていった。今頃自室で着替えているんだろうか。加奈も今日一日ずっと制服を着たままだ。


おじやおばも二階に上がって行った。加奈は片付けろとは言われなかったが、いづれにせよ加奈がする羽目になるので言われる前に終わらせてしまおうと思った。ゆっくりとお皿を重ねて片づけていると階段を急ぐように音を立てて誰かが下りてきた。


部屋のドアが開き、私服に着替えた愛が入ってきた。加奈のことを気にもとめずにキッチンに入っていった。冷蔵庫から紙パックのオレンジジュースを取り出してグラスに注いで飲んだ。その後キッチンから出て加奈の前を通って玄関に向かおうとしたところを呼び止めた。


「愛ちゃん、どこかに出かけるの?」

「あんたに関係ないでしょ、何であんたに行き先言わなきゃいけないのよ。」


靴を履いていた愛は振り返って睨みつけるように加奈を見た。

「そうだけど・・・でも夜遅いし・・・危ないよ?」


フウーっと大きなため息をついた後、愛は面倒くさそうに言った。

「今高校の友達から遊びの誘いの電話が来たの、明日は学校休みだし朝までカラオケしよおってね。」


一方的に話を切り上げて愛は玄関のドアを開け、そのまま出かけていった。返す言葉も言えず、その場に一人取り残された加奈は絶句していた。


信じられない、今日のお昼におばあちゃんの御葬式が済んだばかりだというのに。こういう日は外出を極力控え、大人しく自宅で過ごすものではないのか。それなのに何食わぬ顔で遊びに行く愛はどういう神経をしているのか疑いたくなった。


加奈などさっきまで片づけをしていたが本当は、気が抜けたように虚ろな気分で何もする気になれないというのに・・。


気持ちに無理やり鞭打ってやったので時間がかかったが、リビングとキッチンの片付けを重い気分を引きずりながらも、何とか終えた。


加奈は二階の共同部屋に向かう前に、お風呂に湯を沸かしていたのを止めに行った。疲れのためふらつきぎみな足取りで階段を上がり、共同部屋に入る前におじとおばにお風呂が沸いたことを告げるためにおじらの寝室に向かった。


加奈は疲れていたので一番に風呂に入って早くふとんに入って休みたかったが、加奈は一番最後にしか風呂に入ってはいけないことになっていた。いつも加奈は皆が入った後すっかりぬるくなったお湯につかって、ぶるぶると震えて入っていた。


おじらが気を利かせて湯を温めておいてくれることなど一度もなかった。おじとおばの寝室はドアが開いていて、廊下に室内の蛍光灯の光を漏らしていた。加奈がドアに近づいていくと部屋の中からおじとおばの笑い声が聞こえてた。


おばあちゃんの御葬式のあった夜にはそぐわない明るい声が聞こえたので、瞬時に直感が働いて不審に思い、加奈は寝室に入ろうとしていた足を止めて、ドアの後ろに隠れるようにして中の様子を伺った。息を潜め耳を傾ける。


「今まで辛抱しておふくろの面倒を見てきたかいがあったな。」

おじの満足そうな声が聞こえる。

「遺産の半分以上の三分の二が私たちのものになったのね。」


愉快に笑うおばの声が部屋の天井にこだまする。

「生前におふくろが俺たちに感謝の意もこめて、遺書に財産を多めに俺たちにくれるように書いててくれたようだな。」

「あなたの妹、弟も文句も言わず納得してたわね。皆が嫌がってたおばあちゃんの世話を私たちが引き受けたことと、遺書の効果が利いたみたいね。」


「今までの辛抱は今日この日にためにあったと言っていいな。おふくろには悪いが、老いぼれが巨額の財産持ってても仕方ないからな。」

「そうそう、その通りよ。私たちが受け継いで、有効に使ってあげないとね。」


おじとおばの笑い声が部屋で響いた。加奈は信じられない気持ちで会話を聞いていた。全身の血の気が引いて青ざめ、耳を疑いそうになる。できれば信じたくなかったがはっきりと加奈はこの耳で聞いた。


おじとおばはおばあちゃんの死を喜んでいるように話をしている。ショックと同時に加奈は気がつけばドアの陰から身をあらわし、部屋に入っていた。気持ちを抑えられなかった。おじとおばが加奈に気づいて少し驚いて見せた。


「何だ、お前いたのか。」

「下の片付けは終わったの、風呂は沸かした?」

おじやおばの言葉を遮るように強いまなざしで睨みすえ、加奈は叫んだ。

「あなたたち、ひどい。ひど過ぎる!おばあちゃんはあなたたち家族のことが大好きだったのに。それでもおばあちゃんの息子なの?家族なの?信じられない。財産目当てで世話していたなんて・・・おじさんたちが今までおばあちゃんに向けていた笑顔はみんな嘘なの?御葬式で見せた涙も演技?そんなのおばあちゃんがかわいそう過ぎるわ・・・。」


加奈が高まった思いを一気に全てぶつけると、おばもおじも勢いに気圧された様に最初、目を丸くして驚きの表情をしていたが、すぐに我に返ったように顔を怒りの形に歪め始め、加奈に詰め寄った。


「何だと・・この・・小娘がっ!」

加奈の左頬に熱い衝撃が走り、次の瞬間床に倒れ付していた。頬を押さえ、うめく加奈に覆いかぶさるように怒りをあらわにしたおじが仁王立ちで立っていた。制服の襟をつかまれ、引きずるように締め上げられた。


「血の繋がりもない部外者が口を出すんじゃないっ!世話してやってる身のくせに何様のつもりだっ!恩を仇で返す気かっ!」


血走った鋭い眼光が首を締め上げられ息ができない加奈に向けられている。おじの肩越しにおばが腕を組んで立っているのが見えて、加奈に向けて冷たく言い放った。


「あんた、おばあちゃんに気に入られて何か勘違いしてるんじゃないの。邪魔者がいなくなったんだから、これからは思う存分こき使ってやるわよ。」


宙に浮いた足をばたつかせ、加奈がもがく。無造作に動かした足がおじの足のすねに強く打ち付けられ、おじは思わず痛みで加奈を離してその場に崩れふした。床にお尻を打った加奈は首を押さえ咳き込んでいた。さらに怒りで顔を赤くしたおじが立ち上がった。


「もう許さん!」

蹴りや拳の嵐が加奈を襲った。お腹や胸、顔を蹴られ加奈は懸命に両手で庇おうとするが、おじの暴行は止むどころか激しさを増す。


「もういいんじゃない?それ以上やったら死んじゃうわ。」

加奈が心配というより死なれては面倒なので困るとうような事務的な口調でおばが割って入った。加奈は口の中を切って血を吐いた。腕やお腹にあざが残った。


激しく呼吸して、体のあちこちに激痛が走りしばらく立ち上がることが出来なかった。

「今度そんな口をきいたらこれぐらいじゃ済まさんからな!」


息を荒げて胸を上下させたおじが加奈を見下ろして吐き捨てるように言った。動けない加奈を残しておじとおばは寝室の照明を消して部屋を出て行った。暗くなった部屋で加奈は横たわったまま歯を噛み締めた。加奈は悔しかった。


おばあちゃんは心底、おじたち家族を愛していたのに。自慢できる家族だって誇らしげに言ってたのに。ここまで性根の腐った人達だったとは、おばあちゃんが知ればさぞ悲しむことだろう。


こんな人達と暮らすのが吐き気がするぐらいこんなに嫌に思ったのは初めてだった。高校を卒業したら就職して早くこの家を出よう。おばあちゃんのいなくなったこの家族たちに未練は全くなかった。


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