↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
40/246

第4章のちょっと後 「天地開闢を司る聖獣とそれを従える勇者」①


 うにょ?


 うにょうにょ~


 うにょうにょうにょうにょ……


「おい、姫っ子! 貴様一体何がどうして、そんなものを持っているっ!?」

「え? そこの川で釣れたのよ。こっちの世界では川にも住んでるのね」

「いいから早く捨てて来い! エンゼルフィッシュなんかを魔王城の中まで持ち込むな!」

「いや、エンゼルフィッシュって熱帯魚でしょ? って、あ、そっか。魔族の国では、『聖なる』的な言葉と『邪悪な』的な言葉が逆になるから……」


 というわけで、デビルフィッシュです。


 つまりはタコです。


 戦利品を厨房に持ち帰る途中、廊下でばったりガルムに出くわして、今に至るというわけです。


「見た目はあれだけど、触ってみるとぷにょぷにょして気持ちいいわよ?」

「ふざけんなっ! いいからこっちに近づけるんじゃねぇ! ってかこっち向けるのも駄目だ、目が合っちまったじゃねぇか!」

「もう、ガルムったら。練兵のときの威勢はどこにいたのよ?」


 まぁ見た目が気持ち悪いって思うのは分かるけどさ、そこまで言うほどじゃないんじゃないの?


「おい、ミハエル! お前からも何とか言ってやってくれ!」

 ガルムがちょうど通りかかったミハエルに声を掛ける。

「どうしたのですか、騒々しいですね。また僕の部隊の愚劣な味噌っかすが目に余る醜態を晒したり、ご迷惑をお掛けしたりしたのでしょうか?」

「いや、そこまでじゃねぇが……ってかお前酷いな。本人を目の前にして」

「いつもこんな感じです。お気になさらず」


 ガルムがわたしに振り向いて「そうなのか?」と聞いたので頷く。

 そうしたら「強く生きろよ」なんて励まされてしまった。


「ねぇ、ミハエルはタコ、大丈夫?」

 わたしはミハエルにも聞いてみることにする。

「む……タコとは?」

「これよ、これ」


 わたしはミハエルの顔の前に、わたしの右手でうにょうにょしているタコを差し出す。

 まぁ持っているというよりは、吸盤で張り付かれているって言った方が正しいんだけど。


「く、来るなぁぁぁぁっっ!」


 ミハエルが素(す)っ頓狂(とんきょう)な声を上げたかと思うと、驚きのあまり尻餅をつく。


「えっ、嘘……あのミハエルが動揺してる?」


 朱雀さえ一撃で落とすミハエルが?

 タコちゃん、恐るべし!


「ど、どどど動揺などと。この僕がそんな、エンゼルフィッシュ如きに……」


「えい!」


 べにょっ!


 わたしはミハエルの顔にタコちゃんを押し付ける。


「うわぁぁぁぁぁっ!」


「ヤバぃ……これ超おもしろいかも」

「香澄さん、あなたって人は! どこまで性格が捻じ曲がっているんですかっ!」

「前にも言ったけどそれ、あんただけには言われたくないわよ」


 と、そこまでしたところで、「それぐらいにしてやれ」とガルムに窘(たしな)められる。


 まぁさすがにやりすぎたかなーとは思ってます。反省してます、はい。


「それにしても、姫っ子。何でまた釣りなんかしてたんだ?」

「高い食材とか買いすぎて、シモンに怒られちゃったのよ。だから自前で調達しようかなーって」

「食べるって、まさかそれをか!?」

「そうよ、お刺身とかにすると美味しいの」

「おまえそれ、刺身ってのはこの前出してくれたアレだろ……俺達にそんなモン、生で食えってのか!! 魚ならともかく、ソイツは有り得ねぇ、有り得ねぇよ!」

「全くです」

 とミハエルも頷く。

「そもそも、そんなゲテモノが美味しいはずがないじゃないですか」


「そんなことないわよね。あんた、美味しいでしょ?」

 タコの顔が偶然僅かに縦に動く。

「ほら、タコちゃんも『美味しいですよ』って笑ってるわ」


「確かに笑っているように見えなくもないが……」

「自分がこれから食べられるのに笑うはずがないでしょう! 言葉の意味が分かっていないだけです! 騙されてはいけません、ガルム!!」


 ミハエルが左手を構える。

 その手にバチバチと電気を走らせ、そして、


「このゲテモノをただ死なせるだけでは、僕の気が治まりそうにありません。せめて僕の手で消し炭にしてさしあげましょう」


 いつか聞いた、マジギレしたときと同じ台詞を呟いた。 


 そして雷はわたしの右手に絡まっているタコちゃんへ向けて放たれる。

 わたしは咄嗟に盾を展開し、雷撃から自分の身とタコを守る。


「ちょっと、せっかく手に入れた食材なんだからやめてよね!」


「精霊退散! 精霊退散っ!」

 それはわたし達の世界で言うところの『悪霊退散』ということなのだろうか?


「蛸即斬(タコ・そく・ざん)っ!」

 ああもうワケがわからない。


「どうしようガルム。ミハエルが壊れた……」

「いや、どう考えても姫っ子、おまえのせいだろう」

 それからガルムは、ミハエルに振り向いて言う。


「けどな、俺も他人(ひと)のことは言えんが……ミハエルお前、ビビリすぎじゃないか?」


「なっ――!」


 ミハエルが黙る。

 そして下を向いたまま動かなくなった。


 さすがにミハエルが可哀(かわい)そうになってきて、俯いた頭を『いいこいいこ』してあげる。


「たしかにわたしもちょっと意地悪はしたけどさぁ。今のトドメだよね。トドメ刺したのは間違いなくガルムだよね?」

「む。俺はただ自身の現状を知らせて、至らない点を突きつけただけだが?」

「それをトドメって言うんです。とりわけ心の方に関しては」

「そうか……以後気をつけよう」


 ガルムは難しい顔をしながら、しょんぼりしたミハエルの手を引いて行ってしまった。



ネタ回です!

すてらのテンションがおかしなことになっています。

ひゃっほーい!


王道鉄板ネタだと思っています。

ベタ展開、何気に好きです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風変わりな恋愛小説はじめました。
「悪「役」令嬢なんて生ぬるい! ~婚約破棄を宣言された辺境伯令嬢は、ナメた婚約者に落とし前を付けにいくことにしました~ 」

王道の婚約破棄から始まるのに、少し変わった悪役令嬢ものです。
良かったらこちらもお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール
小説家になろうアンテナ&ランキング
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。