表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/57

1-53 待ちかねていたお相手

「きゃあ~、ブルーの他にもブルードラゴンがいたのね~」

「当たり前だよ、エニス。でないと絶滅しちゃうもの」


 ラウが感心したように言った。

「いやあ、2体並ぶと凄いな。クラーケンと並んでも迫力だけど」

「壮観じゃのう」


「なんかブルードラゴンが群をなして泳ぐ姿を想像しちゃった」

「いやエニス。そこまでいったら共食いの世界だから」


「なんだとお! 食えるもんなら、食ってみやがれ!」

 なんて口が悪い子なんだろう。この子って雰囲気からして、きっと「女の子」だな。あくまで生前、前世の話なんだけど。


「生憎と御飯には事欠いてないんだけど。あ、ちょっと毒魔物食べる?」

「うるせえ、お前の施しなんか受けねえよ!」

 なんか荒れてる子だなあ。家庭に問題があったとか?


「そうですか、じゃあ」

 俺がそのまま船を引いたまま、立ち去ろうとすると、ちょっと慌てた感じで寄ってくる。


「ま、待ちやがれ!」

「なあに? 今、船の試験航海の最中なのですが」

「う、い、いやその」

 何か急に挙動不審になっている。


 俺は知っている。この子は、仲間を求めて旅をしてきたのだ。まあ、なんだ。「お相手」を求めてかな。それでやっと仲間に出会えたのに、何か素直になれないらしい。変な船を引いているので警戒しているのかもしれない。


「じゃあ、ちょっと一緒に遊びにいかない?」

「どこへだよ!」

 なんで、いちいち怒っているのかね。


「俺が作ったエニス島まで」

「エニス島?」


『彼女』は、ちょっと不思議そうな顔をする。人間にはよくわからないかもしれないが、俺にはわかる。ブルードラゴンは知性ある生き物だ。おそらくは、異世界の人間の魂を持っているからだろう。表情も結構豊かなのだ。


「まあ、一緒についておいでよ」

「し、仕方がねえな。いってやらあ、ありがたく思え」

 何気に、この子も人間の言葉を喋っているし。


 俺はゆったりと泳ぎながら、隣にいるお仲間を横目で観察していた。美しい。惚れ惚れするなあ。やはりブルードラゴンは誰しもを魅了する生き物なのだ。俺は密かにその子にルーという名前を与えた。多分、名前を持っていないはずだ。


 やがてエニス島についたら、ルーはそれをしげしげと眺めていたが、少し首を捻っている。

「これの一体どこが楽しいの?」


 うーん、確かに人間の食べるような魚しか住み着いていないしな。自分が上がりこめる大きさでもないし。あれ?


「ま、まあ。こうやって人間の友達を呼んできて、一緒に遊ぶのさあ」

「あんた、変なウミウシだなあ」

 あ、ウミウシって言っている。


「ウミウシじゃなくて、ブルードラゴンですよー」

「え、何それ」

「人間は俺達みたいな生き物をブルードラゴンっていうんだよ。他にも呼び名はあるんだけどさ」


 ルーはちょっと考えているんだけど、すぐに考えるのは諦めたようだ。脳の容量は俺と変わらないみたいだった。


「あんた、ブルーって呼ばれてたよね」

「うん、君の事をルーって呼んでもいい?」

「え?」

 いきなり言われて驚いたようだったが、つぶやいていた。


「名前か。考えてたこともなかったなあ。須山ルミか」

 あ、前世の名前を覚えてるんだ、凄いなあ。俺はどんな名前だったのかなあ。俺は忘れないように、紙を取り出して須山ルミと書いておいた。書いた事すら忘れそうだけど。


「じゃあ、ルミちゃんだからルーでもいいよね」

「ルミちゃんって、なんだ?」

 うん、まるで鏡を見ているかのようだ。お互いに痴呆症のような夫婦みたいだ。


「ねえ、俺と番にならない?」

「なんで、あたいがお前なんかと」


「そっか、じゃあ別にいいです」

「え?」

 ルーはちょっと慌てたようだった。この子は、きっとツンデレ。ツンデレ?


「ブルーったら、本当に諦めがいいわねえ。そこは頑張って口説かないと。可愛い子と一緒に卵を産むんじゃなかったの?」

「そうでした!」

 いつも思っていたりはするんだけど、すぐに忘れちゃうんだよね。


「けっ、あたいがなんでお前なんかと!」

 この子って見た目は可愛いんだけど、性格がちょっと。それじゃあ!


「ルー」

「なんじゃい!」

「プスーっ」

「お、お前、それはっ!」


 俺は頭から突き出した針管をルーの頭に突き立てた。

「きゃあ、ブルーったら何をやっているのよ~」

 エニスがビックリして叫んでいたが、俺はにっこりと笑った。


「エニス、大丈夫だよ。これは交尾の時に突き刺す、媚薬の注入管だよ。ウミウシの交尾には必需品だよ~」

「媚薬! 交尾! え、ブルー、まさか」

 絶句するエニス。


「うおおお~、来た来た来たー!」

 ルーが激しく叫んでいた。


「えいっ」

 ルーの針管が伸びてきて、俺の頭に突き刺さって媚薬が注入されてきた。

「おおっ! 来た来た来たー!」


「「「……」」」

 人間様が、全員言葉もなかったようだったが、俺達は非常に盛り上がっていた。ルーもこうして俺と盛り上がりたかったので、周辺をウロウロしていたのだ。俺はまったく気づいていなかったが。


 俺達は互いに体の一部を伸ばして合わせるとくっついた。

「ブルー、あたい幸せらわ~」

 だいぶラリっているみたいだった。眼が据わってる。かくいう俺もラリってますが。


「俺もよ~、ルー~」

 もう交尾する事しか考えられない。ラウが熱心に観察しているようだった。エニスは向こうを向いてしまっていたが。


 爺さんは目を丸くして見つめていた。

「こ、こりゃあまたなんとも壮絶な」

 まあ、ウミウシの交尾なんて大人しいもんですがね。ちょっと図体が大きいだけで。


「お、来た来た~」

「あたいも!」

 そして、俺達は同時にもよおした。今までの単独発射とは全く違う猛烈な勢いでなされた産卵は、2体なのもあって凄まじい勢いで放出された。この殆どが受精卵なのだ。


「あ、食われてる、食われてる。姉ちゃん、受精卵は魚も食いつきが違うぜ~」

「えー、また豊作かなあ」

「そうかもしれんのう」

 俺とルーはまだ媚薬の影響が残っているので、幸せ気分でホケっとしてました。


プスーっとしちゃうのは一部のウミウシだけなんですがね~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ