1-49 村一番の漁師を目指して?
釣れた魚は、俺がどんどん〆て捌いて御土産用にしている。ご近所に御裾分けするしかないような量になってしまっているが。多過ぎる分はエニスへの御土産にしようか。
そうこうするうちに、アイリスちゃんとエイミーが目を覚ました。
「あー、気持ちよく寝た~。このハンモック最高の寝心地よー。病気で動けなくて寝てるのとは雲泥の差ね」
ウミウシ・ハンモックは、お姫様のお気に召したようだ。
「じゃあ、帰りに持って行く~?」
「いいのー? わあい、ブルー大好き~」
エイミーがちょっと羨ましそうだ。
「エイミーも持っていく?」
「わあい」
また、くるくると回って大喜びのエイミー。
「トニーはその竿ねー。きっと、村一番の漁師に!」
トニーはまた微妙な顔をしている。だって、多分魚を釣る人はいないしね。リールの無い竿で、あの崖の上からの釣りはちょっと辛い。
「さて、お楽しみのマリン・アクティビティのお時間です。海底牧場の見学だよ~」
「海底牧場?」
「ただ今、ウミウ……おっとっと。ドラゴン漁協では、育てる漁業を推進中なの!」
育てても、食べるのは俺じゃないけどね~。
俺はいつものように3人を水球に包んで海中に没した。結構出入りの際は泡立って、まるで怪獣映画のような迫力がある。
だって一応、ドラゴンですから!
「わあ、綺麗~」
「本当だなあ~」
この子達は海へ入ったりしないから見た事が無いんだろう。なかなかの食いつきっぷりだった。
「本当に素敵ねえ。これって、お魚さん達のお家?」
「そうよー。頑張って作ったんで漁獲量は上がっております~」
結構、ウミウシ・プランクトンの効果もあるのは内緒だ。
「アイリスちゃんとエイミーも釣りしてみる~?」
「やりたいー」
「えー、楽しそう~」
それから俺達は海上に戻って、釣り大会となった。今度俺も大型の竿を作って、毒魔物でも釣ってみようかなあ。さすがに毒魔物牧場はどこでも怒られそうなので作れないな。
エイミーもアイリスちゃんも、なかなかの腕前だった。特にエイミーはまだ体が小さいのに、上手に魚を弱らせて引き寄せていた。さすがに上に引き揚げるのは手伝ってもらっていたが。
「さて、そろそろ帰らないと日が暮れちゃうから帰ろうか」
「もう帰るのかー。残念だわ~」
日頃なかなかお城を出られないだろうアイリスちゃんがボヤいていた。
「まあまあ。じゃあトニー達の村まで突っ走るよ~」
そう言って俺達は船の仕度を整えた。
「じゃあ、ブルー。俺は鐘楼ね~」
トニーは飽きずに鐘楼に乗るようだった。エイミーも行きたがったが、まだ小さくて危ないからと他の人が諌めたので、大人しくアイリスちゃんと遊びながら帰るようだ。
「ブルー~」
「なあに、トニー」
「海は最高だぜ~!」
また大海原と、この栄光のマリエール号の魅力に取り付かれた人間が誕生したようだ。
村の前の崖についたので、トニー達を降ろす。荷物持ちにお爺さんがついていった。エイミーが眠そうだったが、トニーに手を引かれて頑張って帰っていった。トニーも竿や魚なんかの御土産が沢山あるのだ。美味しい水も持たせたし。
「ブルー、バイバーイ」
エイミーが眠そうながらもお別れの挨拶をしてくれる。
「またなー、ウミウシー」
うーん、トニーめ。次回こそ必ずやドラゴンと呼ばせてやるぜ~。
すぐにお爺さんも帰ってきたので、出発する事にした。あの村では日頃魚を食べないから、珍しい食材として村中の食卓を彩るかもしれないな。
それから、ウミウシ高速海運はほどなくして王都の浜に着いてしまった。もうお迎えの騎士団が到着している。
「あーあー。着いちゃったね。ブルー、また一緒に遊ぼうね。今日はすっごく楽しかったよ」
「俺もさあ~。あ、御土産に、この美味しい水も一樽持っていきなよ~」
「わあい」
すると、騎士さん達が御土産を積み込む中、少し小奇麗な格好をした人が前に進み出てきて、恭しくこう言ってくれた。
「ブルー殿、例の新しい絵本が出来たので、お納めくだされ。今日も姫様と遊んでくださってありがとうございました」
「やったあ~」
俺は少し舞い上がってしまって、ついつい踊ってしまった。みんなも踊ってくれている。俺の踊りって、何かのスキルなんだろうか?
「アイリスちゃん、王様にもよろしくねー」
俺はマリエール号を仕舞い、巨大な泡を立てながら海中に没していくのであった。なんか、ほのぼの系の怪獣映画みたいだな~。




