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1-43 タコつぼ完成

「ブルー、久し振りだな。今日は商人を連れてきたぞ。残りの糸があればもらいたいのだが」

 なんと、呼ばれもしないのに王子様が来てくれて、商人さんを連れてきてくれた。


「あ、王子様。丁度よかったー。渡すものがあるんだ。はいこれ」

 俺はそう言って、例の魔物をゴロンっと転がした。


「ぬおっ、いきなり出すな。なんだ、この怪物は!」

「殿下! これはもしや、巷を騒がせたパワーフィッシュなのでは」

「あたあり~」

 クス玉があったら頭の上で割ってあげるのに。クス玉ってなんだったっけな。


「これは、お前が退治したのか?」

「そういう事になっていますが、実はタコ魔人君に手伝ってもらいました。だってこいつ暴れん坊でさ。俺の手に負えなかったんだよね。でも、タコ魔人君の触手でギュウっと!」


「そ、そうか。その事も踏まえて労ってやらねばならぬな。今日はタコつぼが出来上がったので、持ってきたのだが、クラーケンは呼べるのか?」

 そう言って王子様は後ろの長大型馬車を指差した。


「この馬車は重いからな。街道に負担を与えぬように幅広の専用車輪を作り、運搬も馬ではなく大蜥蜴のグルノスを4頭も繋がないといけなかったほどだ。砂浜に出すと、車輪がめり込んでしまうがどうしたものかな。人力ではとても運べぬ」


 王子様がいらない心配をしていたが、俺は何の気なしに言ってやった。

「何を言っているの、王子様ったら。タコは陸地に上がれるから、何の問題もないよ。普段は用がないから上がらないだけで」


「そ、そうなのか。うーむ」

 どうやら、王子様はクラーケンが陸地に上がってきた時の事を考えて、頭を悩ませているらしかった。


「心配しなくてもクラーケンなんて、陸には用がないから。人間なんて食べないしさ」

「そ、そうか」


「じゃ、タコ魔人君呼んでくるねー」

 俺はパワーフィッシュを収納すると、海へと潜っていった。


「おーい、タコ魔人君。タコつぼが届いたよう」

「何、本当か?」

「あと、王子様がパワーフィッシュ討伐を労ってくれるってさ」

「よし、すぐ行こう!」


 タコ魔人君は、まるでイカのようにジェット推進でギューンと進んでいった。あれも、本当に水を噴射しているわけじゃなくて、魔法で水を後方に噴出しているだけなんだけど。普段はのんびりしていて使わないんだけどね。


 俺達は2人、いや2体揃って浜にその勇姿を見せ付けた。

「ぬおお、お前らが揃ってそうやって並ぶと、なかなかに壮観だな!」

 王子様も、潮風に靡く金髪をなでつけながら、感心したように呟いた。


「いやあ、お初にお目にかかります。私はアルフレッドと申します」

「ええっ、タコ魔人君ってそんな名前だったの!? というか、何その喋り方は!」

「いや、ブルー。王子様に向かって、そういう喋り方してるお前の方がおかしいんだが」


 王子様は俺達のそんな会話を面白そうに聞いていたが、こんな事を言い出した。

「ブルーについて、北の賢者に聞いてみたのだ。お前達のような特殊な人外生物は、元は人間であったのだと。その時の特別な知識を元にしているから、その知恵でその大きさまで無事に生き延びて、更に不思議な能力までも身に着けているのだと」


「へ、へえー」

「そ、そうなのですかね。ははっ」

 いつも通りの軽い返事の俺とは異なり、タコ魔人改めアルフレッド君はやや焦り気味だ。


「しかも、その人間というのは異世界からやってきた魂で我々が知らぬ叡智や能力を持っているのようだと。この世界の魂は、人外には宿らぬと言われておるのだ」


「ぎっくう」

 これはアルフレッド君だ。

「ふうん」

 まるで鼻でもほじっているかのように、気の無い返事をする俺。


「ま、まあ、ブルーよ。お前にまともな返事は期待してはおらぬがなあ」

 そう言って、チラチラとタコ魔人君の方に視線を走らせていた。どうやら、その異世界の叡智とやらの助けがほしいんじゃないかと俺は推理する!


 異世界の叡智? なんだろうな、それは。

 だが、俺は少し思い出した。タコって凄く頭がいいんだった。器用だし。人類の後を継ぐのはタコではないかと言う人もいるくらいなのだった。ちょと羨ましいな。


「お、おいブルー。さっそく、タコつぼの入り心地を試そうぜ。じゃあ王子様、タコツボありがとう」


 おっと忘れていた。オレはパワーフィッシュを外に出した。

「王子様、そいつの事を解体できる?」

「うーむ、どうだろうな」


「ああ、殿下。ベスマギルを使えばなんとかなるでしょう。それよりも、この丸のままの姿で国民に見せて、退治されたことを示した方が安心してもらえるでしょう」

「そうか、それではそのようにしよう。お前達、この件の褒美はまた今度な」


 王子様達は手を振って立ち去っていった。大トカゲが、ぐえーっと鳴いて馬車ならぬトカゲ車を引っ張っていた。暢気な奴らで、俺達の姿もまったく気にならないようだった。だから、馬車を引っ張らせているんだな。


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