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1-41 ハインリヒ王国

 アンデのお兄ちゃん達は、翌日もうすっかり村に馴染んでいた。漁師としての腕はよかったので、バリバリと仕事をこなし溶け込んでいた。それに妹が可愛いので、村の若者からもお兄さん呼ばわりされている。


 アンデ自体も、さっぱりとした姐御気質なんで女の子からも人気が集まった。ああ見えて、お料理や繕い物は上手いみたいだし。ああいうの、なんていうんだっけ。えーと、乙男?


「おい、そこのウミウシ。今何か失礼な事を考えていなかったか?」

「さあ、もう記憶にございません」

「アンデお姉ちゃん、ブルーにそんな事を言っても駄目よ。徒労に終わるだけだから」

「まったく」


 ぶつぶつ言っているアンデと対照的に達観したエニスは手を止めたりはしない。今日はアンデの分の繕い物だ。昨日手伝ってもらったので、そのお返しだ。


 今日はエニスの家の網はそうたいした事が無かったので、2人でさっさと片付けてアンデの分をやっているのだ。


 何しろ、村からただでもらった予備のボロボロの奴を補修してなんとかしようというものだ。修繕は半端でない時間がかかる。そのうちに王子様から網が届いたら、お古はアンデがもらえる話になっていた。とりあえず今は、このボロを使うしかない。


 俺が最初に鰭で解いてやったので、作業的には少しは楽になったはずだ。

 俺は遊んでもらえるのを待って、じっと見守っていた。


「ブルー、悪いけど今日は手が空かないから、お友達のタコ君と遊んでおいでよ」

「タコ?」

「えーっと、タコじゃなくてなんだったけ」


「タコ魔人君ならクラーケンだけど」

「そうそう。クラーケンだったわ」

 ズルっ。アンデが座ったまま、軽くズッコケる。


「あのなあ、エニス。なんでクラーケンとそんなに馴染んでいるんだ?」

「だって顔見知りだし」


「アンデ、タコ魔人君は人を襲ったりはしないから。第一、人間なんて食べでが無いし。今度紹介してあげるよ」

「いるか!」


 アンデにはカルシウム剤を作ってあげたほうがいいかもしれない。カルシウムが足りないと怒りっぽくなるから。あれ、なんでそんな事を知っているんだろうな。


「じゃあ、ハインリヒ王国の姫様のとこにでも遊びに行こうっと」

「そうしなよ」

 俺は鰭を振って、2人に挨拶をして海に泳ぎだした。浜から撤収する際にきちんと下を整えていく動作も、もうすっかり板についたもんだ。


 姫様、元気にしてるかなあ~

 ボヤっとしていたら、あっという間にハインリヒ王国についてしまった。途中で、あの子達のいた崖を覗いたが、今日はいないようだ。素敵な貝殻も拾っておいたのに、残念。


 俺は王都のお城の見えるところに浮上すると、王様からもらった笛を取り出した。ウミウシの口と胃袋はでかい。小さなウミウシでも、クラゲの足なんか、つるっといけちゃうし。


 小さな笛に合わせて口をすぼめて、器用に笛を吹き鳴らした。その小さな笛で鳴らしているとは、とても思えないような汽笛のような音が鳴り響く。しまいに壊れちゃわないかな。


 しばし待つ。

「ブルー、ブルー」

 んあ。あ、いけない。また寝てた。


「あ、姫様~。遊びに来たよー。元気だった?」

「ブルーのおかげよー」


「久しいの、ブルー」

「あれ、お爺さん、まだいたの?」

 あの時の引退した騎士さんが一緒だった。


「うむ。国王陛下から復帰の要請があっての。信頼できない者も入り込んでしまう現状なので、しばらく城に居てほしいとの事でな。まだ、この老兵にもできる事があったらしい」

「よかったじゃないの~」

 姫様も嬉しそうだ。そういや、爺って言ってたな。


「でさあ、今日は何して遊ぶ?」

「そんな事をわしに聞かんでくれ」

 そんな様子を、姫様の護衛の騎士達が暖かく見守っていた。


「じゃあ、今日は船遊びをしない? 素敵な船が手に入ったんだけど」

「わあ、嬉しいな」

 姫様は興味津々のようだ。


「じゃあん」

 俺はアイテムボックスから船を取り出して、海に浮べた。


「まだ帆が張られていないけど、今隣国の王子様が用意してくれているから」

「へえ、素敵な船ね」

「栄光のマリエール号って言うんだって」


「ほう、あのマイヤール国旗艦だった船か。確かに型は古いが、立派なものじゃ。外観はむしろ昔の船の方が趣とかあってなあ」

 へえ、そうなのか。特に歳を取った人だとそう思うのかな。道理で提督が執着するはずだ。


「元船長だった提督もお気に入りで、殆どうちの浜にいずっぱりだよ」

「ほう、提督とな?」

 何かを思い出すかのような様子の老騎士さん。


「うん。キャプテン・エルーハンっていうんだって。王子様も凄く気をつかってたけど。ただの、くたびれた爺さんだよ」


「はっはっは。そうか、あのキャプテン・エルーハンの事か! かつて勇名を馳せた名船長も、お前にかかっては形無しだな」


 あの人って、そんなに有名だったの? 俺はちょっと疑惑の眼差しを向けておいた。ウミウシなんで、いつもとそう変わらないんだけど。


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