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1-37 海の男

 爺さん達が釣った魚は、お土産用に俺が保存しておいた。散々遊びまくってご機嫌な爺様達を連れてエニス島へやってきた。村の漁師さんが1人、釣り漁に挑戦している。


「ちは!」

「おお、ブルーか。お前が作ったこの竿はなかなかいいな。竿で吊り上げると身が痛まないので高く売れるからな。今日は挑戦させてもらっているよ。ん? お客さんかい」


「王子様だよ。あと、どっかの偉い人達」

「へー、そりゃまた」

 村の漁師さんは立ち上がり、帽子を取って王子様に軽く会釈したが、王子様は手で遮った。


「いや、仕事中に気を使わせて済まないな。ちょっと邪魔をさせていただくよ。こっちも今日は偉い人達の接待でな」

 王子様ってば、相変わらず人間ができているな。

「王子様というのも大変ですなあ」


 この王子様は、村にしょっちゅう来ているので、村人にもすっかり御馴染みだ。いやったい人ではないので、みんなからは好かれているようだ。確かに、こういう人が次の王様なら皆も安心だよね。


「まったくだ。ウミウシの相手までしなくてはならないとは思ってもいなかったぞ」

 あ、何気に酷いな。まあいいんだけれども。俺にも、もう少し優しくてくれてもいいと思うの。国民じゃないから税金とか全く払ってないけどね。


「これは面白いのう」

「いかだスタイルの人工の島か」

「下に大きな魚が随分おるな。魚はこういう物の下に隠れる習性があるからな」

「このデッキは素晴らしい出来だな」

 おお、爺さん達には凄い評判だぜ!


「じゃあ、海底牧場視察ツアー始めますよ~」

 視察というか、ただの水中観光なのだけれど。


 今日のゲストは10人。王子様と提督を入れて、全部で12人だ。護衛の騎士とかまったくついてきていないんだが。毒見役の人も来ていないし。まあ俺がいれば、よっぽどの事はないんだけれど。


「じゃあ4人一組で行きますねー」

「よっし、わしが一番乗りだー。皆の者続けー」

 そう大声で叫ぶのは提督だ。海の男はやかましい。広い海の上では波が五月蝿いし、音が拡散しちゃうからな。


 普通はお客様を優先するもんなんじゃないの? と思ったが、誰も異論はないらしい。むしろ、あのノリに乗っかっている感じだ。王子様はやれやれといった感じで見ている。まあ提督が相手してくれているから、王子様は楽が出来ているんだけどな。 



 例の球を作って爺様たちを次々と案内していく。今日は3球まとめてのご案内だ。

「おお、なんという景色だ」

「これはまた美しいのう」

「冥土の土産とは、まさにこの事か」


 もうお迎え準備が出来てる方もいるようだ。こういう案内の仕事ってなんていうんだっけ。ノウキョウ? うーん、よく思い出せないな。


 王子様だけは真剣な表情で見ている。ちゃんと視察しているのはこの人だけだな。後の人は引退して暇だから、頼まれて名前貸しみたいな感じに参加している人達で、遊びに来てるだけなんだから。


「うーむ。育てる漁業……海底牧場か……」

 本当に生真面目だな。そういう性分なんだろう。この人は、もう少し妹のオデッサ姫みたいでもいいかもしれない。


 もう、すっかりご機嫌な爺様達がエニス島で酒盛りを始めた。接待役は王子様と村の漁師さんだ。他にいないしね。王子様も頑張って料理の仕度とかをしていた。何か手慣れている感じがする。普通、王子様には出来ないよね。やっぱり苦労人だなあ。


「済まないな。仕事中だろうに手伝ってもらってしまって。まさかいきなり宴会を始めるとは思っていなくて、供の者を連れてきていなかった」

「いえいえ、ちゃんと沢山お礼をいただけますので」


 漁師さんはニコニコして、仕度をしている。俺も大きな魚を捕まえて捌いたりして、ちょっとお手伝いした。


「浜鍋じゃあ、浜鍋をするのじゃあ」

 提督が1人で張り切っている。なんか色々食材とか仕度を持たせられたと思ったら、2回も宴会するつもりだったのね。


「ねえ、王子様ってそういう仕事もするの?」

「王族ともなれば、国を守るために戦場に出る覚悟は要るさ。そんな時、世話をしてくれる奴がいるとは限らない。子供の頃から叩き込まれてるよ。場合によっては1人で逃げ延びねばならんかもしれんしな。実際に役に立つのはこんな時だが。あ、そっちの調味料取ってくれ」

「はいよ、王子様」


 金髪イケメン王子が腕捲りして、漁師のおじさんと並んで調理してるのは、ちょっと違和感あるなあ。


「おーい、ブルー。ちょっと小魚獲ってきておくれ!」

 提督から声がかかった。

「はーい」


 小魚をぶつぎりにして放り込んだ方が、鍋に味もよく出るらしい。俺なら隠し味に毒を一垂らしなんだが。俺は鍋にしたりしないけどね。


 俺はウミウシ糸で編んだ細かい網で、さっとその辺を一掬いしてやったら、結構な数の魚が手に入った。デッキの上にザバザバ開ける。提督は、それをひょいひょいと拾い上げては、手慣れた感じで処理してザクザク切っていく。


「提督もお料理上手だね」

「わしも昔は何度も海を流されてな。魚を獲っては、捌いて生き延びた。まあ手慣れたもんだて。船でも料理の一つも出来ん男などに用はないわい」


 この王国の偉い人って料理ができないと駄目なんだな。俺はウミウシだから関係ないけど。やっぱりご飯は生で丸齧りや丸呑みが一番さ。


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