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1-14 お姫様

 俺は景気よく突っ走って2時間くらい過ぎただろうか。

「おっと、止まれ、止まれー。王都を通り過ぎてしまうわい」


「はーい、次の停車駅は王都前、王都前ー。慌てないで、ゆっくり御降り願いますー」

 俺は軽くボケをかましつつ、スピードを落とし止まった。


 確かに、陸地の方にお城が見える。少し高台にあるようだ。あれなら津波とか来ても安心かな。もっとも敵に攻められないようにするためだろうけど。王様がいるのが宮殿じゃなくて城だもんな。物騒な世界なのに違いない。俺はなんで、そんな事を知っているのかな。


「それで、これからどうするのー。お姫様連れてきてもらわないと治せないけど。どんな具合かよくわからないから。この間は普通に怪我を治すポーションにしたんだよね」


「そんなに色々あるのか。では、わしが城に行って話をしてこよう。お前が隣国から来たという何か証があるか?」


「うーん、この親書でどう? それか、こっちが昔この国が贈った古い剣とか。あ、あと病気が治るのかどうか信じないといけないから、これ持っていって」


 俺はポーションを満たした、鰭の先っぽを堅くしてポキっと折って渡した。これは折ると、折ったところは固まって中身が零れなくなる。


「これは注射器みたいに使っちゃ駄目だから。中身を垂らして使ってね」

「ちゅ、注射器とは一体なんじゃ?」

 そうか。この世界には注射器が無いんだね。この世界?


「この先をプスっと刺したりしちゃ駄目だって事さ。血管に空気が入ったら死んじゃうからね」

「お前は、ウミウシのくせに物知りじゃのう」

「一応は、叡智の塊、ドラゴンですよ~」

 ちょっと体の大きさに比べて脳味噌の割合が足りないけどね。


「じゃあ、一応全部持っていくとしよう。ここで待っていておくれよ」

「じゃあ騒ぎになるといけないから、海の中にいるんで戻ってきたら呼んでねー」


 爺さんを浜に送り届けてから、俺は沖へ泳いでいって海中へと潜り、貰える褒美を何にしようかと考えることにした。やっぱり、俺の美しさを引き立てる何かがいいよね~。俺は口の端に不気味な笑みを貼り付けながら、ずぶずぶと海中を漂っていた。


「……おーい」

 ん? 今、誰か呼んだ?

「おーい、ブルー。どこじゃあ~」

 あ、いけね、爺ちゃんが呼んでる。


 俺はザバーっと海上に顔を出して、鰭を振った。

「ここ、ここー」

「なんじゃ、そんなところにおったのか。何しておった」

「いやあ、寝てたっぽいねー」


「やれやれ。国の一大事だというのに」

 爺ちゃんにボヤかれてしまった。だって、ボーッとしていると眠くなっちゃうんだもの。見れば、立派な馬車を連れてきていた。御付きの馬に乗った騎士達も帯同してきている。


 馬車の扉を騎士が開けて、中から王様らしき偉い人が現れた。

「お、おおー。これは正しく伝説のブルードラゴンではないか。おい、お前。お前は姫を助けてくれるというのか?」


「うん、いいよ。治るかどうかはよくわからないけど。それで俺と友達になってくれるんならねー」

「いいとも、いいとも。姫の命を救ってくれるというなら。それに何でも言う事を聞いてやるぞ」

 王様は両手を握り合わせて、それはもう必死で、拝まんばかりの体勢だ。


「あ、念のために言っておきますけど、お姫様はお嫁さんにいらないからねー。僕らは雄雌とかないから、お嫁さんにとか言われても困るのよ~」

 見事に、全員に苦笑された。


「誰もそんな事は言っておらんわい。まあ、お話には魔物が姫を寄越せというものはありがちではあるがな」

「魔物ではなくて、ドラゴンですよ~。あれ? ドラゴンは魔物になるのかな??」


 俺はちょっと混乱した。お話によっては、神様だったり、悪い魔物だったりするよね。俺の場合は、正体がウミウシだったりするんだけど。人を治してあげたり、毒魔物を退治してあげたりするから、益虫いや益魔物?

 まあ海で暮らしているんで、人間とあまり接点がないのが普通なんだけど。


「ああ、よいよい。この国では、ブルードラゴンは人を助けたりする良い生き物という事になっておるのだから。しかし、お前みたいによく喋るとは伝わっておらなんだ。他のブルードラゴンもそうなのかの」

 王様も首を捻っているが、俺もよくわからない。


「さー、他の子に会った事はないから。でも、その方がいいんだ。へたに小さいうちに出会うと共食いになるから」

 俺の話を聞いて、またもや王様達が苦笑する。


「そ、それでは姫を見ておくれ」

 騎士達が、馬車の中に寝かされていたお姫様を大切そうに運び出してきた。お姫様は、青い顔をして目を瞑って小さな息をしていた。


 まだ子供の姫様だ。7歳くらいかな。金髪で可愛らしい顔をしている。きっと凄く可愛いんだろうに、病気のせいで今は見る影もない。若い侍女さん達が心配そうに付き添っている。


「ふうん。これは、よくわからないけど、体力回復のポーションを使って、それからまず汎用のヒーリング・ポーションで様子を見てみますか。そこの人達、お姫様から毛布を剥がして、少し下がって」

 俺は鰭をヒラヒラさせて、指示を出した。


 みんなが固唾を呑んで見守る中、俺は上肢に当たる鰭を突き出して、体力回復を行なうポーションを一垂らし。

「ファイトー、いっぱーつ!」


「なんじゃ、その掛け声は」

「あー、なんだったけな。思い出せないや」

 何か、とても有名な言葉だったような気がするんだけど。全ては霧の中だ。


「う、う~ん」

 お姫様が、気がついたようだ。

「おおっ! 姫。姫が意識を取戻したぞ。ああ、実に半年ぶりの事だ。でかしたぞ、ウミウシー!」


「一応は、ドラゴンですよー」

 うーん、みんなすぐに本音が出るよね。いつもは、気を使ってくれてるって感じだろうか。まあ、その心遣いには感謝しておこうかな。


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