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1-13 揉め事の理由

 待つ事しばし。ただ待つのもなんだから、俺は歌を歌う事にした。もちろん、俺の美しさを讃える歌だ。いつか、素敵な相方に出会ったら捧げたい。


「僕はブルー、海のドラゴンさ~。

 素敵な青、海よりも空よりも青い~。

 美しき者、それはブルードラゴン。

 それは僕らの事さ~」


「な、なんじゃあ。調子っぱずれの歌が聞こえると思ったら、こんな怪物が! いや待て。ブルードラゴンだと? これがあの伝説の!?」


 いきなり後ろで驚いたような声を出す人がいたので振り向くと、少し髪が白くなった初老にかかろうかという男性が、こっちを覗き込んでいた。調子っぱずれ……。


「ああ村長さん、来てくれたんですね~。こんにちはー、如何にもブルードラゴンですよ~。ウミウシと呼ばないでくださいね」


 言われないように、先に突っ込んでおく事にした。いくら脳みそが小さめだからって、少しは学習するのさ。


「わしは村長ではない。その子達の隣の家の者じゃ。村長は今留守にしておっての」

「へえ。いや、話のわかる大人なら誰でもいいんですが」

「変わったウミ……いや、ドラゴンじゃのう」

 ちゃんと言い直してくれるあたり好感が持てるな。


「いやね、王子様からお使い頼まれちゃって。今、隣の国と揉めちゃっているの知ってます? お隣の王子様が頭抱えちゃってまして」


「ああ、その件か。そうさのう。ちょっと、ややこしくなっておるかもしれんが。まあ、そうたいした話じゃないのだ」

 おじさんは、ひょいっと首を竦めてやれやれといった格好をした。


「へえ? でも使者の船が来ても、大砲撃って追い返しちゃうそうじゃないですか。来る途中で軍艦が頑張っているの見たよ?」


 おじさんは考える風で腕組みをしていたが、俺の方をチラっと見ながら言った。

「贈り物を持ってきたと言ったな」

「うん、それとお手紙もねー」


「うーむ、なんとも難しいのお。王様も、ここのところ色々あってな。疑心暗鬼というか、人が信じられなくなってしまっておるのだろう」


「それは弱りましたねえ。じゃ、お手紙とか渡してあげても、受け取ってもらえそうもないね」


 どうしたもんだろうか。俺も、ちょっと鰭で頭を抱えてみた。いや、なんとなくやってみただけだ。俺は別に何も困らないもんね。正直言って、今褒美で特に欲しいものなんてないんだから。


「そうよのう。王に心を開いてもらわん事にはの。隣国と関係を悪くしたままでいい訳はない。貿易だってできないから、そのうちに景気も悪くなってしまうじゃろう。本当に困ったものだのう」


 おじさんは溜息をついたが、エイミーはくるくる回って両手を後ろに回すと、体をくねらせて上目使いで無邪気にこう言った。


「じゃあさ。ブルーが王様のお友達になってあげればいいんだよ。お友達からのプレゼントなら、きっと受け取ってくれるわ。ドラゴンなら損得関係があるわけじゃないから信用できるんじゃないかしら」


「うーん、それは悪くない考えだけど、どうやってそこまで持っていくかだよねー」

 なんていうか、俺の足りない脳みそじゃ無理でーす。もう諦めて帰ろうかな。そう思った時、ガヤガヤと騒がしい声がしてきた。


 騎士のような格好をした白髭のお爺さんが数名の村の男達を連れてやってきた。

「通報があった化け物とは、こいつの事か!」

「失礼な。俺は、ただのいたいけなウミウシちゃんですよー」

 エイミー達3人が呆れたような顔をして俺を見ていた。


 だ、だって、しょうがないじゃない。向こうが化け物だって言っているんだから、ドラゴンを名乗っちゃマズイでしょうにー。ここで揉めるとヤバイのー!


「隊長、これは伝説に言うブルードラゴンなのでは。もしかすると、姫様のご病気を治してくれるかもしれませんよ?」

「なんだと? そうか! 確かブルードラゴンは」


 なんだろうな。ドラゴンを名乗ってるとウミウシ扱いされるんだが、ウミウシを名乗ったら勝手にブルードラゴン扱いするんだけど。姫様のご病気?


「おい、ブルードラゴン。お前は、伝説のブルードラゴンと同じように、人の病気を癒したりできるのか?」

「うーん。ポーションを使えるだけなんだけど? この間、使ってみたんだけど、結構色々な怪我や病気には効果はあるよ」


「う、うむ。実は、この国の姫君が重いご病気でな。手を尽くして治療法を探したのだが、色々な奴に騙されてしまってな。すっかり人を信用できなくなってしまったのだよ」

「へえー」

 俺は何も考えていないので、ポケーっとして一言で済ませる。


「い、いや、お前な。いやもうお前に言ってもしょうがあるまい。どうだ、王都へ行って姫様を助けてはもらえまいか。褒美は思いのままだぞ」

 その人は縋るような顔をして、俺を見つめた。


「いや、俺も王様に用事があって来た訳なんだから、それは一向に構わないんだけどさ。俺がそのまま行っても追い返されちゃうよ。誰か、王様に話が付けられる人が一緒じゃないと」

 そう聞くと、お爺さんは進み出て言った。


「わしは、こう見えて昔は城で仕えていた騎士じゃった。もう歳じゃでな。引退を申し出て、生まれ故郷へ帰って、村の守備をしておったのじゃ。まだ城に顔見知りの者もおるだろう。しかし、どうやって行くかの。城は遠いぞ」


 俺は、例のドラゴンライダーセットを取り出すと、背中によっこいしょと背負った。

「これに乗ってくれる? 王都は海沿いかなあ」

「ああ、そうじゃ。しかし、これは大丈夫なのか?」

「快適よー、エニスはこれが大好きなのさ」


「お、お手柔らかに頼むぞ。わしは年寄りなんだからな」

 鰭エレベーターでゆっくりと背中に降ろし、お爺さんが乗ったのを確認してから俺は発進した。


「じゃあ、エイミー、トニー、おじさんもまたね~」

 崖の上から手を振ってくれる3人に軽く尾鰭をパタパタして挨拶しがてら、そのまま鰭を高速で動かして加速する。


「う、うお! 速い速い、というか速すぎるー」

 騎士のお爺さんが大慌てしている。

「なんのー、まだまだいけるよー」


 俺は景気よくスピードを上げた。今時速120kmくらいかなあ。水中をスーパーキャビテーションで進めば、もっと速いんだけどな。

「うおー、むむう。何のこれしき。陛下ー、アイリス姫様あ。今、爺が、爺が参りますぞー、うっぷ」


おっさんのリメイク冒険日記2巻、好評発売中。

よかった。割と好評で、本当によかった(軽く冷や汗)


http://books.tugikuru.jp/detail_ossan.html

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