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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『――あなたは、この世界を敵に回し"世界を救う"勇気はあるの?』

  




 家電から日常の暮らしに至るまで、総てが完璧に処理されている近未来。

怪しくも煌びやかなネオンで綴られた都市を繋ぐ幹線道路を挟むように、遥か先に光明な光が束になる港付近上空を航行する船舶。

 それ等を仰ぎながら警備員らしき者たちが、行き交う様子が映る。施設関係者のみなのか。

都市の規模の割りには一般市民らしき人影は人っ子一人見当たらなず、総てに置いて管理されているのか。






 都市中央部から少し離れた一角に聳える、既に放置されたビル街の中、薄汚れた大気が遮る空を一人仰ぐ青年の姿がネオンに照らされる。



「うっへぇ……連合軍UH-602多目的攻撃ヘリじゃんかよ!だから俺はいやだと言ったんだよぅ賭けに負けたから和美め」




 ぶつくさと、手持ちバックを両手でかばいながら文句を吐き捨てる。

 時折地上から吹き上がる風を気にしながらも、バック内に大事にしまう小さなカメラを気にしつつ、小走りでビクつきながら廃墟ビル外観に設置された螺旋階段を手摺付近に身を潜める。

激しい風切り音に混じりながら自身の位置に近づく機械音の方角を注意し、瞬間的に眩い照明を照らし、同時にローターから来る激しい突風と喧しく響くスキール音と共に、右にバンクしながら滑空する警備ヘリが通過。



「ったくさぁ。お前ら国連の癖に捕まえる相手はヴァ―デンの方だろっ!」



 四角になる柱と壁の影から身を乗り出しては、激しさを増すローター音を良い事に、視界を横切る警備ヘリに文句を吐きつける。



 丁度最後の後続機が向かいのビルの陰に隠れるのを横目で確認しつつ、頭上役24ft(フィート)先に見える錆び付いた踊り場まで、一気に駆け上る。


 遥か先にまで警備ヘリ数機が離れた所を有視界で確認した後。最後の一段を飛び越えながら躍り出た広場、更にその先の視界に映る手すりまでゆっくり歩み、遥か数十キロ先まで広がるパノラマを仰ぐ青年。



「よしっ、何とか撮影場所たどり着く事は出来たけれど、それにしても…なんっつーか、天井からの街並み、綺麗だよな、たしか昔同じ景色見た事あったな」


 

 踊り場の手すり沿いをゆっくりと歩む。天井に広がる都市の夜景たちが、キラキラと霞む。都市と都市の間をまるで、川か海のような空洞が挟み。



事実上、そこの空間から僅かはわかりだが星空スケッチをリアルに楽しむ事が出来る唯一のスポットに幼少の頃垣間見た思い出にふける。



 しかし、その思い出とは裏腹に、突きつけられた現実リアルに再びやれやれと両肩を落としながら 空中に浮かぶ施設をじっと眺めるのだ。

 その外出禁止令と綴る電光掲示板が"それ"を物語るように――

自由を求めようと仰ぐ青年『霧島(きりしま)駿(しゅん)』の、心の奥底に、けして抜くこともままなない鋭い杭が深々と突き刺さしてある現実を。




 ―――そう、もう駿達を含むこの星に住む受任は"絶対者"と謳われる神の管理下でしか生きる事が出来ないのだから……




                     ▽



 西暦と謳われる時代が終焉を迎え、人類が希望に満ちた新世紀を自分達の手で歩みだしてから半世紀――

 AU167.4.03太陽系外周起動から突如接触して来た未知の”ナニカ”により人々の約束された未来は、永遠に続く闇に閉ざされる。



 星間国家ヴァ―デンヴュオニルク帝國による銀河方面での統治……すなわち、彼らの組織の一員として、教育から総てに置いて、彼らのしきたりを強制。逆らう者は、国家反逆として、処分の対象とみなす。



 培ってきた、歴史や栄光――夢や絶望までもすべてを暗闇の中に放り込まれた人類と謳われた一種族は、事実上滅亡し、彼等の管理下の下でしか生き残る事は出来ない。翼を捥がれ漆黒の闇の中滅ぼされるのをじっと待つしかないのだから――



「あ、そうだ!とにかく今は星空を、あの"タブー"の蒼い星をバッチリ撮影してからこんな危険地帯とはおさらばしなくちゃ」




 ギラリと夜空を照らすネオンに天井を囲まれた彼が今現在住むこの都市も、かつて自分達が自由に過ごしていた時代での古い工業用コロニーであり。ある噂ではあるが、かつて人々が住んでいたと伝えられるある星を撮影するのにバックからちいさなカメラを取り出しては夜空を眺める。

 しかし一向に肝心の星が見つからない所か、警戒レベルを上げるように下方やその他からかいつの間にか賑やかに増えつつある警備員や武装する装甲兵がまるで今現在外出禁止令をやぶる自分を探しているかのような惨状になっているのだ。


 再び遥かビル街の向こうからこちらの位置に旋回軌道をする数機のヘリの様子を持っていたカメラのバインダー越しに視認。



 ――刹那!眩いサーチライトがこちらをとらえ、警告を促す前に数発の20ミリ機関砲がすぐ脇を掠める。



『警告!警告!第56条。特定のIDを持たない部外者はレジスタンスと皆し拘束する。無駄な抵抗はやめて大人しく投降せよ!』



「って?やっばァ!?」



 初弾による牽制で着弾し、入り組むようにめくれ上がったリノリウムに片足を突っ込みバランスを崩す。

 そのまま転がるように転倒し、気が付けば警告云々もお構い無しに眩く閃光が頭上を掠め、無造作にコンクリート片が散らばり乾いた音を立てながら無数の薬莢がばら撒かれる。



 豪快に転がりながらも足元に力を込め、追尾する数機のヘリから必死に逃亡。

壁や床を粉砕し尚も容赦のない機銃掃射は続く。まるで彼等は一人の学生をいたぶりながら楽しんでいるかのように。

 冷や汗を拭き取る間を与えず本来は寸分狂わぬ命中弾をピンポイントに撃ち込む事で逃亡する青年の足を止める事が可能なのだが。



「うわわわわっ!ヤバイっマジヤバイってぇぇぇ!?」



「そら、レジスタンスのクソガキ。ここで終点だ、さあ武器を捨てて大人しく…」



「って!?待ち伏せかよっ。こらっ、離せよ」



 踊り場からヘリに追われ、彼の命からがらの逃亡劇は意外な終焉を迎える。

 必死に廃墟ビルに設置されたテラスから内部に転がりそこで待ち伏せする数名の警備員に難なく取り押さえられる。



彼の持ち物でもあるバックをテロが使用する武器と勘違いしたのか、抵抗する彼から力任せに奪い中身を確認する。



「か、返せよっ。俺の大事な…」


「なんだ、只のデジカメか?」



「もしかして小型の爆弾が仕掛けてあるかもしれん、油断は禁物だぞっ」



「つーか、なにもないと思うんすが……って?聞いてねー…がァァ!けほっ!かほ…」



「散々俺たちをかませやがって!このクソガキはぁ」



 煥発入れず一人——又二人と警備員達は、何の抵抗も出来ずにいる駿の腹や背中に露骨な小銃を叩きつける。同じ同族でもある青年をまるで何のためらいもなく拷問のような仕打ちをする。



 ――逆らう事は許されない、迂闊に良心を持てば自身やその家族にも災いが降りかかる。




 ――絶対者であるヴァーデンヴュオニルクが下す法律に従うしか、彼等や家族にも生きる術は無いのだから……
















                    ▽










                    ▼




 ――なんだかとても懐かしい歌声が聞こえる。



 あれ?ここは、



 そっか、俺。あの時無謀なチャレンジして。ハイスクールで常に孤立し、皆わざとスルーされる俺の幼馴染みのあいつ、『小菅(こすげ)和美(なごみ)』…



 その日初めて、皆にアピールした唯一の一言が逆効果になって。




 あいつは何時もいつもじっと一人で泣いていた。




 そんなあいつを助けてあげたかった。心の支えになりたかった。




 でも現実は残酷ながら俺は只あいつを見守ることしか出来ない。ほんっと最低野郎だ。




 そんな矢先、あいつは自らの壁を破り、決心するように皆に意志を伝えようと必死な姿を見て、俺は心の底から嬉しくて…





 その結果がこんなざまとは、泣けてくるよな、ヘタレな俺。もうこのまま奴等にレジスタンスと間違われ、処刑される。




 でも。




「――ん――しゅ――」




 ――それでも俺は!あいつの




「こらっ!"駿の助"]




「ひぃっ、ごめんなさ…って?なんだよ和美?」



 幼少の頃でのある一言が突如耳元に響き、駿は我に返る。そのワードを唯一よく知る人物の心配そうにのぞく顔がアップに映るも未だ志向が混乱する彼に尚も拍車をかけるのだが、ヒンヤリとした感覚が額を伝う。自身を取り巻く箇所に転がるナニカ。

 紛れもなく先ほど自身を甚振っていた警備員達だった者が、間近で至近弾が炸裂したような惨状で横たわっている。

 それに気づきつつ彼の脳裏に刻むように――オレンジに輝く翼を携える機体が爆風を撒き散らし視界の遥か上空に螺旋を描き高度3000フィートまで上昇し、電光掲示板を携えた浮遊物を豪快に撃破して行くさまが映る。

 


 そう、機体の主翼に描かれた鮮やかなオレンジのpumpkinをモチーフにした反乱軍だの希望の紋章を――



「えっと…まずは、駿の命がけの敵の最重要機密場所の特定に感謝…かな」


「えっ?最重要って、それに和美?おまえ」


「うん、学校でのあたしとのギャップに戸惑ってるんでしょ?」


 駿は、今まで自分が居た現実リアルと、先ほどまでの警備員からの逃走劇、それに非人道的拷問に意識を失い気づいたらいきなりの幼馴染の登場と、彼女自身あの噂だけ聞くレジスタンスに属していた事実。そして、今日のハイスクールにて無謀な星空スケッチ事態レジスタンスでのヴァーデンの浮遊レーダー施設偵察及びピンポイント迎撃作戦に加担してしまった事実。



 『Operation‐pumpkin』それの意味するワードこそ、絶望に満ちたかつてこの星の住人である人類の唯一のけして消えてはいけない希望の灯である事。

 平和だった時代、子供から大人まで楽しんだ遠い記憶の彼方に置いてきたある仮想行事での祭り事。



 ――何時か溢れる人々の笑顔を取り戻すため、決して揺るがない強い意志で和美は、駿の瞳を見つめ、一つの質問を問う…




『――あなたは、この世界を敵に回し"世界を救う"勇気はあるの?』



 薄っすらと滲む朝焼けに映る程よく伸ばした茶髪、そして自身に真剣な眼差しを向ける和美の菫色の瞳。、霧島 駿 がその彼女の問いかけに対する答えはもう決まっている。

 世界がどうとかそんな大それた事云々よりも確実な答えを――



 言うまでもない、あの小さな肩を支え彼女の笑顔を再び取り戻す為に俺はどんな強大な敵だろうと守り抜くと――




 End

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界の荒廃感とそんな中でも駿が必死に星空の写真を取ろうと奮闘する姿が良かったです!
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