8 初クエ
中央広場に戻った。懐中時計に目をやると午後一時半を回ったところだった。
昼飯の時間だが…まだ昨日の夜ご飯がお腹に残っているから大丈夫か…変な感じ…
「凛?腹減ってないか?」
「別に大丈夫だけど。…夜食沢山食べてたし…」
夜食…おおかたカロリーメートだろう。
ま、大丈夫ならそれでいい。
「おーいじいさん。もう出てきていいぞ。」
「…」
「じいさん?」
「むごっ!どぼじだ?(どうした?)」
何か口にいれてんのか…
「…飯食べてたのか?」
「ゴックン…ああ、そうだが…」
道理で静かだった訳だ。
てか、食べる必要あんのかよ…ま、それは置いといて。
「取り敢えずギルド登録済ませたぞ…あれで良かったんだよな?」
いろいろ腑に落ちない点があるが…
「まぁ…細かいことは後だ…それで?クエストは…」
「宿二部屋一泊分と夕食の代金分の薬草の採集クエストを…」
「採集ねぇ…」
なんだよその反応は。
「…まぁ丁度良いのがあったならそれでいいだろう。」
「わ、私はもっといいクエスト選んでたんですよ!」
ドラゴンとか論外だからね。
「最初は慎重にな…開花で強化された体に慣れなくてはいけないからな…」
…ここに来る途中の事を言っているのだろう。
そういえば慣れるのには時間が掛かるって言ってたな…
「それで、詳細は?」
「回復の緑草30束、攻転の赤草10束ってありますけど…報酬は5メガです。」
「ふむ、大して珍しい物では無いが…生えてる場所が面倒な上にちと要望数が多いが…5メガならまぁ…適正か。」
さらっとメガメガ言っているが価値が解らない。ま、後でいいか…
「で、どこ行きゃいいんだ?」
バサァっとさっき貰った地図を広げる。けっこうデカイ。
──どれどれ…
表面には円形の街がいっぱいいっぱいに。裏面には30%が街で後は周辺の事が描かれている。
表の街全体マップはけっこう細かく出来ているようだ。しっかり店の名前や街道の名前等が書かれている。…中央広場ってほんとに街のど真ん中なんだな…ここから綺麗に八方向に城壁に繋がる直線の大通がよくわかる。
裏は街は簡略図で、周辺の山々や道、湖、森などが描かれているる。ついでに一言メモも。親切なことに主に何が採れるか。何処にどのようなモンスターが出やすいか等が書かれている。モンスターの名前は俺には解らないが一緒に強さも書かれているから便利だ。
──さてさて薬草は……
「薬草は水が綺麗な所にしか生えなくてな…回復は特に綺麗な所…攻転は尚且つ険しい場所。するとだな…」
なんと!懐中時計からレーザーポインターのようなもが出て地図の中の一つの山に向かってサーッと移動しかけて…
「ここら辺がッ…」「風吹ッ!ここじゃない?」
レーザーポインターより早く凛が一つの小山を指さした。
「…う、うむ…おそらくそこだ…」
「やった!」
凛が嬉しそうに笑った。じいさん…
……可哀想に。
「…危険は無いみたいだが…チョイと標高が高くて険しいな…」
「ここまで戻ってくるのにどんくらい掛かる?」
「ウーム。おそらく4時間は…あまり街からは遠くはないが山だし、採集数が多いからな。移動に往復3時間、採集に一時間。そんなもんだろう。」
ふむ…日没までには戻ってこれるな…
…4時間となると水が欲しいが…
じいさんが察したのか、
「さっきも言ったように水なら山にいくらでもあるぞ?」
ああ、そうだった。
能力あるし一時半位耐えられるだろう。
「じゃ、行くか」
「うんっ!」
いくら採集クエストでも楽しみなようだ。
「よしっ!私が道案内をしてやろう!!」
やっとちゃんと仕事が出来そうだ!とばかりにじいさんもやけに張り切っている。…さっきから凛にとられっぱなしだからな…
「道案内よろしくな。」「お任せあれ!」
「行こう行こうッ!」
初めてのクエストが、
始まった。
***********
俺達が中央広場まで通ってきた道と丁度ロータリーを挟んで向かい側の大通を歩いて城壁の外に出た。今歩いているのはさっきの大通と繋がった外の大きな道から少し外れた小さな道。
こちら側も大して景色は変わらないが遠くの右斜め前方に山が見える。
…ま、普通レベルの山かな。
どんどん大きな道から離れて行く。
「この道をしばらく道なりに進むと右に枝分かれするからそちらに進んでくれ。」
「はいよ…」
一時間後、特に何の会話もなしにとにかく歩き続けていると右手に道が出てきた。もう大きな道は完全に見えない。
出てきたと言うのはそこから木が生い茂って草が腰くらいの高さまであるからだ。…もはや獣道。
草独特のあおい匂いがプンプンする。
「…ほんとに合ってますよね?」「それな」
「確かだ!…どうやら全く人が来ないようだな…」
若干心配しつつ道なき道を草を掻き分けながら進む。
「モンスター本当に居ないよな?」
索敵を疎かにしてはいけない。
「…私の感覚だと危険生物は周辺にいないようだが。」
なんだそれ。生物センサーかよ。ま、居ないって言ってるし信じて進か。
「で、どこら辺に生えてるんだ?」
「殆どは水源の近く等に生えている筈だが。」
「ふーん…」
段々上り坂になってきた。
…どんどん険しくなってくる。岩場を登る事もあった。
凛に手を貸しつつ登っていく。
流石に疲れて喉が渇いてきた…ン?
俺の鋭い聴覚に引っ掛かる音が…地味にFPSゲームは音も重要なのだ。
足音や銃声を聞き分けてして敵の位置を把握したりするのに使う。ある意味『音ゲー』と言われるくらいだ。
…とまぁそんなことは置いといて
「水の音…」
水がチョロチョロ流れる音が聴こえる。
「…何も聴こえないけど」「聴こえないが…」
「こっちだ!」
参道を外れて横に進む。木々の間から見える景色から丁度山の中腹だろう。少し開けた空間に出た。
「「おおー」」
「ビンゴ…」
滝…とまではいかないが急な斜面を水がサラサラ流れている。
その周りには綺麗な黄緑色の草と紅色の葉がひしめくように生えてる。…これで足りるかな…
「よし、採るぞ。」
*****
凛の大剣で切るわけにもいかないので俺がサバイバルナイフで薬草を切って凛がまとめて数える。
「29…30…うん、全部揃ったよ!」
「ふぅ…」
以外と茎が太くて苦労した。
合計で45本も切り取ったのに余り減って見えない。
「無事、達成かな?」
おいジジイ。フラグを立てるんじゃない。
「「…」」
俺と凛はバカではないのでこれ以上フラグを立てないように黙る。
「ん?どうした?無事に終わっ………」
迷わず懐中時計の摘まみを引く。
これ以上いくと死人がでる。
「……よし、凛。水も飲んだし戻るぞ。」
「うん」
俺と凛は迷わず山を降りて行った。
*****
見事にフラグ回収…
ということもなくもうそろそろ街に着きそうだ。
「夕焼け…綺麗だな…」
「綺麗だね…」
平原の奥にある山脈に夕陽が落ちていきそうだ。
緑の草原が綺麗に光っている。
大きな城壁も燃えるような赤色に照らされている。
…東京から出ない俺達…いや、そうでなくても見れない光景かもしれない。
「異世界だなぁ…」
「そうだね…」
単調なやり取りをしているうちに門の側に着いた。
すると門の側にいた衛兵?さんが。
「お二方~!入るなら早く入って下さーい!」
…?凛と顔を見合わせたが取り敢えず走って門をくぐった。
「何かあるんですか?」
気になる。
すると気の良さそうな衛兵さんが
「え?ああ、この街は初めてですか?この街は日没前に門を閉じるんですよ。ほら。」
本当だ。門の左サイドにある大きな長方形の出っ張りは何かと思っていたが…そうゆうことか。
あの出っ張りのからスルスルと木製の大きな板…と言うか壁がスライドして出てきた。徐々に隙間が狭まって行く。
「夜になるとモンスターが活発になりますからねぇ~こうやって閉じるんですよ、全部の門をね。他の街も似たようなもんでしょう?」
「…そうでしたね…」
当然知らない。
「では。」そう言うと衛兵さんが門の所に戻っていった。
…もう日没に近い。
懐中時計を見ると現在六時五五分。
腹も減ってきた。
「凛。ちゃちゃっとギルド行って換金しようぜ。」
「はぁーい…」
ベルトで縛った薬草の束を担ぎ直してギルドに直行した。




