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あの、FPSゲーマーですけど。ジャンル違うんですけど。  作者: きょーま(電傳)
第三章 ありんこ達をやっつけろ!!
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73 最終確認

 アデネラから東に約2キロの大草原。いつもなら草食モンスターが闊歩し馬車道は荷車で溢れている所なのだが、今は生物の気配すら一切無く、そよ風が吹き抜け草を波のように揺らしているだけ。だが、地中には巨大蟻の巣が張り巡らされ、無数の蟻達が這い回っている事を忘れてはいけない。一見平和に見えるのだが、蟻の存在を考えるとなんとも不気味な空間であった。

 そんな草原を前にして、我らギルドのハンターと調査団は拠点を設置してハンターが集結していた。拠点と言っても簡易的な物で、屋台で使うようなテントを幾つか立てて、机や大きな地図のボードやらを設置しただけの拠点ではあるが。


 今は拠点の設営が終わり、手持ちぶさたなハンター達は適当に集まって話し込んだり、装備を見せ合っていた。俺と凛も特にやることは無く、レイミーとイリーナさんの所にいる。そして率直な疑問を投げ掛けた。


「そういえば、カイトは?」


 完全に無視して、ギルドに置いていってしまったが……


「そろそろ追い付くんじゃないですかね。そろそろ作戦説明が始まるから、居て貰わないと困るのですが」


 大して興味無さそうに答えるレイミーがちょっと怖い。あなたが立っていられない位の腹パンを食らわしたんでしょうが……原因を作ったのは、カイトの方なんだけれども。

 すると、噂をすれば影でテントの合間から、大剣を担いだカイトがヒョコヒョコと出てきた。そしてすぐに俺達の事を見つけると、こちらに駆け寄ってくる。


「……ったく。やっと追い付いたぜ~……もうちょい手加減してくれよぉレイミー……」


 防具の上からにもかかわらず、カイトは腹をさすっている。そんなに強烈だったのかよ……


「すみませんね。僕も大事な作戦の前とだけあって、少々気が立っていたものですから」


「そ、そうか……ところでさ。門の周りに何であんな沢山人がいたんだ?なんか大通りも花びらとか、紙切れみたいなのが落ちてたし」


「あーそれは……」


 門が閉まった後からカイトは追っかけてきたのだろう。つまり、住民の応援が終わった後に通過したという事。


「まぁ、住民の人達が俺達ハンターに対して声援を送ってくれてだな……」


「はぁ?!俺、そんなのこれっぽっちも受けて無いぞ!!」


 遅れてきたのだからしょうがない。ぶつくさ文句を言うカイトをなだめていると、テントからレイナさんがやってきてカイトの肩を叩いた。


「ほら。もう集合が掛かるだから、静かにして」


「分かってるよ……」


 カイトは黙り込み、拠点中央に置かれた大地図の張ってあるボードの方に視線を送る。俺も同じようにそちらを見ると、その前に置かれた上がり台にフィナさんが登っている所だった。そして相変わらずの男口調で、彼女は指示を飛ばす。


「これより、本作戦の詳細説明を行う!ハンター達はそれぞれの分隊(グループ)に別れ、順番に並んで欲しい」


 それを受け、ハンター達の大移動が始まった。

 止まってる訳にはいかないので、「じゃ、一旦お別れだな」そう言ってカイト達と別れたものの……俺と凛は、普通の分隊員じゃないんだよな……

 何処に並べば良いのかと迷っていると、フィナさんやその部下である甲冑を着込んだ調査員達の合間にいる、白髪の少女がこちらに手招きをしていた。ミーナだ。

 取り敢えずそこに行くと、以前と変わらない弾けるようなテンションで、彼女は話し掛けてきた。


「やっ!!風吹君と凛ちゃんだねっ。私も同じ遊撃部隊だから、よろしくお願いしますね!!」


「あ、ああ……」「お願い……します」


 ミーナも一緒なのか……彼女が一体どれ程の能力の持ち主なのかは知らないけど、遊撃部隊に任命されたくらいなのだから俺と同じかそれ以上なのだろうか。まぁ、彼女は俺と違って弓適性もあり魔法も使える人だから、俺より強いのだろうが……

 

 テンションに付いていけず引きぎみに挨拶をした俺と凛は、彼女達の隣に並んだ。

 そこでは、銀ピカの甲冑で身を包んだ調査員の男達を間近で見る事が出来た。甲冑の上からでも分かるくらいの、筋肉質で大きな体は鋼鉄の鎧で覆われ、隙間(スリット)の入った兜からは表情も読み取れない。微動だにせず前を見据え、大きな(つるぎ)を腰に携えた大男達はもの凄い存在感を放っていた。俺より二周りはデカイから、身長はさしずめ2mといった所か。

 

 こんな人達と一緒に戦うのか……俺達の事を色々サポートするとか言ってたが、それもなんか怖い。

  そんな事を思っていると、俺の横にいる凛はここぞとばかりに目を輝かせて、甲冑大男達がの観察を始めたのであった。


「ほんとにこういうの好きだよな……」


「うん」


「ていうか。あんまりじろじろ見るなよ……ちょっと困ってるぞ?」


 あんまり顔を近づけて見るものだから、少しだがカチャカチャと音を立て、体が揺れていた。美少女に間近でじーっと見られたていたら、そうもなるだろう。そんな所から人間味を感じる事が出来てちょっと面白い。

 そう思ったつかの間、再度フィナさんの声がかかり甲冑男達はより一層ビシッと体を張って、今度こそピクリとも動かなくなった。


「よし、各分隊毎に並べたな。では、これより本作戦の詳細説明を始める」



∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗



 説明された事は、以前俺達も参加した作戦会議で説明された物と、ほぼ同じであった。蟻が地表付近まで掘った穴の上部を爆砕。そこから迎撃に出て来た蟻達を、各個撃破するというものである。

 蟻を逃がさないように戦線を張って戦うのだが、今回は二段構えで挑むらしく、1~11番の分隊は爆破ポイントに向かって一列目に並び、積極的に攻撃を仕掛けて行くという攻めの体制。12~22番の分隊はその後ろの二列目で、絶対に蟻を通さないよう、その場に留まって戦うという守りの体制。その二段体制により蟻を効率よく撃破、かつ街の方に絶対に行かせないという。この作戦で、目的である蟻の殲滅と街の防衛を果たす事が可能になると言うのだ。


 フィナさんは先程まで地図を指すのに使っていた指示棒を仕舞い、話を続ける。


「先程も言ったが、くれぐれも自分達の持ち場を離れ無いように頼む。君達アデネラのハンターを信用して、今回このような作戦と役割を与えたのだ。出来るだけその場で対処して欲しいが、万が一逃した場合は次の奴に回してくれ。それでも対処出来ない場合は、私達の遊撃部隊が対処に当たる」


 成る程。そこで俺達の出番という訳か。


「だが、あくまでも最終防衛ラインは二列目の分隊の皆だ。私達もすぐに向かえるとは限らないからな。後は……」


 そう言いかけていると、俺の横にいたミーナが髪をなびかせレイナさんの元に素早く駆け寄り、耳打ちをした。


「……ありがとう。巣穴の爆破を担当する者と別動体はこの後、私達の所まで来てくれくれという事だ。個別に説明する事があるようだ」


∗∗∗∗∗∗


 爆破担当と別動体の分隊番号が読み上げられ、作戦説明は終わった。再集合は20分後の事。あまり動くわけにもいかないかと、その場に立って待っているとレイミーが一人で、俺達の所に歩いてきた。


「ん、どうかしたか?」


「いや……助言でもしようかと思いましてね」


 そう言って俺の左に立つと、遠くのテントの中で装備や武器確認したり、真剣な面持ちで会話をするハンター達の事を眺めながら、話を始めた。


「風吹さんなら分かっているとは思いますが、遊撃隊が最大限に活躍するためには戦況を常に把握している必要があります。蟻だけでは無く、ハンター達の動きにも注意するんです」


「ああ。どこに戦力が足りてて、どこに足りてないか分かってないと、援護も何も無いからな」


 FPS(ゲーム)とは大分違うだろうが、基本は変わらない。俺の性格上、多数の仲間と一緒に戦うよりも、少数もしくは単独で行動する事が多かったから、なんとなく遊撃の要領は分かっている。


「その通りです。ですが、くれぐれも無理をしないように」


「分かった」


「それと弓の事ですが……」


 レイミーはそう言いながら、少々困り気味な顔で俺の弓に視線を送る。……弓の適性も何も無い俺を心配してるのだろうか。なんか悲しくなってきた。


「だ、大丈夫だと思うぞ?これまで、この装備でやってきた訳だし……」


「いや、いくら中級レベルと言えど今回は状況が違います。それに遊撃部隊になる訳ですし……とにかく、そのままじゃダメです。弓と矢を拝借」


「あ、ああ……」


 言うままに背負っていた弓と矢筒を手渡すと、レイミーは何故かそれを抱えたままテントの中に消えて行ってしまった。え、ちょっ……

 何をするつもりなのだろうか。高級な弓矢に取り換えるとか?いや、それは無いか……第一、弓の性能が上がった所で、弓適性能力の無い俺にとってはたかが知れている。


 そんな事を考えていると、間も無くして俺の弓矢を抱えたレイミーはテントから出てきて、それを俺に手渡した。なんも……変わってないように見えるけど……

 弓と矢を色んな角度から調べていると、レイミーは口を開く。


「外見はそのままですよ。ただ、ちょっとした魔法を施させて頂きました。一時的な物ですが弓には威力増強。矢じりには光属性を付与したので、蟻に対する効果が格段に上がるかと」


 ちょっとじゃないよねそれ。


「魔法って何でもありだな……」


 ちょっとでいいから使ってみたい。まぁ、無理なんだけど。

 そんな事を思いながら弓矢に目を落とし、軽くため息をついてから背中に戻した。


「ありがとうレイミー。助かった」


「いえいえ、当然の事ですよ。……カイトさんのせいで迷惑も掛けましたし……」


「大して気にして無いから気にしなくていいよ」


「そうですか……」


 レイミーはしばし目線を落として黙りこみ、そして顔を上げるといつも見せない笑顔で「風狙さんが優しい人で良かったです。では」そう言って、小走りでこの場を去って行った。なんとなくではあるが、レイミーに初めて子供らしさを感じた瞬間だった。普段は大人っぽいから、こんな一面もあったのかと新鮮さを感じる。

 つかの間、俺の方がポンポンと後ろから叩かれた。振り向くと、後ろを指差している凛が立っている。


「風吹、フィナさんが呼んでるよ?」


 凛の指す方を見ると、ボードの前でフィナさんが手招きをしている所だった。


「ああ、分かった」


 そう返して、凛と共にフィナさんのもとに向かう。

 


 

 


 

 


 








 



 


 

 


 



 

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