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64 混濁のカオス薬剤師……?

大変お待たせしました!!更新ペース。徐々に回復していきますよ!!











 カイト達に付いて、行列のできた店のいくつかを通過すると、一つの店の前で立ち止まる。


「大体の店は混んでるけど……」


「……なんか、ここだけ人がいないな」


 その店は以前イリーナさんに紹介された、街一番と言われているポーション屋さん。当然俺達のようにポーションやらを買おうとするハンターがいてもおかしくはないのだが……


 俺と凛は店のショウウィンドウに近寄って中を覗いてみる。しかし、窓越しに見えるカーテンは閉められており、その隙間の先は真っ暗だ。とても人が入っているようには見えない。


「なぁ。本当に営業してるのか?」


「ああ。一応な……」


 カイトは額から汗を垂らし、恐る恐るイリーナさんに問いかける。


「な、なぁ……本当にここに入るのか?」


「当然よ。ここが一番の店なんだから」


 イリーナさんはつんとして言い放つ。……いつまで仲直りしないんだこの二人は……


「そ、そうか……」


 そう言ってカイトは、諦めたような顔をしながら入り口の前に立ち、止古びた看板を見上げて小さくため息をつく。


「そ、そうですよね。一番の店ですし……」


 レイミーもそう言うが、明らかに嫌そうだ。

……それにしても、なんでこんな入りたくなさそうなんだ?

初めて紹介された時も「あまり入らない方がいい」とか思っていたし。

 

 俺がそう思っていると、カイトは金色のドアノブに手をかけ、古びたドアを押し開ける。すると……


『チュドォオオオンッ!!!!』


 爆発音がしたと思うと店の中から灰色の煙が吹き出し、カイトの姿が煙の向こうに掻き消えた! !ガス爆発か!?いや、それは無いか……ガス管なんて通ってないだろうし。


 そんな事を思っている内に店先にはもうもうと煙が立ち込め、キラーナ通り(じゅう)の人達が何事かとこちらに注目する。するとカイトのうめき声が煙の中から聞こえ、そして……


「アハハ。実験成功(じっけんせーこ)ー!!!」


 店の中からは、くぐもった若い女性の笑い声が聞こえてきた。なんかハイテンションなんだけど……


「なっ……」


 (みな)目を丸くして言葉を詰まらせていると、全体的に白っぽくなったカイトが煙の下から這い出てきた。見たところ、怪我はなさそうだ。


「く、くそったれ……」


 カイトが白い粉を振り撒きながらそう吐くと、店の中の女性は……


「あれ~?その声かカイト?何してんのそんな所で~」


 キラーナ通りにケラケラとした笑い声が響く。

 なんとなく「あまり来ない方が良い」と言っていた理由が分かった気がする。


「バッカみた~い!!」


 これは本当に店か。



∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗



「あんのやろぉ……」


 カイトはレイミーに助け起こされ、て白っぽい粉を払いながらそう言った。


「な、なぁ……今の爆発って……」


「……多分、ポーションによるものです」


「へ、へぇ……」


 よく分からん。


「凄い……」


 こら凛。目を輝かせるんじゃない。


 煙が晴れてきて分かったが、さっきの爆発で店の扉は吹っ飛んでしまったようだ。破片になった木の扉は、無惨にも道端に散乱している。

 カイトの方は……白っぽくなった以外は、特になんともないようで…………超人かよ。


 すると突然、色を取り戻してきたカイトが肩を怒らせながら、店の中へとズカズカ入っていった。俺たちは顔を見合せ、後に続いて暗い店内へと足を踏み入れる。


「……ったく!いつまで暗室で陰湿で陰気なんだ ! ! 」


 カイトはそう叫ぶや否や、閉ざされた店のカーテンを『シャァアア!!』っと音を立てながら引き、店内に光が差し込んだ。


 全体的に地味な色をした木製の店内。そして両脇の壁には、天井まで届く本棚のような陳列棚があり、様々に装飾された小さな瓶が所狭しと並べられている。

 それぞれに様々な色の液体が入っていて、商品名だろうか『ヒール』などと書かれた金色の板が付いている。まさか……飲んだりする訳じゃ無いよな……? 真緑とか紫とか、いかにも「体に悪いです」って色してるけども……


 そしてカイトが睨むのは、実験器具みたいな変わった形をしたビーカーやフラスコ等が並ぶカウンターの先で、ニヤニヤとした表情を浮かべている女性。たぶん、さっきの爆発の犯人とこの店の店主だろう。

 THE魔法使い。といった感じでよれよれの黒いトンガリ帽子を被って黒いローブを着込み、カウンターに頬杖をついている店主は、カイトを眺めるような目で見て一言。


「で、なんか用?」


「人吹っ飛ばしといて、何かもくそもあるか!!?」


 カイトがそう怒鳴るが、興味ないとでも言うようにレイミー、イリーナさんと視線を流し俺の前でピタリと止めて、少しニヤリとする。……な、なに ?


「あれえー見ない顔だね……(だあれ)?」


 無視されている事に気がついたのか、カイトが一歩踏み出して口を開こうとするが、レイミーが服を引っ張って制止する。


「……お二人は風吹(フブキ)さんと(リン)さんで、他の街から来た新人ハンターです。実力は中級かそれ以上の方々ですよ」


 それを聞いた彼女は「へー」と言いながら、じろじろと俺を凛を交互に見てきた。

 レイミーは紹介を続ける。


「風吹さん凛さん。この女性はこのポーション屋店主の……」


「混濁のカオス薬剤師だ。以後もよろしく」


 …………は?


 少なくとも本名……というか名前でないのは確かだ。……さっきの爆発といい、この人は大丈夫だろうか……

 混濁のカオス薬剤師……? が、頬杖ついていた左手を俺へと差し出したので、取り敢えず俺も左手を出して握手する。


 近づいて気がついたけれど、肩に垂れるボサボサの深緑色の髪、目の下に出来た(くま)と若干引き吊った表情。これさえ直せば、結構美人な女性かもしれない。あれ……というか混濁のカオス薬剤師って、確か初クエストの依頼人だった気が……

 そんな事を思っていると、そっぽを向いていて呆れてたカイトが。


「いつまでもふざけた事言ってるんじゃねぇ。お前の名前はローウェルだろうが」


「……そういう事にしておこう」


「わざわざ口調変えなくて良いからとっとと仕事しろ!!」


「……何なの?さっきの指方性爆発ポーションでも欲しいの?」


 そう言って混濁のカオス薬剤師もといローウェルさんは、ポケットから出した小瓶の口をカイトに向けて……


「最近レシピ発明したんだどさぁ、蓋を開けるとさっきみたいに……」


 ローウェルさんは満面の笑みで瓶の蓋に手をかけると、カイトが「ば、ばか!止めろっ!!」と顔面蒼白になり、店の入り口まで後退りする。それをローウェルさんは「ホレホレ~」と小瓶を突き出して、店の外まで追いやろうとする。……子供か。


「あの……本当にこの店で良いんですか?」


 凛が不安げな顔でイリーナさんとレイミーに訪ねる。


「まぁ……一応街で一番質の高いポーションを取り扱ってる所だし……」


「品揃えも豊富で、細かなオーダーも出来ますから……」


「……ほーれほれっ!」「バカっ!冗談じゃねぇから止めろ!!」


 尚もカイトとローウェルさんの攻防戦は続く。


「そ、そうですか……」


 凛が信じられないといった顔でローウェルさんの事を見つめる。いい商品を売ってくれるのに店主がこれとは、たちが悪い。

 すると見かねたイリーナさんが、いよいよカイトを店の外まで追いやったローウェルさんを引き留める。


「あの、そこら辺にしてくれません?私達、この後にも予定があるので……」


「……ん、別いいよー」


 切り替えの早い店主はカイトに向けていた瓶をポケットに突っ込み、イリーナさんに向き直る。


「で、何欲しいのぉ?」


「えーっと……高濃度回復ポーションを一人一本で5本。普通の回復ポーションはこの二人に。……二人とも1万バイト位は持ってるわよね?」


 俺と凛は(うなず)くとローウェルさんはパッと動き出し、棚に置いてある瓶をいくつか引っ掴んでカウンターに戻った。

 そして2.3個の瓶の蓋を開けてフラスコの中に注ぐ。


「高濃度回復なんて珍しいねー。なんか高難度クエストでもやるの?」


「そんな所ですけど……今街の周辺で起こってる事態知ってます?」


 フラスコを揺らすローウェルさんは首を横に振る。

 なので、レイミーが今起こってる事を簡単に説明した。


「へー……それまた大変だね」


 あまり感心の無さそうな返しをしたローウェルさんは、二種類の液が入ったフラスコを傾け、一つのビーカーに入れて謎の粉を入れる。色は綺麗なエメラルド色。俺には毒物にしか見えないが、これが回復ポーションなのだろう。


「指方性爆発のやつとかいらない?狙えば結構使えるかもよ?」


 ローウェルさんがポケットから出した瓶を差し出す。


「相手は闇属性ですから……今回は遠慮しておきます」


「あー、なるほどね……」


 そう言ってビーカーの中の液体を、合計5つの小さな瓶に入れてく。そして全てに詮をしてカウンターに並べ、追加でカウンターの下からだした瓶を2本も隣に置く。


「はい。こっちは一本 2千バイトで合計 1万バイト。こっちは一本5百バイトで合計1千バイト」


 イリーナさんと俺は財布を取りだし、それぞれ分のお金を払った。勿論俺は自分と凛。イリーナさんは自身とカイトとレイミーの分だ。


 それぞれ自分の分を受け取って、ポーチに入れる。


「……一応言っとくけど、高濃度回復ポーションって効き目強いから、よっぽど重症負った時だけ使いなねー」


 そう言ってローウェルさんは欠伸をしながら、カウンターの後ろにあるドアの先消えた。店内はしんと静まり返り、キラーナ通りからの人々の足音や話し声が聞こえてくる。


「それじゃあ、他の店にもいきますか……」


「そうだな……」


 レイミーが入り口に向かい、俺達もそれに続いてポーション屋さんを後にする。




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