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60 上級者集会での決意


 ハンター達の間をすり抜けつつ、カイトに着いてギルド内を横断していると、カイトはギルドの受付カウンターのスイングドアを押し開ける。


「入っていいのか?」


「ああ、今はな」


 それならと遠慮なくカウンター内に入ると、今度は左奥のドアを開いた。


「ほら、早く入れ……」


 そう言われて中に入り、後ろ手でドアを閉めると驚く位に静かになる。深緑色の絨毯が敷かれた少し狭い廊下をカイトに続いて歩くと、突き当たりを右に曲がってすぐ先にある重厚な木の扉の前で立ち止まる。するとカイトが振り替えり、小さな声で。


「その……他の上級ハンターがいるから、一応礼儀正しくな……」


 いつになく真剣な顔をしたカイトが、そう言ってから目の前の扉を開ける。

 ……お前に礼儀とか、そいう概念があったのか。あれかな、今は緊急事態で、クエスト中と同じ真面目モードなのか……

 そう思いながら、カイトに続いて部屋に入る。




 いかにも「昔の西洋の部屋」と言った具合に、素材が綺麗なカラメル色の木で統一された広い部屋。その中央には、大きな長方形の机が鎮座しており、その周りには20ばかりの椅子が並べられている。

 それぞれの椅子には、レイミーやイリーナさん。いつしかカイトを脅していた上級ハンター(命名・ハゲ)とその仲間。あとは見たことの無いハンターが数名座るか、もしくは空席だ。皆、黙って険しい表情をしており、部屋は重い空気に満たされている。


 カイトがレイミーの隣に座り、俺と凛に空いた席を薦めると……ハゲが沈黙を破った。


「……おい、なんで駆け出しの下級ハンターを連れて来た?」


 若干イライラしたようにハゲは言うと、他の人達の視線が俺と凛とハゲに集まる。

 するとハゲが気に入らない、とでも言うような視線を俺と凛に向けてきた。……お前も十分気に入らねぇよハゲ。心の中でそう呟き、睨み返してやろうかと思うと……


「……この二人はザラの中級ハンターより()ぇえんだよ。それに腕の良い奴らは大概、遠くまで出払ってて直ぐに集まれねぇ。フブキ達が代わりに居たって構わねぇだろ」


 カイトがすぐにそう言い、ハゲは「フンっ……」と鼻を鳴らしてそれ以上何も言わない。なんとなく居心地が悪いが、とりあえず凛を座るように促しながら、俺も席につく。


 ……緊急事態が起きて、ギルドにハンター達が集められたのは分かったが、なぜ上級ハンター達(まぁ俺と凛は違うけど)がこの部屋に集められたのだろうか。



 色々と考えを巡らせていると、キィッ………と部屋の扉が開く。すると廊下から巻かれた大きな紙を小脇に抱え、左手に辞書みたいに分厚くて大きな本を抱えたレイナさんが入ってきた。

 レイナさんはすたすたと俺の後ろを通って、長方形のテーブルの端に行き、持ってきた物を机に置く。


「……お待たせしました。来れるハンターは皆揃ったわね。ちょっと少ないけど……まぁいいわ」


 レイナさんはコホンと咳払い一つをして、話し初める。


「今回、皆さんに集まって貰った理由は他でもなく、この緊急事態のよるものです」


 そう言いながら、全員の顔を見渡す。


「先程調査団の方々から、通話石での緊急連絡がありました。『アデネラ東方面の草原の地下に、大規模なモンスターの巣がある』と。今は混乱を避ける為に、この事を知っているのは調査団と、この部屋にいる人達のみです」


 それを聞いて、ハンター達は互いに顔を見合わせる。すると、一人のハンターが口を開いた。


「調査団の人達は、北の森林を調査してたのでは?」


「ええ。ですがそこで小拠点を発見して、支線を辿って行ったら、東の草原の地下に本線と本拠地があった。との事です」


 『支線』と聞いた瞬間、皆の顔が険しくなり「支線と本線……」「そんな巣を構築するモンスターは……」と口々にそう漏らす。 


 支線 ?本線 ? 鉄道しか思い浮かばないんだが……


 何故、皆その単語に反応したのか俺には分からないが、上級ハンター達は言葉を交わし初める。その間、レイナさんは机に置いた大きな本に目を落とし、それをパラパラとめくり……


「……支線を至る所に張り巡らせ、それを数本の本線で束ね、数個の小さな拠点と一つの本拠地を結ぶ。そんあ大規模な巣を構築するモンスターは、これ以外にありません」


 レイナさんはそう言って、開いたページを皆の方に向け、机の真ん中に差し出す。


「や、やっぱり……」


 見知らぬハンターが開かれた本を見て固った。すると、レイナさんが代わりに本を読み初める。

 

「そうです。王都指定(おうとしてい)第一級危険生物群(だいいっきゅうきけんせいぶつぐん)


 そう聞いた瞬間、場の空気が固まった。そして皆、固唾を飲んで次の言葉を待つ。上級ハンターが畏怖するモンスターとは、一体……

 そしてレイナさんが口を開き、次に発した言葉は……



「『(アリ)』です」



…………は?




∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗




「蟻……か」「成る程ね……」「はぁ……」


 ハンター達は静かに驚く。騒ぎ慌てても、何の意味もないというのが解っているからだろうか。


いや待てよ、蟻ってなんだよ。あのちっこいやつか?………それに、いきなりナンタラ危険生物群とか言われても……なんとなくヤバそうだとは思うが、イマイチ事の重大さが分からない。インディージョーズに出てきた、肉食のアリかなんかか?

 

凛も俺と同様に困惑した顔をしていると、レイナさんが再度口を開く。   


「皆さんご存知のように……まぁフブキ君達は知らないと思うけど……王都指定第一級危険生物群っていうのは、超絶危険で……」 

「国一つを滅ぼせるモンスターだ」


 腕を組んで黙りこんでいたハゲが、唐突にそう言った。


「そ、そう。簡単に言うとね……」


 いや、国を滅ぼせるって簡単に言わないでよ。


「まぁ……で、その危険生物群っていうのが、今回の(アリ)なんだけども……」


 そう言って、レイナさんが開いた本を指し示す。

 皆と一緒に立ち上がり、机に身を乗りだしてそこに書かれている説明文に目を通す。


─────────


(アリ)  〈王都指定第一級危険生物群〉


 闇属性の外骨格に覆われた、昆虫科地中性モンスターである。体長は4メトラ~6メトラの大型モンスター。その希少性、凶暴性、そして一群の個体数の多さから、王都指定第一級危険生物群に指定されており、過去に都市を壊滅させた例がある。

 原則として、産卵行動を行う一頭の超大型女王蟻と、育児や食料の調達などを行う多数の働き蟻が大きな群れを作る、社会性昆虫類である。産まれたばかりの若い蟻は、食料調達と共に、狩りの訓練を行う事で有名。

 女王蟻の統率力と知能は非常に高く、街などを襲う場合は多数の働き蟻を戦略的に動かし、効率的に攻めてくるため非常に厄介なモンスターである。


────────


 ……いやまてよ。4メトラ~6メトラ(4m~6m)の蟻とかどうなってんだよ。しかもその説明文の横には、普通の蟻。そのまんまのスケッチが描かれている。


「……マズイな」


 カイトがそう漏らす。


「そうですね……わざわざ街の近くに巣を構築したという事は、蟻の数が揃ったら街を襲撃するという事ですし」


 そうですねじゃないよレイミー。どうすんだよ。

 

「……まぁ、迎撃するっきゃないな」


 カイトがそう言って、ドサッと椅子に腰を下ろす。……国一つ滅ぼせるというモンスターに挑むってのか。そんなの、カイト達でもムリなんじゃ……

 そう思っていると一人のハンターが。


「む、ムリだ……こんなのが来たら、俺達は逃げるしか……」


 そう言って顔を真っ青にしたそのハンターは、額から汗を垂らし、その場から一歩後退る。今すぐにでも、この場から逃げ出したいという感じだ。

 すると……ハゲが『ドンっ!』と机を叩き、皆黙ってハゲを注目する。それを確認したハゲはゆっくりと腰を下ろし、低く威厳のある声で。


「……いいかへっぴり腰。俺達は曲がりなりにもアデネラのハンター、街を守るのが仕事だ。それに上級者だろうが、お前が真っ先に逃げ出してどうする ? 街を捨てるってのかボケ。分かったらとっとと座りやがれ。他の奴もそうだ」


 ハゲが最後に睨みを効かせると、そのハンターは「は、はいぃィッ……!」とビクビクしながら、ゆっくりと椅子に座る。俺達も同様に、何も言わずに椅子に腰かけた。……なんか、ハゲ野郎ちょっと格好いい。


「……ダンパさんの仰る通りです。僕たちはアデネラのハンター、それに上級ハンターでもあります。責務を果たしましょう」


 レイミーがそう言い「ああ……」「おう」「そうだな……」「はい」といった具合に皆が返事をして頷く。


「そうね……私達以外に街を守れる人はいないわ。それにレイミーの言う通り、上級者として下級・中級ハンターも引っ張ってかなくちゃいけないんだから」


 そう言って、イリーナさんがこちらを向き、俺と凛に向かって軽くウィンクした。どうやら、皆の決意は固まったようで。


 当然、俺だってやる気はある。ワンチャン、緊急事態って言って武器召喚できるかもしれないし。

 当然と言えば当然かも知れないが、凛の瞳をからも「やってやるという」意志が感じられた。


でも……


「具体的な作戦とか、対抗策とかは?」


 それに、蟻がどんな奴なのかもイマイチ分からないし。超危険で俺の知っている蟻と同じ体型をしているは分かったが、それ以外は何も分からない。


 俺が疑問を投げ掛けると、他の皆も確かにそうだという顔でレイナさんの方を見ると、レイナさんは即答した。


「勿論あるわよ。でも、その前にこのモンスターについて、良く知らなくちゃね ?」


 レイナさんはそう言って、机に置かれた本を再度捲り始めた……


 



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