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58 謎は深まるばかり……

 「さてと、回収するか……」


 そう言いながら、凛と共に倒したコボルトへと近寄る。

 ……まぁ、回収するって言っても、周辺確認をして回収班を呼ぶだけなのだが……

 首のないLL(ラージェスト)コボルトの傍らに立ち、改めてそのゴツい体を眺めていると。

 

「なんか、思ったよりも強かったね……」


 凛がそう言いながら、近くに転がっていた木の丸盾を拾い上げる。


「そうだな……」


 ☆8クエストだし、L(ラージ)コボルトの上位互換だと聞いて大した事はないと思っていたのだが……予想以上に手強かった。


「運動能力が特にね……これくらいのサイズだと、普通は攻撃力とが高い替わりに、素早さがあんまり無いって感じなんだけど……」


 それって、ゲームとかの話じゃ……


 いや、案外現実でもそうなのか? 実際、アフリカとかにいるデカイ(ゾウ)は、図体がデカイ替わりに動き遅いし。

 

「Lコボルトの上位互換つっても、☆8だからか……」


 ☆8クエストは中級クエストと言えど、その中でも上位に位置する難易度だし、LLコボルトだって大自然に暮らす猛獣だ。Lコボルトよりちょっとだけ強いだけ、とは限らないのかもしれない。

 

 そんな事を考えつつ、近くに転がっていたLLコボルトの頭を拾い上げる。何回やっても、こういう作業は慣れないな……

 仕事なんだかしようがないと、毎度の如く自分に言い聞かせながら、頭を胴体の近くへと運ぶ。

 するとコボルトの持っていた丸盾を拾い上げて、それをまじまじと見ていた凛が。


「風吹、この盾ちょっと見てみて……」


 そう言って、片手で差し出された盾を俺が両手で掴み、凛が手を離した瞬間。ずっしりとした重さが伝わってくる。

 もう驚かないぞ……それにしても、よくこんなクソ重い物が片手で持てるな…………

 なんとなく悔しさを感じながら、どうしたのかと盾を顔に近づけてよく見る。


 木製の丸盾の表面には、幾重にも重なった大小の切り傷と、コボルトのであろう血が転々と付着しており、裏返すとコボルトの手のサイズに合った持ち手が確認できる。そして全体的にとても荒い作りで、木を適当に切断したものを、(つた)でなんとなく結わえられて、丸盾を形作っているという感じだ……


「風吹、気がついた?」


「ああ……」


 ……コボルトという種族は、大して知能は高くない。

 知能が低いモンスターでも稀に、倒した人間の使っていた装備をそのまま使う事があるらしい。ゴブリンがいい例だ。

 しかし、この盾は人が作ったとは言い難い荒い作りをしているし、重量的にも持ち手部分の大きさ的にも、人間の装備としては適していない。つまり……


「コイツが自分で盾を作って、自分で使ってた……」


「うん……私もそう思う」


 自分で装備を作るなんて、そんな知能と技能がコボルトにあっただろうか……するとポケットから、じいさんの声が。


「ありえんな……」


「え、でも現に……」

「コボルトにはそんな知能は無いし器用でも無い。ラージェストになったところで、大して頭の良さは変わらん」


「特異個体……とかですか?」


 凛がそう訪ねるが、じいさんは「いいや」と言い。


「その可能性も無くはないが……あの動きの俊敏さをみたろう?大剣とはいえ、剣速の速い峰薪(みねまき)君の重い攻撃を完璧にガードして、更に隙をついて攻撃もしていたではないか」


「……まぁ……確かにそうだけども」「でも、それが……」


 凛の発言を遮るようにじいさんは、重苦しい調子で


「……いや、それだけならまだしも。このラージェストコボルトは風狙(かざねら)君の放った矢までも見切り、ガードして見せた。これは特異や亜種ではない。『異常』だ」


「異常……」


 凛はRPG.MMOゲーマーの能力があるので相当強い。上位クエストでも通用しそうだと、カイトに言われたくらいだ。しかし、その凛の攻撃を全て防ぎ、上級モンスターでも、矢を見きれるモンスターはザラいないという。では、なぜ中級モンスターのLLコボルトに、そんな芸当ができたのか……


「謎……か」


 先週に遭遇した、虚空へと消えた謎の二体。

 それと関係あるのだろうか。


「謎だな」


 しばし俺は腕を組み、凛は眉を潜めてコボルトの死体を見下ろして考え込んでいると、じいさんがその沈黙を破る。


「……ここで考えていても仕方がない。後は調査のプロ達に任せたらどうだね?」


「そうだな……」


 モンスターに関してはある程度学んだ俺達だが、こういう事態となると対応できない。

 取り敢えず、回収班を呼ぶために通信石を握って十字を拳の上に指で書いて発光させる。


「……よし。回収班も呼んだし、次の探しに行こうぜ」


「うん……」


 どうしても気になってしまうが、俺達には何もできない。

 心を切り替え、他のラージェスト探すべく、窪地を抜けて森へと踏み入れた……




∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗




「さてと、それじゃあいっちょやるか……」


 俺はわくわくしながらそう言い、革コートのポケットから懐中時計を取り出す。


「……何を?」「ま、まさか……」


 凛が小首をかしげ、じいさんはたじろぐ……見えないけど、たぶんそんな感じ。


「まぁ、武器召喚(リクエストオーダー)を……」


 やっとこの時が来た。今すぐ使う訳ではないが、次コボルトに遭遇したらAR(アサルトライフル)でバリバリっと……

 

「だっ、ダメだからなぁっ!?!?」


 耳をつんざくじいさんの叫び声。俺と凛は思わず耳を塞ぐ……そうだ、ミュート解除したまんまだった。


「盛大なフリ(・・)をどーも」


 待ちに待ったクエストでの銃の使用だ。俺だってそろそろ、凛みたいにゲーマーとしての本領を発揮したい。……もう、弓嫌だ!!

 先ずはミュートするために、懐中時計上部の摘まみに指をかける。すると……


「おい貴様!!ミュートしようとしているのは、分かっているのだぞ!!!」


「ギクッ……」


 とうとういつもミュートしてる事に気がついたか。まぁ……


「……だからどうした?……じゃ、召喚するんでヨロシク」


「わっ、わーっ!?!ちょ、ちょっとまてぇぇい!!!天界規定が……って、あの人は一体、何をしてるんじゃああ!?!?!止めるって言っといて……」


 天界規定とか止めるとか言っていたが気にしない。こっちはジャンル違いなのに異世界に来たのだから、たまには練習くらいさせろって感じだ。

 摘まみを押し込み、じいさんの声が聞こえなくなる。すると、凛が俺のコートをチョイチョイと引っ張り。


「……本当にいいの?」


「……たぶん。生きるために必要だから大丈夫……の筈」


「そう……それならいいんだけど」


 一応理由はそうなのだが、実は銃を使いたいという欲が勝っている。……まぁ……大丈夫でしょ。うん。


 手のひらサイズの、銀色の懐中時計を左手で握りしめ、右手を軽く付きだし……


「リクエストオーダー!!M1(エムイチ)r()……」


『ズッッドォォォオオオンッッ!!!!!』


 俺が言い終わる間際、大地を揺るがすような爆発音が森を突き抜けてきた!!!森の奥、北の方向から、その爆発音が鳴ると共に木がなぎ倒され、鳥たちがバタバタと飛びたつ音。そして……


『……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ! ! !』


 地震のような振動が、くぐもった何かの音と共に次第に近づいてきた ! !


「な、なんだ……?」


「分かんないけど。風吹、とにかく準備!!」


「あ、ああ……」 


 俺と凛はそれぞれ弓と大剣を、音が迫って来る方向に構える。すると……

 

 地面の中を、まるで巨大なモグラでも通っているが如く。地中を突き進む何かによって森林の地表が盛り上がり、茶色い土が露出する。それが断続的に起こりながら俺達の方へと突き進み、通過した先の木を根から倒して行く。


「なっ……」


 俺と凛が呆気(あっけ)にとられているうちに、その地面競り上がりの線は、こちらへと伸びて行き……


『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ! ! ! ! ! ! ! 』


「「……ッ!?!?」」 驚く暇も無く俺と凛は左右へと飛び退くと、地面揺るがしながら地中浅くを通る謎の物は、そのまま俺達が歩いてきた方向へと突き進んで行った。


「な、なんだったんだ……」


 土に汚れた自分の服をはたきながら、立ち上がると……


『パカララッパカララッパカララッ……』

 と、今度は何かが大地を駆ける音が、無数に迫ってきた。


「くそ、今度はなんだよ……!!」


 俺と凛は改めて武器を構える。すると、今度俺達の目に入ったのは……


「馬……?」「あ、調査団人乗ってる!!」


 よく街で見かける、馬車を引いていて目が4つついている大きな馬。それを一回り小さくした……要は普通サイズの馬が、地面の盛り上がりの線を辿るように、森の中を疾走していた。そしてそれに股がっているのは、銀ピカ集団。先頭は……


「オラオラオラー!!逃がすなー!!もっと速く走れぇー!!!」


 ……あの、ミーナとかいうロケット少女が鞭を振るっていた。

 彼女を先頭にした調査団は俺達に目も暮れず、ミーナと銀ピカ達を乗せた10頭あまりの馬は、そのまま横を駆け抜けて行った……


「……追いかけてた……よね?」「そう、だな……」


 俺と凛はポカンとしながら、地中を突き進む何かと、調査団の駆けて行った方向を眺める。……マジで、なんだったんだよ……

 すると、今度は一頭だけ馬が駆ける音が聞こえてきた。その音が近くで止まり、その方向に視線を戻すと……


「君達。アデネラのハンターだな? 部下が何も言わずに猛スピード横切ったのは謝るが、今は緊急事態だ。君達は早く街のギルドへ戻ってくれ」


 そこには馬にまたがった、調査団の一人。

 白く長い髪をした美人さんが、俺と凛を見下ろしていた。



 


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