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55 連携が大爆発!!!粉砕!!!

 気を取り直してから森の中に足を踏み入れ、そのまま木々の間を縫いながら、とにかく一直線に歩いて探索していると……いた。メインターゲットのラージェストコボルト(以下LLコボルト)が。


「いたぞ……」


 そう小さな声で後続の凛に伝えてから、それぞれ近くの木の裏に隠れ、顔だけ出して様子を伺う。


 木の密度が薄くなってきた所にある、森の中にぽっかりと空いた小さな窪地。その中には、俺の腰の高さ程まで伸びる雑草が生い茂っている。

 そしてLLコボルトは窪地の中央を、膝下まで伸びる雑草をかき分けながら、のっしのっしとゆっくり歩いている。


 ……デカ過ぎだろ……絶対に身長2メートルは超えてる。腕とかもそれに比例して大きい。

 それはさておき、こちらに気が付いてはいないし位置的にも有利なポジションなんだけども……


「風吹あれ……」


 そう言って凛はLLコボルトのある一ヶ所を、怪訝な顔で見つめる。


「ああ、見えてるけど……あれは……」


 約20メートル先に見えるLLコボルトは、全身が黒い体毛で覆われ、その下からでも分かる筋肉質な人型の肉体を持ち、そして狼と犬を掛け合わせたような頭をしている。それらは、カイトの言っていた通り、L(ラージ)コボルトをそのまま大きくしたような物。なのだけども……


「木の……盾かな?」「たぶんな……」


 右手に生えている長く鋭い、黒光りする凶悪な爪もコボルトのそれなのだが、左手の爪は右手の半分もない長さだ。しかし、その変わりとでも言うように円形の盾を持っている。


「……凛、大丈夫そうか?」


 凛の大剣が弾かれる可能性があるけども……


「大丈夫だと思うけど……たぶん、勢い付ければ盾ごといけるかな」


「そ、そうか……ならいいんだけど」


 まさか、盾ごと斬るなんて言うとは思わなかった。まぁ、あれだけデカイ大剣と、凛の力が合わされば確かに斬れなくも無いか。

 

「じゃあ後は、俺の問題か……」


 そう言いながら、俺は背負っていた弓を右手に持ち直す。


 初撃を頭に撃ち込んで一・二発で倒すという方法が考えられるのだが……レイミー曰く、ある程度上位のモンスターになってくると矢尻が硬く厚い頭蓋骨を貫通せず、表面の肉に突き刺さるだけになるのでワンパン(一撃で倒すの)は不可能だとか。


 それを解決するのが、高い弾速や威力を出すことができる「溜め射ち」なのだが、適性ほぼ無しの俺にそれは出来ない。……だとしたら、確実に腕とか足に撃ち込んで動きを鈍らせて、凛が戦いやすいように援護するのみ。


 問題は、あの盾でガードされた場合は矢なんて軽く防がれてしまう事。……まぁ隙を見つけたら、ピンポイントでそこに矢を射ればいいんだけども。


 改めてLLコボルトの位置を確認し、周辺の地形と風の方向を把握。そしてこちらの攻撃方法を加味して、一瞬で作戦を立てた。


「よし……今はコボルトに対して向かい風だから、凛がすぐ攻撃できる所まで背後から近づいてくれ」


 コボルトは鼻が良く、追い風や無風だと匂いで直ぐに存在がバレてしまうだが、今は幸いにも向かい風なので察知される事は無いだろう。


「凛が配置に付いたら、俺が矢で両腕を射抜いて注意をこっちに逸らすから、その間に凛が大剣で突撃してくれ。そしたら俺が援護するから」


 小声でそう伝えると、凛はコクコクとうなずいて木の幹から離れる。


「あれは倒したら回収するからあんま傷つけないようにな。それに、そこまで接近しなくていいから気付かれないように、気を付けて……


「うん!」


 そう言って凛は窪地の縁をぐるっと周りLLコボルトの後方についた。そして斜面を下り、姿勢を低くして雑草の中に入っていった。



∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗


 

「さてと……」


 視線を凛からコボルトに移し、木の影から出て片膝を地面に付く。そして弓と同じく背負っていた矢筒を腰のベルトに装着し直し、その中から2本の矢を引き抜いた。

 そのまま左手に持った弓に、右手で矢を一本セットして弦に添え、もう一本の矢の先端も右手で持ったまま速射の体制をとる。


 後は凛が配置に付くのを待つだけ。距離がまぁまぁあるし、少し待つことになるな……

 そう思った次の瞬間。窪地の雑草を揺らしていた風が……


……ピタリと止まった……


「ま、マズイ。このままだと……」


 そして嫌な予感が的中。少しするとコボルトがはたと足を止め、少し鼻先を上に向けて辺りを嗅ぐように首を巡らせている。

 しかも風が止まった事に気づかないのか、ここからなら見える凛の頭は、コボルトの方へと向かうのを止めない。


 これでコボルトが、しゃがんでゆっくり歩く隙だらけの凛の存在に気がついて突撃されたら非常に危ない。


 ……や、ヤベェ。こうなったら今すぐ射るしか……でも、凛とコボルトの距離はまだある。先に俺が攻撃してこちらに注意を向けて凛がすぐ斬りかからないと、俺にしか気づかないコボルトは俺の方に突撃してくるだろう。


 そうなると非常にマズイ……


 足は向こうの方が速いし、パンチ力の弱い矢じゃ足止めもロクにできないだろう。


 そう思っていると……LLコボルトの鼻先が凛の方向を通過した瞬間、動かしていた首をその方向で止めた。

 とうとう、何か嗅ぎ付けたようだ……やるしかない。


 弓を構え直し、セットしていた矢を掴み直して引き絞る。……先ずは攻撃に使う右腕を封じるか……その次は盾を持った左腕だ。

 距離は約20メートルで1メートル射ち下ろし。風は不幸にも無く、瞬間に矢の軌道を予測。狙いをLLコボルトの右腕の中央に合わせ……


『シュッッッ!!……』


 限界まで引き絞った弓から放たれた矢は勢いよく、凛の方向を睨み、動きを止めているLLコボルトの腕へと緩やかな弧を描いて……


『ドスッ!!!』


 右腕のド真中に命中した。


「ッッ ?! ……グ、グゥォオオァアアアッッ!!!」


 突如として矢を腕に喰らったLLコボルトは驚き、狼狽えながらも直ぐにこちらの位置に気がつき、吠えて威嚇してくる。

 ……考えてる暇はない。速射だ。

 右手に持ったままの矢を直ぐにレストに乗せて構え、引き絞る。今度は左腕に狙いを定め……


「シュビッッッ!!……」


 次の矢も予想通りの軌道を通り、左腕の真ん中へ……


『ガッ……!!』


 鳴ったのは木に金属が刺さる音。そして既にその原因は目に入っていた。


「ッッ!!防いだ……!?」


 なんと、LLコボルトへ放った矢は、その左手に持つ木の盾んよって防がれていた。……矢を見切ったのか!?

 驚いたのもつかの間、コボルトは再度咆哮を上て突進の体制に入る。すると……


「とりゃやぁアアアアッッ! ! ! !」


 一度目の咆哮で事態に気づいた凛が立ち上がり、抜刀斬りをかます気なのだろう。大剣を背負ったまま、物凄い勢いでLLコボルトに向かって突撃していた!!

 

 しかしコボルトの方は、俺が右腕に矢を刺した怒りからか凛に気がつかない。これは凛にとって絶好の攻撃チャンスなんだけれども……


「……俺がヤバイ」


 凛に全く気づかないコボルトは鋭い爪を振り上げながら、そのまま俺の方向へ一直線に突っ込んで来た!!

 凛がコボルトに追い付くより、コボルトがこちらに付く方が先にだろう。だとしたら……逃げるのみ。溜めもなんもない弓矢単体では何も出来ない。


 ……凛が直ぐ追い付き易いように逃げるには……やるっきゃない。そのまま正面の急斜面を一気に滑り降り、雑草生い茂る窪地の中に踏み入った。そしてそのまま左方向に、楕円形の窪地の縁を沿うようにして全速力で走る。


 コボルトも方向転換をして、どんどんと迫って来た。

 取り敢えず、走りながら矢を次々と放ってみるが……胴体や腕足を狙った矢はことごとくガードされる。

 ……甘かった。連射して隙を作って、そこを狙おうと思ったのだがLLコボルトの反応速度がここまで高いの計算外だった。


「チッ……」


 舌打ちをして矢を射つのを止め、走る事に徹する。

 クソっ……凛、早く来てくれ……


「グゥゥォオオオアアッッ!!」


 咆哮は直ぐ後ろから聞こえ、とうとうコボルトが地面を蹴る音までが耳に入る。……ま、マズっ。こうなったら……

 そう思って懐中時計を取りだし、口を開いた瞬間……


「……ブリーチングフレイム!!」


 凛の叫び声が聞こえたと思うと……


『ズッドドォォォオオオンンッッ!!!』


「……グ、グォオァアア!?!?」


 後方から凄まじい爆発音と共に、LLコボルトのうめき声が聞こえたと思った刹那、俺の背中にでかいハンマーで殴られたような衝撃が加わった。そして一瞬の無重力を感じた後、地面へと叩きつけられ…


……か、体に……力が……意識が………クソ、これは……


 ぼんやり見える、地面に投げ出された手には力が入らなくなり……目の前が真っ暗になった……

To be continued……

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