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54 運用方法は如何に。

ギルド内、受付前にて――


「……とにかく。いくら急いでるからと言って、前も見ずに走るものじゃないわよ。次からはしっかりと前を向いて走りなさい」


「はい……」


 ロケット女……もといミーナという弓を背負った美少女は、レイナさんの前に正座させれ、しょげきった感じで返事をする。……というかレイナさん。走る事は否定しないんだね。


「ほら、みんなに謝んなさい」


 そう促されてミーナは立ち上がると、脇で立っていたカイト達向き直る。


「その……弾き飛ばしちゃってすいません……」


 ペコリと頭下げる。弾き飛ばしちゃってすいませんって……でも心が広いみんなは……


「別に大丈夫よ」「ええ、お互いケガもしてませんし」「慰謝料よこせ」


 ダメ人間が一人混じっていた。


「ご、ごめんなさい!!は、払いますから」


 カイトが睨み、ミーナが慌てて財布を取り出した瞬間。カイトはレイミーとレイナさんのパンチ&キックのコンボで床に倒れる。

 そしてうずくまるカイト放って、イリーナさんは優しく。


「気にしなくていいわ。で、ミーナちゃん。なんでそんなに急いでたの?」


「え、えーっと……」


 目の前で起きた暴力(制裁)に若干引きつつ。


「……私は王都の調査団の一人なんですどね、朝寝坊して、気がついたらフィナさんに置いてかれちゃったから、慌ててこの街のギルドに来たの」


 へえ、ってことがあの美人な女性がフィナさんで……って


「「「「「えっ?!」」」」」」


 俺達と周りで聞き耳をたてていた奴らが同時に声を上げる。年は凛と変わらないように見える女の子が、王都の調査団やってんのか……それに寝坊してるし。


 俺が皆のようにマジか……という顔でミーナのことを見ていると……


「あっ、キミ知ってるよー。風狙風吹(カザネラフブキ)君でしょ?」


 俺の顔を見て、スキップでもしそうなノリで俺に近寄る。……なんで俺の名前知ってるんだ。


「そう……ですけど」


「やっぱり!!昨日、この(アデネラ)の事を宿の人に聞いたんですけどね、その中に新人に凄腕の二人がいてその一人が凄腕の弓使いだっていうから」


 聞かなくても喋ってくれた。


「それで私も一応弓使いだからね、一度会ってみたかったの!!」


 そう言ってから、背負っていた白地に金色の装飾が施された、いかにも高級そうな弓を右手で持って見せる。そ、そうですか……それ以外の感想はない。

 すると、何か思い付いたのか手をポンとならして。


「そうだ!!私、風吹君の弓使ってる所見たいからさ、今日のクエストについて行っていい?」


 いや、唐突に言われても困るんだけども……それに、ついて来ちゃったら銃とか使えなくなっちゃうし……


「邪魔しないですから。ね?」


 ずいずいと迫ってきて、俺と凛が困っていると、レイミーがミーナの肩をポンと叩き。


「少なくとも今日は駄目です。最終試験なので他の人が同行するのは認められませんし、唐突に言われて困ってるじゃないですか。それに……」


 今度はイリーナさんが、ギルドの出入口を指差し。


「こんな事をしていていいの?調査団の人が出発してから結構経つけど」


 するとミーナは一歩後退り「そ、そうだった!!ごめんなさい、またね!!」そう短く言い残すと、急ぎギルドを出ていった。

 

「なんだったんだ……」


 カイトがそう言い、ギルド内にいた全員がうなずく。それに、敬語とタメ口を混同して使っているのも謎だ。


 さてと……


「じゃ、そろそろ行ってくる……」


 俺と凛は気を取り直してから、再度ギルドから出る。

 よろよろと立ち上がったカイトが


「な、なんかつまずいちまったけど、頑張ってこいよ……」


 カイト、レイミー、イリーナさんとレイナさんに見届けられ、今度こそ最終試験に出発した。



∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗



「さてと……とにかく、東部の森に行くことからだな」


「そうだね」


 それからは特になんの会話も無く、街の外へと向かって街道を20分ほど歩くと東門。そしてその左の城壁にめり込むような形でそびえるチリア山を横目に通過して街の外へと出た。


 街から出ると目線より上の遠方には、山岳の前で左右に広がる大きな森が見え、その前には緩やかな起伏のある草原が広がる。あの距離だと、森につくのは普通に歩いて一時間とちょっとくらいは掛かるだろう。


 取り敢えず森へと向かって一直線に歩き、時たま周囲を警戒したり水筒の水も飲みながらとしばらく歩いていると……凛が俺のコートの端をちょいちょいと引っ張り……


「そういえば風吹、銃とか召喚するのは分かったけどさ、死体とかどうするの?また変なのできちゃうよ」


 文面だけ見ると、だいぶサイコパスな内容だけども……      

 たぶん凛は、俺がゴーズキの硬い頭を一撃で吹っ飛ばしたように、不自然な死体になってしまうと言いたいのだろう。


「あー……それはなんとかするよ……」


 小口径弾を使えば、小さな風穴が空くだけで倒せる……はず。


「俺の予定では一体は回収が必要って言ってたから、とにかくそれは俺の弓矢と凛の大剣の連携。もう一体も普通にやって後は武器召喚を試すって感じだけど……」


 ただ、問題がひとつある。前々から考えていた事だが……


「銃使ってる間って、凛が近くにいたら危ないんじゃないか?」


 単発のライフルならまだいいが、機関(フルオート)銃なんかだと流れ弾が凛に当たるかもしれないという、大きな問題点がある。


「あ……たしかに……」


 凛も、俺が銃を使う時の問題点に気が付いたようだ。


「でも、風吹なら大丈夫じゃない?すごく上手だし」


 俺の腕なら万が一にでもそんな事はないと思うし、凛がそれを信用してくれるのは嬉しい。

 だが、その万が一の『一』が起きたらゲームの同士撃ち(フレンドリーファイア)と違って現実の大事故だし、人の命に関わる事だ。護る人を撃って倒してしまっては元も子もない。


「うーん……どうすればいいんだか……」


 上手くやれば、銃と大剣や魔法の連携ができなくもないが……

 大体、弓という遠距離攻撃武器を使って連携のやり方を学び、銃を使った連携に転用や応用をしていくつもりだったのだが……現実はそう甘くは無かった。


 弓との連携は、そもそも弓が支援の要素が強い武器であり連射能力の低さ。それに矢の弾速(スピード)なら凛の高い動体視力で捉える事ができるので、万が一の時は対応できる。

 なぜ分かるかというと、以前に。


「横から俺の射った矢が飛んできて、怖くないか?」


 と支援射撃をした後に聞いたのだが、凛は首を横に振って。


「別にそんなことないよ?矢なら見えるし、風吹なら絶対外さないからねっ。怖くないよ」


 と言われたからだ。

 「見える」と聞いた時は驚きもしたが、何よりも俺の事を信用してくれているって分かった時は、本当に嬉しかったな……


 ……っと思考が違う方に飛んでった。戻そう。


 しかし銃の方はというと、完全に攻撃武器だし、元々近接武器で敵に迫る味方への援護に適してはいない。

 援護をするには正確な射撃が必要のため、精度が高いSR(スナイパーライフル)を使えばいいのだが……それでも誤射の可能性は充分にあるし、色々な銃が召喚できて使えるという利点を潰す事になる。SRだけじゃ効率だって悪いだろうし。


 それに銃弾は矢とは比べ物にならない速さだ。とても人の動体視力で捉えられない。拳銃弾を使う武器や亜音速弾を使った銃で弾速低下を図っても、効果は無いだろう。所詮は銃弾なのだから。

 ……まぁ矢が見きれるというのも人間業ではないとは思うが、やはり限界はあるだろう。体を避けるなんてもっての他。


「連携というより、背中合わせで陣取って共闘スタイルの方が向いてるのかな……」


 ため息を吐きつつ、そう呟く。銃と大剣での連携は難しいのか……やはり、AR(アサルトライフル)系の連射できる銃を使うなら二人で突っ込んで、それぞれ違うターゲットを狙うべきか……


 あーもう……なんか頭が煮えそうだ。上手い方法はないのか……

 頭をひねりながら歩いていると……


「……風吹?」


「ん?」


「ちょ、ちょっと!!」


 凛の方を見て何?という顔をすると突如、俺のコートを後ろに思いっきり引っ張って止める。……な、なんだ!?


「どうした?」


 立ち止まって凛を再度見ると、黙って俺の目の前を指差している。その方向を見ると……大木が。


「……」


「……風吹。私が止めなかったら、ぶつかってたよ?」


 一歩下がると、その右にも左にも木々が生い茂っている。気づかぬ内に森に到着してたらしい。


「ご、ごめん。考え事してて……」


「もう。風吹ってたまにそいうとこあるから、気を付けた方がいいよ?」


 そう言って凛は、少し面白そうにクスっと笑う。


「はい…………その、ありがとう……」


 めっちゃ恥ずかしい……


















何かに夢中になってると、周りが見えなくなるって……ない?

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