表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/75

52 召喚……?(!)

 異世界に来てから一週間とちょっとが経ち、早くも異世界生活にも慣れてきた。いつものように朝七時に起きてから装備を整え、家主(エレナ)さんの作った朝ごはんを食べて、タオル荘からギルドへと向かう。


 この一週間程で変わった事と言えば、俺も凛もハンターとしての腕が上がったこと、俺が自分で弓矢を用意するようになったこと。そして凛が毎朝、俺を起こしてくれるようになったことか……残念ながら、弓を使って肩をツンツンして起こすという悲惨な方法だったが、凛はそれ以外の方法が思い付かなかったようで。まぁ別に良いか……と、そのままにしている。それに、この大通りを歩くのもすっかり慣れ、人混みや馬車をかわすのが上手くなった。


 そんな感じで、今日も石畳の大通りをギルドに向かって歩いている。

 不思議なものだ、日本での暮らしを半強制的な感じで捨て、異世界でハンターという危険な職に就いたにも関わらず、こっちでの生活の方が充実している気がする。

 それに、


「そういえば凛。一週間もネットとかゲームやって無いけど、大丈夫か?」


 と、俺と共にネット&ゲーム依存の。そしてそれが特に酷い凛に訪ねてみたら。笑顔で


「異世界でネットは必要性無いし、ゲームやってるより現実でクエストやる方が楽しいから大丈夫!」


 と即答したから驚いた。

 確かに、俺もネットの必要性は大して感じ無いし、ゲームが出来なくても別に構わない。でも俺は元いた世界。日本ニュースや高校の事が少しは気になってくるし、クエストは皆とやってて楽しいが、弓しか使えなくて少々イライラしているってのもある。……でも、異世界生活に不満は無い。銃が無い事を除けば。


 そんな事を思いながら、凛と並んで歩いていると。凛が俺の方を向いて話し掛けてきた。


「そういえば風吹、昨日の夜におじいさんと何か話してたみたいだけど、なに話してたの?」


「え?ああ、昨日の夜か……」


 ……少し大きな声で話していたせいか、起こしてしまったらしい。というかマズくないか?断片的に聞いて何の話をしていたのか疑問を持つのはいいが、その断片的な所が「凛を護るために」とか、どうとか俺が言っちゃった所だったりすると物凄く恥ずかしいし、気まずいんだけど……


「えーと、その……よく聞いて無かったのか?」


 適当に聞きたい事をカバーしつつ、凛に質問で返す。


「うん。寝惚けててよく聞いて無かったし」


「そうか……」


 ホッ……と心のなかで胸を撫で下ろす。良かった、よく聞かれてなくて……


「じいさんと話してた内容はな、今日って最終試験の為に、俺と凛だけでクエストに行くだろ?」


「うん」


「だから人目が無いこの機会に、銃を召喚して練習させて貰えないかって話をしてたんだよ」


「へえー……」


 すると、凛は思い出したような顔をして再度俺の顔を見る。


「そういえば、おじいさんが天界規定がなんとかって言って、『緊急時以外はダメっ!!』的な事言って無かったけ?」


 うっ……そこを突かれると痛い……

 確かに、全くもってその通りの事なのだけども。


「あー……今後使う時の為の練習って事で、一応……まぁ」


 ……あの様子だと、承諾した様には思えなかったが……別にいいか、最初から決めてた事だし。因みに、今はガミガミ言われるのが嫌なので、懐中時計の方はミュートしたままだ。


「良かったじゃん。これで風吹の本領発揮だねっ!!」


 凛はちょっと嬉しそうに、笑顔でそう言った。……なんかそう言われると、少し照れてしまう。

 無意識のうちに頬をかいて、俺も笑顔になっていた。

 

「とにかく、武器召喚してやってみるよ……練習なら大丈夫だろうし」 ……たぶん。



∗∗∗∗∗∗∗∗∗∗



「んなわけあるかぁっ!!!」


 アンティーク調の木製家具に囲まれた、少々豪奢な仕事部屋兼自室で、テーブルの上に置かれた懐中時計に向かってそう叫ぶ。しかし、懐中時計の向こうでも、私の声が聞こえている筈の二人からは返事がない。

 そしてその変わりに、相談に来て貰っていたメイロさんが、少し離れた壁際の椅子に座って面白そうに笑っていた。


「メイロさん!!笑ってないで解決法を探して下さいよ!!」


 昨晩、風狙君が「銃を召喚する」と、とても冗談とは思えない雰囲気で宣言してから寝てしまい。私は慌ててメイロさんを呼んで事情を話したのだ。

 毎度の如く、メイロさんは状況を既に知っていたのだが「どうしましょうね……取り敢えず、説得してみたら?」としか言ってくれなかったのだ。

 しかし風狙君とは会話すら出来ない。だから今日もこうしてメイロさんを呼んでいる。……次、緊急時でも何でも無い時に銃を召喚した暁には、メイロさんが総会議行きになるのは免れないというのに…… 


「……懐中時計ごしに話しかけても反応が無いんですよ……聞こえて無いのか、無視しているのかも分かりませんが、これじゃ説得も何も……」


 するとメイロさんが黙って立ち上がり、テーブルの上の懐中時計を手にとって……


「あーあー。テストテストー。フブキ君、聞こえてる~っ??」


 と話し始めたではないか!


「あっ!ちょっ!!メイロさん!?」


「ん?本当に聞こえてないのか、確認してるだけよ」


「でっ、でも!!」


 地上に下りた転移者に話し掛けていいのは、ガイド役である私以外禁止だった筈なのだが……


「……ふん。貴方以外の声でも反応しないのね……」


 そう言って、今度は懐中時計の上蓋を開け、幾重にも重なった歯車と神意石(しんいせき)などを交えた、複雑な機構が丸見えの文字盤を、顔を思いっきり近づけて観察し始めた。


「あ、あの……?」


 少々難しい顔をしたまま暫く眺めていたが、少しするとメイロさんは上蓋をパタンと閉じて、元の位置に戻した。


「うーん……懐中時計は故障して無いみたいね。向こうに声が届いてるみたいだし」


「じゃ、じゃあやっぱり……無視……なんですかね?」


 なんだか、ここまで徹底されると悲しくなってくるな……

 しかし、メイロさんは首を横に振って。


「いや、たぶん向こう側が聞こえない様にいじってるわ……たぶん、ミュートしてる」


「ミュート……?」


 そんなの機能。初耳なのだが……

 困惑していると、メイロさんが意外そうな顔で


「知らないの?上の摘まみを引いて使うミュート機能の事。こっちの声は届かなくなるけど、向こうの声は届くやつ。その上こっちから解除は不能よ」


「……そうか、だから私がいくら呼んでも反応が無いときが……まさか、そんな機能を使っているとは……」


「貴方のお説教が長いからじゃない?」


 メイロさんはそう言ってクスっと笑った。


「じょ、冗談じゃありません!!こちらから解除できないんじゃ、説得する事も出来ませんよ……!!なんでこんな機能が……」


「さあね。でも懐中時計ごしじゃ、どうする事も出来ないわね……貴方が直接行って説得したら?」


「と、トンでもありません!!それに、どうせ私の話は聞いてくれないでしょうし……」


「そうねぇ……召喚のストップは無理だし……」


 うーん……とメイロさんは頭を垂れて……ガバッ!と顔上げた。……どんな名案を思い付いたのだろうか。メイロの長く白い髪の毛が顔にまでかかっている。メイロさんは髪を整えながら


「良いこと思い付いたわ!!私が地上に下りればいいのよ!!」


「えぇっ~!!!?」


 トンデモ発言である。よく地上に遊びに行く人はいるし、許可もされているが、転移した人と会って話をするなんて聞いたことがない。そもそも許されるのか。


「貴方はどちみち、職務があってここを離れられ無いんだし、他の人にも頼れ無いわ。だったら私が行ってなんとかすればいいのよ。どうせバレやしないわ!!」


 自信たっぷりに、上司としてあるまじき爆弾発言をしたメイロさんの気迫に、若干気圧される。


「で、でも……」


「大丈夫よ、きっと上手くやるわよ。それに、どうせ放って置いたら総会議行きになるわ。だからやってみるってだけよ」


「確かに、その通りですけど……」


 他に方法が無いのも事実だ。遅かれ早かれ、今日中に風狙君は武器召喚をするだろう。そうすれば、監督者である私の上司であるメイロさんが呼び出されるのは必至だ。でも、これがバレたって同じ結果である。賭けみたいなものだ。


「……流石に、天界人としての身分は隠しますよね?」


「当然よ。地上の人として接して、武器召喚の事に直接触れないように。あくまでも自然に。ね」


「そうですか……」


 メイロさんの事だから、失敗などする事はないと思うが……


「その……すいません。こんな事態になるまで、私がどうする事も出来なくて……」


 気まずいと思いながら、うつ向いてそう言う。上司かつ友人であるメイロさんに大迷惑な事になってしまったのだから……

 しかし、メイロさんは微笑み。


「別に気にすること無いわよ。こんな事の一つ二つはあるわ。ほら、マリア。暗い顔しないのっ」


 今はフリフィートととしてやっているのだが、メイロさんは私の本当の姿の名で呼ぶ。


「は、はい……その、本当にありがとうございます……」


「いいってことよっ」


 笑顔でそう言いながら、メイロさんは自分の懐中時計を取り出す。


「そろそろ時間ね……じゃ、行ってくるわ」


 メイロさんが懐中時計に付いているスイッチを押すと、目の前に光の柱が現れる。


「お、お気をつけて!!成功を祈ってます!!」


「ありがとう、きっと上手くやって来るわよ。じゃあね~……」


 メイロさんは笑顔で手を振りながら光の柱に入り、部屋が凄まじい閃光で満たされ、思わず目を閉じて腕でカバーする。少しして目を開けると、メイロさんは光の柱と共に目の前から消えていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←是非とも、気にいってくれた方は押していって欲しいです。 コメント絶賛募集中。よかった感想欄等にご記入して下さると幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ