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あの、FPSゲーマーですけど。ジャンル違うんですけど。  作者: きょーま(電傳)
第1章 この街で生きていく!(仮)
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42 魔法とは。そして安定の流れ。(後)


「──にしても、盛大に燃えたな…………」


 俺は改めて、焼けた中庭を見渡してそう言う。……やってくれたな。凛の魔法強すぎだろ………というより、手加減というのを知って欲しい。


「凛、使ってみたいと思ったのは仕方ない、あの大剣バカだって悪い。けどもうちょっと、試し撃ちなら……」


 横に立っている凛はうつむいて、少し恥ずかしそうに口を開く。


「……これでも……手加減したんだもん……」


「そ、そうか……」


 手加減でこれって……そもそも、イリーナさんのを見ていた限り、あの火の球って辺り一帯を、爆炎に包む魔法じゃ無いよな?

 ゲームのキャラが凄かったのか、凛のゲームセンスとプレイ時間が凄かったのか……たぶん後者の影響が強いだろう。

 

 とにかく、人ん()の中庭を燃やしちまったんだ……保護者的な役割もある俺も……


「今回の事。俺からも謝ります。本当に、すいませんでした」


 イリーナさんの方に向き直って、深く頭を下げる。するとイリーナさんは優しい顔で、両手を振りながら


「別にいいわよ。ちょっと芝生は可哀想だったけど、それ以外はなんともなかったし」


 それ以外は。……って芝生は、凛の立っていた部分を除いて全て炭と化し……

 ……あれ?中庭の隅にある大木は、焦げ跡一つなく、青々と葉を生い茂らせているし、石だからってただでは済まないだろう外壁も、特に焦げ跡は見当たらない。壁際に置いてある鉄製のテーブルセットだって同じく、変わった所はない。


 俺が困惑していると、レイミーが。


「……この家は様々な防衛魔法が付与されてるんですよ。だから芝生以外は無事だったんです」


「へ、へぇ……」


 防衛魔法って……ここ家だよな?


「まぁ……防犯の為ですけどね。夜とか留守中はもっと様々な魔術が作動します。近づいた者を気絶させる魔力逆流とか、その他色々と」


 気絶させるって……


「……そこまでする必要あるのか?」


「一応ですよ。一応」


 それに、その他色々とか……まぁ、こんだけの家に住んでりゃ、用心するに越した事はないか……なんか高級そうな物、沢山あるし。


 すると、水の球を喰らって吹っ飛ばされたカイトが、うめき声を上げながら……


「う、うぅ……イリーナ、芝生は可哀想って……俺の事は」

「そうだ、(みんな)訓練で疲れてるだろうし、風吹(フブキ)君と(リン)ちゃんも、ここでお茶してから帰らない?」


 カイトの発言に被せるように、発言が無かったかのように、イリーナさんが笑顔で俺と凛に話かける……い、イリーナさん、ちょっと怖い……


「「は、はい……」喜んで……」


「ね、ねぇ?」

「そう、じゃあそこのテーブルで食べるから、準備手伝って頂戴ねっ♪」


 またもや完全無視。

 微笑みながら、イリーナさんは家の中に入っていく。なんとも言い難いオーラを放ちながら。凛も少し間をとって、それに続いて家に入る。……イリーナさん怖いです。

 

「さてと……」


 俺もドアへと歩いて行くと、当惑したカイトが。


「な、なぁ……俺ってなんかマズイ事言ったか?」


「「言った」」


 俺とレイミーが口を揃えてそう言い、首をかしげるカイトと、呆れるレイミーを中庭に残して俺はドアを抜けた。



***********



 廊下の先に凛の背中を見つけ、小走りで追い付く。


「なんかイリーナさん怖い……」


「そういう事言うなよ」


 小声でそう言いながら、聞いたことのない旋律の鼻歌を歌いながら歩く、イリーナさんの後に続く。

 暫く歩くと、厨房のような場所についた。本当にデカイ家だな……ここまでの道を忘れそうだ。


 厨房はいかにも中世ヨーロッパ。主にレンガと石で出来ており、釜戸や井戸なんかがある。


「えーっと……」


 イリーナさんが一つの、上と下に別れた戸棚に近寄って下の扉を開けると、手前に冷気が流れてきた。

 凛が興奮気味にイリーナさんに問いかける


「こ、これって冷蔵庫ですか?!」


「そうよ。魔導冷蔵庫。上に魔法石が入っててね、それを使って冷却魔導具から出した冷気で下の物を冷やしてるの。少し珍しいかもね。普通あったとしても氷を入れるやつだしね」

 

「そ、そうですねっ!」


 確かに……電気冷蔵庫は普通だが、魔導冷蔵庫は珍しい……というか初だ。


 イリーナさんが冷蔵庫から、イチゴとクリームのホールケーキを取り出し、ティーポットも取り出す。今度は他の戸棚からお洒落なティーポットを5つ取り出してトレイに置いた。


「もう紅茶は出来てるから、フブキ君お願いね」


「はい」


 包丁で五等分している間に、俺は次々と紅茶を注いでいく。

 その間、凛は目を輝かせながら、色んな角度から冷蔵庫を眺めている。……まぁいいか。


 電気がなければ魔法。か……

 そう思いながら、俺も魔導冷蔵庫とやらをチラ見する。

 魔法式?は珍しいものなのか……氷を使う冷蔵庫もあるって、昭和みたいだな。

 

 そんな事も思っているうちに、紅茶を5つのカップ全てに注ぎ終わり、ケーキも五等分され、小皿に取り分けられてそれもトレイに載せられている。……一つだけトレイに乗っていない事には触れないでおこう。


「さ、持っていきましょう。えーっと、凛ちゃんは……ポットとフォークを持って頂戴ね」


「はい」


「あ、フォークは4つでいいわよ」


「は、はい……」


 イリーナさんに続いて、中庭へと来た道を戻る。



***********



「さてと……」


 俺と凛、イリーナさんはそれぞれ持ってきた物を、大きな金属製の網目のある丸テーブルに並べ、皆で椅子に着く。

 座って、イリーナさんが辺りを見回す。


「なんか殺風景ね……」


 そりゃそうだろう。焼け焦げた芝と、大木しか無いし。きっと咲いていたであろう花だって、勿論灰となっている。


「先に食べてていいわよ」


 イリーナさんはそう言って立ち上がり、中庭の中央へと行ってしまった。


「はぁ……じゃ、先に食べて……あれ、俺のケーキは!?」


 テーブルの下を覗きこんだりしているバカを放って、俺達は静かに紅茶を飲んで、ケーキを食べる。

 その間、イリーナさんは両手を前にあわせて、立ち尽くし、目を閉じて何かを唱えている。

 紅茶を飲んで一息。


「……なぁ、イリーナさん何の魔法を使おうとしてるんだ?」


 レイミーがカップを置きながら、イリーナさんの方に目をやる。


「きっと、この中庭の芝を生やそうとしているのでしょう」

 

「そんな事もできるのか……」


「ええ。イリーナさんの緑属性魔法なら」


 へぇ……


「私もやってみたい……」


 凛はケーキを食べ終え、イリーナさんの様子をまじまじと見ている。カイトの方は黙々と紅茶を飲んでいる。……悲しげな目しながら、俺の皿じろじろ見てんじゃねぇよ。取り敢えず残っていたケーキを平らげる。


 レイミーも食べ終え、俺の方に向き直り、改まって話しはじめる。


「フブキさん。昨日は様子見の様な物でしたし、今日は異常事態で早く帰って、ここで練習をする事になりましたが……明日から約一週間は、1日中クエスト……街の外に出て、クエスト、練習をしていく予定ですので。これからも、お願いします」


「わかった。……弓は?」


「僕がまた持っていきますよ」


「そうか。ありがとう」


 カイトが紅茶を、ポットの中までも一人で飲み干し、テーブルにグデーっとなる。


「……はぁ……イリーナに後で謝んなきゃな……」


 そう言いながら、空になったティーカップの取っ手に指を通して、クルクルと回し始める。……む、下手くそめ。こういうのはただ単に横に回すんじゃ無くて、西部のガンマンの様に縦回しでな……


「風吹、何やってるの?またあれ?」


「あ、その、いや……」


 凛に突っ込まれてしまった……過去にこれを、モデルガンで披露した事があるのだ。……恥ずかしい……


 すると、いつの間にかカイトはカップをテーブルに置き、足を組んで両手を頭の後ろに回して……


「子供かよ」


 と言いながらニヤケている。……このティーカップ、今すぐ顔面に投げてやろうか……

 睨みつけると、レイミーが


「お二人とも何をやっているのです?とにかく、今日の予定はこれで終わりですが、夕食はご一緒に?」


「そ、そうだな……今日も、一緒でいいかな」


……この中で一番大人なのはレイミーかもしれない。16歳だけど。


「凛は?」


「私もいいよ。イリーナさんとお話したい事沢山あるし」


「じゃ、決まりって事で」


「分かりました……後、僕は今日も風呂屋に行けません。用事があるので」


 またか……カイトも「またかよ」という顔をしている。


「……じゃ、イリーナのが終わって、お茶済んだら酒場に行くか……」


 カイトがそう言った時。イリーナさんが両手を突き上げ、大きな声で


「ビィーア・ネイチャー・グラスッ!!」


 ポンっという軽快な音と共に、無数の新しい緑が、中庭を綺麗に埋め尽くした。

















これにて一章終了……かな

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