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あの、FPSゲーマーですけど。ジャンル違うんですけど。  作者: きょーま(電傳)
第1章 この街で生きていく!(仮)
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39 FPSゲーマーなのに遠距離攻撃武器の適性が低い理由とは?


 相変わらず人と馬車往来が絶えない大通りと横道を経て、昨晩も来たカイト達の家……と言うより屋敷に到着した。


「お、おっきい……」


 奥まった玄関より少し前にある、小さな鉄門の前で足を止めて凛がそう呟く。


「……んな大したもんじゃねぇよ。とっとと入ってくれ……」


 カイトが家の鍵を回して、分厚い木の扉を開けながらそう言う。

 

「いいなぁ……」

 

 外壁の装飾をしげしげと見ながら、凛がレイミーとイリーナさんに続いて屋敷に入る。

 昨日は行ったときは夜で、よく家の全貌が見えずなんとなく大きいとだけしか分からなかったが、改めて明るい所で見ると……


「デカイ……」


 いくら位するのだろうか。家業を継がせようとしていたじっちゃんが不動産だったから、なんとなく査定はできる。

 えーと。街の中心部からさほど遠くはなく、土地も広い。三階建ての古風な……いやここでは普通の建物だが、他とは違い細かな装飾が所々に見られ……


「余計な事しなくていいから」


 顎に手を当て、門の前で考え込んでいるとカイトに服を引っ張られて家に引きずりこまれた。



*************



 昨日のようにホテルのような廊下を通され、奥の部屋……というよりは広間に通される。

 カイトがロープ等を腰から外して、豪奢な木のテーブルに放ってから話し始める。


「よーし。これからの予定だ。取り敢えず(リン)ちゃんは俺と中庭で大剣の型の練習。イリーナもついでに魔法の事も教えて貰う。風吹(フブキ)、お前は……弓の練習をレイミーと」


 なぜ俺の名前は一泊置いた。

 すると、レイミーがカイトに訪ねる。


「フブキさんの弓の練習はどこで?中庭では少し狭いのですが……」


「あぁ~……そうだな……」


 するとイリーナさんが人差し指を立てて


「……地下の剣術道場は?広いし、物置にしか使って無かったでしょ?」


 そんなのあんのかよ……それなのに物置かい。


「そういや、そんなのあったな。じゃ、レイミーとフブキはそこで頼むぜ」


 するとレイミーがすかさず


「いや、道場はだめです」


「え?なんで?」


「……」


 するとレイミーが視線をカイトの胸元、そして襟首に視線を二回ほど行き来させた。注意深い俺じゃないと気が付かないような、一瞬の動作だった。

 するとカイトは少しだけ眉をひそめ


「……いや、大した事ない。大丈夫だ。………散らかってるからレイミーが先に片付けてくれ」


「いや、しかし……」


 レイミーが困り顔で一歩カイトへ詰め寄る。しかし、イリーナさんがレイミーの肩を掴んで止めて


「もう大丈夫よ……片付ければ。ねっ?」


 二人から言われて、流石のレイミーも引き下がる。


「……分かりました……片付けておきます………フブキさん。行きましょう……」


 さっきの会話の流れが、俺にはよく理解出来なかったが……取り敢えず許可が降りたということか。


「分かった……」


 俺は頷き、レイミーに促されながらカイト達と共に広間の奥の扉をくぐり抜け、また豪華な廊下に出た。

 

 レイミーが俺に話しかける直前、こちらを見る目が一瞬鋭くなったのは気のせいだろうか……



*************



 廊下を少し歩くと、行き止まりになってT字路のように左右に枝分かれしていた。そしてその横一面はガラスの比率が高い……ベランダのサッシのような感じの壁で覆われていた。

 そして、その中は30人位なら十分に集まれそうな芝の中庭が広がっているそれに加えて大木まで。中庭を挟んで反対側の廊下も見える。どうやらロの字型になっているようだ。……どんだけ広いんだよ……


 カイトがサッシの出っ張りの一つを掴んで引くと、それがドアのように空いた。

 カイトとイリーナさんが中庭に足を踏み入れ、凛を手招きする。


「え、えっと……」


 凛が俺の方を見てくる。


「……俺が見て無くても、大丈夫だろ?」


「う、うん……」


「よし、それなら行ってこい。しっかりと練習しくるんだぞ?」


「分かった……」


 そう言って、凛も中庭に入っていった。

 凛の背中を黙って見送る。


「……」


「……剣術道場はもう少し先です」


「ん、分かった……」


 凛の背中を振り返りながら、レイミーについて行く。

 

 ロの字型の中庭を囲む廊下の一角で折れ曲がると、すぐに突き当たりにドアが出てきた。この扉の向こうに階段があるのか……

 レイミーが開けようと、鍵束を取り出し、その一つを選び挿して金色の装飾いっぱいのドアノブを回しかけると……


「その……だいぶ使っていない上に、物置きとして使っているので。片付けるまで少々時間を……」


「いや、そこまで気にしなくても……」


 俺がそう言い終わる前に、レイミーは中に入ってドアを閉めてしまった。……どうしたんだ?なんかさっきからピリピリしてるけど……ま、散らかった所見られたく無いだけか……


 いろいろ考えてると面倒なので、適当に自己完結して壁に持たれかかり、ガラス越しに凛達の練習を眺める。

 凛は昨日と同じく、先ずはカイトが大剣を振り、それを真似する。という形で練習をしているようだ。……毎回思うが、よくあんなバカデカイ剣を振れるなと思う。


 それに……さっきの凛の言動は……俺のせいかもしれない……

 過去に……俺が、急に居なくなったせいで……


 すると、地下室の扉から


『ドガシャーンッ!!』「気にしないで待ってて下さーい!!」


 けたたましい金属音と共にレイミーの声が


『パリンッ』「あっ……」


「……」


 大丈夫かな……



*********



 それから地下室の扉から聞こえる、大片付けと大掃除の音を聞きながら凛の練習風景を見ながら、十数分待っていると。キィ……っと地下室の扉がゆっくり開けられた。


「ん、終わったのか……う……」


 身体中ホコリまみれのレイミーが出てきた。薄暗い、灰色の服を着ていても分かる目立つ程だ。


「ごめんなさい……本当に長年開けてい無かった物ですから……」


 そう言ってレイミーがまた中に戻って行ったので俺もそれに続く。


 扉の中に入るとすぐに下り階段になっており、途中で左に一回折れ曲がっている。

 普通のTHEコンクリート剥き出し(そもそもこの世界には無いと思うが)の階段では無く、木で張られ赤い絨毯のような物も敷かれ、壁には金色の装飾の施された燭台(蝋燭ではなく魔法ランプが乗っている)もあり、またまた豪華

 ……凄いな……


 階段ではを十数段下り、更に鉄扉をくぐって地下の剣術道場に着いた。

 

「広いな……」


「ええ。どんな武器や魔法の練習もできる様になっていますからね」


 へぇ……以外も出来るんじゃないか。


 階段とは一変。流石に道場というだけあって、上の様に豪華ではなく、床は一面ある程度磨かれた石、明かりは天井埋め込まれて鉄柵が張られており、装飾は柱の付け根程度に留まる。


 向こう側には弓道で使う様な的や剣が沢山置かれた剣立もある。

 ……完全に武器訓練所って感じだな……

 というか……


「だいぶ早急に片付けたな……」


「まぁ……急でしたから……でも、使う物は出して一通り準備しましたよ」


 それで的が並んで弓矢が用意されてるのか……

 というか、片付けたと言うよりは、物をただ単に端に寄せたという感じ。


 装飾もなく、武器などが大量に並んで訓練所っ感じでピリリとした雰囲気も、端っこの生活感溢れるボロボロのカーテンや服。床にそのまま置かれた皿とかで台無し。


「……気にしないで下さい。……主にイリーナさんの服ですから……」


「あ、ああ……」


 カイトが嘆いていた原因の大量の洋服達も、いずれもここに溜まっていくのか……可哀想に……


「コホンっ……取り敢えず、弓の練習を初めましょうか……」


「ああ……」


 そう言って、矢筒と弓の置かれた丸テーブルに向かう。そしてその先15メートルには丸い的が3個数。 

 取り敢えず手にとり、矢を弓にセットして軽く構える。


「……それで?」


「そうですね……フブキさんは適性が低いのに、命中率は凄い高いですからね……あれは本当にお上手でした」


「ありがとう……」


 弓矢は使いたくないです。


「……そうですね……僕はその……下手でも弓の知識は結構あると思うので、先ずは射ってみて下さい」


「オーケー」


「……おーけー?」


「い、いや。今のは分かったて意味で……」


 そう言いながら弓を引き絞る。


「あの、集中しないと。話しながらだと当たらな……」


 シュンッ! トスッ!!


 なんとなーく狙い定めて放ったが、ど真ん中に普通に当たる。伊達に凛とお話しながらFPSをやっていた俺では無い。


「……あと僕が教えられるのは、弓の『溜め』射ちくらいですかね……」


 え?なにそれ。普通に射つ以外あるの?ああ……


「魔法なら一つも使えないぞ?だからレイミーみたいにあんなのは……」


「いえいえ」


 レイミーが両手を振る。


「魔法では無くてですね……カイトさんの様に、その武器に適性があると魔力を応用して溜め技等が使えるのですよ」


「へぇ……」


「溜め技は強力です。凄い人では矢射程を十倍に出来るそうですし、あとは一気に5本矢を放ったりだとか……」


「それは、ちょっと強そうだな……」


「いえいえ、ちょっとどころじゃありなせんよ。過去には溜め最大の威力でゴーズキをたった矢三本で倒した方も……」


 12.7mm弾なら一発だけど。


「……フブキさんは遠距離攻撃武器の適性が低いと測定されたそうですが……弓のセンスと適性は比例すると言われます。フブキさんの腕前なら絶対に『大』以上。きっと測定魔導具が壊れていたのでしょう。では、改めて構えて」


「う、うん……」

 

 一気に説明された事をなんとか理解しようよしながら、弓を再度構えて矢をセットする。


「ここからは少し違いますが、魔法の様な物………きっと、お気づきでしょうが。弓を持っている時に体から感じる。流れの様な物を……」


「……なんも」


「えっ?だから体を流れるような……」


「だから何も」


「へっ?」


 自信満々で説明していたレイミーが困惑顔になる。


 ……こりゃ、あの適性測定の魔導具。壊れてないな。


 





 

 

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