35 伊達に……FPSゲーマーじゃ……ないんで
遅くなりました!すいません。
そして今回。長くなりました。最後までお付き合いくださいませ\(_ _)
「はぁ……」
……そんなもんだよな、大して期待はして無かったよ。ワンチャンあるんじゃないかと思っていた俺がバカだった。
俺が深いため息をつくと、レイミーが慌てて両手を振り
「そ、そんなに気を落とさないで下さい!!魔法が無くても十二分に強いですから!!遠距離に物理攻撃を出来るというのは、それなりの優位性があってですね……」
そう言って麦畑の横を突っ走り、さっき爆散させたラージコボルトとの距離を縮めて行く。
俺と凛。イリーナさんでレイミーの背中を追いかけて行く。
レイミーが足を止めた所は、麦畑を背にして丁度正面が爆破跡になるような場所だ。さっきよりは爆破跡に近くなった。
……あ、またなんか出てきてる。
「──さっきのは、ただ弓の心得を説明するだけの為だったので……相手が相手でしたから魔法を使いましたけど、次は普通の運用方法を……」
そう言って、さっき魔法と矢で吹っ飛ばした木の方向を指差し、弓矢を構える。
「あれはスモールコボルトなので、矢を胴体に当てれば、一撃で……」
あれがスモールコボルト(以下Sコボルト)か……ラージコボルトをそのまま小さくしたような容姿をしている。指先の長く尖った爪も、Lコボルトに比べればかわいいもんだ。
レイミーがやった爆発音を聞いてやって来たのだろうか、さっきの爆発でLコボルトが消し飛んで、小さなクレーターが出来た場所を三匹揃ってうろうろキョロキョロしている。
「ラージコボルトは常にスモールコボルトを下部として数匹連れているんですよ」
「「へぇ~……」」
っていうか、親玉が吹っ飛ばされた所にノコノコと出てくるとは……コボルトも案外バカなんだな……
レイミーが弓を構えて引き絞り……シュンッッ!と矢を放つ。
三匹のSコボルトの方に飛んでいった矢は……『トスッ……』左隣の木の幹に突き刺さった。
「「「……」」」
「……そ、そして意識外からの一撃。これが簡単にできるのがまた弓の強みでもありますかね……はい」
さらっと外した事流したな。
少しづつ顔を赤くしていって
「……さ、さっきの様に。僕の腕などでは無理ですが、Lコボルトだって頭を抜けば一撃で倒せるはずですよ……」
「「へー」」
平坦な声でそう返す。
なんか色々言ってたけど、魔法無しだと普通に外すんだな……
レイミー更に顔を赤くして
「う、胡散臭い目で見ないで下さいよ!!僕だって苦手分野はあります!ただ心得は知っているっていうだけで……」
すると凛とイリーナさんが
「「下手くそだぁ……」」
小さな声。されどレイミーには十分に聞こえる声量でそう言った。
……言うなよ二人とも……ほら、レイミー沸騰しそうだぞ。
「もうやだ……」
レイミーが両手で顔を覆い隠して、小さな声でそう言った。なんで俺の弓の指南を引き受けたんだか……
まぁまだ16歳だし、こんな所があっても当然か……でも、いつも大人みたいに振る舞っているレイミーにも、こういう所もあったんだな……意外。
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それからレイミーは、恥ずかしさのあまりか、真っ赤な顔を下に向けて両手の拳を握りしめ、プルプル震えて何も言わない。レイミー死んじゃうぞ……流石に可哀想だ。
俺がしばしの沈黙を破る。
「と、とにかくだ。弓の優位勢は遠距離物理攻撃と隠密性にある。そういうことでいいんだな?」
強引に話を元に戻す。
「……そ、その通りです!遠距離からの物理攻撃。そして隠密性。場合によっては一切攻撃に晒されずに済むことだってあるんですよ!」
俺の意図を察したのか、ほぼオウム返しだが話に乗ってきた。
「その……じゃあ精度さえ良ければ、なんとかなる物なのか?」
「……まぁそれもありますが、後は速射力とか貫通力なども無いといけませんかね……」
レイミーはいつもの調子に戻ってきた……いや、無理に戻してるのか……とにかく、いつものように続ける。
「速射……ね……」
なんか銃の下位互換って感じだな……すると、レイミーが弓と矢筒を渡してきた。
「それでは、風吹さんの腕前を……」
試しに左手で弓を構えてみる。……見た目よりも少し重いな……
弓は木製の様だが、結構しっかりと作られているようだ。
照準は(サイト)は……うん。何も付いて無いね。せめて目印の一つでもついていたら良かったのだが、生憎それすら無い。
「俺、マークスマンサイトとアイアンサイト以外使ったこと無いんだけどな……」
スタビライザーだって勿論付いていない。
本当に能力で当てられるのか分からないぞ……
「……はい?」「………なんでもない」「そうですか……」
思わず心の声が……
取り敢えずレイミーの様に左手で弓を持ち、足元の矢筒から出した矢を一本。右手で矢を、左側のレスト(弓の持ち手の少し上)に添える。ふん……
後は……流れ……
レストを確認して視線をターゲット……Sコボルトの方に移す。……取り敢えず、一番右端の奴にするか。
目標を見据えたまま、弓矢を前に構え、弓矢と目標を重ね合わせる。そしてそのまま徐々に引き絞って角度を調整していく。
まるで何年も弓矢を扱ってきたような。そんな感覚に襲われる。……なんかやだな……
誰に言われるでもなく、森の草木、草原の揺らぎで風の流れを逐一把握する。そして目標のSコボルトの未来位置を予測する。
もうどこに矢が飛び、どこにコボルトが移動するかは分かった。
更に右手を引いて、限界まで引き絞り……手のひらの力を抜いた。
『シュビッッ!!』と風を切り裂きなが、頭の中で描いていた通りの軌道を矢は通り……
『ドスッッ!!』狙ったSコボルトの眉間のど真ん中に突き刺さった!!
Sコボルトはその反動で仰向けにぶっ倒れた。勿論絶命しているだろう。
「……お上手ですね……」「上手じゃない!やっぱりあの魔導具が間違ってたのよ!!」「風吹すごーい」
「あ、ありがとう……」
あんま嬉しく無いな……しっかりと命中させたのは良いが、手応えが無いのがイヤと言うかなんと言うか……しっくりこないと言うべきか……
一応能力はあったから良しとするか……
***********
「ん……この距離でも気がつきましたね……」
俺が仲間を射抜いた為か、残りのSコボルトは俺達の存在に気がついたようだ。
何をしているかはよく分からないが、顔を合わせて口を動かしているのを見る。仲間同士で意志疎通をしているのだろうか。
「よく気がついたな……」
近づいたとは言えど、そこそこ距離あるぞ。今は近くの岩に隠れて見てるし。
「コボルトは鼻がいいですからね……きっとこの岩に居ることバレてますよ」
へぇ……頭が犬っぽいかもしやと思ったが、そういうこ……
「風吹。別に犬っぽいからとかじゃ無いからね?」
まるで俺の思考を読んで、それを遮る様に言ってきた。
「……わ、分かってるよ!」
RPGとか知らないのっ!!RPG7(携帯対戦車擲弾発射器。要はロケットランチャー)は分かるけど。
下らないことを考えているとイリーナさんが立ち上がって。
「じゃ、後は私が吹っ飛ばすわね……」
そう言って杖を構える。吹っ飛ばすって……
すかさず、俺もたち上がる。
「あの、俺にやらせてくれませんか?もうちょっと弓の練習したいし」
「え?別にいいけど……一応、いざという時の為に待機はしておくわ」
イリーナさんはそう言って、小さな火の球を手の上に浮かべた。
「……できますか?相手は複数ですし、Sコボルトは気性が荒いので、今からでみ突撃してくると思いますが……」
「……大丈夫。できる」
「……そうですか……マズい状況になったら、直ぐに言って下さいね」
レイミーも再度岩に隠れる。さてと……
俺は弓と矢筒の肩紐を持って岩陰から出る。……あれ、コボルトの数増えてないか?
さっきまで俺が倒した奴含めて3匹だったのに、気づいたら10匹に増えていた。……まぁ、いけるか……
矢筒の肩紐を外して、金具を右腰のベルトに装着する。本来は肩に架ける物なのだろうが、速射をする為、手がすぐ届くようにあえてこうした。
そしてを再度左手で構え、右手で矢セット。目標を見据え、風を読んで頭の中で矢の軌道をシミュレーションする。
すると……
「「「グゥォォオオ!!」」」「「「「グァアォオ!」」」」
Sコボルト達が一斉にこちらに向かって走ってきた!!
どいつもコイツも長い爪の生えた手をグバッと開き、バラバラに突進してくる。……こりゃ、ただ単に数で一気に押そうと思ってるな……
「やっぱりバカだな……」
相手が脳死(考えなし)で突っ込んで来るなら、こっちの物。求められるのは速射性と精度のみ。
先頭から順にエイムして(狙って)いく。
シュンッッ!!
直ぐに矢を放つと、コボルトの眉間に命中。次……矢をすぐさま抜き、狂い無くレストにつけ、直ぐに他のコボルトにエイムしていく。
即座に矢の軌道を予測し、次々と矢を放っていく。
シュビッッ!シュバッッ!!ドスッ!ドスッッ!!
どれも眉間のど真ん中を貫いていく。
風向きが途中で変動しても、矢を放つ瞬間。方向を微調整して対処していく。
坦々と矢を抜き、構え、引き絞って狙い、放つ。
この動作を繰り返していると、あっという間最後の一匹となった。
「お前が……最後っと……」
シュンッッ!!ドスッッ!「グギャッ……」
最後の矢も、勿論眉間を射抜いた。……ふう……今のが最後か……やっぱりなんか違うんだよなぁ……
「終わったぞー……」
振り向いて見ると、三人とも岩陰から出て、目を広げて固まっていた。
「……す、凄い腕前ですね……王都にもそんな弓使いはなかなかいないですよ……」「……凄い……」
「ま、まぁね…………」
あんまり嬉しくはない。俺は……銃を……
「風吹やっぱり強いじゃんっ!!!」
凛は何故だか嬉しそうにそう言って、俺の肩をポンポンしながら褒めてきた。……で、でも。凛に褒めて貰えると、やっぱ嬉しいです……はい……
「……もう弓に関しては、教える事無さそうですね……」
「確かに……」
レイミーとイリーナさんが口を揃えてそう言う。
まぁ……そうかもな。改めて見てみると、自分で言うのもなんだが、結構凄まじいかもしれない。
さっきの所に視線を戻すと、Sコボルト達は、皆ほとんど歩を進めること無く、扇状に死体となって草原に転がって、何もなす術なく全滅。というのがよく分かる。
う~ん………弓……ありかもな………いやいや!!俺は断じて認めないぞ!!と、とにかく。暫定、人の目がある時用の武器に弓決定だ!
「……本当に凄まじいですね……もうサブターゲットは達成ですよ」
「……確かに、そうだな……」
俺のさっきの弓攻撃。合計1分も掛かかんなかったぞ……
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それから俺、凛、レイミー、イリーナさんで協力して、Sコボルトの死体を一ヶ所に集めた。
「さてと……では、回収班を……」
そう言ってレイミーが、あの青い通信石で呼ぼうすると…………
バキバキバキッ!!メキメキメキッ!!
森の方から、気をなぎ倒すような音が断続的に聞こえてきた。
皆揃って森の方向にを一斉に見ると……森の奥の方の木葉が揺れ動き、辺りの鳥が飛立つのが先ず目に入った。次にその木がフッと倒れるのが見えた。
……徐々に木をなぎ倒す音がこちらに、近づいているような……しかも心なしか、人の叫び声っぽいのと、何かの人じゃない奴の声も……
更にドスンドスン!という音まで聞こえてきた。……もしや
「……ま、まさか……」
レイミーがそう呟き、右手を広げて何か唱え、白く発光した。
「……な、何をしたんだ?」
「……光属性の……生命探知魔法です……」
「そ、それで!?」
イリーナさんもレイミーに問いかける。
すると、レイミーが口を開く前に、森の奥の方から……
「──ご、ごっめ~ん!!二匹見つけたんだけど、逃がしちまったぁ~!!」
「「「「……」」」」
俺達は、森の方から後ずさりすると……
「「グゥオオアァァッ!!!」」
二つの黒くてでっかい人型が、森から飛び出してきた!!
それに続いて、大剣を担いで身体中葉っぱだらけにした人型(恐らく人間……いや。ヒト)が飛び出してきた。
「あんの………バカやろう………」
「………もうあのバカは救いようがありませんね」
「「はぁ……」」
「ご、ごめんっ!!だから早く倒せぇえええ!!」
バカ大剣……カイトがラージコボルト二体と共に、俺達の所へ戻ってきた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
途中で区切ると中途半端過ぎるので、一気に投稿しました。
途中、弓の所で何言ってるか分からなかった人の為にこちらを……文章力無くてすいません……
http://www.archery-x.jp/archery/beginners/beginners_3.htm
あ、勿論↑は用語解説であって、レイミーの弓がこんな最新式ってわけではないですよ。




