34 れ、レイミー……
今度は森、山方面の麦畑の端に沿って歩いて行く。
歩きながら、レイミーに訪ねる。
「そう言えば、なんであんなモンスターが麦畑なんかに出てくるんだ?」
あんな奴が草食だとは思えないしな……
「それ私も思ってた……」
凛も会話に混じってくる。
「ああ、それはラージコボルトが大好物のドードーの卵がよく麦畑の中に埋まってるからですよ」
「へ、へぇ……」「なるほど!」
俺達も食べてたやつか……変わってるな………
それからも、だだっ広い麦畑の横をひたすら歩き続ける。レイミーとイリーナさんは魔法とかで探しているのだろう。さっきから何も話さない。
カイト黙々と小石を蹴りながら歩いている。……探す気あんのか……すると……
レイミーがカイトの蹴っていた石を、横から蹴って明後日の方向に飛ばし、ジャンプしてカイトの耳を引っ張り、自分の口元まで下げた。うわぁ……
「イデデテテッッッ!!!ちょっ!何すんだよ!!」
「遊んで無いで仕事してください」
「……わかったよ……でも、もう麦畑にはいないと思うぞ。お前とイリーナの探知魔法引っかかんないんだから」
「そうですけど……だからってサボっていいものじゃありません」
カイトって、本当にこのパーティーのリーダーなんだよな?
「もう麦畑探すの止めようぜ……流石にもう、白昼堂々出てくる奴はいねぇだろ……」
「そうですかね……」
俺もさっきから耳を澄ませてるいるが、それっぽい物音は聞こえないしな…
「あ、いた」
カイト右斜め前方……森の方向に顔を向けてそう言った。え?どこ?
「本当ですね……」「だろ?森にいるって」「最初外しましたけど」「あ、あれはノーカン!」
カイトが抗議しているのを無視して、レイミー視線を追って行くと……いた。結構離れた所。森の端近くの太い木の根元に一匹……というか一頭か。ラージコボルトっぽい、人型の毛むくじゃらが立っているのが確認できた。
「よく見つけられたな……」
するとカイトが胸を張って得意気に
「ふふん。俺は特に目がいいんだよ。凄いだろ」
じゃあ頭もよくしようか。
「一般人よりも少し良いってだけでしょう。それに目なら僕の方がいいですし……」
凄いな……異世界人ってのは……俺は能力(恐らくスナイパーや戦闘機パイロット)の能力のおかげで見えるが、カイト達は地なんだよなぁ……
アフリカの狩人は、自然に適応して視力が4とか5とかあるらしいから、きっとカイト達もそんな物なのだろうか。
「休憩中ですかね……」「あ、座った………鼻ほじった……」
……目いいからってそこまで報告すんなよ……レイミーに叩かれているカイトから、イリーナさんの方に視線を移すと……あれ……
「え!?ど、ドコドコ!?!」
そんな事を言いながら、凛と共にコボルトと明後日の方向をキョロキョロしている。………見えないんだ……
凛は見えてもおかしくないはずなんだが……イリーナさんにつられているせいで、発見出来ていない。
「あ、あれじゃない?」
イリーナさんがコボルトよりずっと手前の木陰の……岩を指差してそう言う。
「た、確かに……そんな気が……」
凛も凛で、そんな事言って同調する……
もしかしたら凛とイリーナさんは、似通った所があるのかもしれない。
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「ちょうどいい的が見つかったことですし……これから風吹さんに弓の使用方法を教えます。」
そう言って、レイミーが包んでいた布をほどいて弓を出す。
「お、おう……頼む……」
的ってあんた……
「……そうですね、時間がかかるので、ここはカイトは森に入って他のラージコボルトの捜索……イリーナさんは万一に備えてここに残って下さい」
「え?俺一人?」
「……文句言わない……」
レイミーが睨みを効かせると、「わ、分かったよ……」逃げる様にして、一人、森に入って行った。……ここまでやると、やり過ぎ感があるんだが……よく5年間も一緒にハンターやってるな……
レイミーは気にせず続ける。
「弓の使用経験は?」
「えーっと……」……ここはなんと答えるべきか……ファー○ライ(若干サバイバルFPS)やBF4(戦争FPS)、COD.BO3(地に足を着けたFPS)で合わせて試しに3000時間は使っているはずだから、まぁ……プロ並みに出来るとは思うけど。
ここは控えめに。
「まぁ。普通に出来るって位にはやってきたかな……」
実際、リーカブボウ、ファントム、雷弓……(名前は違えど、全部だいたい普通の弓)。ファー○ライは少し違うが、基本ネタ武器的な位置だったし……
俺は一応、無双出来たけどな。楽しく無かったけど。
「そうですか。それなら話しは早いのですが……競技用ですよね?」
「ああ……」
たぶん……eスポーツだし……
「では、ハンターの用。モンスターを狩る場合の弓の使い方から。僕の専門では無いので、ある程度の事しか教えられませんけれど……」
そう言って右手に弓、左手に矢筒から抜いた矢を一本持つ。そして、矢尻を前に向けて弓に添え、矢の尾を弦にセットする。
「……こういう言い方をすると、競技でやっている人に怒られそうですが……ハンターの弓使い、いわゆるアーチャー。これは遊びではありません。競技とは違い、的ではなく生き物に矢を射る。だから、一流の弓使いは相手の行動パターン、弱点、心理までも読み、矢を射る……どの役職の人にも当てはまりますが、常に命掛けの状況。その中で正確な攻撃、適切な立ち回りを求められます。アーチャーは軽装なので尚更です。矢は魔法と違い、遠距離に物理攻撃ができる。反面、矢が切れれば戦えない。だから──」
そう言いながら弓を地面と水平に構え、徐々に弓を引き絞りながら少しづつ上方向に向けていく。
「──だから弓使いには……矢の消費を押さえる。出来るだけ一撃で仕留める術を身に付ける。例えどのような状況下であっても……」
おっ、射るのか?
するとレイミーが超スピードで……「……セトゥル・クリータス・ライトアロー……」と口走った……へ?
すると、いきなり弓が発光し……レイミーが限界まで引き絞っていた左手を放した。
ギュゥイイィィィンンンッッッ!!
凄まじい音と共に、矢が放たれた!すると、ラージコボルトの方から……
ズッドドォォオオン!!!
凄まじい炸裂音が轟いてきた!!
急いでレイミーから、遠方の森の木陰……のラージコボルトの方に首を回す。
目に入ってきたのは、森から数十羽飛びたつ鳥達と、さっきまでラージコボルトが隠れていた所に立つ、土埃の大きなキノコ雲だけだ……えぇ?!!?普通弓って爆発しないよな!?それともあれか、この世界では常識なのか!?!?
そんな考えが頭を巡る。
だとしたら……弓、バカにしてましたすいません。
「……ゆ、弓ヤベェ……」「……す、凄い……」
それしか言えない。するとレイミーが小さな声で……
「……今のは……見なかった事に……」
「「……え?」」
どうした?
「……ズルしました……魔法使いました」
「……さっき口走ってたやつか?」
気まずそうにレイミーが話しだす。
「……はい……僕、先に言った通りに弓の使用経験が浅い上、適正も大した事がないので、この距離で普通に射るとラージコボルトが一撃で倒せない……というか外す可能性があったので……」
「へ、へぇ……」
「……偉そうな事言った後に外すのは流石に気まずいし、危ないと思ったので、光属性魔法でモンスターに矢を誘導だけしようと思ったのですけど……魔力乗せすぎちゃいました……すいません……」
「魔法も魔法でヤバいな……」
なるほど……あのバカみたいな威力はレイミーの魔法か……やっぱり魔法ヤベェな……誘導とかも言ってるぞ。じゃあ……
「……魔法が無かったら?」
「……一撃で倒すの……怪しいです……」
「はぁ……」
思わずため息を漏らす。
やっぱ弓ダメかもしんない。
中途半端ですいません。
つづく!!




