33 もう驚かない
ごめんなさい!遅くなりました、短くなりました……そして今回は説明会です。完全に。
今回、この小説を初めて読む方へ。
誠に勝手な話しですが、出来れば一つ前、(32)の話から。試しに読んで欲しいです(今回、説明以外皆無ってレベルなので……)……………頼みます……
ラージコボルト(以下Lコボルト)の死体そばにて──
「……私の……防具が……グスッ……」
血まみれの凛が、泣き出しそうな顔をしながら小さな声でそう言う。……最初にこの服着た時、あんなに嬉しそうにしてたからな……結構気に入っていたのだろう。
「うわ……ヒデーな……」
カイトが心のないことを言い、レイミーとイリーナさんがカイトを睨む。凛の方は、服を気にしていて耳に入っていない。
凛に付いている血は、勿論Lコボルトのものだ。胸元をざっくり斬られたLコボルトの下から、皆で凛を引っ張り出した時には既に遅し。まぁ当然の結果か……あんなにカッコよくコボルトを倒した凛に、目も当てられない。
そうゆうのに慣れているはずのカイト達も一瞬、引いてしまうほどだ。………当然、慣れていない俺のほうは盛大に引きかけたが、凛が可哀相なのでなんとかこらえた。
……というか凛。服よりも顔とか体のこと気にしようよ……マジで血だるまって感じでヤバイぞ……
「だ、大丈夫よ。早く洗えばなんとか……」
そう言ってイリーナさんが杖を出して何かを唱え始め、淡い青色に発光しだす。……また魔法かな?
「スプリングス・ウォーター……」
イリーナさんが最後にそう言うと、回りの芝生から水の球が次々と湧き出すように出てきた!
それが凛の周りを取り囲み……
「……トルネード!!」
イリーナさんがそう大きな声で言うと、水が一気に集まって渦のようになり、凛の取り込んで回転し始めた!!
「おっ、おい……」
「大丈夫よ。軽く水で流してるだけだから。空気が通る所も作ってあるし」
「そ、そうですか……」
……大丈夫そうには見えないんだが……まるで凛が洗濯機にかけられているみたいだ。
少しすると回転が止まって、水が全部凛の足元に吸い込まれていった。
……凛の方は……一応顔とかその他肌の血と、髪の血は完全に落ちているようだが、服のほうは赤色を薄めただけになっている。
いきなり丸洗いされて、目をパチクリしている。ビッチョビチョだが……まぁ、血よりはましか……すると
「凛ちゃん。動かないでね……風吹君も近寄らないように……」
そうイリーナさんが言うと、また詠唱を始める。今度はイリーナさんの体の周りが、赤っぽく光りはじめた……まさか……
「トルネード・フレイム!!」
そう大きな声で言うと、ボッ!!と瞬時に炎の壁ができて、凛を取り囲む形になるとまた高速回転し始めた!!
「……」
もう口をあんぐり開けて見ているしかない。
間もなくして炎の渦がパッと霧散して、カラッと乾いた凛が出てきた。
「り、凛……大丈夫か?」
目を白黒させている。
「ごめんなさい。怖かった?」
イリーナさんも一言断ってからやればいいのに……一応焦げてはいない様だが……
「う、うん……大丈夫……そ、それよりも……」
凛がイリーナさんに詰めよって……
「……さ、さっきの魔法。教えて下さい!!」
目を輝かせながらそう言った。
イリーナさんは少し戸惑い
「べ、別にいいけど……難しいわよ?けど、それよりも……」
その台風みたいな髪の毛を直してからな。
**********
「さて、それでは昨日出来なかった。モンスターの素材回収についてですが……」
そう言えばそんなのあったな……昨日はカイトとイリーナさんが、死体を木っ端微塵にしたから出来なかったんだった。
「既に説明は受けていると思いますが……こちらを」
レイミーがポケットから、俺達もレイナ《受付お姉さん》さんから渡された、青い宝石を取り出す。
「使い方も習いましたか?」
「いや……」
そう言えば「通信してくれ」としか言って無かったな……
「はあ、レイナはこれだから……そうですね………説明しますと、厳密に言うとこれは通信石では無くて、一方的に位置情報を知らせるだけの魔法石なんですよ」
へ、へえ……
「簡単に言えば通信石の下位互換のような物です。だからこうやって……」
レイミーが右手で宝石を握り、手の甲を上にする。そして手の甲を左手の人差し指で十字を切るように動かすと……
レイミーの指の隙間から、青い光が漏れだしてきた。どうやら石が光っているようだ。
……そろそろ耐性がついてきたぞ……もう何が起きても驚かないぞ……すぐに光は無くなった。
「──はい。今やったようにすれば、いつでも回収班に位置情報を送る事ができます。実際。今回収班を呼びました」
へぇ~
「わかった……」「わかりました」
原理(魔法)は理解不能だが、意外と簡単に出来るもんなんだな…
「これって何処でも使える物なのか?制限とかも」
「基本的に何処でも使えますよ。洞窟や水中でも……ただ、特定のダンジョンの様におかしな魔力が流れているような場所や、近くで特定の属性の魔法が使われている所では使えませんので……」
……へぇ、ある意味GPS(全地球無線測位システム)よりは優れているんだな……
「……まぁその様な場所には普通行きませんけどね……そんな状況に陥る事は、よっぽどの高難度クエストくらいでしょうから、気にする必要は無いと思いますが……」
「そうね……私達も一回くらいじゃない?そういう事になったの」「そうだな……でもあん時、高魔力線中和魔導機あったからあんま気にしなかった気が……」「そう言えばそうだったね……」
イリーナさんとカイトが訳の解らないことを話しだす。
「……ほら。二人とも過去の話はいいですから……とにかく、今は気にする必要は無いということです。ではこれから使用にあたっての注意を──」
************
「と、いうことです……」
「なるほど……わかった。気を付ける」「私も。大丈夫です」
「そうですか。では、自分達で使う時は、先に言った事をよく守って──」
レイミーが丁寧に教えてくれた事を要約すると……
1.必ず、モンスターが死んでいる事を確認してから呼ぶ。
2.周辺に危険なモンスターがいないかを確認する。いる場合は、安全な場所まで移動し、そこで呼ぶ。
3.尚、それでも回収班に危険が及びそうな場合は回収班を呼ばず、自分達で運ぶ。それも不可能な場合は自己で焼却処分等をする事。
4.回収班到着後。回収不可能な場合は罰金が発生する可能性がある。
ということらしい。
「──今回はこのままでも大丈夫そうなので呼びました……」
「……なぁ……回収班って何処でも来るのか?」
「ええ。何処でも」
「へぇ……」
こんなデッケェモンスターを運ぶのか……大変だな……
「それじゃあ……回収班も呼んだことですし、他のコボルトを探しましょうか……」
五人揃って再び歩き出した……




