30 3日目の始まり
遅くなりました~そして今回もあまり進まず…
ふっ、と目が覚めた。薄く目を開けるといつもと違う天井が目に入る。……そうだ、異世界に来てたんだった……
足を伸ばしているほうの窓からは、石の街道を往き来する馬車のガラガラとした音が絶えず聞こえてくる。
よく寝たな……えーっと、今日のカイト達とクエスト行って練習か……それに俺の弓の練習も。
今日は凛のツンツンは無いな……さてと、着替えてギルドに………
目を開けてソファーから起き上がろうとしたが……なぜだろう。俺の右方向から、視線の様なものを感じる。
ソロ~っと薄目のまま視線を真右にずらすと……凛がベットに体育座りをして、俺のことをジーっと見ている。
クエストに行くときのフル装備で。しかも大剣まで背負っている。
……何してんだ……
このままでは何も始まらない。取り敢えずムクッと起き上がり、凛の方を向く。
「……おはよう凛……ところで何してんの?」
凛は、俺がいきなり起き上がったことに少し驚きながら
「……お、起きるの待ってた……つつくなって言ってたし……」
「あそう……」
出来れば優しく起こしてくれるのを期待していたんだが……凛って少し天然的なのでも入ってるのかな?
そんな感じで異世界三日目が始まる。
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俺もとっとと身支度を始める。カイト達に言われていた通り、昨日買ったロープとフック、水筒をベルトにぶら下げた。拳銃も一応ベルトに挟む。
……ウーン……いつかホルスターか何か欲しいな……
そんな事を思いながら革コートを羽織って、凛と一緒に部屋を出た。
一階に降りると、箒を持った家主さんと出会った。
「あら、おはよう」
「「おはようございます」」
「よく眠れた?」
「ええ、まぁ……昨日は疲れてましたし……」
「そう、それは良かったわ。それじゃ、昨日と同じく朝ごはん用意しておいたから食べてってね~」
そう言われて食堂に通された。今日は普通のパン。赤いベーコンっぽい何かと普通の目玉焼きをのようだ。牛乳も置いてある。
ちゃちゃっと食べて一息つく。
「あ、そうだ。凛。ここの宿を一ヶ月まとめて借りると安くなるらしいんだけど。ここの宿にずっと住み続ける感じでいいのか?」
「ここに?……そうだね……最初のうちはいいかもしれないけど……いずれは他のもっと広い所に……」
「……そうだよなぁ……」
安いからって、ワンルームを二人で一つ。ってわけにもいかないよな……
そうだ、じいさんの意見も一応聞いておこう。家主さんは台所からどっかに行ってしまったみたいだし、他の客もいないから大丈夫か……懐中時計を出して話しかける。
「──じいさんおはよう。聞こえてるか?」
「ウム。おはよう。聞こえてるぞ」
「本当昨日聞こうと思ってたんだけど……この街にしばらくいつづけるあたって、ここにしばらく住むか。って話なんだけど……」
「タオレ荘にか?」「ああ……」
「まぁ……最初のうちはいいのではないか?でもずっとここっていうのもキツいだろうし。他に宿をずっと借りれるような所は無いしな……そうだな……一軒家を建てるのはどうだ?でなければ買うか」
「い、一戸建て……」
この世界で職に就いたばっかりじゃキツイと思うんだが……
「なーに。二人の能力があれば、大して時間は掛からないだろうさ……ハンター基本的に儲かる職だしな。しばらくはアデネラにいることになるんだ。いいだろう?」
そんなもんなのか……
「私もイリーナさん達の家みたいなのがいい……」
あれはもっとキツイだろ……
「ま、まぁ……とにかく。繋ぎで一ヶ月借りるか……」
「私は賛成……」「私も賛成だ」
「じゃ一ヶ月契約って事で決まりだな……」
トレイを片付けて玄関に行き、受付にいた家主さんに挨拶をしてタオレ荘を出た。
相変わらず大通りの馬車と人通りは多い。さてと……ギルドに行くか……
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中央広場ロータリーの馬車のをすり抜けながらギルドに入った。
「やっぱり……」
「いないね……」
現在8:30。昨日と同じく、ギルドはほぼ無人だ。
酒場のテーブルを拭いているお姉さんと、ギルドの受け付けお姉さん……あ、レイミーもいる。
足の長い椅子(酒場のカウンター席にある丸いやつ)をギルドの受け付けの前に置き、レイミーはそれに座ってカウンターに両肘をついている。
そしてカウンターを挟んで向かい側には相変わらず、グデーっと突っ伏した受け付けお姉さんがいる。どうやらレイミーと何か話しているようだ。……というよりお姉さんが一方的にレイミーに何か話している気が……
「……おはよう」と俺が声をかけると、レイミーがこちらに気がつき、歩いてこちらによってきた。
「レ~イミ~」
なぜかお姉さんが突っ伏したままレイミーへと手を伸ばして呼び止めようとする。……どうした……
レイミーは構わず俺達の所まで来た。
「おはようございます」
「……あれ、カイトとイリーナさんは?」
「これから来ると思います。二人とも少し起きるのが遅かったので」
「そうか……」
寝坊かよ……
「待ったか?」
「いえいえ、気にしなくていいですよ。まだ集合時間じゃありませんし、僕は先に来てレイナさんの愚痴を聞いてあげていただけですよ……」
「ちょっ!ちょっと!?その言い方は無いでしょ!?」
受け付けのお姉さん……改め、レイナさんが顔をガバッと上げて反論する。
レイミーがレイナさんをじっと見て……
「……まぁ愚痴というよりは世の中を呪う……」「だから!そんな事言わないのっ!」
どんな会話してたんだよ……すると凛が
「レイミーとレイナさん仲いいね……」
「……良くはありません……」
レイミーは即答。レイナさんは少し顔を赤くして
「そ、べ、別にそこまで……ってレイミー今なんて!?」
レイミーと受付お姉さんの絡みは、案外いいのかもしれない。
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レイナさんがグテグテ抗議しているのを完全に無視して、レイミーは話し始める。
「話を戻します……カイトとイリーナさんが来たらすぐに行けるように色々確認をしましょう。まずはお二人とも。昨日買った装備品は持って来ましたか?」
「ああ、ここに」「私も」
どうやら凛も腰に装備したようだ。
「通信石も持ちましたか?」
「ああ」「はい」
ポケットから青い宝石を出して見せる。
「大丈夫ですね……では次に武器を。リンさんは……ありますね。フブキさんの武器。弓は僕が持ってきました」
レイミーが指さした方を見ると、酒場の長椅子に矢のギッチリ入った矢筒と、白い布に巻かれた弓が見えた。
「お昼ご飯は今日もこちらで準備しますので、後はクエスト選びですね……」
レイミーについて掲示板の前に行く。
レイミーが本棚からファイルを取ってパラパラとめくり始めたので俺と凛も覗きこむ。
どうやら☆5のクエストを見ているようだ。
いくつかページを見比べて……とうとうレイミーが一枚引き抜いた。
「これがいいですかね……後はカイトとさんに、これでいいか確認しましょう」
そう言ってレイミーはまたレイナさんの所に戻って行った。
レイミーが戻ってくるのに気がつき、「レイミ~」とレイナさんが甘ったるい声で、両手を広げて手招きをする。……どうなってんだ……そして大丈夫か……
俺と凛は首をかしげながら、クエストの書いた羊皮紙に目を落とす……
『依頼主 農家
クエスト内容 街より北部方面。山岳寄りの麦畑一帯のラージコボルト7匹以上の討伐。取り巻きのスモールコボルト10匹の討伐が可能なら報酬加算。
報酬 50メガ(50,000バイト) 追加 10メガ(10,000バイト)
危険度 ☆5
クソっ。ラージコボルトの野郎が毎晩麦畑に来て、そこらじゅう掘り返して行くもんだからたまったもんじゃねぇ。誰かとっとと駆除してくれ~。取り巻きのちっこい野郎達も狩ってくれたら報酬は弾むぜ。』
ふーん……コボルト……コボルト……RPGとかを一切やらない俺でもなんとなく聞いたことがあるような……
顎に手をあてて思いだそうとしていると、凛が。
「流石に知ってるよね?どんなのとか。私がやっつける所さんざん見てきたんだし……」
……凛が山みたいなキチガイ級モンスターを、オッソロ(恐ろ)しい手さばき。というか途中でスイッチ入ってた状態で、一人無傷で一時間以上かけて倒していたのはインパクトが強烈でなんとなく覚えているが……
「………わかんない」
「……もう。しっかり私のプレイ見てたでしょ?」
「いや……他のモンスターが強烈過ぎて覚えてない……」
というかほとんど凛の『スイッチ』が入った時のモンスターだけだが……しかも、その時だって凛の迫力に気圧されてそこまで覚えていない……
「そう……まあ雑魚モンスターだったからしょうがないかもね。私もぶった斬りまくったし……」
凛はなぜゲームの話になるとこんなに汚い言葉遣いになるんだ……雑魚とかぶった斬るとか言ってたら、マジで可憐でかわいい女の子台無しだぞ……
「それにゴブリンだって雑魚の……」
俺の嘆きも感知せず、凛の延々RPG.MMO演説が始まった……




