23 ……分からない
ちょっと長くなりましたけど……最後までお付き合い下さい
銀行を出て大通りを通り、タオレ荘に到着した。
「……なんか……また何か忘れてるような……」
「……私も……」
そんなことを言いながらタオレ荘の扉を押し開けて入る。
「あら、お帰りなさい」
揺り椅子に座って編み物をする家主さんが迎えてくれる。
「今日のお勤めは終わり?」
「はい……一応。荷物を置いてそれから買い物に行く予定ですけど……部屋、空きありますか?」
「ええ、空いてますよ……また昨日と同じ大きな部屋一つだだけどね……」
「そうですか……じゃあその部屋だけでいいですよ」
また相部屋か……まぁいいや……
「ごめんなさいね相変わらず予約が一杯で。一泊分?」
「はい、一泊分お願いします」
「そう。はい、じゃあ今日も安くしておくわ。二メガよ」
家主さんに一メガ金貨を二枚渡し、かわりにまたあの大きな鍵をもらう。
すると家主さんが
「そうだ……貴方たちはこれからこの街に住む気なの?」
「ええ。まぁそのつもりですけど」
じいさんは住むところを確保するとか言ってたしな……あ、何か忘れてると思ってたのじいさんのことかか。まぁ今は別にいいか。
それにここの街の街のギルドに登録して、カイト達にクエストのやり方についても教えてもらうんだ。しばらくは住むことになるだろう。
「これからこの宿に泊まり続けるつもりなの?」
「え、ええ……その予定ですけど……」
「そう!それなら月単位で契約しない?」
アパートみたいなもんか?
「それなら一部屋一月で4万8000バイトだけど、どう?」
「はあ……」
一月30日だとしたら。単純計算で毎回払うよりも1万2000バイトの特か……結構安くなるな……
ま、一応他の宿とかもあたってみたいし、今すぐ決めることでもないだろう。今後のことを凛とじいさんとも話し合わないといけないだろうし。
……まぁここの家主さんは美人さんの上、優しいし、ここでもいいんだけど。
「まぁ、よく話し合って決めます。前向きに検討しますよ」
「そう。それならいい返事まってるわ」
笑顔でかえしてくれた。……いい人だなぁ……
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急な階段を上って三階の角部屋の鍵を回して入り、それぞれサバイバルナイフや大剣を外すして、それぞれ棚に置いたり剣立てに置いた。
俺の着てるコートは分厚くてちょっと動きにくいので脱ぐことにした。凛も同じくかさ張るようで、マントを脱ぐ。
拳銃は……万が一盗られたりしたらあれだから一応持って行こう。一回出してセーフティを確認してまた背中側のベルトと下着の間に挟み、見えないようにズボンからシャツを出して隠した。
「えーっと……イリーナさん達と一緒に何買えばいいのかな?」
「凛が最初に言ってた、いくつかの衣服類だな……後はにちようひんとか。……でも日用品と言ってもな……まぁ、あとは三人がいろいろ教えてくれるだろ……」
「そっか……ありがとう」
さてと……行くかな……するとハンガーにかけたコートから平坦な声が
「おーい……何か忘れてないか~……」
「……あ、忘れてた……」
危ない危ない。
コートのポケットから銀行カードとお金をズボンのポケットに移す……財布がほしいところだな。早速買い物リストに追加。
時間を確認して懐中時計を一応シャツの胸ポケットに入れる。
「さてと……待ち合わせ時間に近くなってきたし、いくぞ――――」「おーい!他に何か反応はないのかぁ~!?」
「何だよ、反応しただろ……かまちょ(かまってちょーだい!)かよ」
「かまちょとは何だ!?かまちょとは!!忘れ物を教えてもらってそれはないだろう!?」
「あー、ありがとう」
「心がこもっていなっ――――」「あのさ」
遮るようにして、少し声を大きくする。
「……ん?なんだ」
「正直言ってあんた、今のところほとんど役に立ってないぞ?最初に俺達が採集したとき以外なにもしてないし、人の目があるところじゃ会話できないし。基本とか常識は周りの人が教えてくれるし。それにあんたうるさいし、ほとんどただの懐中時計としてしか機能してないぞ?いる意味あんのか?」
「そ、それは……その……」
完全に黙ってしまった。
すると凛が小声で
「(……ちょっと言い過ぎじゃない?なんか、可哀想になってきた……)」
「(……え、そんなに?)」
凛がコクコクと頷く。……はぁ……しゃーないな………
「まぁ……俺たちだけでクエストに行くようになったときにでも、地図案内とか周辺探索とかで活躍してくれればいいよ……」
「ほ、本当か?実は私自身も存在意義が無くなってるような気がしてきていて、危機感を感じていたのだ。そう言ってもらえると助かる!」
……自覚してたんだな………
「……その、忘れ物教えてくれて助かった」
「うむ!!」
なんだこのやり取りは……俺が言うのもあれだが、もうちょい感情のパラメーター鈍くした方がいいぞ……
そんなことを思いながら部屋の鍵を閉めて一階へ降りて、「じゃあ」と家主さんに挨拶をしてギルドへと向かった。
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ギルドに戻ると、既にラフな格好をした三人が酒場の長イスに座って俺達を待っていた。
俺と凛に気がついて立ち上がる。
カイトは薄手の青色のシャツに七分丈のズボンを着ている。この世界に合った若者といった感じだ。装備を外して黙っていると、大剣ぶん回してゴブリンを惨殺していた人には見えず、普通の爽やかな青年のようだ。黙っていれば。
レイミーはあの薄暗い紫ローブの変わりに軽そうな灰色のローブに身を包んでいる……地味なのが好きなんだな……小柄な高校生くらいに見えるが、なぜか雰囲気がカイトとイリーナさんよりも大人っぽい。
そして右手には小太刀の変わりに、少し大きなお買い物バックが握られている。
イリーナさんはTHE魔法使いのではなく、白いフリフリのついた少しボリュームのあるワンピースを着ている。単調な服なのにこんなに綺麗なのはやはり根が美人だからだろうか。十代に見える。ついつい少し開いた胸元に目が……自制心を保とう。……にしても本当に美人さんだなぁ……街で美女コンテストを開いたら優勝するかもしれない。凛といい勝負だ。
イリーナさんも同じく、杖の代わりに買い物バックを持っている。
「待たせました?」
「いいえ、私達もさっき銀行から来たところよ。それに待ち合わせ時間より前だから大丈夫よ。はい、これが報酬」
そう言うと、俺と凛。それぞれに14,000バイトづつ。10メガ金貨一枚と1メガ金貨4枚で渡してくれた。
「ど、どうも……」「ありがとうございます」
「いいのよ」
金貨をポケットにしまう。
「……本当に服とか何も持ってきてないのか?」
「ええ……まぁ……」「ああ」
「そうか……じゃ、行くところはだいたい決まりだな。よし、行くぞぉ!」
今度は五人でギルドを出た。
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ギルドのすぐ横の大通りをカイト達について歩く。
大通りを歩いて、いくつかの小さな横路を通過して行くと、大通り並みに大きな横路で左折した。
するとカイトが
「ここがキラーナ通り。ここに来りゃあ大概の日用品とか狩のアイテム。装備が揃うぜ」
「「へぇ~」」
どうやらここの商店街には露店が出ていないようで、しっかり建物に入った普通のお店がズラリと並んでいる。道側にもズラリと看板が並んでいる。
ショウウィンドウを見れば俺でも分かる。
武器屋、防具屋、道具屋、カフェ、レストラン、籠屋、家具屋等々。食品関係を売っている店ははあまり無いようだ。
凛は目につく店のショウウィンドウの武器や防具、ガラスビンに入った緑の何かを窓に張り付いて興味津々に覗いている。
すると凛が
「……ど、どれかの店に入りません?」
「僕達おすすめの店を紹介するので、できればそこにまず入って欲しいもので」
「は、はい!」
テンション高いなぁ……
それから少し歩くと、カイト達が一つの店の前で止まった。
「えーと。ここが恐らく街一番の斬撃系を取り扱う武器屋だ。これは俺達だけでなく、結構な上級者ハンターのお墨付きもついてる店だ。武器の研磨、慎重、強化ならちょっと金を積んででもここに来た方がいいぜ!!」
「「へえ~」」
上級者が言うなら良いところなのだろう。覚えとこ。たぶん俺がお世話になることはないと思うけど。
「……そして、そんな事よりも!ここの看板娘ちゃんが凄くカワイイ!!……ちょっ!?イテテテッ!!」
ギィユゥッッ!!レイミーがゆっくりとカイトの足を踏んでいく。
「余計な情報はいりません……それよりも今日は休業日のようですね。覗いていくなら次の機会ですね……」
「そんなぁ……」
目を輝かせていた凛がシュンとなる。
「……痛ったぁ~……えーッと。次!」
更にもう少し歩いて、一つの小さな店に入った。
この店にはロープやら小さな檻、フック、シャベルなどのいかにも狩に使いそうな道具がところ狭しと並んでいる。
「いらっしゃいませ~…」
店の奥のカウンターから、若い男の小さな声が聞こえてきた。
カウンターを覗いてみると……あ、この人。この三人がギルドの受け付けお姉さんに怒られているとき、フォローに入って見事に返り討ちされていた軽薄そうな、俺と同い年くらいの青年だ。
「……今日は何を皆さん揃ってお探しで?それに新人さん二人じゃないですか」
「ああ、ちょっとこの二人の買い物の手伝いだ。取り敢えず狩の基本セット頼む」
「はいはい。わかりました。」
狩の基本セット?そんなことを思っていると、ロープ、水筒、小型ナイフ、フック、研磨剤っぽい石をそれぞれ2つづつ棚から持ってきた。
「……あんがと。よし、これらを買うといいぜ。これらがあれば狩をするのに便利だぜ」
「わかった」
ここは素直に買おう
「一セット3500バイトになります。」
俺と凛がそれぞれ3500バイトづつ払って買う。
「あ、バックとか何もないな……」
するとイリーナさんが例の小さなポシェットを差し出して、
「これに入れていいわよ」
「あ、「ありがとうございます」」
「じゃ、ここでの買い物は終了。じゃあなトォール」
「またのご来店を……」
カイトと店主が別れを告げて店を出た。
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三再びまた商店街を歩いて行く。
「イリーナさん。さっきのポシェット持ちましょうか?」
「大丈夫よ。これには空間拡張だけじゃなくて物体軽量化魔法も───」
またイリーナさんの魔術講座が始まる。
「カイト。さっきの店員知り合いなのか?」
「ん?ああ、まぁな……よく行くし……」
「ふ~ん……」
それからしばらく歩くと、歩きながらイリーナさんが右の方にある一つの店を指差す。
「あれが街一番のポーション、薬、薬草屋さんよ。ちょっと高いけど、質が高いし、珍しい物も置いてあるのよ……だけど……ちょっと店の人の頭おかしいからあんまり入りたくない……ポーション使うことなんてあまり無いし、中級者になってから入るのをおすすめするわ……」
「ええ、それは僕も賛成です」
「「へ、へぇ…」」
「そしてその二つ隣が街一番の服屋さんよ!」
「おっきい……」「そうだな……」
この店だけギルドくらいの大きさがある。
「じゃあ早速入るわよ!!」「はい!」
速歩きでとっとと女子二人は「ウーニ・ジーン・ザーク・クーロ」と長ったらしい名前の書かれた看板の服屋に入っていった。
「……そんなに服で反応するもんなのか?」
「ほんとに女ってのは……」
「「わっかんないなぁ……」」
「……そうですね……」




