20 帰り道
「さ、片付けたが済んだら行きましょうか。」
「「は、はい…」」
グッチゃりなったカイトはしょげながらお腹をおさえて、風呂敷と皆の昼食をしまわされている。
正確に説明すると、カイトはレイミーのエルボーでぶっ倒れ、ちょうどイリーナさんが放った水の球を全弾喰らってグッチゃり。レイミーに睨まれて昼食の片付け中、というわけ。
「ちえっ…ちょと場を和ませようとしただけなのに……」
「どこが場を和ませる行動なんですか?イリーナさんを濡らしただけじゃないですか。」
「あんまりそうゆういたずらはやめてよね。濡れちゃったし。」
イリーナさんは火炎魔法で既に服は乾かしてある。
「……すいませんでした…」
「…イリーナさんもむきになって、人を追いかけるものじゃありませんよ。もう20歳なんですから」
「う、うん…」
どっちが年上かわからなくなる。
凛は小さなポシェットにホイホイといろんな物がしまわれていくの見て、目を丸くしている。
「ふ、風吹…あのカバン…」
「ん?ああ、なんか空間拡張魔法がどうたら言ってたぞ…」
「空間拡張…」
目を輝かせている。
「なぁ…俺も乾かしてくれよ…」 「はいはい…」
優しいなぁ…
イリーナさんがカイトの近くに薄い炎の壁を出して装備を乾かし初めた。
「イリーナさん…このポシェットの魔法……」
イリーナさんが炎の場所をあちこち移動させて乾かしながら答える。
「え?それ?別に私がかけたわけじゃないわよ。凄い高度な魔術私には使えないもの。属性だって全然違うし…」
「そうですか…」
もしかして凛も空間拡張やってみたいのか?凛のチート能力ならいつかできる気がするが…
片付けが終わって、各々武器や荷物を装着しなおす。
「…次はどうするんだ?またポイントの巡回?」
「ええ、もう少し回ったら帰る予定です。」
「わかった…」
さっきレイミーが使っていた岩を一人づつ通って、皆で反対岸に移る。
「落とさないでよ?」「んな子供みたいなことしねぇよ」
いや、さっき思いっきりしてただろ…
木々の間をぬって、一列でどんどん森を進む。
─一つ目─少し行ったところの開けた場所。
「む、いないな…」
─二つ目─更に行ったところの、小さな池の横。
「…いないですね」
─3つ目─緩やかな上り坂を越えたところの洞窟。
「ここにもいないなんて…珍しいわね……」
「…うーん……もうちょい他のところも行くか…」
「徹底するんだな…」
「当然の事だぜ…」
へぇ~…
他にも数ヶ所回ったが、さっきのたちと同じく、使用済の灰になった木や魚の骨などしかなかった。……にしても随分と歩いたな…しかもまぁまぁ登って来た気がする。
「…おっかしいなぁ…全部のポイント見て回ったのに…」
「どこにもいないなんて…」
「うーん…最初にやった群れデカかったからなぁ…もしかしたらそこら辺の群れがくっついたのやったじゃないか?」
「そうですかね…」
「ま、例え狩とかに出てキャンプから離れちまってるだけだとしても、あんだけ殺ったんだ。人を襲うほどの数は残っちゃいないだろ…リンちゃんの大剣の試し斬りは明日だな。」
「はい…」
試し斬りって…
「よし、じゃあクエスト完了ってことで。帰るぞ!」
「「はい」」「はーい」
「…ここまで来たら来た道戻るよりも、チリア山の方面の門の方が近いな…じゃ行くぞ。」
「わかりました…」
レイミーは何か心残りのようだった。
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右手の山の方向から、街の方向へ逸れて行くような感じで、木々の間をすいすい抜けて行くと徐々に木がまばらになり、更に歩くと視界が開けた。
やっぱりまぁまぁ上の方まで登って来たようで、視線の高さが遠くに見える街の城壁の、てっぺんより少し上になるくらいの高さだった。
一面を見渡たしてみる。なるほど、そうゆう立地か……ある程度の地形は把握した。
「あれ、あの門って…」
凛が、左奥に見える俺たちが出てきた門を見て首をかしげる。
「正面の門は一つ隣の門よ。森を街から見て左の方ににずーっと歩いてきたのよ。」
「…そうゆうことね…」
凛も納得したようだ。
出てきた門と正面の門の間には、昼にいたの滝の所から流れてきたであろう川が街へと伸びている。そしてその川が途中でたくさん別れていて、その周辺にはたくさんの畑のような場所も見渡すことができた。
緩やかな坂を街の方向へ下りながらレイミーに問いかける。
「ああゆうところから作物を収穫してるのか?」
二つの馬車が畑から街へと向かっているのが見える。
「ええ、そうですよ。たぶんあれは麦畑ですね。ちょうど収穫が終わったところでしょう。それからあの馬車が流通省に行ってから精算されて、各地に輸出されるんですよ。」
「ふーん…」
そしてそれよりも気なるのが…
「なぁ…あの山のところって大丈夫なのか?」
俺たちが今向かっている門のすぐ右側(俺達からむかって)のところから隣の門付近まで城壁が無いのだ。
代わりに円形の街の城壁に半分ほどめり込むような形で、城壁の倍くらいの高さの山が鎮座している。
「え?あれですか?チリア山ですね。何か問題でも?」
「いや、あの山大して険しく無さそうなのに壁がないから。あそこから登ってきて、モンスターとかが街中に入って来ないのかな~って思ってさ…」
「ああ~その事ですか。それなら大丈夫ですよ。強力な結界が張られているので…」
「…ケッカイ?」
「風吹知らないの?結界っていうのは魔法とかで内側を守るバリア…シールドみたいなものなの。」
…そうゆう系統解んなくてわるかったな…でも凛のバリアという表現でなんとなく分かった。
「…ばりあ?それはよく分からないですけどそれによって完全にモンスターを近付けなくしているので大丈夫です。」
「何でわざわざあそこだけ?」
「チリア山は鉱山になっている上に地下洞窟とダンジョンの入り口にもなっているので削る事が出来なかったんですよ。しかも近くの地盤がその洞窟とかがたくさんあるお陰で安易に石を大量に積んでしまうと崩落してしまうんですよ…」
するとイリーナさんが横から割り込んで
「それで100年くらい前に街の人達が頭を悩ませていたら、颯爽と若い男性魔法使いが現れて「それなら俺が永久結界張ってやるよ」って言って山全体を囲うほどの大規模永久結界魔術をかけてくれたんですって!しかも見返り無しで!カッコいいわよね!」
目をらんらんと輝かせている熱弁する。…いきなりどうした…
イリーナさんの話を聞いて、なぜかカイトは面白く無さそうな顔をしている。
「──け、結界と魔法使いについて詳しく──」
「──教えてあげるわっ!えーと、まずは事の発端から──」
早速凛はイリーナさんと二人で話初めた。……別に魔法使いの事まで聞かなくなっていいだろ…なんだろうこのぶすッとした気持ちは…
「…取り敢えず、そうゆうことです…諸説ありますけどね…女性魔法使いだったという説も…」
いや、そここだわるとこじゃ無いでしょ。イリーナさんと凛は聞く耳は持たない。
「なぁ…魔法が凄いことはよく分かるけど、100年前の結界を信用していいのか?」
「永久魔術なので、よほどの事がない限り切れたりしませんからね。一応定期的に調査しているらしいですけど、術の弱まりなどは無いらしいですよ。」
「すげぇな…目に見えないのに…」
「ああ、全くだ」
カイトも同感のよう。
「僕としては一人でやったなんてとても信じられませんけどね。そもそも小規模であっても永久魔術には複数人が必要です。例えどんなに魔力適性が高い熟年の魔法使い、魔導師であっても。ましてや若いとなると伝説レベルですね。」
「そうなのか…」
とにかく魔術やら魔法やらがまだいまいち理解できない。
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しばらく下ると大きな道に出た。ここの道はあまり馬車が通っていないようだ。そのまますいすいと歩いていくと門にたどり着いた。
守衛さんに挨拶をして街の中へと入り、そのまま大通りを通ってギルドに直行した。




