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16 三人強し


 カイトとイリーナが配置につく。

 俺と凛、レイミーの正面のゴブリンの群れを挟んでカイトが左、イリーナさんが右につくいた。

 5…4…3…2…

 イリーナが左手に長い杖を持ち、右手を胸の前に出す。そしてイリーナの周囲がオレンジ色になったと思うと…すると突き出した手の先にスイカほどの大きさの火の玉が現れた!!

 2…1…


 「ブリーチング・フレイム!!」


 そう叫ぶと火の玉が発射される。

 0…

 「ドゴーン!!!」「ドリャァァァーーッッ!!」


 火球の着弾と共にカイトが大剣を横に構え、突撃する。


 火球が3匹ほどのゴブリンを炎に巻きながらはじき飛ばし、カイトの大剣の一振りで数匹のゴブリンの腹が一刀両断する。

 ゴブリンはいきなりの攻撃に驚き、一瞬固まるが……「ギャーァァーォオ!!」直ぐに武器を手に取り、カイト側とイリーナ側の二手に別れて攻撃に転じる。

 

 しかし、どちらのゴブリンの塊もイリーナの放つ火球によって全く近づけないまま炎に巻かれながら吹き飛ばされ、カイトの大剣の長いリーチ(間合い、攻撃範囲)で攻撃が届く前にバッサバッサと斬り捨てていく。


「「わぁ…」」 


 凛も俺も思わず声を漏らす。


「まぁ相手は中級者向けの標準ゴブリンですからね…こんなものですよ…」


「はぁ…」 間抜けた返事しか出来ない。


 …一方的な虐殺に見えなくも無い…まぁ、人の安全を考えるとしょうがない事なのかも知れないが…さすがにこれは…


「「酷い…」」


「本来は上級者になったらそれ以下のクエストは受けちゃいけないんですよ。」


「そんなルールあったけか?」


「…暗黙の了解みたいな物ですよ…下級者は下級クエストを。中級者は中級クエスト。上級者は上級クエスト。といったところですね。そうすることによってバランスよく皆に適切なクエストが行き渡って均等に儲かる為ですよ。あとは上級者がレベルの低いクエストを受けまくって生態系変えるレベルの事されても困りますしね。」


…実際目の前でそれが起きてる訳か…


「…新人の教育ということなのでダイジョウブですよ…たぶん。」


 おい、ここに来てたぶんなのかよ。…ま、折角教えてくれる機会だし文句は言わないでおこう。


 …にしてもゴブリンも敵ながらバカだと思う。

 圧倒的な力の差にも関わらず延々と突っ込んで行く。

 一応囲んで攻撃しようとするくらいの知能はあるようだが動きがバラバラなお陰でカイトに軽く回避されぶった斬られている。

 イリーナさんの方に至っては囲む以前に大火力で吹っ飛ばされている。

 そんなわけでもうゴブリンは数える程しか残っていない…と二匹のゴブリンがカイトたちから逃げようとして、俺達に気がついた。


「レ、レイミー?こっちに三匹向かって来てる気が…」


「分かってます。大丈夫です。」


「…同時に三匹だぞ?」


「大丈夫です。」


 平然と言ってのけるなぁ…

 ゴブリンとの距離。目測20m。

 レイミーが小盾と小太刀を構え直し、ゆっくりと歩を進めて行く。


「「「グギャャアアオ!!」」」


 残り10m。…するとレイミーが囁くような声で…


「──トゥルークス……クリータス……」


 何だ?


 3m…ゴブリンが3手に別れ…一気に剣と棍棒を振り上げる。それでも歩みを止めない。…このままじゃ一匹殺っているうちにもう二匹に…


「……アクセル。」


『シュィィンンッッ!!!』


 目の前が白く光り、レイミーが消えたかと思うと…ゴブリンの腕、腹から血が吹き出し、武器を落とす。

 レイミーは…いつのまにか、ゴブリンの背中に背を向けて立っていた。


「ドサッ!」


 ゴブリンが同時に崩れ落ちる。


「──こんなものですかね………」


 何事も無かったように戻ってくる。


「す、凄い…」「す、すげぇ…」


 マジで何も見えなかった。 

何となく白い光の後に刃が一閃したのを一瞬見えただけだ。…どうなってんだ?

 レイミーは造作もない。と、詰まらなそうな顔で小太刀についたら血を振り払い、鞘に戻している。…怖い…


 レイミーの背後でも二人とも虐さt…戦闘が終わったようだ。



******



 カイトとイリーナさんが戻ってきた。


「ふぅ…まぁざっとこんなもんかな…」


「中級クエストだしね…」


「イリーナさんの魔法凄かったです!!私にも是非!!」


 確かに…あれは尋常じゃ無かった。グレネードランチャー張りに強かった。俺としては人の体からあんなもんが出てくることが信じられない。


「あ、ありがとう…でも…まだ早いと思うわよ…私の火炎魔法はちょっと普通のやつとは違うから…先ずは初心者用の発火魔法からね。」


「分かりました。近いうちに!!」


「う、うん…」


 凛の食い付き度が…


「俺の大剣捌きはどうだった?」


「カイトさんもただの馬鹿かと思ってましたけど強いですね!!」


 おっと、余計な言葉入ってなかったか?


「おう!ありがとな!」


 やっぱりバカだ。


「俺も基本から教えてやるよ。……大剣が好きなんだろ?」


 …いきなりどうした?


「だよな。みんな重すぎるとか使い勝手悪いとか、無駄に材料使うし高いとか。んな事どうでもいい!見ろ!大剣を使えば長いリーチと高い攻撃力と溜め技でこの惨状だ!!」


 自分で言うか。


「大剣はいい!とてもいい!!だからこれから俺が大剣の全てを教えてやるっ…」


「別に大剣が特別好きって訳じゃないんですけれど…」


 カイトが拳を振り上げたまま固まる。


「出来れば太刀とか双剣とかを使いたいんですよ。魔法を併用するなら片手剣が…」


 ゆっくり振り上げた腕を下ろして無言でうつむいた。

 するとレイミーが


「……その、それならなんで最初の武器を大剣に?見たところそこそこ高価な物に見えますが…」


 イリーナさんも


「そうそう、私の軽い鑑定でも高価そうだけど…」


 なにそれ。便利だな。

 まぁ天界から持ってきた大剣だからな…そこまで弱っちくは無いだろう…


「それは天界のおじいさんが勝手に…」


 凛の口を塞ぐ。そうゆう事言うなっ!!


「「「?」」」


「あ、えーっとな…」


 またマズイ事になったな………そうだ。


「…これはな、俺達がこの街に行く前にとあるじいさんが『丸腰なのもあれだから…』って持たせてくれた奴だよ。俺のナイフも同じ。」


「そう、ですか…」


 取り敢えず、これでいいかな…

 小声で凛に耳打ちする


「(凛、これから天界とかそうゆう系の話はしないでくれよ?)」


「(ご、ごめん。つい…これから気をつける…)」


「…ということです。貰い物です。別にこだわりは無いので。」


 しゃがんで土をいじり始めた。

…少しは配慮してあげなよ…


「…でも…この際だから基本の動きは一通り教えて貰いますよ。そこから自分で派生できるかもしれないので…」


「是非ッッ!!」


 ビヨーンッと30cm程飛び上がって敬礼した。

──こんな奴に任せて大丈夫だろうか…まぁ本人がやるって言うなら止めないが。


「おっしゃー!教えてやるぞ!!」


 そんなに嬉しいか…おめでたい奴だ。


****


「…それで…話を変えますけどゴブリンの死体はどうする気ですか?回収班を呼ぶなら早く。」


「そうだな…」


 カイトが死体の散らばってる辺りを歩いてそれぞれの死体を見ている。よくじっくり見てられるな…

 見たところ、目をそらしたくなるくらい悲惨なんだが…思わず目をそらす。

 凛は俺と違ってまじまじと見ている。


「──凛…大丈夫なのか?」


「うん…」


 瞬きしてないぞ…

 カイトが首を振って戻ってきた。


「ダメだなこりゃ…俺達の攻撃が強すぎてボロボロだ…」


 だろうな。ほぼ一撃で殺るとしても威力強すぎだったし。いわゆるオーバーキル。


「売れるようなもんは残ってないな。悪いな…イリーナ。ここら辺焼き払ってくれるか?」


「ん、別に大丈夫。魔力まだ余裕あるし。ごめなさい。少し離れててもらえますか?」


「はい」「わかった。」


 俺達が下がるとイリーナさんがまた杖を持って何か唱えている。


「…風吹。なんで焼くの?」


「他の動物がよって来ないようにするためじゃないか?」


「確かに…そうだね。」


 すると、さっきまでの戦闘場所の地面が一気に炎の絨毯に覆われた。

 

「魔法って…凄いな。」


「そうだね…」


「そう言えばなんでわざわざ魔法使うんだ?」


「イリーナさんの火炎魔法は煙が出ない上に範囲が設定できますからね。便利ですし。」


「へぇー…」


 やっぱり魔法凄いな…


 凛が魔法と剣術覚えたら俺が必要無くなる気がしてきた。


 










ほんとに遅くなってすいません。今週動きが変則的でして…


そして連絡を。

6話を一部改稿しました。計画性の無いせいでこんなことに…




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