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15 戦闘準備ー


 森の入口付近にて



 バカが足を押さえてうずくまってる。凛はバカを無視して、その横に落ちている大剣を片手でヒョイっと拾ってまた片手で持つ。

 ──なぜか狂気じみたものを感じる。…15歳の美少女が片手でこんなデカイ大剣を軽々と持っているからだろうか…


「凛、いくら軽くても…ほら、木が多くて移動の邪魔になるし…ずっと持ってると疲れるぞ。」


「──それもそうだね…」


 取り敢えず大剣をしまわせる。

 するとバカ(カイト)が


「──イリーナ……足……ヒール頼む……レイミーの持ってる……ポーションでもいいから……」 「回復ポーションは緊急時の時だけです。」


 わお、ひでえ。


「わ、私がヒール魔法使うから……もう…見せて?」


 イリーナさんがカイトの足首を見る。

 遠目で見ると結構腫れてるみたいだ。


「…骨まではいって無いみたいね…あれだけの大剣落としといてよくもまあ…」


「ははっ!頑丈なのが取り柄の一つだからなっ!!」


 頭は丈夫じゃないけどな。


「イテテッ!」「ご、ごめん…」


 イリーナさんが足を動かして色んな角度から診ている。


「大して急を要する怪我じゃ無いけど…カイトももっとよく考えて行動してよ?リンさんは武器の適性度が高いんだから当然じゃないの…」


 全くもってその通り。常識人がずっと一緒にいてもバカさ加減は変わらないのだろうか。


「…そうだ、丁度いい相手が出来た事ですし。この場でリンさんにヒールを教えてあげるのはどうですか?」


 レイミー鬼かよ。


「──そうね…丁度いいわね…折角だからこの場で…」


「丁度いいって…」


「じゃあリンさん。ちょっとこっちへ…」「はい。」


「何でもいいからはやくしてー!」


 流石にバカもこの時ばかりは可哀想だと思っ…


「……でも……美少女にヒールをかけて貰うって結構…」


「埋めるぞバカ大剣。」


 訂正、やっぱ可哀想じゃない。せいぜい痛みに耐えろ。



*********



「こんな場所でやってて良いのか?」


「まだ入口付近ですし…大丈夫でしょう。」


 カイトの前に、森の中のちょっと開けた場所で凛とイリーナさんが向かい合ってる。


「──魔力の流れをですね──」


「──はい……」


 なんかよくわからん事を話してる。

 ちなみに俺とレイミーは少し離れたところで凛達を見守っている。


「なあ…魔法ってなんなんだ?」


「魔法…ですか…アデネラ以外の街から来たのであればある程度馴染みがあるのでは?」


 ヤッベ…どうしよ。適当な事は言えない。


「えーっと…」


 どうしよ…素直にトーキョートって言っておくか?


「まあ、周りに使ってる人がいても、魔法適性全く無い人にはよく分からないかも知れませんね。」


「そう…だな…」


 適当に答えるしかない。


「そうですね…私は光属性適性が強いのイリーナさんとは少し違うんですけど…魔法適性が少しでもあると体を流れている『魔力』を感じる事が出来るんですよね。まぁ意識しないと分からない物なんですが。」


 はあ。よくわからん。


「それを体の中で自分の適性のある、火とか水とかの力に変換して出すんですよ。」


「へぇ…そうゆうものなんだな…」


……魔法…ね。ゲームとか物語の中だけかと思ってたけど。世界は広いな…あ、ここ世界違うんだ。


「──こんな感じですか?」


「そうそう!!そんな感じ!!覚えるの早いわね…」


 どうやらできたらしい。


「早くーー」


「カイト。人にお願いするときは敬語!!」


「……お願いします。」


 お母さんかよ。


「はい…」


 凛がカイトの右足に手を添えて目を閉じながら「ヒール!!」と唱えると……


 凛の手首からカイトの足全体にかけてほんのり淡い緑色の光に包まれた。

 カイトの赤く腫れた足が元に戻っていく。


「おお…」


 思わず声に出してしまった。凛も自分でやっておいて驚いている。


「……ん……治ったかな…ありがとう……歩けそうだぜ。」


「は、はい…イリーナさん!!魔法を教えていただいてありがとうございます!!」


「いえいえ…基本中の基本を教えただけですから…気になさらないで…」


 凛はそうとう嬉しそうだ。


 RPGゲーム的に言うと『凛は魔法の基本と回復魔法を覚えた!!』といったところだろうか…よくわからんけど。



**********



 若干周辺を警戒しつつカイトを先頭にイリーナ、凛、俺、レイミーの順で森の奥へと歩を進めて行く。


「──結構ずかずか入ってくけど道とか分かってるのか?」


「当然。ここの森にはよく来るからな。ゴブリンが溜まってそうな場所も大方把握済みだぜ。」


 ふーん。バカでもそうゆう事は分かってるのか。

 後は特に何の会話もなく、雑草をかき分け木々の合間をどんどん先へと進む。

 10分ほど歩くと…

 

「──いるぞ……」


 カイトが右手を上げて俺たちを制する。

…確かに…結構な数の足音と草を踏む音が50m程先から聞こえる。地面が土な上に鳥?の鳴き声が混じってるせいで俺の耳でも判別しにくい。


「よく分かったな…」


 カイトが注意しないと判らなかった。


「まあ…情報なんてそこらじゅうにあるからな。」


「ええ、気配察知や風の流れなどでも解りますよ。」


 なにそのチート。


「そりゃレイミーみたいな奴だけだろ…俺は匂いと視覚、周りの鳥とかの動きとかで判断してるぜ。」


 へぇ…流石ハンターだな。そうゆうしっかりしたところを判断力と日常生活に回せないのだろうか。

 凛とイリーナさんはどこどこ?と明後日の方向を見ている。

…凛はともかくイリーナさんも分かんないのかよ…まぁそこら辺を補いあうのがパーティーなのだろう。


「もう少し近づくぞ……」


 音源を中心に円の半径を段々縮めるように円を描きながら距離を詰めて行くと。

 すると、木の密度が低くなったところにそいつらはいた。


「「ゴブリン…」」


 緑色の人形。背丈は言っていたいた通りに俺の腰ぐらいしかない。ぼろ布のような腰巻きをつけて筋肉隆々の腕にはボロい剣やら木の棍棒を持っている。

 20m程離れたところにある大きな岩から様子を伺う。


「…30匹はいるわね…」


うじゃうじゃたむろして何かの生肉を食っている。グロい…

 …人肉じゃ……ないよな?


「……あれ…人じゃありませんよね?」


 凛もおっかなビックリしている。


「ありゃ人肉だな。たぶん若い女の子…」


「ヒッ!……」


メコッ!! レイミーの拳が飛ぶ。


「脅かすような冗談は止めてください。あれはポッカレイという草食動物の肉です。」


「なぁコントやってないでさ。あいつらどうすんだ?作戦とかあんのか?」


 俺だったらグレネード3,4個投げて終わらせるけどな。無理だけど。

 当然手持ちの拳銃も使えない。

 

「そうだな…アイツらバカだし、飯食ってて無警戒だからな…」


「周辺に他のモンスターも居ませんね。」


「よし、そいじゃ…イリーナが先ず、一番右の方から順に火炎弾魔法を撃ち込んでってくれ。アイツら程度なら一撃だろう。俺は左側から突っ込んでぶったぎりまくる。レイミーはフブキとリンちゃんを守るのと討ち漏らした奴の排除を頼む。」


「俺(私)達は?」


 観戦かい?


「いきなり戦闘に参加するのはダメだ…取り敢えず最初は狩場に慣れて貰うのが一番だ。見守っててくれ。」


「「は、はい。」」


 思わず敬語になってしまう。

 ……どうした?さっきまでのバカはどこいった?

 もう雰囲気は一流のハンターだ。


「よし、配置についたら5秒で攻撃だ。いいな?」


「わかりました。」「わかったわ。」


「そいじゃ…移動開始!!」


 おのおの武器を持って立ち上がり、カイトとイリーナが岩場から離れて行く。

 レイミーも小太刀を抜刀する。


「僕よりも前に出ないで下さいね?」


「お、おう…」「はい…」


 なんか。すげぇな。










 





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