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14 教えてくれるの?


 ギルド内受付前



 「──それで…今日も採集クエストですか?」


 う~ん…採集クエストは安全だけど安いしな…練習にもならないしな…


「採集クエストって駆け出しのハンターとか下級、中級者のハンターがついでに受けるクエストなんですよ。あなた達も普通の狩猟クエストとかを…」


 …俺達は昨日登録したんですけどね。

 凛が強そうだと思うのも解るけど。


「そもそも採集クエストだけじゃ生計を立てられませんよ?あなた達副業とかしてないでしょ?」


 現実問題…


「そうだな…じゃあ採集よりもうちょい難易度のあるやつにするよ…」


 掲示板の下の棚から俺は☆2を、凛は☆3のフォルダーを取る。

 さてさて…どんな物が…


 バンッ!ギルドの扉がバカに勢いよく開けられた。


「ちーっす…」


 メコッ!!レイミーの拳が飛ぶ。


「…静かに開けて下さい」


「おはようございます。」


 …またこの人達か…

 あの三人組がギルドに入ってきた。



*********



 三人がカウンターに寄ってきた。


「おはようございます…」


 受付のお姉さんが驚いている。


「いつもよりだいぶ早く来ましたね。どうゆう風の吹き回しですか?」


 もう9時すぎだけどな。


「いやぁ~こんな早く来るの久しぶり…」『ズシュッッ!』


 今度は踏まれている。…怖い……

 レイミーが代わりに答える。


「昨晩三人で話し合って、助けてもらったお礼を夕御飯だけで済ますのも虫が良すぎるということになって。カザネラさん達は初心者なのでしばらくクエストの手伝い…というよりは慣れるまでハンターのイロハなどの基本知識を教えてあげようという事になりまして…」


「…そうですか。」


 …気にしなくていいって言ったのに…

 ま、でも折角だ。これからの為にもそうさせてもらおう。


「それじゃ…頼むよ。で、具体的にどうするつもりなんだ?」 


「クエストに同行しつつ基本などを教えさせて頂く事に。」


 へぇ…じゃあ若干難易度上げていくか。凛の為にも。

 するとイリーナ(魔法使い)さんが


「わ、私で良ければ…リンさんに魔法を教えます。魔力の流れとか基本的な事も…」


「是非お願いします!!」


 凛が目を輝かせている。


「足痛ッてェ…うん。俺なら大剣の事はある程度教えられるし…」


「大丈夫です。結構です。」


「…」


 うわぁ……


「…取り敢えず…そうゆうことなら頼むよ。」


「ありがとうございます。」


 レイミーがお辞儀をする。…本当に律儀だな…

 あれ…何か忘れてる気が…すると受付のお姉さんが


「フブキさんにはどうする気ですか?」


「ええっと…」「あー」「…そうですね…」


 「「「基本的な事を」」」


 能力無しには何も教えることはない…と。

 たぶん皆からすると俺はハンターに向いていない奴だと思われているのだろう。…銃がいつでも使えれば無双できるんだが…

 出来ないことを悩んでいても仕方がない。


「…よろしく。」


「ではそうゆうことで…クエストは…」


「クエストは任せるよ。丁度良さそうなのを選んでくれ…」


「わかりました。」


 なんとかしなきゃな…


******


「丁度良いのがありましたよ。」


 三人と凛が選んできたのは…


『依頼主 ギルド


 クエスト内容 街より南部方面の森林のゴブリンの駆除。


 報酬 70メガ(70,000バイト)


 危険度 ☆7


  森林地帯にゴブリンの群れが居るとの情報が入りました。

 このまま放置しておくと交易ルートに下って馬車が襲われる可能性があります。至急駆除してください。』


 へぇ…ゴブリン。わからん。


「その…ゴブリンってどんなのだ?ゴブリン単体は☆4みたいだけど…」


「ゴブリン知らねーのか?」


 RPG系統は分からねーんだよ。悪かったな。


「ゴブリンは…そうだな…背が俺の半分くらいで、皆クソみたいな剣と棍棒振り回して襲ってくる奴ってところだな。単体じゃ大した事ねーけど集団で来られると厄介だ。」


 へー、よく知ってるな。

 ハンターやってるだけ。ただのバカでは無いようだ。


「基本的に物理攻撃も魔法攻撃もよく効くのでそれほどの相手じゃないですよ。私の火炎魔法もよく通るし…」


「ふーん…その割には報酬額高いな。」


「けっこうな数を倒さなくてはなりませんからね…」


 なるほど…それで練習には丁度いいって訳か…


「風吹…」


「ん?」


「常識だよ?」


 受付のお姉さん含め、皆コクコク頷いている。


「……」


 RPGを少しでもやっておけばよかった…


******


「じゃあこのクエストでよろしいですね?」


「頼むよ…」


 レイミーが受付へ受領書をもって行った。

 凛とイリーナさんは魔法がどうたらと色々話している。


「なぁバカ大剣。言っておくが凛は素質はあってもまだ大剣初心者だからな。」


「ん?ああ、わかってるよ…ってバカ大剣って俺か!?お前もうちょい年上を敬え!!」


 バカ大剣で反応するんだからバカだろう。バカを敬う気はない。


「これからの間。凛にもしもの事があったら承知しないぞ。分かったな?」


「……んな事は分かってるよ…大丈夫だ。いざって時は俺達が囮にでもなってやんよ。ま、俺達の腕にかかれば、そんなことにはならな…」


 ペシッ!レイミーの平手打ちが来る。…どんだけだ…


「そんな事を言ってるからああゆう失敗をするんです。」


 ゴーズキの件もきっと全て頬を押さえてうずくまってるコイツのせいなのだろう。


「決して危険の無いように配慮するので。安心して下さい。」 


 レイミーさん。フラグ発言も大概ですよ。


「それでは…行きましょうか。」


「ああ…」「行きましょう!!」


 三人と共にギルドを出た。



*******



 何の迷いもなく進んで行く三人に、俺と凛は取り敢えずついて行く。

 しばらく歩くと門に出た。


「ここが南門です。」


 レイミーにさらっと解説されつつ、守衛に挨拶をして出ると前方の遠くにっとても大きな森が見えた。


「あの森がそうなのか?」


「はい。」


 早速、大きな馬車道から外れて起伏のある草原を歩き始める。

 

「……なあ、レイミー。ここら辺の草原ってモンスターは出ないのか?」


「草食のモンスターならよく居るんですけど…ここら辺は肉食モンスターの多い森林が近いんで居ないようですね。」


 へー。生態系はキチンとしてるのだろう。


「それよりも大通りに無謀にもやってくる肉食モンスターの方が気になりますけどね…それを未然に防ぐためにこうやって事前に察知して先に駆除するんですよ。」


 そうゆうことか…

 日本で言う猟友会的なところもあるんだな。


「そう言えばさ…蒸し返すつもりは無いけど何があったんだ?モンスターに追い掛け回されてたけど…」


 イリーナさんが答える。


「それは…カイトがダンジョンで『もうちょい奥行ってみようぜ!!』って言うから…止めたんですけどズカズカ入って行っちゃうものですから…仕方なく行ったら…」


「アイツに出くわしたと…」


 やっぱりバカのせいか…

 俺と凛がグイッとバカの方を見るとそっぽを向いて口笛を吹き出した。こんなんでよくリーダーが務まるな…


「ああゆう事は二度と起こらないように尽力するので心配なさらないで下さい。」


 そう言うとレイミーの蹴りが知らんぷりしているバカの脛に命中する。…ずっとこうゆう流でやって来たのかよ…



 20分ほど歩くと森についた。


「さて、これからは何が起こるか解らないので、二人とも常に臨戦体勢でいて下さい。」


「はい。」「了解…」


 といっても俺はこのちっこいナイフしかないが…

 一応、取り出しやすいようにナイフの位置をずらす。


 レイミーとイリーナさんは既にそれぞれ手に背負っていた小盾と背丈程ある杖を取り出す。


「あんたは出さないのか?」


「こんなデカイ剣はずっと持ってると疲れるからな…リンさんも背負ったままで…」


「「「「…」」」」


 俺も含め皆唖然とした。

 凛は片手でまるでナイフのように軽々と持っている。


「あ、あのー。リンさん?力持ちなのはわかりますけど疲れますよ?」


 イリーナさん引きぎみ。


「全然軽いから大丈夫ですけど…」


「なるほど…軽量型を使ってるのか…ちょっと持たせてくれないか?」


 カイトは余程軽いと思ったのだろう。凛の大剣を片手で受け取った瞬間…


グキッ!! ドスッ!!


 「ぬぉおおおおおおぉおおおおおおおぉ!!」


 バカは手首を捻って大剣を自分の足に落とした。


「化け物…」「凄い…力持ちですね…」


 レイミーとイリーナさんは凛から完全に引いている。


「…てへっ☆」


 凛、かわいいけどさ。流石に俺も若干引いたよ。


 



2017 6/15 16:50


クエスト難易度 ☆4⇒☆7

報酬 35000バイト⇒70000バイト


に変更しました。

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