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13 大丈夫かよ…


 ん……

 ツンツン

 朝…か…

 ツンツン

 …ん?

 ツンツン

 …


 なんか俺のほっぺが突っつかれてるんだが…

 そっと目を開ける…すると…


「「わっ!!」」


 凛が目前にいた。

 驚いて尻餅をついている。俺も若干ソファーごと横に動いた。

 パチクリ…


「……何してんの?」


「…早く起きないかな~ギルド行きたいな~って……」


「そう…」


 起きてもらうためにほっぺツンツンとか天然か…


「……寝てる人にツンツンするもんじゃないぞ。」


 悪い気はしないが。


「ギルドに行く前に朝御飯な…」


「そう言えば朝御飯ってあったね…」


 ……引きこもってゲームばかりしているとこうなるのだろうか…やっぱり引きこもりゲーマーになるのは遠慮しておこう…


 俺はコートを着て懐中時計とナイフを、凛はマントを羽織って大剣を背負う。

 あ…拳銃…これどうすっかな…


「どうしたの?」


 凛が俺の開けた引き出しを覗き込んだ。


「これって…」


「一応じいさんには言うなよ。」


「うん…」


 何となくこの事は言わない方がいい気がする。ただの謎の自信溢れる直感からだが。

 …取り敢えず二つとも持ってくか…

 素早く安全装置(セーフティー)を掛けて(といってもSAAの方は大した安全装置では無いが…)ベルトの間に挟む。

  

 身支度を整えて廊下に出ると丁度箒を持った家主さんに会った。


「あら、おはようございます。よく眠れました?」


「はい」「まぁ…」


 「それは良かったです…朝食は一階の食堂に用意させていただきますので、是非。」


 ほう、朝御飯付きか。丁度いい。

 一階の昨日は閉まっていた両開きの扉が開いていて、そこにはいくつかの丸テーブルが置かれていた。


 他の人たちはいないのだろうか…二人分のグラスとスプーンとフォークだけが置かれている。家主さんがトレイに朝御飯を乗せてやって来た。


「どうぞ…お疲れでしょう…」


「「?」」


 言うタイミングがおかしいと思うのだが…ま、気にすることは無いか…


「「いただきま~す」」


 至って普通のパンと野菜とコーンスープの味のする赤い液体だった。


****

 

「じゃ、行くか…」


 朝食を食べ終えて玄関前にいる。


「あ、そうだ。えーと…」


「家主さんでいいわよ。」


「じゃ…家主さん今夜の分の予約も…」


「…たぶんまた一部屋になっちゃいますけど…」


…今日もか…


「まぁ…取り敢えずさっきの大きさの部屋を一部屋…」


 もう一部屋の事はまた考えよう…

 予約表に自分のサインをしてタオレ荘を出て大通りに向かう。


「えーっと…」


 懐中時計を見ると短針が8を少し越えたところだった。


「じいさん。起きてるか?」


「………ん………おはよう……」


「おはようございます。」


「……今起きたのか?」


 もう8時すぎだぞ。


「ああ…昨晩は資料の整理に忙しくてな…」


 資料?


「あの、もうギルドに行ってもいいんですよね?」


「別にかまわないと思うが…」


「…そうか…じゃあとにかく行くか。」


 この街の観光は後回しだ。それよりもある程度は稼がないと生活できない。

 昨日通った道でギルドに向かう。人通り、馬車はそれほどでは無いがこれから増えるのだろう。


「じいさん。これからしばらくの間は普通のクエストに慣らして行く方針なんだよな?」


「まぁそうゆうことになるな…単身で訓練したって大して効果が無いしな。駆け出しとしてモンスターを狩って行くのが一番効率が良いからな。ついでに報酬も出るし。」


 確かにそうだけど…俺は何も出来ない気がするんだが…特にこのナイフじゃな…謎の二丁拳銃は無闇に使うわけにもいかない。これじゃあ、いつかのための練習も出来やしない。

 指令だってFPSの遠距離武器の戦術しか解らないし…このままじゃ本当に荷物持ち…


 そんなことを思いながらギルドの大扉を押し開ける。

 中は…スッカラカン。

 

「なんだ?休業日か?」


 ギルド内には受付のお姉さんと昨日のデカイおっちゃんと酒場で酔い潰れた奴だけだった。



********



 お姉さんは受付内の椅子に座ってカウンターにもたれ掛かり、おっちゃんは向かい側に立って話している。

 二人はこちらに気がついた。


「なぁ?やっぱり早く来ただろう?」


「そうですね…」


 今日もお姉さんは元気が無い。


「じゃあ俺の勝ちってことで…」


「賭けに乗った覚えはありませんけど。」


 一体何の話をしてるんだ…

 

 しまった!とおっちゃんがツルツル頭を抱えている。

 はぁ…とお姉さんはますます元気が無くなっている気がする。


 頭から手を離したおっちゃんがこちらへ歩いて頭をポリポリ掻きながら


「あーそうだ、お二方。昨日の倒してくれたゴーズキの素材代のことなんだが…」


 そう言えば、そうゆうのあったな…

 

「一応鑑定士とか交易人の人と話したが…手数料とか引いて…まぁざっと200メガ…20万バイト前後になりそうだ。」


 へー。ということは20万円くらいの価値か。


「そんなにですか!?」


 俺と凛はピンと来ないが受付のお姉さんは驚いているようだ。


「ゴーズキでよくそんな額になりましたね…」


「いやぁ…ちょっと若い上に体にも殆ど損傷がない…と言うか頭以外は綺麗に残ってたからな…」


 お。俺のヘッドショットのお陰か。


「嬢ちゃん。ありゃあ見事なもんだぜ?他の中級者やら上級者の奴らなんか、ゴーズキには魔法が殆ど通らないし、皮膚が硬いからオーバーな魔法使って木っ端微塵にしたり、ハンマーやら大剣でメッタ打ち、メッタ斬りだからろくな骨も肉も皮もが残らんのよ。」


 …グロいな…ギルドの人は普通にこうゆう話が出来るのだろうか…


「それなのに特に硬い頭を一撃とは…凄いぞ。どうやったんだ?できれば教えて欲しいんだが…」


 …完全に凛がやった事になってるな…いろいろ面倒だしそう思ったままでもいいんだが…ちょっと悔しい。

 凛が回答に困っている。…フォローしてやるか。


「えっ…ええっと…実は…」


「失礼。」


 凛の口を塞ぎ、小声で


「(凛。銃とかの事は説明するのもあれだし。凛がやった事にしといてくれ。)」


「(…いいの?せっかく助けてくれたのに…)」「(別にいいよ…俺が変わりに説明するから。)」「(そう…それなら…うん…)」


 凛がコクコクと頷いた。

…よし…


「…えーとな。それは凛の気合いの大剣の縁の一撃で…」


「化け物か…」「怪物…」


 二人は若干引いた。

 俺へ向く凛の視線が痛い…


「……ま、とにかくだ…それのお陰で綺麗な骨と肉が沢山とれたから20万バイトは妥当だろう…」


「なるほど…そうゆうことなんですね…」


 お姉さんも納得したようだ。


「じゃ、お二人さんは後で交易場に行って引換券を貰ってきてくれ。バズの用件って言えば分かって貰えるから。そいつを換金してもらってくれ。」


「は、はぁ…」


 へぇ…そうゆうシステムなのか…詳しい事は後でじいさんに聞こう。


「じゃあな…」そう言うとおっちゃんはギルドから出て行った。


「…さて……お二人はクエストの受注ですか?」


「ええ…そうですけど…」


「他に誰かいないのか?」


 さっきから一人もギルドに来ない。…皆なにやってるんだ?


「そうですね…ここのハンターはみんなそうなんですよ。朝寝坊ばっかり。」


 なんじゃそりゃ。



*******



「───というわけでこのギルドにみんな来る時刻はやたら遅いんですよ。」


 お姉さんが愚痴を挟みつつ説明してくれた事を要約すると…

1.朝はクエストがほとんど更新されていない。

2.基本的に皆は一日一クエスト程度を毎日こなして生活している。

3.クエストは基本的に半日~一日かけて行う。すると疲れた人達は帰ってきたらすぐ飯を食って一杯やりたい。すると皆クエストの終了時間をあわせる為に遅くなる。

4.しかもそれで夜中まで飲んだくれて起床時刻が遅くなる。


 という訳らしい。意味解らん。


「もう、どうしようもないんですよ…できればあなた達にはこのままでいて欲しいんですけど…」


 へぇ…帰ってきてすぐ一杯か。良さそうだ。飲酒の事は後で聞いておこう。


「おかげで最近『ギルドは午前休業だ』って言われるし…朝は5時から夜12時までやってるのに…昼前と夕飯前にどっと受付を対応する身にもなってくださいよ…」


「大変だな。」


 死んでも受付業はやりたくない。


「農家の方とか、鉱山の人達。流通庁や交易場の人達はとっくに働き出してるのに…うちのハンター達は……」


 もうすぐ9時。この街周辺の治安は大丈夫なのだろうか……





2017 6/18 100メガ…10万バイト…→200メガ…20万バイト に変更

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