10 ……一人のせいだ
酒場の開いている8人がけテーブルに俺と凛。司教男、大剣バカ、魔法使いが向かい合う形で座った。
小柄な司教男が
「お好きなものをどうぞ」
「はぁ、どうも」
というのでさっきからメニューを見ているが……うん、さっぱり。
どれがどうゆう料理なのかさっぱりわからない。当然だ。
適当に値段だけで選んでゲデ物が出てきても困る。
「ドードーの丸焼き」なんてものもある…あれ、昔地球にいた鳥みたいな名前だな……
どうしたもんかと俺と凛がパラパラメニューをめくっていると魔法使いさんが。
「あのー……迷うならおススメを頼んであげましょうか?」
「あ、よろしくお願いします」
オーダーに来たお姉さん(これまた美人)さんに全員分の注文をしてもらってひと段落……
小柄な司教男が切り出した。
「……自己紹介がまだでしたね……僕は『レイミー・レーナス』と申します。この二人とともにこのギルドに所属してパーティーを組んでいます。僕は主にこの小太刀、小盾。各種戦闘用アイテムと生命力魔法での支援もします。いわゆるなんでも屋ですね」
へぇ、仕事と名前以外解らん。凛は何かわかったようだ。
「同じギルドのハンターどうし。いずれ何か関わりあう事があるかも知れません。その時は宜しくお願いします」
そう言うと頭を下げた。……面接かよ……ま、礼儀正しい人だし。いい人かな……だいぶ小柄だけど。
「つ、次は私ですね……」
今度は大人しそうな美人な魔法使い。さっきから思うが異世界には美人さんが多いのかもしれない。
「私はイリーナ・レヴォルンです。私の魔法適正は炎、水、緑回復です。ほとんどは後衛で火炎魔法攻撃と回復で支援しています。その……昼間の件では本当にご迷惑をかけてすみませんでした」
「いえいえ、全然気にしなくて良いですよ。ほんとに」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ペコリと頭を下げる。別にいいのに……
「それでは、何か聞きたい事があったらいつでも私に言って下さいね。これからも同じギルド員として、お互い頑張りましょう」
魔法どうたらがわからないんだが……それは後で凛に聞こう。
それにしても大人だな……どちらともしっかりしていそうなのにこのパーティーは一体なんで……
「ん?ああ、俺か……俺はカイトだ。昼は世話んなった。あんがと。これからもヨロシク」
「「「「……」」」」
……コイツだ。コイツのせいだ。
すると…
『ゴスッッ!』
テーブルの下で鈍い音がした。大剣バカ(カイト)が自分の足を涙目でばたつかせている。……踏まれたな。
「ヒドイよぉ……わかった!しっかりやるから!!」
司教男が冷たい視線を送っていた。……マジで怖いな……
「……俺の名前はカイト・セトゥル……このパーティーのリーダーをやってクエスト中は指揮をとりつつこの大剣で前衛のアタッカーやってます。完全火力重視でやってる……あとは……昼はお世話になりました。ありがとうございました」
物凄く覇気を感じない。
……なぜお前がリーダーなんだ。
「リーダー……」
凛も驚いている。
「…次は俺達だな…俺の名前は風狙吹雪。フブキでいいよ。今日この街に来たばっかりだし、ギルドに登録したのも今日だからいろんな事を教えてもらえると助かる。ポジション的には……遠距離攻撃武器で凛の支援と指揮かな……昼の事は全然気にしてないか、らそっちも気にしないでくれ。これからもよろしく頼む」
流石に魔王退治が目標ですなんて言えない。
「わ、私は峰薪凛で。リンでお願いします。その……こうゆうのにちょっよ憧れてました。嬉しいです……」
魔法剣士の服着て喜んでたもんな…
「武器と魔法は全部使えると思うんですけど……全然慣れてないんで教えてもらえると嬉しいです!なんでもできるオールラウンダーとしてやっていこうと思います。これからよろしくお願いします……」
ペコリ。頭を下げている。
すると…
「おっ!来た来た!この串焼き旨いんだよ!!」
バカ大剣が料理が来てはしゃいでいる。
このパーティーがダメな理由がわかった。100%コイツのせいだ。
二人は呆れて物も言えないでいる。可哀想に……
「……私たちの分も来たようですし……食べますか……」
「カイトのことは気にしないで下さい……いつもこんな感じじゃないんで……」
「そうですね」
前言撤回。バカ三人組じゃない。
バカと真面目な二人組だ。
*********
ほかの料理が来てからは、俺含めてみんな腹が減っていたようで食事中は特に会話はしなかった。
ちなみに俺と凛が食べたのは普通のパンと謎の深緑色のスープと鶏肉の照り焼きのような味のした謎の赤い肉を食べた。見た目はちょっとあれだったが普通美味しかった。
みんなそれぞれの食べ物を食べ終わってひと段落。バカ大剣が
「そういえば……リンさんたちは何歳なの?」
「俺は17ですけど」「私は15歳です」
「へぇ……俺たちがギルドに入った時と似たような年だな……」
ふーん……皆そんなもんなのかな?
「そっちはいくつです?」
ちょっと気になる。
「俺は22。イリーナは今年で20。レイミーは……お前今いくつだ?」
「……16ですけど」
マジすか、俺より下だったのか。てっきり年上かと……
イリーナさんも俺のひとつ上くらいだと思ってた。バカ(カイト)は相応だろう。
「ま、俺はこの街に来て6年。ギルドに入って5年で上級者ってとこだが……まぁなんか教えてほしい事があったら言ってくれ……」
一応普通な所もあるようだ。
「じゃあこの街について教えてほしいんだけど…」
「「なんもありませんよ」」「特になし」
即答だ。
なんだよその田舎でテレビ局から取材受けた人みたいなセリフは。
「いや、別に観光とか名所とか無しで。産業とか」
イリーナさんが少し悩んでから答える。
「主に農業系かな……農作物をとにかく沢山使って他の街と交易して成り立ってるんですよこの街は」
なるほど。それならあの馬車の大群も頷ける。
「あとは若干の鉱石とモンスターの素材の輸出ですかね……」
「ただその代わりがあってな……魔法と技術の発展が若干途上してんだよ。他の街より。あんた達も思うだろ?もといた街よりスゲー田舎だなーって」
「それは400年くらい時代遅れ……」
正直に言うなっ!
あわてて凛の口を塞ぐ。
「いやー若干そうかもな。若干」
三人は首をかしげている。
危ない。
「……だから魔導具や魔法石。最新の道具とかは輸入に頼りっきりなんだよ……ま、たいして生活に支障は無いけどな……」
さっきから魔のつく単語がいまいち分からないのだが……
「話を戻しますよ。そうなると城壁で囲えない農場とか、採掘場を荒らすモンスターを狩るのが私たちって感じですかね……後は輸出輸入を行う大きな道の安全管理とか、街に被害を及ぼしそうなモンスターの退治とかもですね」
なるほど。ギルドがある理由はそれか。
「まぁよく一般の方々の依頼とかもあるんですけどね……変な無茶ぶりしてきたり……」
何となくわかる気がする。きっとどこかの第三者王女みたいな依頼があったりするのだろう…
「……聞くところによるとお二方は今日この街に来たばかりのようですが。宿の確保はどうされました?この時期は新しい商談の為によく商人が訪れるから確保しにくいんですよ。良ければコネで宿を手配してあげますが……」
「ああ、それなら受付のお姉さんにタオレ荘の予約入れておいたから大丈夫」
実はクエストに行く前に一応タオレ荘予約できるか聞いたら「私が連絡しておいてあげますよ」と言ってくれたのだ。
「「タオレ荘か……」」
大剣とイリーナさんが顎に手をあてている。どうした?
「……あの、何かあるんですか?」
凛が心配そうに聞いた。
「いや、別になんでもないですけど……」「……あそこのおばちゃん変におせっかいだからな……」
どうゆうこと?
なぜか二人が俺と凛を交互に見ると…
「ま、悪い宿じゃない。気にすんな」「……けっこういい宿ですから……その……頑張って……」
いや、頑張ってとか物凄く気になるんだが…
「……あそこの宿のおばさんは、変な配慮に過ぎる。それだけです」
は、はぁ。レイミーの言ってることも理解しがたいです。
ま、行きゃわかるか……
懐中時計に目をやる。
「……もうそろそろで9時だな……凛。そろそろ宿に行くか?」
「そうだね……」
俺達は寝てすぐに天界に引っ張られて、異世界に転移させられたから実質睡眠時間ほぼ無しだ。
「……ほいじゃ、俺達はもう宿に行くよ。晩ごはんありがとう」
「ごちそうさまでした」
「いえいえ。当然の事をしたまでです。昼の件は本当に……」
「気にしないでいいよ。じゃあな。ごちそうさん」
席を立って頭を下げた二人と、椅子に座って水を飲んでるバカに手を振って別れて、タオレ荘に行くべく。ギルドを出た。
完全に説明会になっちゃいました…次から普通に…
そして今回新しく登場した三人。ストーリー進行上。結構重要だったりするかも!?
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小説書く練習。もっとしなくちゃ……




