01話 少年の日常
本日は5話まで3時間おきにUP致します。
明日からは1話づつ聖王国編が終わるまで毎日UP予定となります。
それでは拙い話ですがお読みになり評価などしていただければ幸いです。
少年は日々変わらぬ日常に飽きていた。
変わることのない日常・・・朝日が昇り始め、スズメの鳴き声が聞こえてくる木造の道場で、少年は老人と木刀を構え向き合っていた。
「せやっ!」
少年の木刀が水平に切り裂く
「ふっ」
スカッと躱されたかと思うと老人は少年の胴をないでいた。
「がはっ!」
少年を見下ろし老人は
「情けないのぉ~それでも儂の孫か?」
少年は膝を付きながらお腹を押さえ
「けほぉっじいちゃんの孫だし! 情けなくない! じいちゃんが強すぎるんだ!」
老人は顎へ髭を撫でながら
「そうだったかのぉ~しかしヌシも大きくなったものじゃ・・・」
そう言って窓枠から差し込める朝日を見ながら物思いにふけっていると
「朝食の用意が出来ましたよぉ~」
その声に老人は
「わかった~今行くぞい!」
そして老人は少年に向き直り
「ほれ、ヌシも早う片づけをせんか!」
すると少年は、はぁとため息をつき
「わかった、でも先に食べ始めて俺のおかず食うなよ?」
「フォフォフォ、何のことかな? フォフォフォ」
そう笑いながら老人は道場を後にした。
趣のある和室の食卓へと足を踏み入れた老人は、上座に座るとお婆さんがスッとご飯が盛られた茶碗を老人の目の前に差し出すと、それを受け取り
「うむ、いただこうか。」
そう言って焼き魚をお箸で器用につまみ口に運ぶ
「うん、今日もうまいのぉ。」
「ありがとうございます。それよりあの子を待たなくてよろしかったのですか?」
お婆さんが老人に聞いてくると、老人は味噌汁をすすりお椀を置き
「よい、今頃は1人で素振りでもしておるだろう。」
そう言って道場の方へ視線を送ると、道場より
「せいっ! やぁっ! はっ!」
と声が聞こえる
そして老人はにこやかに笑い
「今日なんて危うく一本取られそうになったわ!ワッハハハハ!」
するとお婆さんもにこっと笑い
「そうですか・・・貴方から一本取る寸前ですか。」
「そうじゃ、流石儂の孫じゃ! 経験さえ積めば儂をすぐにでも超えるわ! ワッハハハハ!」
老人が食べ終わり、食後のお茶をすすっていると、少年が食卓へ入り自分の席へ座る。
「おっ! 焼き魚!」
「はい。」
喜ぶ少年ににこやかに茶碗を渡す。
「ありがとう、ばあちゃん。いただきま~す。」
そう言って慌てた様に少年は食べだす。
「もっと味わって食わんか!」
老人が怒鳴りつけると少年は箸を止めずに
「んなこと言ってもさ、ばあちゃんの焼き魚がうますぎるのがいけない!」
それでも何か言おうとした老人を遮ってお婆さんは
「もっとゆっくり、ちゃんと噛んでお食べ、焼き魚は逃げやしないから。」
ほのぼのとした食卓の風景がそこにあった。
これから待ち受ける運命を知らずに・・・